碇シンジはやり直したい   作:ムイト

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第49話 迫り来る魔の手

 

 

 常に自国の利益を優先する。

 あたりまえの事だが、その国の中でも貪欲に利益を追い求める国がある。そう、アメリカだ。

 

 この国は世界的に見れば羨ましい国なのだ。資源があり、広大な領域があり、人口も多い。常に新しい物を開発し、大量生産で国内外に供給している。

 

 ところがこの国にはやっかいな所がある。それは国民だ。アメリカ合衆国の国民ほど戦争に敏感な者達はいないだろう。

 大統領制であるため強権を発動する権利を持つ国のトップだが、いざ戦争に参加しようとするとそこへ国民が反戦デモを行う。

 

 だがそれ以上に自国民の死に敏感だ。とある戦争で奇襲(?)攻撃を受けたアメリカ国民は政府やメディアの発する情報に目を通した。するとどうだろう。あれほど「反対!」と叫んでいた国民がこぞって軍事基地の門を叩いたのだ。

 大義は我にあり、と士気の高い兵士に、国力にものを言わせて生産される大量の兵器。戦いを挑んだ国が勝てるはずもなかった。

 

 話は戻るが、世界で最も国力のあるアメリカは1番の野心家なのだ。その野心家達の下へ届いた、世界の黒幕と称される集団からもたらされた情報でホワイトハウスは大騒ぎとなっていた。

 

「なんだと?NERV本部の離反?」

 

「はい大統領閣下。彼らの情報ではNERV本部はバチカン条約を無視し、S2機関と呼ばれる永久機関を搭載したエヴァンゲリオンを五体も所有しているそうです」

 

「我が国が開発途中だったものを完成させたのか!?いかん、いかんな」

 

 大統領は部下が提出した報告書を悔しさのあまり握り潰す。

 

「幸い彼らの情報では使徒は全て倒したそうです」

 

「・・・・・・よし。国連に最優先事項としてねじ込め。NERVを放ってはおけん」

 

 部下が部屋を出ていくと、大統領は椅子から立ち上がり窓の近くに立つ。その視線は西の方を向いていた。

 

 

 ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 アメリカが国連へ議案を提出してから約半日後、日本の第2新東京市の首相官邸にある会議室にて、首相と閣僚らが集まっていた。

 

「首相、かの国が国連にNERVの離反についての議題を提出したとは本当ですか」

 

「ああ。それに彼らからもたらされた情報もある。離反は確定だろう」

 

「いかがします?幸い我が国には国連軍の指揮下に置かれていない戦略自衛隊がおりますが?」

 

 防衛大臣がニヤリと笑う。その対面に座る大臣は彼が考えている事がわかった。

 

「NERVを殲滅するというのか!?職員とパイロット含め全員を!」

 

「野党から叩かれそうですな」

 

「心配いりません。テロリストに法は効かないのですよ?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 防衛大臣の過激な発言に会議室はしんと静まる。

 

「使徒は全て倒したとの事だ。なら我々がNERVを管理してもおかしくはあるまい。あそこは日本の本土なのだから」

 

「首相!では!」

 

「やりますか!」

 

「だが我が国は野蛮ではない。まずは話し合いといこう。時期はそうだな・・・・・・この週にしよう」

 

 そう言って首相は会議を終わらせる。この方針は戦略自衛隊のトップら数名以外には知らされる事はなかった。

 

 その会議から1週間が経過すると、国連がNERV本部に対して使者を送った。使者はNERV保安部に迎えられて大会議室に入る。

 

「では始めましょうか」

 

 国連の使者は全員が座るのを確認すると、コップに水を注いでから口を開いた。現在この場にいるのはNERV側はゲンドウと冬月とミサト。国連側は代表1名と他4名だ。

 

「まずは使徒の殲滅完了に対して感謝を。これで世界は平和になりました。つきましてはこちらを」

 

