碇シンジはやり直したい   作:ムイト

14 / 64
第13話 ヤシマ作戦開始!

 

 

 

 

 ピッ、ピッ、ピッ、ポーンッ!

 

 

 

『ただ今より、午前0時、丁度を、お知らせします』

 

 

 

「時間です」

 

 マコトが時計を見て予定の時間が来たことをミサトに告げる。

 

「2人共、作戦に参加してくれてありがとう」

 

 ミサトはコックピットに座るシンジとレイに通信を入れ、感謝の言葉を送る。

 

「ヤシマ作戦発動!陽電子砲狙撃準備。第1接続開始」

 

 ミサトの号令と共に、今まで待機中にあった人や物が一斉に動き始める。

 

「了解。各方面の1次及び2次変電所の系統切り替え」

 

 マコトが順を追って作業を進める。それに続き、次々とオペレーターの通信が始まる。

 

『全開閉器を投入。接続開始』

『各発電設備は全力運転を維持。出力限界まであと0.7』

『電力供給システムに問題なし』

『周波数変換容量、6500万kWに増大』

『第1遮断システムは順次作動中』

 

 日本中の発電所や変電所では、職員が計器を睨み作業を進めている。次々に生み出された電力は第3新東京市に集まる準備を始めた。

 

「第1から第803管区まで送電回路開け」

 

 マコトが次の指示を出す。

 

『電圧安定、系統周波数は50Hzを維持』

 

「よろしい。では第2次接続」

 

 ミサトが次のフェーズへの移行を宣言する。

 

『新御殿場変電所、投入開始』

『新裾野変電所、投入を開始』

『電圧変動幅、問題なし』

 

「第2次接続完了!」

 

「第3次接続へかかれ!」

 

 オペレーターの各報告を受けてミサトが指示を続ける。

 

「了解。全電力、二子山増設変電所へ」

 

 マコトがミサトの指示をつなぐ。

 

『全冷却システム、最高出力で運転中』

『超伝導電力貯蔵システム群、充填率78.6%』

『超伝導変圧器を投入。通電を開始』

『インジゲータを確認。異常なし』

『フライホイール回転開始』

『西日本からの周波数変換電力は最大値をキープ』

 

 大量のケーブルでつながれた機材に電力が供給されていく。通っていく電力の量が多すぎてバチバチと音を立てる機材も確認できた。

 

「第3次接続、問題なし」

 

 現状作業は順調であることをマコトが確認する。

 

「了解。では第4、第5要塞へ伝達。予定通り攻撃を開始。観測機は直ちに退避」

 

 ミサトの合図で上空に待機していたP-3Cがその場を離脱し、山の斜面に設置されていたVLSから大量のミサイルが発射される。ミサイルは群れとなって使徒へ一直線に向かっていく。

 

 攻撃範囲内にそれらを捉らえた使徒は、小さなパーツに分離して時計のような陣形を取ると、荷電粒子砲を発射しながらぐるりと回転させて応戦する。

 

「ミサイル群全弾迎撃されました!命中弾なし!」

 

 ミサイルが一瞬にして消え去ったことをマコトが伝える。

 

「悟られるわよ。間髪入れないで、次!」

 

 ミサトは怯まずに次の攻撃を指示する。

 続いて丘の上に設置された旧式の砲台から長距離射撃が実行される。砲弾は使徒の至近距離まで到達するも、ATフィールドによって弾き飛ばされてしまう。そして使徒も砲台のような形に変形すると、強力なエネルギーを一点に集中させて荷電粒子砲を放つ。

 

「第2砲台被弾!80%が使用不能!」

 

 主モニターに映し出された攻撃用マップが次々と塗り替えられていく。被弾した場所は赤く染まる仕組みだ。

 

『第8VLS、蒸発!』

『第4対地システム、攻撃開始します』

『第6VLS、半壊!』

『第5射撃管制装置、システムダウン!』

『続いて第7砲台、攻撃開始』

 

 予想通り通常兵器は使徒に対して全く歯が立たなかった。それでも速射砲やミサイルが展開され、使徒を攻撃している。

 

