以下、リル君の別称。
追尾式地雷
よってくる地雷
懐いたショタ型の地雷
誘爆する地雷
地雷というか誘導地雷
地雷でなく避雷針(雷を防ぐとは言ってない)
呼び水ならぬ呼びニトログリセリン
追尾型の爆弾
優しさという名のルート逸れ防止装置
誘蛾爆竹(火遊びした瞬間背後の核が起動)
完璧に擬装された核スイッチ
全身トラップ
自分が爆破することも厭わない地雷
特攻愉悦部員
地雷は触れる時ではなく離す時に爆発する
地雷ってレベルじゃねーぞ!
難易度ナイトメアをメサイアまで格上げする地雷
もはや嫌い通り越して機雷
高圧電流流れてるのに見た目じゃわからないとか電線か?
爆発しない地雷磁石
いやぁ、風評被害も甚だしいですね。うちの子が何をしたっていうんですか。
どうも〜僕で〜す。
眠いよ。
僕だ。
スヤァ………
「おーい?リルさーん?リルさんやーい?」
「…………うーん、ムニャムニャ」
「おぉ、テンプレな寝言だ」
「エミリア様………スバルは雑草と一緒で食べられないんですよ………氷漬けにしてもお腹を壊します……あぁ、ですから砕いても……」
「どんな夢!?ねぇどんな夢なの!?スバル的にそれかなり気になるんだけど!?」
「うるさいわねバルス。リルもバルスを揶揄うのはその辺にしておきなさい」
「はい、上姉様」
「寝たフリだった!?」
当たり前だ。スバル君の前で寝るほど無防備じゃないし、耳元であんな声上げられて起きないほど間抜けでもない。姉様と一緒に寝ないというのはなかなか久しぶりだった気がするけど。
改めると、ここはスバル君の部屋。上姉様と僕はスバルにこの世界の文字を教える……という名目で監視するため、風呂上がりのスバル君の部屋を訪れていたのだった。
僕らも風呂上がりだけどね。襲われないか不安だ。キャー!
「……それで、字の方は順調?」
「バルスが無様な落書きを晒しているところよ」
「落書きて……これ、一応俺の故郷の字なんだけど……」
少しだけ伸びをして机に向かうスバル君の紙を見る。そこには日本語で『ナツキスバル参上!』と書かれてある。
うん、こりゃこの世界の文字にしてみれば落書きにしか見えんな。参上の参に
最初は象形文字にしか見えなかったが、慣れてしまえば早い。こちとら元は3000近い英単語覚えてた学生ぞ。それに比べれば楽すぎるくらいだし、流石に何年も身近にある字くらい書ける。
スバル君の横で文字を書いていると風呂上がりの匂いが気になるのか匂いを嗅がれてる気配が。やめいやめい。魔女の香りしかせんぞ。そのままもげてしまえ。
「はい。イ文字。ロ文字ハ文字は後でね」
「三種類もあるのか。先は長ぇな。だが、こういう地道な書き取りは昔を思い出すぜ」
文句を垂れつつ羽ペンを手にしてカリカリと手を動かすスバル君。こうやってると多少なり真面目な印象は受けるのになぁ。台無しにするのが言動。
でも、スバル君は扇動者の才能あると思うんだよね。口先の魔術師的な。知識と距離感と頭の回転さえ上げれば国のトップに立つこともできるだろう。
「イ文字を把握してから、童話に入るわ。勉強時間は……冥日一時までが限度でしょう。明日もあるし、リルかラムの肌がくすんだら世界の損失だわ」
「相変わらず弟と自分思いなことですね。そういうとこ、嫌いじゃないぜ先輩」
「ラムもラムのそういうところが好きだわ」
「リルも上姉様のことが好きだよ」
「さらっと惚気に入られた!」
安心しろ。スバル君のことも姉様に負けないくらい好きだから。好かれたことへの代償をしっかり教えてやる。
姉様と左手でハイタッチをかまして、スバル君が文字を書いているのをベッドの上で後ろから眺める。しばらくすると、暇そうにしていた上姉様が次第に船を漕ぎ始め、そのまま眠り込んでしまった。
仕方なく自分の元へ引き寄せ、膝枕をしながらスバルの後ろ姿に見惚れる。夜中にペンの音だけが響いて、明かりだけが照らす部屋。姉様の頭を撫でて、目的もなくぼうっとする。うん。なんか、昔を思い出す。僕が、リルじゃなかった頃の。
「なんつーか、結局は自分が楽するためとか言ってったけど、それでもこうやって誘ってくれて嬉しかったよ。正直、あんま好かれてると思ってなかったし」
