碇シンジはやり直したい   作:ムイト

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第23話 学校再開

 

 

 

 第8の使徒を倒してから1週間ちょっと経った。

 使徒が巨大だった故に撃破時の被害も尋常ではなく、NERVによる第3新東京市の清掃も行われた。

 ミサト曰く、1番大変なのが芦ノ湖だったらしい。芦ノ湖にも使徒の血が入っており、ポンプ車を何台も並べて取り除かなくてはならなかったようだ。

 

 ちなみに第壱中学校も被害にあっており、校庭に大量の木が刺さっていたそうな。そのためしばらく学校は閉鎖。出される課題をこなす日々が続く。

 

 そして今日、ようやくいつも通りの生活ができるとのころまで戻ってきた。ミサト宅でも、シンジとアスカは制服に着替えて登校する準備をしていた。弁当はもう作り終えている。

 

「えーっと、今日の授業は・・・・・・」

 

 シンジは時間割表を見ながら鞄に教材を詰め込んでいた。

 

「アスカー、洗顔フォーム貸してぇ〜」

 

「いーかげんにしなさいミサト!自分で買って来なさいよ!」

 

「けち〜」

 

 洗面所ではアスカとミサトが攻防を繰り広げている。

 

「また何かやってるな、あの2人。まぁいいや、朝ご飯作らなきゃ」

 

 2人を放っておく事にしたシンジは、台所に立って朝食の準備を始める。本日は目玉焼きとウインナー、コンソメスープ、パンだ。

 

 洗面所から2人が戻ってくると、テーブルには朝食が既に並んでいた。

 シンジ達はミサトの「いただきまーす」とともに、朝食を食べ始める。いつもの事なので食事中会話はなかったが、食後の紅茶を飲んでいると、シンジの隣でガタンという音がした。

 

 驚いてその方向を見るシンジ。

 

「いっけなーい!今日日直だった!ご馳走様!」

 

 そう叫んで自室に戻るアスカ。ドタンバタンと物音がした後、アスカは部屋から高速で玄関に走っていった。

 

「いってきまーす!」

 

「あ!お弁――行っちゃった」

 

「アスカったら・・・・・・後で届けてあげなさい」

 

「そうします」

 

 そう言ってシンジは食器をシンクの中に置き、弁当とソファに立てかけてあった鞄を持ってミサト宅を出た。

 

 教室に到着すると、もう半数以上のクラスメイトが登校していた。

 

「おっ!シンジやないか!」

 

 教室に入ってきたシンジに気がついたトウジ。

 

「おはよう、トウジ」

 

「やぁ碇。あの資料は役に立ったかい?」

 

「うん、ありがとう」

 

 ケンスケもシンジに気がついた。

 

 それから3人はシンジの席に行き、第8の使徒の戦いについて話していた。もちろん、機密には触れない程度に。

 今回のはどんなのだったとか、国連軍はどうしてたとか、そんな感じの質問だった。ケンスケも前よりは深く聞いてはこない。どうやら聞いてはいけない事もあるのだと察してきたようだ。

 

 そうしていつもの日常に戻る。

 午前の授業が終わり、ヒカリによる授業終了の挨拶をしたと同時に、クラスメイト(男子)の半分が教室を飛び出し、購買へと向かった。その中にはトウジとケンスケの姿もある。

 

「さて、と」

 

 少しだけ授業のノートをまとめ、筆箱やノートを机に閉まってシンジが立ち上がろうとすると、目の前に影が出来た。

 

「シンジ、ご飯」

 

 アスカだった。

 

「わかってるよ、ほら」

 

 赤色のナプキンに包まれたアスカの弁当。シンジはそれを彼女に手渡した。

 

「ダンケ」

 

 確かドイツ語で「ありがとう」という意味だったはず。お礼を面と向かって言えるなんて、普段のアスカからは考えられないほど。意外といい関係を築けてきているのかもしれない。

 

 すると、アスカに弁当を手渡すと同時に教室の入口に知った声が響く。

 

「いやー飯や飯!給食やないけど、学校最大の楽しみや!」

 

 戻ってきたのはトウジとケンスケ。2人は手に戦利品を持ってシンジ達に近づく。

 

「ん?なんやシンジ。愛妻弁当か?ホンマ仲がええのぉ」

 

 トウジはシンジとアスカに冷やかしを入れる。声が大きかったためにクラス中に聞こえてしまい、周囲の生徒も悪ノリして笑っていた。

 

「「違う(わ)よ!」」

 

 見事にシンクロ。クラスメイトは再び吹き出してしまった。

 

 少しするとクラスも落ち着き、ようやくアスカとシンジは昼食にありつけた。ちなみに冷やかしたトウジは机の上でのびている。アスカに1発くらったのだ。

 

「まったくもう・・・・・・」

 

「ねぇ、式波さん。ここいい?」

 

