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ああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!11ェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!!
もういやだ
「俺をこの屋敷で雇ってくれ!」
五周目となり、定例となったロズワール邸の全員が集まる朝食の場で、意気揚々とスバルはそう口にした。
概ね、スバルがロズワール邸で乗り越えなければならない関門は二つだ。
一つは、四日目の夜に屋敷を襲撃する呪術師の撃破。正体すら掴めていないが、スバルだけでなくリルも死亡したことから、おそらくはロズワール邸の住人なら誰でもいい無差別犯。そして、エミリアの対立候補か何かからの刺客。
王選、などという大層な名乗りを上げている以上、屋敷が狙われる理由は、スバルにはそれくらいしか思いつかない。ロズワールのことだから、他人から恨みを買っている線も捨て切れないが。どちらにせよ、スバルたちの命が危ないことは変わりない。
二つ目は、屋敷に住むメイド三人から……ひいては、ロズワールから信頼を得ること。メイド姉妹に至っては、不興を買わないことと言ってもいい。
彼女らと彼のお眼鏡に適わない場合、スバルの命は口封じの名目で消されてしまう可能性が非常に高い。恐らくは、三人のうちで最も苛立ちやすいレムに。怪しい行動は即ゲームオーバー。それに加えて……
「スバル、そんなにじゃんじゃかばんばん壺壊されてもたまんない。家事全般向いてないからやらない方がいいと思う」
「おいおい、そんな寂しいこと言わないでくれよ!ここで俺の秘められた才能を開花させて、ギャフンと言わせてやるんだからねっ!」
「そう?ちなみに、今日スバルが出した損害の合計金額なんだけどね?」
「ぎゃふん!」
大仰に床に転び、大袈裟なリアクションをとる。
三周目。犬死ににも程がある三周目の死因は、恐らくそれだ。聞こえた鎖の音。その時の行動。それらを兼ね合わせれば、自然と答えは見えてくる。
三人のうち、紫のメイド。姉妹に溺愛され、姉妹に耽溺する弟。………弟という逆鱗。
今目の前で不満げに嘆息する、彼を刺激すること。それには恐らく、今尚スバルを監視しているメイドによる即死攻撃が待ち構えている。
思い返してみると、一周目、二周目で何度かスバルがリルに絡んだ時、空気が鉛のように重くなったことがあった。大体はリルがフォローを入れ、空気が戻るといったパターンだったのだが。
あの時の愚鈍なスバルは何が起こっているのかさっぱりだったが、あれは恐らく、二人の姉妹の中で激情が渦巻き、スバルを殺すか殺さないかで葛藤していたのだろう。
つまり、リルの何かに触れて二人の堪忍袋の緒を切った瞬間、スバルの死は確定事項となる。リルが止めてくれなければ、あの時点でスバルは死んでいた。それによって、もっと大量の回数の死を経験していたことは想像に難くない。
今のところわかっているのは、陰魔法で偽装しているという義手の右手。二周目で起きた時の殺気から、触れること。そして、それによって発生しているリルの不自由について触れるのもNG。
たかが料理ができないくらいで何を、と一周目では思っていたが、片手がないとなれば話は別だ。今思えばあのデリカシーの欠片もないセリフは、たしかに双子姉妹を怒らせるには十分だったのだろう。
他には、髪を染めて目を隠し、偽装しているという容姿。意図的に顔を見ようとする行為すらタブーであることは、三周目で理解できている。理由は……あまりにも美しすぎる容姿に、見た者が平静を失うから……なのだろうか。二周目と三周目の最期を思えば、それも納得できるが。