む。多分上姉様に放ったであろう言葉。残念、僕にしか聞こえてません。上姉様?僕の横で
好かれてない自覚があったとは結構。まぁ、原因まで知れるかどうかとどれだけ嫌われてるかはわかってないだろうけど。
「だから、これからも迷惑かけるとは思うんだけど、よろしく頼むよ──って寝とるぅぅ!?」
「あ、ごめん。リルも聞いてなかったや。なんて言った?」
戯けが。ちゃんとエプロンとブリムも外して布団も被った就寝だぞ。スバル君ベッドメイキングは上手いからベッドがちょっと気持ちいいんだよね。
「…………迷惑かけっけど今後もよろしく的なことだよ。お前に比べて、姉様は本当に不真面目だな」
「リルの前で姉様の悪口とは根性があるね。そのまま焼いてあげようか」
「根性焼きは勘弁だよ。実際のところどうなの?不公平とか思わねぇのか?」
ほら。そういう堪忍袋をぶち破りそうなこと言う。上姉様が寝ててよかったよ。
「不満はないよ。上姉様も下姉様も、ちゃんとリルの姉様だから。それ、姉様方の前で言わない方がいいと思う。最悪八つ裂き」
「気をつける。………そういやリル。風呂場のことなんだけど」
「………魔法のこと。教えて欲しい?」
「是非に!!できれば明日にでも!」
ぬおぉ、と懇願するスバル君。うーん。今の状態であのシャマクやったら確実に下姉様が爆発するから却下かな。
とりあえず、約束を取り付けるだけ取り付けておこう。
「明日も仕事が忙しいでしょ。やるとしたら、四日後とかかな。リルの手が空くし」
「おお、じゃあそれで頼むわ!いやぁ、これで俺の魔法使いライフが始まってしまいますなぁ!」
「ガラガラ閉店」
「後輩の将来の可能性を閉ざすのはいいことじゃねぇと思うけど」
可能性は無限大って?まぁ、スバル君が言うと説得力は違うけどさ。
「………そういや、そのロズワールとの話に出てきたんだけどよ。お前の手って、もしかして何か秘められた力とかがあったり──」
「スバル」
残念ながら、その質問はライン超えだ。意識して冷たい声を出し、スバル君を黙らせる。
上姉様もバッチリ起きてしまった。このまま質問を続けさせれば、胴から上がそのまま飛ぶだろう。
「……リル、もう冥日一時は過ぎたわね。部屋に戻りましょう。レムが待っているわ」
「はい、上姉様。スバル、明日も早いから早く寝るんだよ」
上姉様が脱いでいたものを持ち、苛立ちを表すかのように早歩きで部屋の外へと出る。スバル君の悪いところがちょっと出たな。まぁそこ含めて好きなんだけど。
「あ、ちょっと……」
「スバル。……もしこの屋敷に居たいなら。これ以上リルと関わらない方がいい。……姉様に、ちゃんと気を遣ってあげて」
無駄になると知ったアドバイス。スバル君の性格上、こんなことを言えば余計燃え上がるだろうから。
ただ、もし5周目、6周目以降に行くことになれば。僕としては、これ以上の打開案は思いつかない。僕に関われば関わるほど、スバル君の生存率は低くなる。
両姉様に細心の注意を払って、僕との関わりはほどほどにする。それがきっと、この屋敷で過ごすための最もベターな選択肢だろうから。
さてさて。予想は当たることやら、外れることやら。
───外れるのが、実は一番望ましいけど。
そこから、スバルの三日間はあっという間だった。
朝昼晩と両姉様と弟にこき使われ、夜はラムレムプラスセットで確定なリル二人に文字を教えてもらう。と言っても、ラムは途中で寝てしまうので専ら教えるのはリルかレムだ。
そして、スバルはリルの助言を───スルーした。
もともと、うんとかすんとか言えと言われればすんと答え、小学校で帰れと言われれば本当に帰るスバルだ。リルとはしっかり友情を築き、しかし言葉通り姉二人にはちゃんと気遣いをした。
レディらしい扱いなんてものをしたらドン引きされたが。
そうして、運命の日。前回とはほとんど変わらない四日目の夜を迎えたスバルは、忙しい三人……どうやらスバルに気を遣ってくれたらしい………の代わりに監督に来たと言うエミリアと、一周目同様、デートの約束を交わしたのだった。
