あと、繋ぎの話だからすっごい短いよ。作者のモチベがなんかすごい低かった。
その代わり、Twitterの方で質問があった大罪司教と大罪魔女との相性表作ってきたんで。それで勘弁して。
寝起きの気分が最悪だったことは、この世界に来て何度目だったろうか。
「────気持ち、悪ぃ」
嫌悪と恐怖を口にして。
ナツキ・スバルはゆっくりと体を起こして起床した。
「左手…………頭は…………当然、あるか……」
何かを掴もうと、左手が一人でに動いていた。失ったのは一瞬だったが、それでも四肢の喪失というものはスバルに耐え難い違和感と喪失感を与えていた。
そのまま全身を確認し、脇腹に内臓が破れた跡もなく、犬歯の痕もないことを確認。……そして。体の傷がない、ということは。
……やはりスバルはまた、戻ってきたのだ。
「──気持ち悪い」
再び、嫌悪を口にする。
それは、気分ともう一つ。死に戻りする前の、まるで自分でないスバル自身の行動と、その感情に対しての言葉だった。
目眩がしそうだ。あれが自分だなんて、到底スバルには信じられない。実際に体験しても、その状態を思い出しても。未だそれを信じることが、スバル自身にもできない。
「───あれは、誰だ?」
そして浮かんだ疑問は、死ぬ間際に見た絶世の少女のこと。
屋敷の誰とも違う容姿を持った、謎の少女。スバルが死ぬ間際に見た、あの幼さの残る美女のことだった。
何故、屋敷の人間でない人物があの場にいたのだろうか。
一瞬、風呂上がりのエミリアがあまりにも妖艶すぎた……という仮説がスバルの中で浮かび上がる。
が、そんな希望的観測はすぐに捨てるべきだと悟る。
目の色は紫で無く蒼く、髪の色も、銀髪とは少し違っていたし。なにより、エミリアにしてみれば身長が低かった。
そして、いくらスバルがエミリアに惚れていたとしても。
「いくらなんでもありゃあ、ねぇ……よな?」
あの感情は、異常が過ぎた。あんな欲望まみれの、汚濁しきったどす黒いもの。どれほどの美人を見たとしても。あれほどの感情を抱くだなんてことはあり得ないだろう。
少なくとも。スバルは自分の胸の内に、あんなものを飼っているだなんてことは想像したくない。
と、すれば。あり得る可能性は。
「…………あの女が襲撃犯……ってことか」
突然襲ってきた体の不調も、その後抱いた感情やらの何かもが、あの少女が仕組んだこと。あの女こそが、スバルをあの状態に追いやって、鎖によって無残に殺した犯人で黒幕。恐らく、一周目でも。
部外者が屋敷に、それもあんな夜中に入り込んでいたというならば、それはほぼ間違いない……と思う。
しかし。それはそれで、浮かび上がってくる疑問がある。
「───なんで。最後、あんな必死に」
死の間際。必死に自分の元へ駆けてくる彼女の姿が。脳内に描いていた冷酷な襲撃犯のイメージとはどうしても結び付けられない。
いや。それはきっと、スバルの見せた幻覚だ。あの時は死にかけで、意識もはっきりしていなかった。スバルを口封じのため、急いで殺そうとした姿がたまたまそう見えたのかもしれない。
あんな容姿だ。たとえ駆け寄ってきていても、単純なスバルの脳内で美化されることはまず間違いない。
なんにせよ、今は現状を顧みなくてはならない。
差し当たって。
「お客様、先程から独り言が多いですね」
「お客様、さっきからぶつぶつうるさいわね」
「お客様、さっきから顔がうるさい」
「おい最後!普通に悪口だよな!?何の変哲もない悪口だよね!?」
いい加減慣れてきたツッコミをかまし、三人のメイドに向かい合う。二周目で、果たして生き残れたのかわからない彼、彼女達は、どうやら全く変わりがないようだ。毒舌のキレくらい落としてくれていてもいいのだが。
それぞれ、姿形が全く変わらないメイド姉妹+弟。瓜二つならぬ三つの姿を並べているのが、今のスバルにとっては日常の象徴のようで少しだけ落ち着く。
「………何にせよ!ナツキ・スバル!今日も無事に起床しました!」
「部屋が暑くなった気がします」
「部屋がむさ苦しくなった気がするわ」
「二度と目覚めなくて結構ですよ」
姉二人の遠回しな不快発言をなんの躊躇もなくダイレクトにぶつけてくる弟。触れぬが幸と華麗なスルーを決め込み、スバルは念のために三人へと尋ねる。
「ところで、今って何時ぐらい?」
三回目のロズワール邸の初日が、始まる──
さて。ゲロ吐いてボロ泣きして興奮してたら殴り殺されたスバルだったが。
特に今の状況が前々回、前回と変わりがないことを確認したスバルは毎度同じようにエミリア、リルと庭で少しの時間を過ごして、メイド三人のステレオボイスでロズワールの食事会に招待された。
スバルは、テーブルにつきながら頭を抱えることになる。
「むむむむ………」