「・・・・・・いいわよ」

 

 未だ1人で生活しているアスカ。それを見かねたヒカリは、アスカの所へ行き一緒に昼食を食べ始めた。

 

 ヒカリはトウジやケンスケからアスカの事を何度か聞いていた。内容に少々偏りがあるところもあったが、悪い人ではないことはわかった。それに学級委員として、この事態は見逃せなかったのだ。

 

 それを見ていたシンジも、ヒカリになら少しだけ任せても大丈夫だと思った。やっぱり同世代の女性と関わる事は大事なのだ。

 そしてシンジは、黄色いナプキンに包まれた弁当を持ってレイの所へ向かう。

 

「綾波」

 

「碇君?」

 

「はいこれ、お昼。ちゃんと食べられるやつが入ってるよ」

 

「あ、ありがとう」

 

 ポっと頬を染めて応えるレイ。シンジが席に戻ると、蓋を開けてパクパク食べ始める。

 また、それを見ていたアスカは一気に不機嫌になってしまった。

 

 場所は変わってNERV本部の食堂。ここにもシンジの弁当を食べている女性がいた。

 

「ふぃー、ご馳走様・・・・・・!」

 

 弁当を食べ終わったミサトは、背後に誰か近づいてくる気配を感じる。

 

「や、遅い昼メシだな」

 

 そう言って加持はミサトのテーブルに缶コーヒーを置くと、許可を得ずに隣の椅子に座る。地味に近い。

 

「あ、ありがと」

 

「聞いてるよ。シンジ君に作ってもらってるんだって?ま、キミは手料理ってガラじゃないしなぁ」

 

 加持は冗談を言いながらミサトへさらに近づく。

 

「そうね。あんたと違って現場の管理職はたんまり仕事があんのよ」

 

 ミサトはおもむろにノートパソコンを開く。

 

「相変わらず真面目だなぁ。そこが葛城のいいとこだが、弱点でもある。この前の時だってリっちゃんとやり合ったって聞いたぜ?もうちょっと余裕持てよ」

 

「あいにく私は責務でいっぱいいっぱいなのよ」

 

 ミサトはノートパソコンのトラックパッドの上で指を持て余していた。隣の男が邪魔で仕事に集中できないのだ。

 

「緊張感ありすぎると男にモテないぜ?」

 

「余計なお世話・・・・・・っ!」

 

 カチンときたミサトは加持の方を睨みつけようとした。

 

 しかし、至近距離でミサトをじっと見つめる加持の目を見て、照れで怒りを吹き飛ばされてしまう。ついには加持から目を逸らしてしまった。

 

 翌日。

 学校が始まってもNERVでの訓練はいつも通り。せっかく学校に行けたのに、訓練づけの日々は変わらない。シンジとアスカはトレーニングルームで格闘訓練を行っていた。

 

「チッ、やるじゃない」

 

「そんな・・・ことないよ・・・僕体力が・・・」

 

 ここ最近は保安部の教官の下、シンジはアスカと対峙していた。アスカは鋭い攻撃をシンジにくり出すが、シンジはそれを上手く捌き、チャンスがあれば逆に打ち込みもしていた。

 

 だが、トレーニングを積み重ねてきたとは言え、体力が格段に増えたわけではない。第3新東京市に来た時と比べれば体力は増えているが、本職でシンジよりも長くやってきたアスカには敵わない。

 

「よし、2人とも止め!」

 

 シンジとアスカを見ていた小林一尉はキリのいいところで止めに入る。

 

「式波も碇もいい感じだ。このまま励むように」

 

「「はいっ」」

 

 小林一尉はその後トレーニングルームから去り、シンジとアスカだけが残った。残りの時間は自主トレーニングだ。

 

「あれ?綾波がいない」

 

「あんたバカァ?今更すぎ。エコヒイキは今日来ないわよ」

 

「ふーん」

 

「それよりかかって来なさい。叩きのめしてあげる」

 

「・・・・・・わかった」

 

 2人の訓練は終わらない。アスカが満足するまで終わらない。

 

 2人が訓練している頃、レイはNERVにある地下実験施設の水槽で、L.C.L.に浸かっていた。

 

「レイ、食事にしよう」

 

 目を閉じるレイの前にゲンドウが姿を見せる。

 

「はい」

 

 その後、2人は司令室に移動して長いテーブルで食事を取る。だか両者の間に会話はなかった。

 

 食事を口に運ぶレイ。それはNERVのシェフが腕によりをかけて作ったものだが、レイはシンジの方が美味しいと思っていた。しかし、なぜシンジの料理の方が良いのかはわからなかった。




あけましておめでとうございます。
2021年1発目の投稿です。
今月末が楽しみで仕方がありません。受験生や大学生の皆様は大変な時期だと思いますが、体調を崩さないように気を付けましょう。

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