碇シンジはやり直したい   作:ムイト

23 / 74
第22話 三位一体

 

 

 

「みんな頼んだわよ。では、作戦開始・・・・・・発進」

 

 

 ミサトの号令が下されると、シンジ達は一斉に走り出す。同時にアンビリカルケーブルが外され、活動限界までの時間が表示される。零号機と2号機は地面がえぐれて最初の数歩は滑ってしまったが、その後は問題なく走れた。

 

 航空機と同じ速度で走るエヴァ。

 住宅街を走り、川を走り、森を走り。鉄塔はジャンプして飛び越えた。

 しかし、エヴァが走った後は、こいつら本当に世界守ってるのか?と言いたいほど被害が発生している。橋や道路は破壊され、家を踏み潰し、別の意味で被害は拡大していた。

 

 野を超え山を越え、しばらく走っていると、上空の使徒に変化があった。

 黒い球体状の使徒は、その黒い部分が剥がれ、中から色鮮やかな本体が出てきた。しかも形態が変化したことにより、進路も変わってしまった。

 

「目標変形。軌道が変わります!」

 

「くっ!やはり!」

 

「目標の落下速度も上昇!」

 

 オペレーターの報告に、ミサトは奥歯を噛み締める。

 

「何よ、やっぱりあたしの所に来るんじゃない。そっこーで終わらせるわ!」

 

 使徒はアスカの所へ軌道が修正され、それに合わすように2号機は走った。

 といってもアスカだけでは使徒を倒せない。急いで落下地点に向かわなくては。

 

 シンジがミサトに話しかけようとした時、いいタイミングで通信が入った。

 

『シンジ君!レイ!使徒はアスカのコースに落ちるわ!だからそこに向かって!』

 

「了解です」

 

『はい』

 

『レイはそのまま。シンジ君はコースを変更して!』

 

「はい!」

 

 通信が終わると、すぐに足元の装甲板が立ち上がり、初号機はアスカの方向に進路を変えた。スピードが乗っている初号機では、進路を変えるためには速度を落とさないと曲がりにくい。しかし、装甲板を展開することで速度を落とさずに、短距離で駆け抜ける事ができるのだ。

 

 初号機は進路を変えると、さらに加速する。前よりも初号機を上手く扱えるようになっていたため、すぐに超音速に達した。同時にソニックブームが発生し、駐車していた車を吹き飛ばす。

 

 落下してきた使徒も、地表に近づくとさらに形態を変化させ、10枚の羽を広げて蛾のような姿になった。

 

「目標変形。距離1万2千!」

 

 シゲルは素早く報告する。

 

「何よあれ、気持ち悪いわね。でも間に合った!」

 

 全力で2号機を走らせていたアスカは、ギリギリのところで使徒の真下に到着した。

 

「フィールド全開!」

 

 2号機はATフィールドを展開。両手で使徒を受け止めた。

 

 そこへ使徒は落下すると、中央部分から人型の部位が現れ、2号機の両手をガッチリ掴んだ。ミシミシと音を立てるが、2号機の手は潰せない。そこで使徒は両手の一部を槍状に変化させ、再度押し込んだ。

 

 すると槍は2号機の手のひらから肘まで、いとも簡単に貫通した。

 

「ぐっ・・・・・・・・・(ダメ、潰される!やっぱりあたしじゃ・・・・・・)」

 

 痛みに耐えるアスカ。

 

「アスカーーーっ!」

 

 そこへ初号機が到着する。初号機は2号機の横に並ぶと、両手を突き出した。

 

「ATフィールド、全開!」

 

 ほぼ完璧なシンクロ率で発生させたATフィールド。それは使徒の身体を少しだけ上昇させるほどの威力を誇った。

 

 しかし貫通した槍は2号機から抜けない。無理に抜くのはまずいため、シンジはレイの到着を待つ。

 

 すると――

 

『何やってんのよ!早く攻撃しなさい!』

 

 そうアスカが叫んだ。

 

「でもアスカが!」

 

『あたしがこれくらいで弱音を吐くとでも思ってるの!?』

 

『碇君、早く!』

 

 ようやくレイも到着し、無事3人で使徒を抑えることに成功した。

 

 使徒は押し返されているのを悟ったのか、推進機関の変わりにしていたATフィールドの出力をさらに上げる。そして使徒の羽には人型のような人形が大量に生えた。

 

(やるしかない!)

