シンジ、レイ、マリの3人は、会議室から出るとアスカが眠る病室へ向かった。
病室は相変わらず隔離されているため直接触る事はできないが、まぁそれは仕方ない。しかし病室前の見張りの保安部員はいなくなっており、代わりに臨時のナースステーションが設置され、NERVの女性職員が詰めていた。
見張りがいなくなったとはいえ、さすがに何も言わずに病室に入るのはマズイ。3人はまずナースステーションに声をかけに行く。
「すみません」
「はい・・・・・・ああ、式波特務一尉のお見舞いですね。どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
なんと、意外とすんなり入れてしまった。シンジ達がパイロットであるからだろうか。もしかすると、ミサトあたりからパイロットは通していいという通告があったのかもしれない。
ちなみにレイはどうだかわからないが、シンジとマリはナースステーションにいた女性職員が一般職員ではないと確信した。
なぜなら机の上に置いていた手が普通の人のものではなかったから。あれは軍事訓練を受けた者の手。だから彼女は保安部の人間の可能性が高い。シンジ達を見た途端机の下に手を伸ばしていたから、もしかすると机の中には拳銃でも入っているのかもしれない。
さて、それはいいとして、病室に入ったシンジ達は起きないアスカを何も言わずにしばらく見ていた。何か変わった事と言えば、アスカの顔を覆っていたやつが外されていた事だ。
「・・・・・・アスカはいつ起きるんだろう」
「姫が姫自身、そして使徒に打ち勝った時。第11の使徒を殲滅したとはいえ、姫の中には使徒の残滓がまだあるはずだよ。だから自身が使徒に勝たないといけない」
「そんな・・・・・・綾波、どう?わかる?」
「・・・・・・ごめんなさい。ここからじゃわからない。でも2号機の人の中に私と似たような気配を感じる」
レイはカヲルにより自身がリリスの魂が入った人形である事がわかった。でも動揺はしていない。自分の中にある異物に気がついていたからだ。
だからレイはそれを受け入れ、それが自分だと認識した。たとえ身体が作り物だとしても、たとえ魂が神の物であったとしても。それこそが
先程の会話は短いものであったが、そう自覚するには十分な時間だったのだ。
そして彼女自身が変わった事にシンジは気がつく。だからこの質問をしたのだ。
幸い彼女はアスカの中にいる使徒を察知できた。カヲルほどではないが、レイも自分の力を使いこなせている。
「それでもいい。僕達も頑張るから、アスカも負けないで」
「そう、私達に出来ることはこうして応援するだけよん」
シンジ達はアスカにエールを送った後、病室から退出した。
♢ ♢ ♢ ♢
それからNERV本部の職員は休みという単語を忘れるほど職務を全うした。
翌日は各部所ごとに情報を集め始め、それに並行して復興作業も同時進行し、ジオフロント内の瓦礫を優先的に外へ運び出している。
そしてあっという間に1日が経ち、今度はパイロットではなく、メインオペレーターを会議室に入れての会議を始めた。
シンジ達はトレーニングルームにて訓練を続けている。今回からは対人戦闘を主目的とした訓練内容だった。拳銃を使った訓練も増えているのがその証拠だ。
会議室では、一昨日と変わらずゲンドウが手を組んでいた。ちなみにメインオペレーターの3人には、一昨日の会議の内容を話してある。
「では始めよう。まずは今回の使徒で発生した被害状況を」
「はい」
まずはマコトが立ち上がり、パソコンとモニターを接続した。
「第12の使徒との戦闘ではこれまでで1番大きな被害がもたらされています」
マコトの口からは使徒との戦闘が始まって以来、1番の被害であった事が話された。
第3新東京市はほぼ壊滅。兵装ビルはことごとく破壊され、入れ替え途中であった旧式兵器は壊滅(ここは別にいい)した。さらに使徒の光線によって24層もある特殊装甲板は破壊され、ひどい所は丸々1区画分が消滅していた。
その被害はジオフロントにも及び、瓦礫があちこちに落下し、内部に引っ込めていたビルも4割ほどが破壊されていた。
幸い対国連軍にとっておいた中長距離ミサイルは無事だったため作り直す必要はなかった。
「現在はジオフロントを優先的に片付けています。また、特殊装甲板も最低期間で直せるように計算中です」
「では1ヶ月で装甲板を直せ。最低でもエヴァが上で戦えるくらいの厚さでいい」
「了解」
「次、人的被害」
「はい」
マコトが座ると、今度はシゲルが大量の紙を持って立ち上がり、ゲンドウと冬月、ミサトに渡した。
「これはNERVと民間で調べた被害状況です」
シゲルは人的被害について説明を始める。
今回の攻撃では建物の方が人より被害が大きかったが、それでも死傷者は発生した。
戦略自衛隊はVTOL機が多数落とされ、乗員は撃墜された機のほとんどが死亡。
NERVは死者こそは出なかったが、光線の衝撃で負傷した者が数名出た。
ここまではいい。だが民間人に予想以上の被害が出てしまった。避難中に使徒の攻撃で吹き飛んだ者もいれば、ジオフロント内の避難所が丸ごと潰れてしまい、そこに避難した人の消息がわからない事もあった。
心配したシンジがトウジ達の事を聞くと、第壱中学校の生徒や教職員に被害はなかったそうだ。
「あれだけの被害を被ってこれだけの死傷者か。まぁよしとしよう」