「スバル、何を悩んでるの?もしかして頭キーンってしちゃうの?」
「いや、体調のほうは万全なんだけどな。てかキーンって。可愛いかよ」
こちらを覗き込んで心配してくれるエミリアに、少しだけ距離を置きながら否定。綺麗な顔が間近にあると心臓に悪い。咄嗟に顔を背けて、なんとか顔が赤くなるのを隠す。
──そう。これが平常な反応だ。元の世界で将来的に魔法使い化の線が濃厚だったスバルは、美少女とは顔を合わせるだけで照れてまともに話せない。まして、全く関わりがない女性に遠目から見かけただけで声をかけるだなんて度胸があるはずもない。
やはりあの状態は、何かしらの異常が働いていたと見て間違いない。スバルがどれほど美しい人を見たとしても、あんな感情が湧き上がるだなんてことはおかしいし、あんな行動を取ろうとすることも異常でしかなかった。
つまり。あの女は敵。恐らくこのロズワール邸を何かしらの理由で襲撃する、悪役だ。
謎は残るものの脳死気味にそう結論づけて、再び悩む。
スバルは正直なところ、今回はこの屋敷の食客として数日を過ごすことで情報を収集して適当なところで屋敷を離れて遠くから監視し、襲撃者の正体を突き止めるつもりだった。
だが、今その襲撃者の正体がわかった以上。そうするメリットはあまりないように思える。
前回の死因は、恐らく肉体の衰弱。あの奇妙な感覚に寝ていて気がつかなかったスバルは、そのまま命を落としてしまったのだ。
そして今回は、襲撃者による攻撃。
肉体の衰弱という確実な方法はスバルが部屋を出るというイレギュラーな行動をすることで知られてしまい、確実に殺すためにスバルに襲いかかった。
武器は鎖。もしくは、それに付随する何かしらの武器。それ以上のものがあるのかもしれないが、決して強そうには見えない。
そう考えると、自ずと解決策は見えてくる。
前回やり損ねたことを、今回やる。それも確実な方法で。それだけで、恐らく全てのカタはつく。
「金銀財宝、それとも何にも勝る名誉かな?褒美は望むがまま!さぁ、なぁんでも望みを言ってみたまぁえよ!」
大仰に叫ぶロズワール。前回も、そして前々回も見た光景だ。そして、三回目になるその光景に対してスバルは、三度目の要求を突きつける。
今回で、このおぞましいループを終わらせるために。
「そんじゃ、俺をこの屋敷で雇ってくれ!んで、常識がねぇからリルを俺の専属教育係につけてくれたら言うことなし!よろしくっ!」
大きく手を上げ、ロズワール後ろの紫髪のメイドを指名する。
当の本人は意外にも表情を顔に出し、即座に面倒そうな顔をしてロズワールを見る。
その視界の端で。二人の姉妹メイドが揺れ動いたのを、スバルは全く別のものが要因であると勘違いしたまま。
物語は、全く別の方向へと進もうとしていた。
スバルをあの状態に追いやった犯人(あながち間違ってない)
下姉様イライラカウンター
スバルが起きてリルの魔女の臭いが濃くなる 2京
リルを盗る 4京
ついでにあとがきに移した大罪司教とかとの相性一覧表
大罪司教
ペテルギウス・ロマネコンティ
言うまでもない。お互いに確執があるので相性最悪。
レグルス・コルニアス
リルは好きではない。レグルスは顔がいいので好き。特にお互いに思うところはない。
ライ・バテンカイトス
リルとしては将来的に下姉様がいただかれる相手なので複雑な気持ち。『暴食』としては芳醇な記憶を持つ相手。ただし……
カペラ・エメラダ・ルグニカ
相性最悪。カペラの『変貌』で現れる相手によっては、延々とリルがカペラを殺すことになる。カペラにとってリルは、好みの容姿をすればするほど自分を殺しにかかる珍しい相手。
シリウス・ロマネコンティ
シリウスには思うところはない。リルは、『劇場型悪意』に使い道を見出している。
大罪魔女
セクメト
相性は悪くない。といっても、お互いがお互いに無干渉であるので、何も発生しないというだけ。
ミネルヴァ
ミネルヴァにとって相性が悪い。腹黒のリルにはぶっちゃけいい駒なので、徹底的に利用する。
エキドナ
リルにとって相性最悪。愉悦で動くリルにとって知識欲で動くエキドナは天敵もいいところなので、死ぬほど警戒している。エキドナはリルにかなり興味があるが、話を訊く機会が未来永劫訪れない。
カーミラ
リルにとって相性が悪い。そもそも『無貌の花嫁』で見せられる幻の存在は『相手が見たいと思っているもの』なので、その幻を『見たいと思っていること』すら認めたくないリルは存在そのものが苦手。
ダフネ
相性がいい。ダフネの価値観はリルにとって理解できないものでもないので、思いの外意気投合できる。ダフネにとっては美味しそうな匂いがする非常食。
テュフォン
リルにとっては相性が悪い。理由は伏せる。テュフォン側はリルの呼び方に困るくらい。
パンドラ
はい。