 

「はぁっ!」

 

 シンジがプログレッシブナイフでコアを突き刺す。しかし、コアはギリギリのところで回避し、グルグルと高速で回転し始めた。

 

 時間もないため、のんびり狙ってる暇はない。シンジは左手でコアを無理やり止めた。コアの表面はとてつもない熱さだった。だがここで止めるわけにはいかない。シンジはそのままナイフを突き刺した。

 

「まだダメか!」

 

『碇君、これ!』

 

「綾波?ありがとう!」

 

 しかしナイフが突き刺さっても使徒は止まらない。もう1回ナイフを刺そうとするシンジに、レイは零号機のナイフを投げ渡した。

 

 初号機はもらったナイフを1本目とは別の角度でコアに突き刺した。

 そして使徒が動きを止める。一瞬止まった後、コアが破裂し、大量の血が吹き出した。使徒の本体も、生えた触手がパタパタと折りたたまれ、羽もぐったりと下ろされると、コアよりも多くの血が中央から噴出した。同時に十字の光を上げる爆発も起こり、シンジは咄嗟に2号機と零号機に覆いかぶさり、ATフィールドを展開した。

 

 使徒から吹き出した血は洪水となって市街地へ流れ込む。事前に装甲板で壁を作っていたため被害は大きくはならなかったが、装甲板の外側に建っていたビルや民家は全滅してしまった。

 

 ギリギリのところで使徒が殲滅されたため、発令所にはホッとした空気が漂っていた。

 

「3人とも、ありがとう」

 

 ミサトがシンジ達に礼を言う。

 

「通信環境がもとに戻りました!」

 

「碇司令より通信!」

 

「お繋ぎして」

 

 姿勢を正すミサト。

 シゲルがデスクを操作すると、目の前に音声のみのモニターが現れる。

 

『葛城一佐』

 

 ゲンドウの声だ。

 

「はっ!私の独断でエヴァ3機を損傷させてしまいました」

 

『かまわん、想定内だ。零号機は無傷に近いのだろう?』

 

「はい」

 

『なら良いではないか』

 

 作戦の前に想定されていた被害よりも、遥かに軽微だった事は変わりない。ゲンドウと冬月はミサトを責めなかった。

 

『そちらに戻ったら今回の戦闘記録を見直す。用意しろ。それと、通信を初号機に繋げ』

 

「りょ、了解です」

 

 ゲンドウの指示で、初号機へ通信が回される。

 

『シンジ、よくやった』

 

「え・・・・・・あ、はい」

 

 前回同様、初号機に入ってきたのはたったこれだけだったが、それでもゲンドウにしては珍しい言葉だった。

 

 それから発令所はエヴァの回収に動いた。予備電源で2号機と零号機から退いた初号機は、回収班の到着を待つ。

 

 シンジとレイはリラックスした体勢で休んでいたが、アスカは膝を抱えて今回の戦闘の事を考えていた。

 

(あたし1人じゃ止められなかった・・・・・・あいつの方がエヴァを扱えるなんて・・・・・・認めたくないのに)

 

 その日の夜。

 シンジとアスカはミサト宅にいた。いつも使っている病院は改装工事に入っているため、パイロットは手当て後に自宅へ戻されることとなったのだ。

 2人とも負傷していたため、とっとと部屋に引きこもってしまったが・・・・・・。

 

 その一室。

 アスカは眠れない夜を過ごしていた。

 

「あたしは1人でいいって決めたのに・・・・・・なんで・・・・・・なんでよ」

 

 何回も寝返りを打ち、窓に映る月を見ながら、アスカはしばらく考えた後スっと立ち上がる。そして静かに引き戸を開け、向かいの、シンジの部屋の前に立った。

 

 爆睡していたシンジも、アスカが部屋を出る気配を察知し目が覚めた。これも訓練の賜物か、こういった静かな場所で相手の気配を敏感に察知できるようになっていた。

 