 だが事前に分かっていることとは言え、NERV職員の焦りは強まっていく。消滅する要塞のスピードが速すぎるのだ。このままでは狙撃前に兵器が尽きてしまう。

 

『陽電子予備加速器蓄電中、プラス1テラ』

『西日本からの周波数変換電力は3万8千をキープせよ』

『許容量を超えて炎上する回路発生!遮断します!』

『電力低下は許容数値内』

『系統保護回路作動中。復帰運転を開始』

『第4次接続、問題なし』

 

 通常攻撃で使徒の目を眩ましている間に、初号機の陽電子砲につながれた充電装置に湯気が立ち込めてくる。また、燃えてしまっている回路の近くは焦げている臭いもする。

 

「最終安全装置解除!」

 

「撃鉄を起こせ!」

 

 マコトの指示でボルトアクション方式のようにヒューズが装填され、うつ伏せの体勢で陽電子砲を構えた初号機の顔の前に照準器が下りる。

 

「射撃用所元、最終入力開始!」

 

 マヤが陽電子砲のステータスを報告する。

 

『地球自転及び重力の誤差修正、プラス0.0009』

『射撃システムは目標を自動追尾中。問題なし』

『陽電子砲、加速磁場安定』

 

「照準器、調整完了しました」

 

 マヤが初号機側の準備が整ったことを伝える。

 

『陽電子加速中、発射点まであと0.2、0.1』

 

「第5次最終接続!」

 

 続いてミサトが次の段階へ進めるように指示を出す。ミサトが乗っている指揮車両の中にある一際大きなモニターには、第1次から最終接続までの状況が映され、今どのくらいの電力がどこまで集まっているのかがわかる。

 

「全エネルギー、超高電圧放電システムへ!」

 

『第1から最終放電プラグ、主電力よし!』

『陽電子加速管、最終補正パスル安定。問題なし』

 

「発射準備よろし!」

 

「カウント開始!」

 

「カウント開始。20、19、18、17・・・・・・」

 

 マコトはミサトの号令でカウントを始めた。

 

 初号機の中にいるシンジもオペレーター達の声を聞きながら、照準器を通して第6の使徒へ意識を集中させていた。

 

(できれば外したくないけど・・・・・・あの時外した原因は僕にはわからない。真ん中を撃ったのに・・・・・・でも今は!)

 

『8、7、6、5、4、3、2、1、発射!』

 

 発射の命令でシンジは引き金を引く。

 充電された電力が陽電子砲の先端から一気に放出される。陽電子砲の放ったエネルギーは使徒のATフィールドを貫通してコアを捕らえたかに見えた。ど真ん中に命中だ。

 

 使徒は体を黒くして硬直し、悲鳴らしきものを上げた後に陽電子砲の命中箇所から大量の血を辺り一面に撒き散らす。

 

「やったか!?」

 

 シンジは拳を握り締めてモニターを見る。

 しかし、使徒は元の正八面体の姿に戻ると、ひび割れた体を修復してしまった。よく見るとコアには傷1つついていない。やはり掠っただけのようだ。

 

「そんな!外した!」

 

 シンジは驚愕した顔で使徒を見る。指揮車両でも同じように驚いているミサト達がいた。

 

「ばかな!照準は完璧だったはず!」

 

 マコトが叫ぶ。攻撃に絶対の自信があった分、衝撃は大きい。

 

「目標に高エネルギー反応!攻撃、来ます!」

 

 モニターに映し出された変化に気づき、マヤが慌てて報告を入れる。

 

「総員、直撃に備えて!」

 

 ミサトが叫んだ瞬間、使徒は何回か変形を繰り返し、最終的にヒトデのような形体に変化して、シンジ達のいる方へ向かってここ1番の強力な荷電粒子砲を発射する。

 使徒の放った一撃は、矢のように鋭く山に到達するとその高温であらゆるものを融解させた。

 

 狙撃ポイントにいるシンジは、予想していたとはいえ、使徒の反撃に初号機の周りだけにATフィールドを張る事しかできなかった。

 その衝撃は下にいるミサト達に伝わり、直撃こそしなかったものの、軽い車両や極太のケーブルを吹き飛ばした。

 