「……………さて。運命様と勝負…………と、行きたいとこなんだけど」
正直なところ、スバルは迷っていた。
一周目の死因。それを特定するためのこの二周目なのだが。例えばそれが、暗殺者か何かの外部犯であったりして。それがリルに倒される前に、寝ているスバルをあっさり殺しただなんてオチであれば。
「………これ、リルに頼った方がいいんじゃねぇのか?」
正直、情けないとは思う。相手は子供で、年下の男だ。見た目も女性となんら遜色なく、スバルとしては少女に頼っているのと感覚的には変わらない。
ただ、もしここでスバルが危険を訴えないことで、襲撃者によって間接的に屋敷の住人が一人だろうと死ぬことになるくらいなら。
「………他人をすぐに頼ることは俺のいいとこ、か」
いつか聞いた褒め言葉を脳裏に浮かべ、スバルは重い腰を上げて部屋を出た。確かリルの部屋はスバルの斜め上、だったはずだ。一周目の知識を生かし、早速一階上に向かう階段へ向かう。
自分勝手な解釈にも限度がある。その言葉をくれた相手は、もうとっくにその言葉を忘れているというのに。
ただ、同時にその選択肢は非常に安定したものだ。スバルにとって、リルは今まで会ってきた異世界の住人の中で一番強い。スバルという荷物さえ抱えなければ、負ける未来など一切想像がつかない。そんな相手に守ってもらえるとなれば、安堵も相当来るもので。
内心の緩みが表に出てきたのか、朝までまだまだ時間もある中歩いているというのに、やや瞼が重くなってきたのを感じる。
「おいおい……階段で寝落ちしてそのまま転落死とかシャレになんねぇぞ……」
言いながら瞼をこすり、降って湧いた眠気を逃がす。が、眠気は微妙な寒気まで連れてきていて、思わず身震いが起こって階段を登りながら苦笑。
両肩を抱き、体温を高めようと体をこする。しかし、やってもやっても寒気が引くことを知らず、それどころか眠気が消える気配すらない。
そして。楽観的に捉えていた状況が、一転。
「────ッ!?」
突然。
スバルの周囲の気温が10度ばかり低下し、極寒の世界となる。歯の根が合わず、急な冷気に体が踊り場で崩れ落ちる。
否。否、否。気温が下がったのではない。これは、スバルの体温が急激に下がっているのだ。
「ヤ、ベェ………ま、さかこれ………………ウォブォェェェッ!?」
それに伴い、体がまるで病気にでも罹ったような倦怠感と吐き気に襲われる。堪らずスバルは胃の中身をぶちまけ、地面に崩れ落ちた。
何が起きているのか。何をされているのか。
わからない。わからない。
ただわかることは、スバルの身に命に関わる何かが起こっているということだけ。
体を起こすことすらままならぬまま、冷気に支配された体が思いついたことは。
「………い………かねぇと…………」
助けを求める。リルなら、この状況が打破できるかもしれない。声高にリルを呼ぼうとするが、喉は塞がったように声が掠れてとても大声は出せない。
「う……あぁ……」
呻き、数段ですら無限に思える道のりの階段を進む。踊り場からとは言え、そこから上階に向かって歩を進めるのは、一歩ごとに魂を削るような苦行だった。
這うようにして階段を上り切り、スバルは自分の上の部屋を目指す。
体の中身が溶かされ、全部一緒くたに掻き混ぜられたような不快感があり、込み上げる吐き気と涙を我慢できずにこぼしながら、這いずる足は前へ、前へ。
目的地は、もうすぐそこで───
「──────あ?」
その、目的地のすぐ側。
窓から注ぐ月光に照らされた。
とても、美しいものを見た。
美しいという概念で、表せないもの。
美しいとしか表現できないスバルの語彙力を、怨みで殺せそうなほど美麗な。
吐き気も、倦怠感も。体の不調の全てを忘れさせる、あまりにも完成し尽くした人の美の具現がそこにはあった。
髪は白金。銀よりも温和で美しく、プラチナに輝く清流。宝石をちりばめたように絢爛に輝く髪は、しかし主張すらなく慎み深く長く伸びている。
そしてその瞳はまるで海のように深く。或いは星のような輝きを伴う。例えこの世の蒼という蒼を集めようと、その瞳の美しさに匹敵する色は絶対にないだろう。
