碇シンジはやり直したい   作:ムイト

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第42話 人類と使徒

 こちらに来るミサトの後にも何台か軽装甲機動車や高機動車が走っている。おそらくあの中には完全武装の警備局員が乗っているのだろう。

 

 シンジとカヲルを囲むように車が停められると、予想した通り警備局の者達がわらわらと出てきた。その中でもミサトは1番に車を降り、シンジに飛びついてきた。

 

「シンジ君無事なのね!」

 

「は・・・・・・はい、なんとか」

 

「そう。あ、ところでこの子誰?」

 

 ミサトはカヲルとMark.06を見てシンジに尋ねる。

 だが彼は使徒。正直に話すべきかここは誤魔化して後にまわすか。シンジは迷っていた。

 

 しかし――

 

「こんばんは。僕は第1の使徒アダムスの1人であり、最後の使徒さ。ちなみにあれはエヴァンゲリオンMark.06」

 

「し、使徒!?君が!?」

 

「信じられない?じゃあ証拠を見せよう」

 

 何かの冗談かと思ったミサトの表情を読み取ったのだろう。カヲルはにっこり笑いながらシンジ達から50mほど離れると、Mark.06に向き直った。

 

 するとMark.06のエントリープラグは自動で内部に挿入され、目が光った後、ゆっくりと立ち上がった。

 

「そんな!エヴァを外から動かしてる!?」

 

 さらにMark.06はその辺から人間サイズの瓦礫を掴み、カヲルに向かって放り投げた。

 

 普通ならあのサイズの瓦礫が上から降ってきたら人間なんてひとたまりもない。だが彼は違った。瓦礫が頭に命中する瞬間、人間にはできない事をやってのけた。

 

 そう。ATフィールドである。

 

 カヲルのATフィールドに当たった瓦礫はどこか人のいないところまで弾き飛ばされ、別の場所に落下した。カヲルには傷1つない。

 

「シンジ君離れて!」

 

 そんなカヲルに危機感を抱いたのか、ミサトはシンジを庇って彼の前に立ち、拳銃を懐から抜いてカヲルに向けた。

 警備局の隊員もMP5を構えていつでも撃てるようにしている。

 

 また、現場以上に動揺してたのが発令所のリツコであった。

 

「パターン青!第13の使徒です!」

 

「そんな、ヒト型の使徒ですって!?」

 

 発令所には再び警報音が鳴り響き、職員達は各自のコンソールで情報を集めている。

 

「まさか月のエヴァが使徒の手に渡るとはな」

 

「ああ。これでやつはセントラルドグマに難なく侵入できる」

 

「だが少なくともあのエヴァはゼーレが我々に知らせずに作ったタイプだ。あの少年が奪ったとは考えにくい」

 

「・・・・・・ゼーレめ。そこまでしてサードインパクトを起こしたいのか。それにあれはS2機関搭載型か?」

 

 ゲンドウと冬月は間髪入れて送り込まれた使徒と、彼を送り込んだゼーレに対して毒づいた。まさか最後の使徒が同じヒトの手によって送り込まれるなんて思ってもいなかったのだ。

 

 だがあの少年はシンジやその他の人類に対して敵対している訳ではなさそうだ。

 

 Mark.06からの攻撃をATフィールドで防いでみせたカヲルは、短機関銃を向けられているにも関わらず笑みを浮かべている。確かに銃弾ごときに貫ける装甲ではない。

 

「そんな警戒しないでよ。僕はサードインパクトを起こしに来たわけじゃない。シンジ君とリリスに会いに来たんだ」

 

「リリスですって!?やっぱりサードインパクトが狙いじゃない!」

 

 そう叫ぶミサト。

 

「違うよ。僕の言うリリスはこの下に眠るガワの事じゃない。魂さ、リリスの魂」

 

「魂?」

 

「ミ、ミサトさん!」

 

