碇シンジはやり直したい   作:ムイト

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第35話 3号機の後始末

 

 3号機の爆発があった松代付近では、救助活動で慌しくなっていた。

 

「うっ・・・・・・生きてる」

 

 ミサトはゆっくりと目を覚まし、自分の状態を確かめる。左腕に包帯を巻いて寝かされていたが、命に別状はなさそうだった。ミサトは気配を感じて横を向くと、加持が心配そうに見守っていた。

 

「・・・・・・加持?」

 

「無事だったか・・・・・・よかった」

 

「リツコや皆は?」

 

「心配ない。リッちゃんも怪我してるが君よりは軽傷だ。だが外にいた奴らは・・・・・・」

 

「そう・・・・・・」

 

 3号機の爆発によって生じた人的被害は、軽傷21名、重傷115名、死者・行方不明者125名(重傷の後、亡くなった者も含む)だった。重傷者、死者のほぼ全てが外を担当しており、ゲージの近くにいた者に関しては、遺体すら見つからなかった。

 軽傷者は全員が指揮所に詰めていた者だったが、辺りは更地と化しており、指揮所も半壊している。運が良かったとしか言えない。

 

 ミサトは予想外の死者の多さに苦悶の表情を浮かべるが、直ぐに真剣な面持ちを取り戻す。3号機の事を思い出したからだ。

 

「アスカとエヴァ3号機は!」

 

「使徒として処理されたそうだ。初号機に」

 

「そんな!」

 

 暗い顔でそう継げた加持の言葉を聞いて、ミサトは胸を締め付けられる思いになる。

 

「でも安心してくれ。アスカはシンジ君が救出したから命に別状はない。ただ、使徒の侵食を受けてしばらくは隔離する事になるだろうな」

 

「アスカが無事・・・・・・?よ、よかった」

 

 それからミサトは加持から3号機の事を聞きながら病院へ向かった。

 そしてシンジもレイと共にNERV専属の病院で治療を受けていた。侵食型の使徒だったために、直接戦わなかったレイも診察を受けることとなっている。

 

 気絶したシンジを心配するように寄り添いながら病院に到着したレイは、別室で診察服に着替え、そのまま医者の診察を受けた。

 診察後は、病室で寝ているシンジのそばに寄り添って本を読んでいた。

 

 NERV本部では、田んぼに横たわる3号機と松代の実験場の残骸を急ピッチで片付けている者達へ指示を出している傍ら、ゲンドウ、冬月、シゲル、マヤ、そして急ぎで戻ってきたリツコらが緊急の会議を行っていた。ただ、発令所で指揮をする人がいないのはまずいため、マコトを臨時指揮官として任に当たらせている。

 

 ちなみに3号機の損傷は想定していたものより酷くはなく、人型決戦兵器としての原型は留めていた。

 

「さて。君達に来てもらったのは他でもない。ダミーシステムが作動しなかった件についてだ」

 

 そうそうに冬月が切り出す。

 

「伊吹二尉から情報はもらいました。私の見る限りシステム上の問題は無かったと思われます」

 

 頭に包帯を巻いたリツコは、マヤの報告書を読みながらそう断言する。

 

「そうか・・・・・・」

 

「では問題はパイロットか?」

 

「いえ。パイロットが拒否したという記録もありません」

 

 低い声で話すゲンドウに、シゲルは慌てて返答した。戦闘時の親子のやり取りで、まだゲンドウが怒っていると思っていたのだ。

 それにここでシンジに責任があるというのは、あまりにも非情すぎる。

 

「ならば初号機か・・・・・・」

 

「碇、もしや・・・・・・」

 

「ああ。諸君、この件は私と冬月が預かる」

 

「「「了解」」」

 

 ゲンドウと冬月は何かを察すると、強引に話を打ち切った。

 

 リツコ達は3号機に関するデータを全てまとめ、ゲンドウの所へ提出する。彼が預かると言ったため、これ以上は自分達では手に負えないと思ったのだ。

 

 ゲンドウの代わりにデータを受け取った冬月は、ポケットにそれを入れると別の話を切り出した。

 

「では次だ。3号機で発生した被害は?」

 

「はい」

 

 シゲルは会議室のモニターに被害をまとめた表を映し出す。

 

 NERV

 ・人的被害

 軽傷21名

 重傷115名

 死者・行方不明者125名(重傷の後、亡くなった者も含む)

※民間人の被害は無し

 ・エヴァンゲリオン

 零号機・・・損傷なし

 初号機・・・両腕に侵食箇所

 

 戦略自衛隊

 ・人的被害

 軽傷13名

 重傷6名

 死者6名

 ・装備

 機動戦闘車・・・3両大破

 

 総じてNERVの被害が多かった。マヤは被害の多さに頭を抑えてしまう。

 戦略自衛隊の方もそこそこ被害はでていたが、第4の使徒戦よりは圧倒的に少ないために向こう側もあまり気にしていないらしい。

 

「我々の被害は痛いな」

 

「ああ。上の連中に補充するよう話しておく」

 

「さて、いつ頃補充されるのかね・・・・・・」

 

 一方でゲンドウと冬月は動揺すらしていない。冬月はああ言ったが、言うほど痛くないのだろう。

 だがゼーレに言ったとしても、どうやって人員を集めるのだろうか?NERVのスタッフはIQが高い者ばかりだ。整備員や警備隊は少し低くてもいいのだが、それでも普通の人よりも高いのだ。

 

 それから少し話し合った結果、殉職者に関しては少しずつ問題を片付けていく事に決まった。一気にやってもよいのだが、次の使徒がいつ来るかわからない以上、集中的にやるのは危険なのだ。

 

 会議が終わると、リツコはマヤとNERVの実験棟に来ていた。

 実験棟の一室では、フルフェイスの酸素マスクを付けたアスカが、身体中から管を生やして横たわっていた。だがそれは知ってる人が見ればわかるもので、何も知らない人からすれば、そこに人間がいるのかさえわからないだろう。

 

「先輩。アスカちゃん助かりますよね?」

 

「シンジ君が助けたおかげでそこまで酷くはないわ。でも使徒の侵食があったから、しばらくはここで過ごしてもらうしかないわね」

 

「そうですか・・・・・・」

 

 マヤは下で横たわるアスカを見つめる。少し慣れたとはいえ、子供がこんな怪我を負っているのを見ると心が痛くなった。

 

 その頃、初号機のゲージでは、誰もいない足場にゲンドウと冬月がいた。既に初号機と零号機は整備員や技術者達のチェックが終わり、第11の使徒の影響がないと判断されたため、ゲージに入れるようになっていた。

 

「まさかユイ君がダミーシステムを拒絶するとはな」

 

「ええ。先生の知っての通り、あれはシンジに甘いのです」

 

 ゲンドウは昔の口調で冬月と話している。2人の目の前には、メンテナンスのためにコアを露出している初号機がいた。

 

「お前も甘いと思うぞ。今回の命令違反を無かった事にしたのだから」

 

「・・・・・・」

 

 冬月にそう言われたゲンドウは、無言で初号機のコアに触れる。

 すると突然、ゲンドウの意識は初号機に吸い込まれていった。

 

 初号機に意識を持っていかれたのを確信したゲンドウ。彼は昔通っていた懐かしの研究室に座っていた。

 ふと気配を感じて後ろに振り向くと、そこには予想だにしていなかった人が立っていた。

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・ユイ」




シンエヴァの興行収入は軽く50は超えそうですね。
それと庵野監督がプロフェッショナルに出るそうで、しっかり録画しておきました。

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