肌は白磁。白亜のように白く、硝子のような透明感の残る素肌。あまりにも目に毒なそれは、一生見ていて飽きない芸術品だ。
そして、その容姿が。貌が。あまりにも整っていて。あまりにも完成されていて。
その存在の全てが。爪先から髪の一本に至るまでが、スバルを惹きつけてやまなかった。
その一般的な飾り気のない服も、彼女が着ればそれは美しい値千金のドレスに他ならない。装飾品が一切ないからこそ、素材そのものの美しさが一層際立って感じられる。
彼女に、認識されたい。
一切の邪念なく、スバルはそう思った。その思考全ては、彼女のことだけで埋め尽くされている。
認識されて、思考されたい。目を向けられたい。声をかけられたい。その肌に触れたい。その手に触れたい。その腕の、その脚の、その体の全てに至るまでを。スバルが。スバルの。全て全て、全て。スバルだけのものにしたい。スバルが、独占してしまいたい。
例え視線を向けられるだけで、それはいったいどれほどの多幸感を得られるだろう。姿を見ただけでも、スバルは天に登りそうなほどの幸福の絶頂にいるというのに。
一体、これ以上彼女に深く関われば、どうなってしまうのだろうか。
「……ぁ………」
何故声が出ないのだろう。声高に主張したい。自分の存在を。自分の価値を。自分がどれだけ彼女を思い、その美しさに報いられるかを。
スバルが生まれてきた意味はそれだと。今この瞬間のためにスバルは生きてきたと。心の底から、そう思える。
今までの美しさの概念が覆るような彼女へ、スバルは、自身の全てを捧げたいというのに。
どうして、足が動かないのか………
「───ぁ?」
無意識のうちに、彼女へ手を伸ばしていたその時。彼女が発するであろう天使の音色の代わりに。
──キン、という音が、耳に入った。
耳鳴りは甲高い音が鳴り響いている。故に、スバルがその奇妙な音に気付けたのは、なんの含みもなくただの偶然だ。
まるで、鎖の鳴るような音だった。耳が上手く機能しないから、錯覚だったかもしれないが。
痛みはない。ただ、猛烈な違和感。それが、目の前の幻想に陶酔するスバルを現実へと引き戻した。途端、全身を襲う不快感が遅れてやって来る。
体を支え切れずに、伸ばしていた手が大きくずり下がった。
彼女の前で倒れるだなんて不敬が許されるはずもないと、力の限り踏ん張って。
「───う?」
視界が、回っていた。
スバルが、回っていた。
世界が、回っていた。
体が吹き飛ばされる。何か、強い衝撃を受けたのだと、何度も地面をバウンドし、床に顔を擦り付けて初めてスバルは気付いた。
痛みは、ない。
ただ、手足の末端から腹の中身まで、ぐずぐずと痺れる不快感がある。血流が止まって痺れる感覚、あれと似た倦怠感が体を支配していた。
それでも、頭の中は薔薇色の恍惚で満ち足りている。例え死んだとしても。彼女を見られたのだとしたら、その死にも納得できそうだとスバルは感じた。
唯一の不満は、その視界に彼女が映っていないことで──
「………ぼ………」
終わりかける命の中。スバルは、ゆっくりと顔を動かす。音が遠ざかっていく。体の感覚も消えて、臭いも、血の味も。遠ざかって、遠ざかって、見えなくなっていき………
───その視界に、走り寄ってくるあの女性の姿を捉えた。
幸福。陶酔。至上の喜びが、スバルの胸の内を満たす。
例え世界から意識が消えるのだとしても、彼女が自分を見てくれていたのなら、それはどれだけ幸福なことだったのだろう。
スバルはその手を、遠く小さい彼女へとゆっくり伸ばし───
自分の頭が、何かもっと強い感情で潰されたのを知覚して、その意識を手放した。
下姉様イライラカウンター
ラムやリルと夜中に文字を教えるとは言え親しくする 2京
リルの素顔を見る 427載
風呂上りの髪を染めていない状態をスバル君に晒すガバ。
どうせ戻るから染めるのがめんどくさかった、原作よりも早くスバル君への呪術が発動して、エミリア様のところに向かわなかったから……などと容疑者は供述しており。
飛ばすぜ飛ばすぜ。