 シンジはカヲルが何を言おうとしているのかを察した。彼が言うリリスとはレイの事。ちなみに現在レイはマリと一緒にエヴァから回収され、治療を受けている最中だ。使徒を殲滅したと同時に、ミサトは救護班を送っていたのだ。

 

 レイの魂がリリスのものだと言うことは、今のところシンジとゲンドウ、冬月、リツコ、カヲルだけしか知らない。この場で言う事は危険だとシンジは思い、ミサトを離れたとこまで引っ張った。

 

「な、なに?」

 

「ミサトさん。彼と話をしましょう」

 

「でも使徒なのよ!?」

 

「いくら僕でもMark.06と彼を同時に相手できません。でも彼は話す事を望んでいるんですよ?なら少しくらいはいいんじゃないですか?」

 

「・・・・・・確かに今の戦力じゃ勝てないか。司令に聞いてみるわ」

 

 そう言ってミサトは直接ゲンドウのデスクに連絡を取り、2分ほど話していた。

 そして通話を終わらせると、ミサトはシンジに向き直った。

 

「許可が出たわ。でもメンバーは司令が決めるそうよ」

 

「よ、よかった・・・・・・」

 

 そして2人はカヲルらの元へ戻る。

 

「カヲル君、父さんの許可が出たよ」

 

「そうかい?ならよかった」

 

「30分後にNERVの会議室で話を聞くわ。皆、作業に取り掛かって!」

 

 ミサトの指示で警備局の者達は本部に連絡を取り、NERV本部から応援を呼んで後片付けに取り掛かった。

 初号機は回収され、Mark.06は保安部の監視下に置かれる。Mark.06の周りには軽装甲機動車が配置され、隊員が持ち込んだ対戦車ミサイルをいつでも撃てるようにしていた。

 

 ちなみに戦略自衛隊はすでに第3新東京市から撤退している。だからMark.06とカヲルの情報はほとんど得ていないはずだ。

 

 30分後、会議室に集まったのは1部の人間のみだった。

 ゲンドウと冬月を始め、ミサト、リツコ、加持、シンジ、レイ、マリ、そしてカヲルだ。マコト達オペレーターは1人もいない。また、パイロット達はプラグスーツを脱いで制服に着替えている。

 

「あ!ワンコ君だ!」

 

 会議室に入るなり、どこかの高校の制服を着たマリがシンジの所へ駆け寄ってきた。そしてやはりデカい。年上なのはわかるが、彼女は同世代の中でも抜群のスタイルなのではなかろうか。

 

「お、お久しぶりです」

 

「碇君、この人誰」

 

 たじろぐシンジに平たい目をしたレイは問い詰める。

 

「はいはい。その辺にして。私も気になるけど、今は・・・・・・ね?」

 

 そう言ってミサトは全員を席に座らせた。

 ちなみに今回は冬月が進行役を務めるらしい。冬月は全員が座るのを確認すると、ゲンドウと目で会話をしてから口を開いた。

 

「では始めよう。まず最初にそこの君に挨拶をしてもらおうかね」

 

「にゃっ?私?」

 

 冬月の視線の先にはマリがいた。確かにここにいるメンバーの中で1番の疑問がそれだ。カヲルはまだわかる。だがゲンドウの命令で集められた者で唯一正体がわからない少女なのだ。

 

 短時間しか顔を合わせていないシンジも、目の前の少女の事が少し気にはなっていた。

 

「では。えー、私は元エヴァンゲリオン5号機パイロットで、今は2号機のパイロットをやってる真希波・マリ・イラストリアスだよ。よろしくね」

 

「彼女はベタニアベースから本部に配属となった」

 

「お、ゲンドウくんも久しぶりじゃん」

 

(((ゲンドウくん!?)))

