目が覚めたら難易度ナイトメアの世界です   作:寝る練る錬るね

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サクサクいきます




俺たちの戦いはこれからだ!ご愛読ありがとう……

 

 

 

 3歳になりました。誕生日は姉二人が花畑まで連れて行って細々と祝ってくれたよ!ありがたいね!

 

 親から?誕生日ということすら触れられませんでしたが?目が合わなかったし、アレは多分覚えてたけど忘れたフリしてたんだろうな。

 

「お姉ちゃん、ありがとう。……リルは、大事にするね」

 

「…………ええ。そうしなさい。ラムとレムが頑張って作ったもの」

 

「レムはあんまり力になれなかったけど……何回も作り直した自信作だよ!」

 

 でも姉二人がしっかり祝ってくれたので気にしていない。プレゼントとして花冠をいただきました。おい、この健気な発言を聞いてるか大人ども。お前らだけエヴァンゲリオンの世界線にいるのか?お?

 

 にしても、リゼロ世界にも花冠の概念はあるんだね。幼女の気遣いが滲みるよ全く。ょぅι゛ょしか勝たんわ。

 

 ………その顔が歪むのを見るのもまた一つの楽しみなんだけどね。魔女教襲来まで仲良し姉弟でいような!!僕は元気ないフリしてるけど!!

 

 そしてそれから数ヶ月。今日の本題。

 

 体を鍛えようと思います。

 

 ……え?この間魔女教への対策は大体できたって言った?いやいやいや。レムを庇っていたとはいえ、白鯨を単騎で墜とす角ありラムを倒す相手様方ですよ?よくよく考えれば三本角がある程度じゃ慢心していい理由にすらならねぇ……最低でもラム並みの戦闘センスは磨いておかねばならない。

 

 といっても、教えを乞う相手がいない。上姉様は魔法、格闘において天才肌なタイプで、教えるのはてんで下手でした。説明に擬音が大量に出てきた時点でダメだと思います。かわいいけども。

 

 じゃあ誰がいいかと無い頭を回した結果。

 

「お願いします……リルを、弟子にしてください……」

 

 僕は今、族長に土下座をしています。

 

 うろ覚えだが、確か鬼族は強さを重んじる種族という文があったと思う。だからこそラムは一族の期待を背負ったわけだし、レムはより一層の劣等感を抱いた。実際、この村にいて実力主義なのもひしひしと伝わってくる。

 

 ん?ならなんで僕迫害されてるんだ?

 

 ………話を戻すが。

 

 鬼族が強さを重んじるというのならば、族長は必然、鬼族の中で最も強い者だと思ったのだ。要するに妥協して二番目に当たったわけである。

 

 ただ………

 

「ひ、ひぃぃ……」

 

 この反応はないんじゃないか。

 

 恐れられてるのも知ってるし、話したこともあまりない相手だけど、腰抜かして逃げようとしなくても…………ピンポンダッシュならぬピンポン土下座で扉が開く前から待ち構えていたのに、出会った瞬間これである。

 

「………わ、我が家の家宝を差し上げます……ですからどうか、お許しを……」

 

 土下座を土下座で返すなァ!僕が鍛えてくれと頼んでいるんだ。懇願には命乞いで返せと学校で教えているのか?

 

 でもいいや。もらえるものはもらっておこう。家宝とやらはやたらと切れる短めの刃物だった。木製の鞘にはしっかりとした意匠が凝らされている。

 

 けれど、鬼族は和風なイメージがあるのにどちらかといえば短刀ではなくドスだ。ヤクザかな?

 

 帰って上姉様に見せびらかすと、「極滅刀」なる名前をつけてもらった。強そう(小並感)

 

「人族を殺せるくらいには切れ味はいいけど、この程度ならよほど当たりどころが悪くないと鬼族は死なないわ。そんなこと、リルはしないでしょう?なら、ちゃんと持っておきなさい」

 

 御忠言、心に受け止めておきます。

 

 とりあえずこれを護身用に持ち歩き、明日もう一度師匠(仮)に土下座をしに行こうと思う。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

「今日はこれでお許しを……」

 

 カツアゲしにきたんじゃねぇんだよ。

 

 こっちが土下座してるのが見えないのかこのジジイ。いや、あっちも土下座してるからどっちかがやめないと見えないのか。なんだこの不毛な掛け合い。

 

 土下座の状態でチラッと族長を覗き見るが、必死に目を瞑って手にある何かを掲げている。一日くらいなら平気で土下座してそうな勢いだ。奥さんへの不正融資の証拠とか集めた覚えないんだけどな。そもそも師匠(仮)の名前知らないし。やれぇぇっ!って言えない。

 

 ………周囲の目もあることだし、今日は撤収することにしよう。とりあえずまた手に掲げているものを受け取っておくことにする。今回は小指サイズの4つの果実だった。ボッコの実かな?