なんにせよ、スバルが今回尽くすべき最善は、いつかのリルの忠告通り、リルに深く関わりすぎないこと。
避ければ待っているのは死だろうが、深く関わればそれも死に直結する。四周目ほど深い関係ともなれば話は別だが、そうなれば今度はリルが死んでしまう。それはスバルの死よりも、なによりも避けられねばならない。
最善は。
そう。
リルを、やんわりと遠ざけることなのに。
頭では、そう理解できているのに。
「…………スバル、いい加減袖離してくれない?そんな子供みたいに震えられても、リルは困っちゃうんだけど」
「………え?あ、悪ぃ!無意識だったわ!いやぁ、意外と家族とかが恋しいところがあったのかな俺ってば!」
「それで歳下のリルの袖を引く?とんだ甘ちゃんだね笑ってあげるハッ」
「一息に罵倒を!?」
自身の迂闊な行動を軽口で誤魔化し、内心ではダラダラと冷や汗をかく。まるで疑いを晴らすために日常生活を監視されている容疑者気分だ。落ちれば待っているのは死のみ。恐怖は、じっくりとスバルの体を蝕み。それがまた、目の前のメイドへ安堵を求める心に繋がっていく。
そう。スバルはこの期に及んで。
未だ、メイド離れができていなかった。
ダメダメで弱々なスバル君。うーん。これもまた乙というもの。
どうも。侘び寂びを感じさせますね。そろそろ潮時でしょうか。僕です。
…………推し、やっぱり解釈一致だわ。
僕だ。
いやぁ。なんか四周目で甘やかしすぎたからか。怖くなったらすぐに僕に頼る癖がついちゃったみたいだ。子育てって大変だなぁ…最終的にそうし続けたら僕の死に繋がると思ってるからなのか、すごく申し訳なさそうな顔するのが凄く………ぐへへ。
おっと。顔が緩みかけた。いけないいけない。今は人がいるんだから。
にしても、握ろうとするのが大抵左手だからいいけど、右手だったら死んでるよスバル君。僕に接近するのが、そもそも下姉様のイライラに繋がるわけだし。恐怖が僕を求めさせて、そのせいで姉様がイライラして、スバル君が恐怖する。わぁ、なぁにこの負のスパイラル。
「ふぅむ。ラムに続き、リルが言葉を詰まらせるなんて珍しぃねーぇ」
詰まらせてたわけじゃないんだよなぁ……考え事はしてたけど。
状況を説明すると、今は一日目の夜。姉妹二人から警戒されないためにやたらと明るい道化を演じているスバル君について、ロズワールに上姉様と一緒に報告しているところだ。上姉様は迷いながらもスバルのチグハグさ加減を指摘し、次は僕となっていたところで、ぶっちゃけロズワールの話が集会の校長ばりに面倒だったので聞き流していた。
……スバル君を殺す理由もないし、そもそもこれ以上精神が保つかもわかんないから、まぁ庇っとこうか。
「申し訳ありません。……スバルは、リルの前ではそう言った動向は見せていないもので。ただ、たまに恐ろしく怯えた目でこちらを窺って来るものですから。………下姉様の殺気に気づいているからの行動なのやもしれません」
「……なぁるほど。確かに、レムの行動は少々目につく。それがスーバル君の挙動不審に繋がっていると。そういうわけかぁーな」
「根拠は少ないですが、その線が強いかと。間者の可能性は否定できませんが、それにしては肝が据わらなさすぎるように思えます」
ロズワールとしても、スバル君を殺すことでエミリア様との仲が悪化することは避けたいだろう。こう言っておけば、スバル君を速攻始末という結論には至らない。
深刻にものを考えていないような表情ながら、迷うような声を漏らしてロズワールは月を見上げる。
「何にせよ、初日じゃまだ仕方ない。彼にはエミリア様を救ってもらった恩義がある。──もうしばらく、ゆぅっくりと経過を見させてもらおうじゃぁないかね」
言外に、経過を見て怪しければ……という意図を含ませてロズワールが呟く。僕やロズワールの前では素直な上姉様は、露骨に嫌そうな顔をした。情の深い姉様は、そんな残忍な殺生を望まない。一線を越えれば容赦こそしないが、優しいという言葉に違わない性格だ。
