碇シンジはやり直したい   作:ムイト

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第48話 決別、そして揃うパイロット

 

「さて、碇、冬月。説明してもらおうか」

 

 多数のモノリスに囲まれる中、ゲンドウと冬月は部屋の真ん中に立っていた。なぜこうなったのか、それは1週間前に遡る。

 

 1週間前、それはシンジ達がアスカの見舞いにいってちょうど1週間がたった頃だ。NERV本部の司令室にはゲンドウと冬月、加持、そして特殊監査部(加持)の副官が集まっていた。時刻は23時を過ぎている。外は真っ暗だ。

 

「碇司令。我々を集めたのはもしや・・・・・・?」

 

「ああ。時が来たのだ。加持特殊監査部長、NERV本部内にいる全ての敵諜報員を始末せよ」

 

「わかりました。おい」

 

「了解です」

 

 加持は副官に命ずると、副官は諜報員を見張らせている部下に排除命令を送った。その手際の良さには舌を巻くが、いつでも処分できるようにしていたのだろう。自宅も特定済み。なんと恐ろしい。

 

 それから約1時間が経つと、副官の元にメールが入ってきた。

 

「報告。本日0時21分、NERV本部に入り込んだ諜報員は全員処分されました。むろん人類補完委員会の者も対象です」

 

「バレていないだろうな?」

 

 報告を行った副官に冬月が尋ねる。

 

「はい、目撃者はおりません。また、遺体も内密に焼却し、一般職員には異動という形で説明します」

 

「よかろう。これで世界に宣戦布告をする事になった。お前達、これからも頼むよ」

 

「「はっ!」」

 

 加持と彼の副官が退出する。

 

 そしてそれから数日後。

 各国とゼーレはNERV本部に送り込んだ諜報員からの連絡が途絶えていた事に気がついた。それで今に至る。

 

 モノリスに囲まれたゲンドウと冬月は、先週の出来事で怒り狂っているであろうゼーレを前に怯えてはいなかった。

 

「説明、とは?」

 

「NERV本部内の諜報員を消した事だ!まさか我々の手先まで手にかけるとはな!」

 

 キールとは違うモノリスから怒鳴り声が発せられる。

 

「その通り。もう一度言う。碇、説明をしたまえ」

 

「・・・・・・そうですな。キール委員長、我々NERV本部は本日をもって人類補完計画を破棄、同時にあなた方との関係を絶つ事になりました」

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

 ゲンドウの宣戦布告とも言える言葉に人類補完委員会の面々は驚きを隠せなかった。

 

 南極でのアダムス発見からゲヒルン時代、そしてNERV創設に至るまで、自分達と運命を共にしてきた男が、素晴らしい計画を考えてくれた男が裏切るとは夢にも思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・と、思う事はまずありえない。

 

 そう思っているのならば量産機は作るはずがないし、対人戦の予算が中々おりないのはゼーレがNERV本部を完全に信頼していないから。

 とは言ってもこう堂々と宣言されるとは思わなかったのだ。

 

「今までお世話になった事は忘れません。しかし、我々は個々の生命として未来を創る事を決めたのです」

 

「そうか。であるならば結構。覚悟するがよい」

 

「我らを裏切った事、後悔するぞ!」

 

 モノリスから発せられる怒号が一通り終わると、冬月は通話ボタンを打ち切り、以降こちらからしか連絡ができないようにした。

 

「碇、これから忙しくなるな」

 

「ええ、ですが政治は我らが。戦闘は葛城一佐に任せましょう」

 

 そう言うと2人は部屋を出る。

 ゼーレとの関係は絶った。後は戦うだけだ。

 

 NERV本部で重苦しい空気が流れている一方、地上のコンフォート17は騒がしい声で一室が埋め尽くされていた。

 

「それでは!アスカの退院を祝して、乾杯!」

 

「「「かんぱーい!」」」

 

 コンフォート17の一室。ミサト宅では、家主のミサトとエヴァパイロットが揃ってアスカの退院を祝っていた。あとついでに新年会を兼ねている。

 

 最初は本当に2週間で退院できるとは思っていなかったが、アスカ自身が医者の言う事を大人しく聞いていたため肉体的には問題無し。精神的にも問題無しという事に・・・・・・。

