くぎゅぅぅぅぅっ!!!
まさかのパンドラ様のCVが釘宮様っ!!
神っ!!説明不要っ!!
ところで、推しが履いてないって、マ?
前回のあらすじ!
リル君がティフィちゃんとソアラ君達を皆殺しにすることが判明!きゃー!どうなっちゃうの〜!?
今回もあんまり話が進まないので、明日も更新していこうかなと思います。作者の都合で悪いね。導入と思ってください……
命は金で買えない。
命は価値では贖えない。
体は、金に変えられる。
それは、僕らの脱走紛いの夢語り事件から、僅か数日後のことだった。
ティフィ達を守りたいなどとうっかり漏らしたが故に、エルザに扱かれることが確定した僕はそれはまぁ酷い目に遭った。具体的に表現すれば、傍で見ていたソアラ達がドン引きするレベルで。
修行内容はエルザとの軽い組み手のようなものだったが、これが酷い。指を喉に突っ込まれること十数回。地面に組み伏せられること50回以上。指で腹をなぞられること100回以上。かかっては打ち倒され、かかっては打ち倒され。その度に酷い目に遭うのだからやってられん。自分の無力さを見せつけられた気分だ。
お陰で、僕の体は全身打撲痕だらけ。……というわけでもなく、なぜか体は傷跡ひとつすらない綺麗なままだった。確かに強く体を打ち付けたので、そこそこの痣くらいはできてもいいものだと思うのだが。うぅむ、謎である。カペラが何かしているのだろうか。
「あはは〜リル、ボコボコ〜」
「余計なお世話だよ……ティフィがけしかけたくせに……」
「あん?なんだ、ティフィがこんなことやらせたのか?エルザ姉に突然稽古つけてくれなんて言い出すから何かと思ったが、なんでまた」
「ソアラには秘密〜」
「なんだそりゃ。ま、いいけどな」
木刀片手に、ソアラは勝気に微笑んでみせる。
もう一つ、僕がゲンナリした理由。それは、ソアラにガチモンの剣才が宿っているからだ。
………嘘である。ソアラの腕前は、『歳にしては腕が立つ』くらいに過ぎない。問題は、その相手をしてもらった僕の方。
「リル。ハッキリ言うけれど、剣を扱うのはやめておきなさい。あなたという死人が出るわ」
「呪いの踊りを見てる気分だった〜」
「控えめに言って雑魚。酷く言ったら……ホントお前、なんなんだろうな……」
「うるさい!うるさいよ!」
剣才/Zero。いや、どころかマイナスとでも言うべきか。僕の剣の才能というものは、どうにもその程度らしかった。なんとなんと初見のエルザからの太鼓判だ。どれだけ鍛えようと、そもそも鍛える時点での面倒を見られる気がしないとまで言われた。
でもしょうがないじゃん。重いし、長いし。どう振ればいいとかさっぱりすぎる。前世での体育か何かで剣道をやっていた時も、確か『突然下半身を得たてけてけ』とか『Lv100-コイキング』とか散々なあだ名をつけられた記憶がある。舐めてるのか。
「棒ですら長くなったらダメとか、お前もう向いてないよ」
「知ってるよ!!」
そんなに何回も言わなくていいじゃんか。スバル君じゃないけど少なからず加護とかに期待してたんだよ。実感ないからその線は薄かったけど。
なんにせよ。剣が使えない、というのはエルザ先生の太鼓判だ。じゃけん、騎士の夢は諦めましょうね〜
「ね〜?」
「大丈夫〜。こんなでも、使えるまで慣れればいいだけだし〜」
「鬼かな?」
しかもこんなて。酷い言い草だ。誰に似たのだか、カペラだな(即答)
てか、さっき師匠候補から匙投げられたとこなんだけど。才能の無さに思わず太鼓判押されたんだぜ?
「きゃはは!アタクシのきゃわいいきゃわいい子供達!今日も今日とて、てめーらの美しいママが帰りやがりましたよーっと!」
うげっ。そしてめんどくさいのが来たよ………カペラママだ。いつもの調子でご機嫌そうな。はぁ、めんどくさ。
「おかえり、ママ!」
「ママ、おかえり〜」
「おかえりなさい、母さん」
ソアラとティフィに合わせて挨拶する。日課なので笑顔のガワもサラッと出てきた。………相変わらずエルザは喋らんな。カペラがいる間は空気だし……ん?てか、地味に僕カペラとエルザが話してるの見たことなくね?