「死傷者に関してはいつもの通りにしろ。次、エヴァの被害」
「は、はい!」
マヤはいきなりの指名に慌てて立ち上がる。
「エヴァの被害は今まで以上に大きいですが一昨日にも言った通りなんとか直せそうです。あと真希波特務一尉の乗る3号機は渚君曰く、なんの異常もないそうです」
一昨日の会議が終わった後、カヲルはすぐに3号機のところへ連れていかれた。3号機の残っている部分を徹底的に診てもらったが、第11の使徒はいなかったそうだ。うなじの所にあった青色の粘着物は3号機のコアを破壊した時に破裂したため、やはり使徒は完全に殲滅されたそうな。
ただ、カヲルは1つの注意点を言った。
「これはもう空っぽの人形さ。でもこれに乗ってた彼女はどうだろうね」
使徒から分離して助け出したとはいえ、アスカは侵食を受けた。彼女の中に使徒が残るという事もありえるそうだ。
「では3号機も直ちに修復しろ。式波特務一尉に関しては、使徒を封印する装置を使う事も考慮しておけ」
「・・・・・・はい」
「碇司令。監査部からいいですか?」
マヤがアスカを心配しながら返事をした後、すぐに加持が立ち上がった。
「聞こう」
「まぁ我々のやる事は決まっているので、とりあえずNERV本部にいる諜報員をあぶりだしてみました」
加持は集めた情報をゲンドウだけに渡す。
その紙の束には、NERV本部の中に存在するスパイの個人情報が書かれていた。
まず多かったのがゼーレと日本政府、その他にアジア系の諜報員がいるらしい。また、加持の特殊監査部にはいないが、各部署に必ず1人は存在していた。
「各国の諜報員はどうにでもなるがゼーレの奴はやっかいだな。うかつに手を出せん」
「ああ。だが諜報員は全員抹殺する。時が来たら消せばいい。加持監査部長、できるな?」
「もちろんです。ただ人が足りないので、その時は保安部の精鋭をお借りしても?」
「いいだろう。許可する」
これでNERV本部に存在する諜報員は、その命をゲンドウの手に委ねられる事となった。マヤが少し青い顔をしていたが、彼女も綺麗事では生きていけないような組織に所属しているため、これが必要な事であるとはわかっていた。
後の報告は戦術作戦部だけ。
使徒との戦いを終えたNERVに、戦術作戦部の仕事はもう無い。しかしゲンドウはあえて残した。今回はそれを踏まえて話をする。
「最後に葛城一佐の話の前に、諸君らに戦術作戦部を残した理由を言っておこう。これはNERVという組織の未来に繋がる」
そう言い切ったゲンドウ。冬月以外の全員が緊張した様子で彼を見つめた。
「これから世界はエヴァンゲリオンの技術を欲しがり、エヴァンゲリオンで覇権を争おうとするだろう。無論我々はそのための捨て駒にされる可能性も高い。よって特務機関NERVは今後、世界の治安維持組織として国連と並び立つ事を目指す」
「「「え!?」」」
これにはミサトやリツコも驚きを隠せなかった。しかし、加持だけはその意図が理解できた。裏社会を経験してきた彼であるからこそだ。
NERVはこれからどうなるかわからない。
改めて国連の管理下に置かれるか、解散させられるか。
まぁただで解散させるつもりはないだろう。技術を取れるだけ取るはず。
ゼーレからの支援を失ったNERV。日本政府から良い目で見られていないNERV。組織を残すには絶望的な状況だろう。だがここでNERVが地球の治安維持組織となれば、その強大な軍事力で国連さえも抑えられる。戦術作戦部を残したのはそのためだ。
エネルギーはS2機関で問題なし。そもそも世界で最も進んだ技術を保有しているのはNERVなのだ。
少なくとも今の国連軍よりはいい働きをするだろうし、国同士のしがらみもないので公平に判断ができる。
「我々が今の立場を保持するならばそれくらいの事はする必要があるのだよ」
冬月がゲンドウの言葉の後に続けて言った。
「では葛城一佐」
「はっ。我々戦術作戦部は対使徒から対人戦闘に戦術を切り替えます。無論相手がエヴァンゲリオンのような兵器を使用する可能性をふまえております」
ミサトはエヴァンゲリオンを戦略兵器として扱う事にしている。NERVにとって1番の抑止力はエヴァンゲリオンだ。バチカン条約で3機までと保有が決められてるが、現在エヴァを保有しているのは本部5機とユーロNERV9機(建造中)だけ。もはや条約として機能していない。
エヴァンゲリオンの最大の利点はATフィールドだ。この絶対防御を突破しない限り敵に勝ち目はないだろう。
「第3新東京市の兵器群の近代化は年末までには終わらせます。また、弾薬の製造はフル稼働中です」
「ゼーレに気づかれるなよ」
「それを防ぐのがあんたの仕事でしょーが」
加持の煽るような言葉にミサトは軽く返す。こういう会話ができるくらいの空気なのはいい事だ。
第3新東京市の兵器群は、使徒の攻撃により壊滅したためという名目で旧式兵器はとっぱらっている。ミサトの言う通り、年末までには終わりそうだった。
「ゼーレがいつ渚特務一尉の裏切りに気づくかはわからない。我々には時間が無いことを覚えておくように」
「「「はっ!」」」
ちなみにこの日の会議の内容はミサトからシンジ達に伝わった。
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早くBlu-rayでないかなー。