目が覚めたら難易度ナイトメアの世界です   作:寝る練る錬るね

45 / 99
久しぶりに題名でふざけられて作者は嬉しいよ。

感想、評価、誤字報告等ありがとうございます。全部目を通してるから、ドシドシ送ってくれよな!

戦利品の確認。リル視点。やっぱりこっちのが多少なりクオリティは下がるけど書きやすい。




おかわりいただけただろうか。もう一度ご飯いただこう。

 

 

 

 ───目が覚めると、そこには見知った口径が広がっていた。

 

 違う。光景だ。寝起きに銃口を突きつけられているわけではない。

 

「………五周目。………あった、のか」

 

 そう呟くのは、たった今目を開いた黒髪の少年。目つきが悪く、今にも何か悪さをしそうだ。そんな彼に驚かされたのは、ほんのついさっきで、もう戻らない未来の話だ。

 

 どうも。スバル君と思った?僕だよ。

 

 ぶっちゃけ予想だにしない展開すぎて、僕が死んだまま進んでいくんじゃないかなとかなり焦りまくってました。

 

 僕だ。

 

 ………いや。あんなところで下姉様正気に戻すとか、普通思わんやん。どうせ下姉様に絶望のままキルられて終わるんだろうなぁとか達観してたんやけど?

 

 ギルティラウさんがいなかったらほんとどうなってたことか……ありがとう。あの後下姉様に殺されたと思うけど、成仏してクレメンス。

 

 ベッドから起き上がって周囲を確認し、寄り添う僕らの姿を認めたスバル君は、感慨深そうに目を細めて、シーツへ顔を埋める。

 

「どうかされましたか、お客様。どこかお体が優れないのですか?」

「どうしたの、お客様。もしかして、お腹が痛くて漏らしちゃった?」

「どうしたんですか、お客様。頭を八つに割られてから脳漿を潰されて、目玉に針が突き刺さって耳の中を思い切りかき回されてしまいましたか?」

 

「頭押さえてんのに漏らした心配する姉様も姉様だけど、お前もそんなエグい表現しないでくれる?そこまで悲惨な死に方したくないから」

 

 だが、言葉とは裏腹に日常らしいやり取りに安心したのだろう。潤んだ目をシーツから離して、安堵のため息をついたスバル君。

 

「がばり」

 

 そしてこれと言った予備動作もなしに、近くにいた僕たち三人を思い切り抱きしめた。

 

 うーん、姉様に抱きつくとは重罪。スバル君じゃなきゃ殺してたな。……右腕に触れてないから、下姉様も困惑の方が大きいっぽい。幸運な奴め。

 

「………よかった………ちゃんと、うまくいったんだな……」

 

 感動してまた少し泣きながら、震えた声でそんなことをいうスバル君。僕としては慰めてあげたくなるが、ここはそういう場面ではない。ついでに姉様達も反応は淡白だ。

 

 自分の後ろに回されている手をそこそこ強く弾き、スバル君の拘束を脱出。そしてお互いにくっついて、光の速さで後退りした。

 

「いいえ、お客様。レム達への陵辱以外の何もうまくいっていません」

「いいえ、お客様。ラム達への精神的苦痛以外何もうまくいっていないわ」

「いいえ、お客様。そもそも生まれてきたこと自体がうまくいっていないです」

 

「遠回しに俺の存在をディスってね?イケメンな自覚はねぇが、目つき以外そこまで崩れた体してるつもりもねぇよ」

 

 ドン引きの両姉様に、困った風に笑うスバル君。わぁ、ここまでされて笑ってられるとかドMっぽい。実際やってることゾンビ戦法だもんな。

 

「………これだけ言わせてくれ。俺は、お前らのこと信じてる。だから、仲良くやろうぜ」

 

 ………突然口説いてくるんだもんなぁ。

 

 とりあえず両姉様と目を合わせて、キョトンとした顔を浮かべておく。うん。これが正解っぽい。

 

「姉様、姉様。お客様、とっても親身で面倒くさいです」

「レム、レム、お客様、とっても馴れ馴れしくてウザいわ」

「……………………」

 

「いつもの暴言は!?え?もしかして本気で照れてる!?」

 

 うるせぇ、黙ってろ。推しに邪気のない顔で本心から信じるとか言われたらこっちとしては無言貫き通すしかねぇんだよ。特に今、感極まってるから!他のファンが黙っていませんよ!!