 

 会議室にいたゲンドウと冬月以外の者はマリのゲンドウに対する態度に驚愕した。

 ユーロNERV所属のパイロットだったならば、2号機をあれほど使いこなせるのにも納得したが、さすがに司令に対する態度ではないと全員が思った。

 

 だが――

 

「まさかお前が来るとはな」

 

「相変わらず君は変わらんな」

 

「冬月先生もお変わりなく」

 

 なんと、ゲンドウも冬月もマリの態度を咎めるどころか、普通に会話していた。

 また、リツコはマリが「先生」と言ったのを聞き逃さなかった。

 

「副司令、彼女は・・・・・・?」

 

「うむ。彼女は私の研究室で碇とユイ君の同期なのだよ」

 

 同期?冬月副司令の?

 それは・・・・・・つまり・・・・・・。

 

「彼女は16歳で私の研究室に来てね。とても優秀だったよ」

 

「ですが副司令、それは15年以上も昔のはずでは?それでは彼女は・・・・・・」

 

 リツコはシンジ達の疑問を真っ先に口に出した。

 

「マリ君は17歳の時にとある実験で身体の成長が止まってしまったのだよ」

 

「実験?」

 

「真希波・マリ・イラストリアス。彼女こそがエヴァの最初のテストパイロットなのだ」

 

 これにはリツコも驚いた。自分はレイが最初のテストパイロットであると思い込んでいたからだ。

 

 冬月曰く、マリはE計画が始動するさらに前の1999年(17歳)、セカンドインパクトが発生する直前、アダムス(いや、量産機と言った方がいいだろう)に干渉しようとしたのだ。

 エントリープラグを入れる場所はあったのだが、プラグが開発できなかったため、その機材は今よりも大型となった。また、エントリーする場所も内部ではなく外から行った。

 

 マリがエントリーした瞬間、アダムスの一体は異常なまでに彼女を拒絶。逆に引き込もうとした。実験は中止されたが、マリは意識不明の重体。応急処置の後、急いでヨーロッパに運ばれて治療が施された。

 そして意識が戻ったマリだったが、アダムスにエントリーした記憶だけ無くなっており、その時何があったのか聞くことができなかった。

 

 その報告を聞いたゼーレは、今度はアダムスを使徒が来る前に封印(破壊)しようと考えた。そしてその作業は成功。原因不明の(意図的な)暴走でセカンドインパクトが発生してしまったのだった。

 

 マリの後にも、ゲンドウ達が作ったエヴァンゲリオンにユイら研究員がエントリーしたがこぞって失敗し、レイ達が成長するまでエヴァンゲリオンの建造や実験は進まなかった。

 話は少し飛んだが、今日に至るまでマリの身体は成長していない。それはつまり、エヴァに乗って己の魂とエヴァを近づけすぎた者は、身体の成長が止まってしまうという事だ。

 

 ならシンジは先程の戦闘で、アスカも使徒に侵食された影響で成長が止まってしまったのかもしれない。今のところ影響は見受けられないが、今後どうなるかはわからなかった。

 

(あれ?なら真希波さんってさんじゅ――)

 

 そこまで考えたシンジだったが、それは殺気によって遮られた。

 

「ワンコ君。何か失礼な事考えてない?」

 

「め、滅相もないです!」

 

 マリに睨みつけられたシンジは両手をブンブン振って否定した。

 

「まぁ詳しい事はまた後で。それより次、いこうよ」

 

「そうだな。では君、最後の使徒よ」

 

 冬月の言葉に全員の視線が今度はマリからカヲルに移る。カヲルはその視線を受け止め、スっと立ち上がった。

 

「改めて、僕はアダムス。第1の使徒であり、13番目の使徒でもある。リリスを目指す使徒は僕で最後だ。じゃ、全てを話そう」

 

 そう言ってカヲルは話し始めた。

 彼の目的、その全てを。

 

 

 

 




少し無理があると思いますが、マリの体の成長が止まってしまった理由を個人的に考えてみました。
あくまで白ウナギ量産機がアダムスであるという前提ですけど…。
でも見た目16歳で研究室に入って、2015年に至るまでその見た目を保っているのなら16~18の時に呪縛を受けたということなのでは?

我、エピソード・マリ求ム
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