 

「………族長様、リルは明日も、明後日も此処に来ます。稽古をつけてくれるまで、リルは土下座を続けますよ」

 

 ビクゥ!と族長の体が跳ね、「これ以上私に何を差し出せと……?」と絶望したような顔でこちらを見る。差し出さずに稽古つけろよ。弟子にしろって最初から言ってるじゃん。族長だろお前。プライドとかないのか。取り立てでもないんだよ。

 

 これは、多分信頼関係をある程度築かなければ話を聞いてくれなさそうだ。毎日土下座しに()よう。若干楽しくなってきたとかではない。

 

 ちなみにもらったものを上姉様に見せたところ、ボッコの実ではなく『火酒実(ひざかじつ)』という珍品らしい。なんでも、これ一つで最高級のお酒と遜色ない味を楽しめるのだとか。ちゃんとアルコールも入っているそうな。ドラ○もんにこんなのがあった気がする。

 

「あら、一ついいの?……本当に?………いいのね!?」

 

 大好物なのだそうで、一つ分けたところ大変喜んでいただけた。大好物もらったらあんなにはしゃぐのか………酒の味するものもらって喜ぶ幼女ってそれなんてファンタジー。

 

 ちなみに下姉様は一口食べただけでベロベロになってダウンした。そういえば上姉様と違ってお酒弱いんでしたね。この世界でも未成年飲酒だわ。余ったのは上姉様が全て平らげた。酔っぱらった様子はないので、やはりお酒には強いのだろう。

 

 上姉様が余った二つのうち一つを僕へと投げてくる。折角の機会なので僕もいただいてみようと思う。あと一つあるし、もし美味しければ頑張って栽培でも────アッツゥゥゥイ!?

 

 喉焼けるわこんなもん!!よく食えるな上姉様!!………そういえば前世通してお酒は飲んだことがないんだった。チューハイとかならともかく、初めてがこんな度数高いやつとかそりゃヤバい。

 

 ……てか鬼族は酒に強いんじゃなかったんですかねぇ……フツーに酔っぱらうんですけど。

 

 あ〜世界が回る。あのジジイよくもこんなもん子供に持たせたな。早朝から家の前で土下座して家から出られないようにしてやる。

 

 顔に血が上って、姉様方が三人になって、萌える萌えるきゃ〜素敵百合百合!!愛してるぜスバルくんうひょー

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 気持ちわる。

 

 吐きそう。

 

 というか吐いた。今世初レインボーである。ものの見事に二日酔いだ。

 

 どうも、今日は土下座できそうにない。………そう思ったら族長の喜んだ顔が頭に浮かんだのでやっぱり行く。

 

 心配する下姉様を振り切って、とぼとぼと族長の家へ向かう。………気持ち悪くなったので族長の家の裏口に二回目のリバース。ふふふ……これで逃げられまい。うぷっ……

 

 なんか陰湿な村ぐるみの虐めに遭った感じになった族長の家の扉を叩くが、出てくる様子がない。居留守か。居留守なのか。こんなに気持ち悪い中来ているのに、居留守で門前払いか。

 

 ………魔法(ゴーア)で家ごと焼き払うことを本気で考えてから、いい加減気持ち悪くなったので帰ることにした。

 

 帰り際に草むらへ三度目のリバースを行いフラフラしていると、ぬかるみに足を滑らせてしまった。全身がものの見事に泥だらけである。ついでに吐き出したレインボーも若干ついた。

 

 ……ので、家に入る前に浅瀬の川へ身を投げ出した。ゆっくりと浸かる元気もなく、ほとんど倒れ込むようにして水に浸かる。

 

 ───冷たい水が二日酔いで湯だったような頭を冷やしてくれる。ついでについた汚れも川に流せる。実に合理的だ。

 

 そんな風に空を見上げていると、その様子を見てか呆れたように一人の人物が声をかけてきた。

 

「……リル。どうしたの、そんなところで」

 

「………上姉様。……ちょっと、川遊びがしたくて」

 

 二日酔いでゲロった上に足滑らせて泥と吐瀉物まみれになったのを誤魔化すためです。

 

 ………上姉様下姉様の呼び方は最近口にし始めたが、これを口にすると見事に二人の顔が陰る。『孤立して心を閉ざしてます』作戦、成功の兆しが見えている。顔は曇ってるけど。

 

「………嘘が下手な子。貸しなさい。その服、泥だらけでしょう。泥はその程度じゃ落ちないわ。今からお風呂に入りましょう」

 

「……はい、上姉様」

 

 嘘が見抜かれたので仕方なく川から上がる。言われてから見直ってみると、確かに淡い藤色の服には茶色いシミがついてしまっていた。これはバレるわ。というか二日酔い中でも気付けよ僕。