 

 僕の態度を見て、若干スバル君を強く睨む姉様方。なんかこれ難易度上げた気がするな。急にそんなこと言い出すスバル君が悪い。

 

 そんな風に色んな意味で団欒を楽しんでいると、無言で色んな感情が混じり合う部屋の空気を入れ換える人物が来たる。

 

「もう少し静かに起きられなかったの?元気なのはいいことだけど、病み上がりなんだから無茶しちゃダメよ?」

 

「心配しなくても、エミリアたんが俺の一番星さ!ついでに二番星はリルな!頼れる的な意味で!」

 

「ごめん、なんの話!?」

 

 もう。またそうやって口説く。今、なんか気分が高揚してるからそういうのやめてほしい。そういうのでも、ちょっと嬉しくなっちゃうから。

 

「………お客様、バカ」

 

「なんかお前ヒロイン力上がってねぇ!?」

 

 黙れ黙れ。

 

 ……ちょっと僕の口元を緩めたくらいで、慢心しないでほしい。

 

「ま、なんにせよ。おはよう、エミリア」

 

「うん、おはよう。スバル」

 

「よっしゃ。それじゃ、始めるとしますか!……ロズワール邸一週間、攻略スタートってことで」

 

 ──はぁ。これ、完全に立ち直ってるよなぁ。もうめちゃくちゃだよ。元からだった気がするけど。

 

 しーらね。

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 エミリア様とスバルが庭に消えていくのを見守ってすぐ。特にやることもなく廊下を、下姉様と共に歩いていた。

 

 コツ、コツと。絨毯によって響くはずのない足音が、明確に耳へと聞こえる。

 

 

 ───あーあ。それにしても。

 

 

 まさか、あそこから下姉様を正気に戻()()()なんて思わなかったな。

 

 流石の主人公力……というより、これはスバル君の人格が為せる業だろう。

 

 どちらにせよ、驚きというしかない。完全に想定外。あの状態になった下姉様を、スバル君の立場で説得するのは僕でも多分無理だ。

 

 ── 一体、どんな手を使ったんだろう。

 

 

 逆に言えば、スバル君は僕に出来ないことをやってのけたと言うことで。

 

 

「………どうかしましたか、リル?」

 

「………ううん。何でもないよ、下姉様。少し、庭に出向いてくるね」

 

 姉様から離れて、別の廊下へと歩いていく。

 

 そうして暫く歩いて。

 

 一人になったのを、確認した途端。

 

 

 ───あぁ。ほんと、飽きないなぁ。スバル君。

 

 堪えていた口角が自然に上がっていくのを、歩きながら自覚した。

 

 

 僕が死んだことで見せてくれた、あの絶望の表情。顔すら向けられない、悲しむことすら許されないといった、罪悪感に塗れたあの汚濁のように濁った目もそう。

 

 あれこそが僕の望んでいたもので、ずっと欲しかったもの。王都で見せてくれた時と同じ、あるいはそれ以上に、屋敷の日常が育んだ、濃厚で重厚な味わい。

 

 でも。それと同じくらいに。

 

 胸中に渦巻く、別の歓喜。

 

 予想通りにならない。予定調和が崩れる。全くの予想外のことが起こる。全ての構想が、パースが狂って、整然としたキャンパスが、バケツいっぱいのごちゃごちゃに混ぜ込んだ絵の具を浴びせかけられたかのように、不協和音を響かせていく。

 

 それほどまでに腹立たしいことはないというのに。それほどまでに疲れることはないというのに。

 

 その事実が、自分の夢が叶ったように嬉しい。

 

 体が高揚して、身体が火照って。感情が爆発して、感傷に浸っていた気持ちがどんどんと蕩ける。口元が自然と緩んで、籠る熱気が抑えきれない。

 

 そうだ。そうでなくては。そう来なくては。

 

 僕が好きなスバル君は、僕の大好きなスバル君は。

 

 弱くて腐って生意気で身の程知らずで調子乗りで愚かでクズ野郎で無能で粋がりでヘタレで傲慢だけど。

 

 それでも、誰もの予想を超える英雄だ。

 

 次は。次は、次は?