「んー、顔のいいガキに迎えられるってやっぱりサイコーの気分でやがりますねぇ……んで、てめーらは棒切れ持って何やってやがるんですかぁ?」
「そうそう!聞いてよママ!エルザ姉と一緒に剣の練習してたんだけど!リルのやつが参加したいっていうから仕方なく入れたら、これが酷くてさぁ」
「へぇ………剣、ねぇ」
チラリ、と。鋼を片手に、カペラの赤眼が尻餅をついたままの僕を射抜く。何もかも見透かされるような目に、思わず僕は目を逸らした。
瞬間。
僕の視界は、カペラで一杯になった。
何故であろう。カペラが、僕の顔を掴んで無理やり自分の方を向かせたからだ。気味が悪いほど美しい白磁の肌と、燃える炎のような紅の瞳を、僕の水色と桃色の眼が捉える。
「か、母さん……?痛い、よ?」
「………………なるほど、なるほどなるほど」
懇願の声は、カペラには聞こえていないらしい。その真紅が一体何を宿しているのか。どのような感情を写しているのか。わからないまま、そうやって見つめ合う時間が続く。
視界の端でソアラ達が動いたような気がしたが、一瞬すぎてそれもわからない。僕の視線という視線は、全てがカペラに集められていた。
見つめられるだけなら、それでよかった。ただ訪れた変化は、緊張とは全く別の何かだった。
──あ、れ?
頭がぼうっとする。視界に靄がかかる。
思考が維持しきれない。何か、大切な何かが、溶け出ていくような感覚。
ずっと勉強した後のような、ぼんやりとした意識の中。何か、何かが告げられて。
「────」
そして。
──パン、と。手を打つような音が響いた。
「……あえ?」
「おいリル、大丈夫か?」
「リル、ぼうっとしてる〜。ママに見惚れちゃった〜?」
周囲から、ソアラ達が心配そうに覗き込んでくる。僕はただ、それを地面から見上げていた。天井、ソアラ、ティフィ、母さん。
何かをされたような。何かをしていたような気がする。ほんの少し、記憶に違和感がある。
「………今、リルは何してたっけ?」
「何言ってんだ?ママに傷の治療してもらってたんだろ?本格的に頭でも打ったか?」
「ママの力はすご〜い」
ソアラが呆れたように、ティフィがのんびりとそう溢す。二人の言葉に、カペラは気分を良くしたように笑った。
「きゃはは!まぁ、顔に傷ってのはいただけませんからねぇ!アタクシの子供なら、せめて見れるような顔をしといてくださいよ」
「あ、はい。気をつけます」
いつものように下品に笑う母さん。ソアラも、ティフィも、いつも通りだ。エルザも喋らないが、それもいつも通りではある。
何か。何かが、おかしい気がしたのだが。
気のせい、だったろうか。
「───きゃはは」
その日はなんだか体が変な気がしたから、早めに眠ることにした。
そういえば、と。違和感に気がつくのは、眠りにつく直前。
──体に傷なんて、あったっけ。
いつもは浅いはずの睡眠は、その日に限って妙に深かった。
寝起きに突然視界が晴れるというのは、珍しい体験だと思う。
目が覚めた時というのは、大抵が薄ぼんやりとした意識の中で、そこから徐々に現実を認識していく、というのが、一連の流れだからだ。
「…………あ、れ……?」
だからこそ。一瞬で目の前の現実を認識するという状態に、僕は明らかな異常を感じていた。
ふと、自分を見下ろす。それは、まるで膝から崩れ落ちた後のような姿勢だった。おかしい。僕の記憶では、いつものように、ティフィやソアラ達と一緒に眠ったはずなのに。
そして、周囲を見渡しても二人は見当たらないし、そもそも場所が違う。
そこは、どこまでものっぺりとした印象を受ける石造りの部屋だった。頑丈そう、という印象は受けるが、あくまでそれだけ。抱けるいい印象は、本当にそれだけだった。
息苦しい。規則的すぎて気持ちが悪い。見えにくい。悪口をあげるなら一時間ほどは語れそうな悪趣味な部屋は、嫌が応にも僕を鬱屈とした気分にさせる。
「………でも、なんで……」
こんなところに、入ってきた覚えはない。だとしたら、寝ている間に連れ去られたのだろう。けれどそれなら、座り込んでいた意味がわからない。そんな体勢で眠れるほど、僕は器用ではない。
「きゃは、きゃははっ!わけわかんねぇって、単純で凡庸で阿呆で馬鹿な、素っ頓狂な間抜け面してやがりますねぇ?」
ふと、声が響く。この状況下で、おそらく一番聞きたくなかった声が、部屋へと反響していく。
体をほとんど隠さない下着当然の衣装に身を包み、童女のような悪辣さを表情から隠さない、彼女。
「……母、さん」
「そうそう。アタクシは、カペラ・エメラダ・ルグニカ。てめーの偉大なる母にして、愛すべき大罪司教『色欲』でやがりますよ、きゃはは!」
誰よりも、誰よりも残酷な表情を浮かべる彼女。残虐極まりない表情を浮かべて、カペラは。
「さぁ、三年間ずぅぅっと熟らしてきたてめーの、収穫を始めるとしましょうかぁ?」
おかしそうに、おかしそうに、笑っていた。
次回から本気出します。
ちなみに、リル君が剣に関してクソ雑魚なのはどこの世界線でも変わりません。ハッキリ言ってスバル君より弱いよ。