 

「こら、どこにいくの。濡れた服で家の中に入ったら家が水浸しになるでしょう。此処で脱ぎなさい」

 

 適当に服を絞ってから脱ぐために家の中に入ろうとすると、上姉様から割と問題発言がとび出る。

 

 まぁ、子供だからね。しょうがないね。

 

 というわけで下着姿になって、服を上姉様に預けてから家の中に入る。流石に刀は自分で持つけど。下着姿で下姉様に鉢合わせたが、やはり顔を赤らめたり驚くといった反応はなかった。子供だからね。

 

 

 

「さぁ、お風呂に入りましょう」

 

「…………………上姉様、なんでいるの」

 

「何を言っているの。さっきリルの服を持ったからラムも汚れたのよ。一緒にお風呂に入るわ」

 

「あ、じゃあレムも一緒に入るよ。まだ陽日だけど、今日暑くて汗かいちゃった」

 

 ……………マジか。

 

 まぁ、子供だからね。しょうがな……くねぇよ。どうしよう。耐え切れるか!僕の理せ

 

 耐え切れました。全然余裕。

 

 体がそもそも反応しないし、ロリに欲情するほど変態でもない。上姉様と下姉様が二人できゃっきゃと水かけ遊びしているのを和ましく眺めていたら終わった。寧ろ姉様方の方がテンション高かったまである。

 

 それにしても、お風呂が沸くのがやけに早いと思ったら魔石なんてもの使ってるんだね。便利だ。

 

 ともかく、お風呂に入って頭もスッキリした。今日はもう師匠(仮)にカツアゲ……もとい、弟子入りのお願いをすることは出来なさそうだ。まぁ、まだまだチャンスはある。

 

 時間をかければ

 きっとだれとも

 分かり合えるよ

 

 れぐるす こるにあす 心の俳句

 

 

 というわけで残りの時間は魔法の訓練に使いました。上姉様に手取り足取り教えてもらいながら。下姉様は参加せずこちらを見ているだけのようだ。

 

 魔法に関しては上姉様の大雑把な説明でも理解できる。というか、上姉様は魔法に関してはきちんと論理的だった。詠唱に限ってだけど。魔法はある程度極めなければ詠唱によるところが大きいそうだ。

 

「魔法は「ウル」や「エル」の冠詞と属性指定の詠唱で発動するの。属性は四大元素の火、水、風、土。ついでに陽と陰があるわ。リルの火属性、火ならゴーア、氷ならヒューマ。ラムの風ならフーラ。土ならドーナ。陰は……複雑だし、ラムには教えきれないわ。これらをより強くしたいときに、エルゴーア、ウルゴーアとなるのよ」

 

 

 なるほど。例えるならメラ、メラゾーマみたいなもので、この世界ではゴーア、エルゴーアのようになるということか。

 

 一番強いのはアルゴーアだが、アルから始まるものはかなりの腕前か魔力がないと使えないとされているらしい。ロズっちはきっと使えるんだろう。いいなぁ。

 

 とりあえず僕の属性は火……温度を調節するマナなので、ドラクエのメラに当たるゴーアを習う。それくらいは完璧にこなせた。ふふん。

 

 じゃあ次の段階、エルゴーアとなると、なかなか制御が難しい。角から吸収したマナの量にモノを言わせて弾をデカくすれば命中はするが、そうでもしないとコントロールがふにゃふにゃで使い物にならない。弱っ♡雑魚♡

 

 これに関しては鍛錬あるのみらしい。魔法の才能はあまりないようだ。今の僕はさながらダムに繋がっている蛇口。マナという水自体はあるけれど、それを扱い切れるほどの出口に恵まれなかったというわけだ。

 

 最後に、土の壁を作る魔法……土属性にも僅かに適正があったらしい……「ドーナ」を教わり、この日の魔法訓練は終わった。ドーナを打つこと自体は初歩であるからか非常に楽で、ポンポン連発することができた。それ以上の「エルドーナ」はそもそも発動すらしなかった。どうもイメージが足りないらしい。まぁ、土の壁を作ったところでなにか、というとこがあるけども。いずれは役に立つだろう。

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 夜中。寝苦しくて、目が覚めた。

 

 熱い。扉を開けて、寝ぼけた目を擦って外へと出る。

 

 視界を埋め尽くすのは、一面の、赤。

 

 ……………村が、轟々と音を立てて燃えていた。

 

 

 うそん。

 




 

 サクサク逝きました。

 
制作・著作
━━━━━
ⓃⒽⓀ


次回は予定を大幅に変更し、
『村が焼けました。ところがどっこい!夢じゃありません…!現実です…!これが現実…!』を放送いたします。

こちら日々泰樹さんからいただいた挿絵です。

【挿絵表示】

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