「被害状況知らせ!」

 

 ミサトが頭を押さえながら叫ぶ。

 

『発射台が1部融解!』

『3%の回路が使用不能!』

『死者、負傷者多数!』

 

「それでも被害は軽微ね。エネルギーシステムは?」

 

「まだいけます。既に再充填を開始」

 

 マコトは注意深くモニターを見据える。使えなくなってしまった物もあるが、重要な箇所のモニターはまだ使えそうだ。

 

「陽電子砲は?」

 

「健在です。現在砲身を冷却中。でもあと一回撃てるかどうか・・・・・・」

 

 莫大な電力を1点に集めて発射する陽電子砲。砲身やケーブルにかかる負担はとてつもなく大きなものだろう。

 

「確認不要、やってみるだけよ。初号機は?」

 

「初号機は無事です。直前にATフィールドで自身を守っています。しかし射撃位置からはズレました」

 

「さすがシンジ君ね。シンジ君!初号機を射撃位置に戻して!」

 

『はいっ!』

 

「今一度、日本中のエネルギーと一緒に人類の未来を、願いをあなたに預けるわ。頑張ってね」

 

『了解です!』

 

 シンジは、初号機を射撃位置に戻して使徒に向き合う。銃身からはまだ煙が出ていた。

 

「銃身、固定位置!」

 

 マコトが状況を伝える。

 

「初号機はG型装備を廃棄。射撃最終システムをマニュアルに切り替えます」

 

 マヤが第2射の準備に入る。今度は照準器は壊れなかったが、指揮車両側の装置が壊れてしまったため、もうオートで射撃はできない。

 

「使徒の先端部が全装甲帯を貫通!本部の直上へ現れました!」

 

「第2射急いで!」

 

 ミサトが焦りを抑えきれずに声を上げる。

 

「ヒューズ交換及び砲身冷却終了!」

 

「射撃用所元、再入力完了。以降の誤差修正は、パイロットの手動操作に任せます!」

 

「目標に再び高エネルギー反応!」

 

 マヤが使徒の攻撃を察知する。

 

「やばいっ!」

 

 ミサトがモニターの方に振り返って叫ぶ。

 使徒は再び初号機に向かって強力な荷電粒子砲を発射した。今度は初号機への直撃コースだ。

 

「くそっ!」

 

 シンジはとっさに声を上げ、ATフィールドを展開した。

 だが間に合うのか。

 直撃したと思って目を閉じてしまったシンジ。しかし痛みを感じないため、目を開けると、目の前に大盾を構えて荷電粒子砲を防ぐ零号機の姿が見えた。

 

「綾波!」

 

 シンジは零号機に向かってレイの名前を叫ぶ。まただ。またレイに危険を及ぼしてしまった。

 

「いけない!盾が持たないわ!」

 

 リツコの言う通り、盾は使徒の攻撃に耐え切れずに崩壊を始める。

 

「チャージは!?」

 

「あと20秒!」

 

 焦るミサト達。

 

(このままじゃ綾波が!まだなの!?)

 

 初号機の前で零号機が徐々に押されて姿勢を崩し始める。盾はそのほとんどが融解し、高エネルギーを防ぎきれないところまで来ていた。もちろんATフィールドも展開しているが、陽電子砲に意識を集中させているため防御力は低めだ。

 

 そして充電が完了する。

 同時にシンジが覗いていた照準が使徒へと定まる。シンジは間髪居れずにトリガーを引いた。

 再び発射された陽電子砲は使徒の荷電粒子砲を押し返し、使徒のコアを貫いた。

 

 使徒は攻撃を止め、後方から火を噴きながら正八面体へ戻る。そして次の瞬間、突然無数の棘状の形体に変化すると、悲鳴を上げながらコアを破裂させた。

 ジオフロントの天井を突き破って降下していた使徒の先端も破裂し、血の雨に変わってNERV本部へ降り注いだ。

 




エヴァの中でヤシマ作戦が1番興奮します。アスカいないけど・・・・・・

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。