 正直恐ろしい回復力だ。

 

 アスカの退院を聞いたシンジとミサトは、他のパイロットにアスカの足止めを依頼し、自分たちはスーパーに買い出しに出かけた。

 肉や魚をカゴに放り込み、飲み物もカートの下にポンポン置く。あまり時間もないため、簡単なもので済ませる事に。というわけでお惣菜売り場で商品をカゴに入れた。

 

 車でミサト宅へ帰る途中、マリからアスカを止めておくのが難しいという一言が、可愛い顔文字を添えて送られてきた。

 コンフォート17に車を駐車した後、2人は商品が入ったビニール袋を抱えてダッシュ。エレベーターの中では少し体力を回復し、ミサト宅がある階に到着すると、それからは準備ができるまではノンストップだった。

 

 アスカが帰ってきたのはミサト宅にシンジとミサトが到着してから20分後。他のパイロット3人を伴い、NERVの制服を着たアスカは、汗まみれになったシンジとミサトに出迎えられた。

 

 テーブルに並べられた食い物を見て目を輝かせているアスカだったが、シンジとミサトは汗だくのため台無し。というわけで2人はシャワーを浴びる事に。

 2人が順番に風呂から出ると、マリが率先して飲み物をコップに入れていた。ただ、ミサトの場所にはビール缶が置かれていた。わかってるじゃないか。

 

 そんでもって乾杯だ。

 乾杯をした後はワイワイガヤガヤと、さらに騒がしくなった。

 

「どうアスカ。身体大丈夫なんだって?」

 

「まぁね。でも時間がないわ!明日から訓練再開よ!シンジお茶!」

 

「はいはい」

 

 よかった。見舞いに行った時もそうだったけど、落ち込んではいなかった。むしろ目をギラギラさせてやる気に満ち溢れている。

 

 シンジはペットボトルの麦茶をアスカのコップに注ぐ。アスカはこちらに視線を向けること無く麦茶の入ったコップを引ったくり、肉を食っては飲み、食っては飲みを繰り返した。

 

 さて、彼らの保護者はというと・・・・・・。

 

「いやー!ビールが美味いっ!いつもより高いの買ったかいがあったわー!」

 

 ゴキュゴキュゴキュ。

 ポイッ。

 プシュッ!

 ゴキュゴキュゴキュ。

 

 という音を繰り返し、彼女の近くにはビール缶が積み上がっていた。

 

(・・・・・・うう。加持さん助けて!)

 

 心の中で悲鳴をあげるシンジだったが、そんな都合よく加持が来るはずがない。

 現実は非常ナリ。

 

「碇君、大丈夫?」

 

 助けを求める事を諦め、無心で肉を食っていたシンジに、両手でコップを持ったレイが話しかける。

 

「綾波・・・・・・ううん、大丈夫だよ。綾波は楽しんでる?」

 

「ええ。大勢で食事をするのは珍しいから」

 

(・・・・・・そうだよなぁ。綾波は家でも1人だし・・・・・・あ、いっそこの建物に引っ越させようかな)

 

 レイと話しながら、彼女の今後の事を考え始める。シンジは逆行してから今に至るまで、被害を最小限に抑えて使徒を殲滅してきたし、人間関係だって全然良い。

 ただ、その代償としてレイのプライベートまで触れることができなかった。

 

 よくよく考えると、あのコンクリート打ちっぱなしの集合住宅に住まわせとくのは不安があった。

 それに住まいが決まっていないのがあと2人。マリとカヲルだ。

 

「やぁやぁワンコ君。食ってるかい?」

 

「うん。真希波さんも・・・・・・すごい楽しんでますね」

 

「マリでいいよん。で?私の方見て何考えてたのかにゃ〜?」

 

「いや、その。真希・・・・・・マリさんはどこに住んでるんですか?」

 

「あれ?知らなかったの?私はそこの彼と同じ寮に住んでるんだよ」

 

 マリはカヲルを指さして答える。

 

 ああ。そう言えばNERVには寮があり、ほとんどの職員はそこから出勤していたな、とシンジは思い出す。

 となると現在のパイロットは――

 