 

 一体、どんな予想外を僕に突きつけてくれるのだろう。

 

 原作通りに行かない?当然だ。そもそも、土台からして原作とはほとんど別物なのだ。このロズワール邸はスバル君がいなくとも歪ながらに完成していて、スバル君はその中で異物でしかない。

 

 それでも。たった四回。原作と同じ、たった四回だけの死で、僕のサポートもあったとはいえ、それでもスバル君は僕の予想を飛び越えて成長している。ロズワール邸の真実に、辿り着こうとしている。

 

 ───僕の予想なら、十二回は死ぬと思ったんだけど。

 

 僕が十年近くかけて作り上げたこのロズワール邸という地雷原を。一体どれほど鮮やかに攻略してくれるのだろう。鮮やかに解体してくれるのだろう。

 

 ほぼ四日の三回。たった一日だけの一回。半月にも満たない限られた月日で。

 

 どれほど、呆気なく。

 

「……………くひっ……」

 

 誰もいなくなった廊下の先で、ひっそりと。

 

 頭のおかしい狂人の。倫理という言葉をどこかに置いてきてしまった魔人の鬼の。

 

「くくっ……くひひっ………く、ひひひっ」

 

 頭のおかしな笑い声が、嬉しそうに漏れた。

 

 




実際、十年間積み重なった思いをたった四周の死程度で晴らしちゃうスバル君半端ないよねっていう。

ちなみに、この世界線ではスバル君が正規ルートで胡蝶の夢が実現します。死ぬタイミングをリル君に悟らせず、さも一発でクリアしましたよと言わんばかりに最善の結果を出し続け、『俺、王様になって異世界ハーレムしてぇなぁ(チラッチラッ』とでも言っておけば王様までリル君がのし上げてくれるため、王様になった瞬間リル君にプロポーズしてタイマーストップ。RTAもびっくりな速さです。

ついでに、リル君が言ってる十二回は、プロット時点でスバル君がロズワール邸で死ぬ回数です。まぁそこまでは死なないけど、まだまだ死ぬ可能性はあるから期待しててね。

見て!下姉様イライラカウンターがバカみたいに回り狂っているよ!
かわいいね



みんなが愉悦ばかり求めているので、下姉様イライラカウンターは壊れてしまいました
お前のせいです
あ〜あ



支援絵をご紹介!本当嬉しい!ありがとうございます!

りりさんの描いてくださった屋敷二周目のリル君です。何で恍惚としてるの????可愛いから許す。

ここからは二回以上描いてくださっている方々。ほんと、ありがとうございます……

百虎 byakkoさんの描いてくださったポッキーを咥えるリル君。ポニテは反則だとあれほど。

日々泰樹さんの描いてくださった三話挿絵。「姉様方とのお風呂を書いてたけどなんか違ったから村燃やしといた」という、とんでもない理由で村が燃えております。萌えを燃えに変えるな。

つばきさんの描いてくださった愉悦バージョンリル君。こういう愉悦ならいいぞ!歓迎する!!顔面崩壊しない美少女愉悦じゃぁ!!


支援絵、たくさんありがとうございます!
………なのですが、一つお願いを。Twitterの方で支援絵をあげてくださる方がいらっしゃれば、DMで送っていただくか、@で作者を呼び出すか、作者にタグ付けをしていたていただけると大変助かります!単純にね、折角描いてくださったのに作者が見つけられないのが嫌なんだ。

支援絵、どこかにまとめておきたい……とりあえず、時間を見つけてあらすじの方に移動させていただきますね!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。