 扉が静かに開く。

 アスカはそのままシンジの所へ行き、背中を向けて寝っ転がった。

 

「あんた起きてるでしょ」

 

「・・・・・・よくわかったね」

 

 さすがはアスカ様。シンジが起きたのに気がついたようだ。

 

「呼吸が違ったわよ。気をつけなさい」

 

「はい」

 

「ねぇ、ちょっとだけいさせて」

 

「ここに?いいよ」

 

 シンジは音楽プレイヤーの電源を切り、イヤホンを外して枕元に置いた。

 

 しばらくそのままでいたが、10分ほど経っただろうか。アスカが口を開いた。

 

「あんた作戦中にあたしの名前呼んだでしょ」

 

「あっ、ごめんつい」

 

「・・・・・・いいわよアスカで。あたしもシンジって呼ぶから」

 

「わかった」

 

 2人は互いに背中を向けて会話をしていたが、不意にアスカがこちらを向いたのがわかった。

 

「なんでシンジはエヴァに乗るのよ」

 

「僕?僕は家族を守りたいんだ」

 

「家族?司令の事?」

 

「まさか。ミサトさんとか綾波とか、僕に近い人。アスカは?」

 

「あたしは・・・・・・自分のためよ」

 

「そっか・・・・・・」

 

 それを期に、2人は話すことなく寝てしまう。シンジもアスカも、エヴァに乗る理由を深くは聞かなかった。他人に言えない事くらいはある。それを互いに理解していた。

 

 翌朝、シンジは目を覚まして身体を起こすと、隣にいたはずのアスカはいなかった。どうやらシンジが起きる前に自室へ戻ったらしい。

 

(朝ご飯作らなきゃ)

 

 シンジは朝食を用意しながら、今日の予定を頭に浮かべる。予定と言っても使徒を倒したばかりなので、病院で検査を受けるだけだ。

 

 少しすると部屋中にいい匂いが漂い初め、寝ている同居人2人の意識を覚醒させた。

 

「おはよーシンちゃん」

 

「おはようございます」

 

 ボッサボサの髪を手で軽くとかしながら洗面所へ向かうミサト。タンクトップは肩のところがずり下がり、ズボンも紐がだらんと垂れていた。

 

「シンジ、ご飯」

 

「はいはい。顔洗ってきてね」

 

 正直だらしない女性陣を洗面所に送り出したシンジは、出来上がったポトフを器に移してテーブルの上に置いた。

 

 全ての朝食をテーブルの上に起き終わると同時に、ミサトとアスカが戻ってきた。

 

「ポトフだ!シンジあんた作れたの?」

 

「アスカの口に合うといいんだけど・・・・・・」

 

 そんなやりとりをしていると、横で保護者がニヤニヤと笑っていた。

 

「なぁ〜に?2人共名前で呼び合うような関係になっちゃったの?」

 

「なっ!そういうのじゃないから!ほら食べるわよ!」

 

 顔を真っ赤にしてミサトに反論するアスカ。誰が見ても照れ隠しにしか見えないのだが、本人は気がついていない。シンジは名前で呼び合うのには慣れていたため、そこまで動揺はしていない。

 

 だがこれでアスカとは少し近づけた気がする。やはり第8の使徒との戦いがきっかけとなったのだろう。

 

(でもまだだ。まだ、これからだ・・・・・・)

 

 ギャーギャー騒いでる2人を見ながら、シンジはそう考えた。




この時ゲンドウがシンジの事を認めてるような言葉を発していて、初めて映画を見た時は「よかったよかった」った思いました。
でもこの作品に上げて落とす傾向があるのをすっかり忘れていて、後の展開で強いショックを受けたのは忘れられません。

さて、シン・エヴァンゲリオンの新しい映像が流れましたね。MAGIのような3つの機械、あれがたくさんでてきました。個人的にはあの中に人(もしくは魂のようなもの)が入っているのでは?と思います。となると、以前の映像でミサトの前にあった機械の中身は加持だったり・・・・・・?

エヴァは考察してもしきれないくらいの情報があって面白いですよね。「なるほどそーきたか!」という映画であると期待しています。(予告詐欺は慣れました)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。