 ・コンフォート17(ミサト宅)

 シンジ、アスカ

 ・マンション(ボロ)

 レイ

 ・寮

 マリ、カヲル

 

 こうなるわけだ。

 シンジはしばらく考えてミサトに近づいた。ガンガン飲んでる彼女だが、缶ビールだけを飲んでいるならまだ正気は残ってるはずだ。これが大五郎のボトルになってくるとマズイ。

 

「ミサトさん」

 

「ん?どしたのシンちゃん」

 

「エヴァパイロットの家についてなんですけど。どうせなら他の3人をこの建物に引っ越させませんか?」

 

 シンジの言葉に缶ビールを置いて難しい顔をするミサト。やはり厳しいのだろうか。

 

「パイロットの監視や護衛の合理化か。わかった。こんど司令に話してみるわ」

 

 優しい顔でシンジの頭をくしゃと撫でるミサト。

 そしてシンジがミサトから離れると、ついに彼女は床下収納から大五郎を取り出した。いつの間に買ったのだろう。

 

「どうしたんだいシンジ君」

 

 今度はカヲルが擦り寄ってきた。少し気持ち悪い。

 

「パイロットをこの建物に住まわせる事をミサトさんに言ったんだ。みんな一緒なら楽しいだろうし」

 

「・・・・・・やっぱり君は面白い。常に僕達の事を考えている。いったい君は何回目の碇シンジなんだろうね」

 

「か、カヲル君。その事は・・・・・・」

 

「わかってる。君が話すまでは誰にも言わないさ。それよりシンジ君、今日はパイロット同士の親睦を深めるために一緒にね――」

 

 ミシッ・・・・・・。

 

 カヲルがその言葉を最後まで言い切る前に、彼の肩を白すぎる手が掴んだ。

 

「ダメ」

 

 それは無表情のレイだった。

 

「しかしだねリリス・・・・・・」

 

「ダメ。碇君は渡さない」

 

「へぇ・・・・・・?」

 

 バチバチと火花を散らす人(使徒)2名。正直生きた心地がしない。

 もういいやと2人を放っておく事にしたシンジは、またアスカの近くに行った。アスカは寝ていた期間の分を取り戻さんと言わんばかりに食べ物を口に運んでいる。

 

「あ、シンジ。ん!」

 

 ずい、と空いたコップを突き出すアスカ。シンジは呆れながらもコップを手に取り麦茶を注ぐ。その光景はさながら男女逆転した夫婦のようだった。(ミサト談)

 

 退院祝いのパーティーは22時くらいまで続き、自室で爆睡したミサトにブランケットをかけたシンジは、玄関までレイ、マリ、カヲルを送った。

 

「じゃ、またねわんこ君」

 

「碇君、また明日」

 

「おやすみ、シンジ君」

 

「うん。またね」

 

 3人がコンフォート17の敷地から出るのを確認するまでそこを動かなかったシンジ。3人の姿が見えなくなると、リビングに戻って後片付けを始めた。その時アスカの姿は見えなかった。風呂にでも入っているのだろう。

 

 後片付けを終わらせると、いいタイミングでアスカが洗面所から出てきた。

 

「シンジ、空いたわよ」

 

「わかった。じゃあ僕も入ろうかな」

 

「それじゃあたしは寝る。おやすみ〜」

 

 そう言ってアスカは欠伸をしながら部屋に戻っていく。あの様子ならおそらく寝っ転がってから数分で寝てしまうだろう。

 今日準備した料理全てに手をつけ、終始食いまくっていたアスカ。実際、満足気な顔で爆睡していたが、翌朝体重計に乗るとあら大変。真っ青な顔をしたアスカが洗面所から出てきたのだった。




C2輸送機が外国にいるのをネットで見て思い出したけど、あの機体のエンジンってライセンス生産じゃなくて購入なんだよね。まぁ日本の軍用機に大型ジェットエンジン搭載しているやつは少ないし、配備数も少ないからライセンス生産の必要はないんだろうけど、やっぱり国産も大事ですよね。
P1のエンジンもなんとかなってるから、いつかは開発されるのかな?
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