「それはそれとして。………君が他人を庇うなんて。珍しいじゃないか、リル。一体、どんな心境の変化なのかな」
………ほら。こういうところで僕に首輪をつけようとしてくるから、ロズワールは苦手なんだよ。確かに、両姉様に比べればロズワールに対する忠誠心薄いけどさ。姉様って手綱を握って満足しないその慎重さというのだろうか。それが、これ以上なく憂鬱だ。
どう答えるのが円いかな。うーん………ロズワールが好きそうな答えで誤魔化しとこ。生憎と
「スバルが間者ではないというのは……単純に勘、です」
一瞬、面食らったような表情をしたロズワール。そしてその答えの意味を理解したのか、それこそ珍しいものでも見たかのように破顔して吹き出す。
「ぷっ……勘、かい?」
「理屈を積み重ねて、今のところ最も有力なのは」
「ははは、そうかい。君がそういうのなら、私は君を信じよう。スバル君はエミリア様の次に君に心を砕いているようだぁーしね。……リル。もしもの時は……」
「ロズワール様…!お言葉ですが、それはあまりにも……」
「上姉様。………謹んで拝命致します。もしもの時は、一切の躊躇なく、痕跡なく。屋敷から
汚れ仕事、暗殺。それらの婉曲表現。いつものことだ。上姉様を窘めて、それだけ言っていればいい。実行することも、もう何も感じなくなっている。
「結構。くれぐれも、不覚はとらないようにねーぇ」
ロズワールが結構、と言うのは、僕に出て行けという合図だ。この後姉様とお楽しみですもんね!!色んな意味で僕も楽しまれてる気がしてならねぇよ畜生!!
手を後ろにして一礼し、音を立てないよう、ゆっくりと。慎重に扉を開けて廊下に出る。
…………さぁて。
「どこまで聞いてたのかな、スバル君ってば」
木製の扉の外側に触れ、温もりと熱い液体が感じられる手のひらを舐めた。絨毯も少しだけ湿っていて、何かの液体が一滴零れているであろうことがわかる。犯人は少し前に、走り去っていってしまったらしい。
気がついたのは途中だったが。扉が半開きになって、中の声が漏れていたのだ。……僕が気を逸らして陰魔法で認識阻害しなかったら死んでたよ、スバル君。盗み聞きとはまた趣味が悪い。
とりあえず追いかけよう。
あの会話を聞いて、どんな泣き顔を見せてくれるんだろ、スバル君。
着替えるのも面倒で、屋敷の廊下へと慎重に、一歩を踏み出し………
て。
…………世界が止まったのを、知覚した。
踏み出しそうとした足も。周囲の音も。何もかもが自分という存在から切り離され、ほんの刹那の一瞬が、無限の瞬間へと引き伸ばされた。残ったのは、自分の意識だけ。
なぜか残った。僕の、意識。
────Why????????
これであらすじ詐欺にならずに済むぞ!最後の一文までちゃんと伏線だからね!
支援絵の方ですが、読者の方のアドバイスもあり、活動報告の方にまとめさせていただくことになりました。ちょっと移行に時間がかかってしまいますが、次話を上げるまでには。
朱雀紅華さんからいただきました!三話の花冠リル君です!
この後、歳上のお姉さんに誘われて身も心もお姉さん一色に染められちゃうんだよね……可愛い!!清楚!!これは悪いことなんて絶対企んでない裏表のない子ですね!
nonoji さんからいただきました!最可愛強キャラリル君です。
【挿絵表示】
強い(確信)勝てる気がしない。絶対物語後半とかで味方キャラを散々殺し回るやつだ……そして人気投票上位に食い込んでくるやつだ……
向日葵さんからいただきました。ロングの勝ち組ヒロイン感あふれるリル君です。
【挿絵表示】
……………クオリティ、高すぎない?
しかもイケメンさが残りまくってる。こんなんに助けられたら惚れるが?体格がしっかり男の子なの表現できるのも凄い……強強です。