 使者はファイルから1枚の紙をゲンドウに手渡す。

 

「・・・・・・」

 

 ゲンドウは内容を覚えると、無言でその紙をミサトに渡した。

 

「・・・・・・は?」

 

 ところがミサトはその内容に目を疑った。紙にはこう書いてある。

 

 国連の要求。

 1つ、特務機関NERVの解散

 1つ、汎用人型決戦兵器の情報開示

 1つ、職員とパイロットの拡散と監視

 1つ、S2機関の技術公開

 1つ、NERV本部の接収

 以上。

 

 無条件降伏とはまさにこの事をいうのではないだろうか。恐ろしい内容だった。

 

「本気ですか!?」

 

「本気ですとも。あなた方の功績は勲章がいくつあっても足りません。なので我々が引き継ぎましょう」

 

「エヴァの技術を持って何をする気かしら?例え作れたとしてもパイロットがいなければ動かす事は不可能よ」

 

「パイロットはこちらで用意します。きちんと訓練を受けた大人の軍人をね」

 

(・・・・・・バカね。エヴァのパイロットに今の大人は使えないのよ)

 

 ミサトは心の中でほくそ笑んだ。なるほど、ゼーレはエヴァンゲリオンに関して詳しい情報を国連に渡していないのだろう。さしずめ【堅牢な装甲を持ち、パイロットの意のままに操れる兵器】と言ったところだろう。

 

「それで、ここをあなた方が接収する事に関して日本国政府は納得しているのか?」

 

 冬月は冷静に問う。

 

「それはこれからです。まぁNERV側にも事情がおありでしょうから、回答は1週間後に」

 

「・・・・・・なるほど。それでは」

 

 使者はそう締めくくる。そしてゲンドウの言葉で会議は終了した。

 だが会議室にはNERV側の人間が残る。

 

「どうする碇?彼らのした事はポツダム宣言並だ」

 

「ああ。おそらくアメリカが関わっているのだろう。だがここを渡すわけにはいかない」

 

「とりあえず日本国政府の要求も聞いてみましょう。考えるのはそれからです」

 

 そう。実はこの日は国連側と日本国政府の両方から使者が訪れることになっているのだ。まさか来る方も互いが交渉日として選んだ日が同じだとは思ってもみなかっただろう。

 

 それから数時間後、国連の使者が座った場所に、今度は日本国政府の役人が座っていた。

 

「えー、これが政府からの要求です」

 

 日本国政府の要求

 1つ、NERV本部の接収

 1つ、NERV職員を戦略自衛隊へ移籍

 1つ、NERVの持つ全ての技術の公開

 1つ、パイロットを戦略自衛隊へ移動

 

 まぁなんというか、ゲンドウ達が予想していた通りになった。

 

「私たちが戦略自衛隊へ移籍とありますが、解散しなくて宜しいので?」

 

 ミサトが余裕を持った声で問う。

 

「ええ。戦自では現在の階級をそのままに移籍してもらいます。無論後釜が出来次第退役してもらいますがね」

 

 そういう事か。

 日本国政府はNERVを接収するにあたり、国連とは違って職員を全て追い出すのではなく、日本人の後継者をNERVに教育してもらい、それが完了次第ゲンドウらには退役という形で辞めてもらうのだろう。

 

 日本らしいというかなんというか。今の政権が腐っていても根はちゃんと日本人らしい。

 

「パイロットは現在戦略自衛隊で訓練中です。もちろん碇司令のご子息とは同い年」

 

「まさか中学生を軍隊に入れてるっていうの!?」

 

「その中学生を実際に戦わせているNERVに言われたくありませんね」

 

 まさかパイロットの事をここまで調べていたとは・・・・・・。

 場所が場所なだけに情報は集めやすそうだが、それでも国連より諜報網があるのだ。いや、漏れたのは戦略自衛隊と共同訓練した日かもしれない。

 

「パイロットは全員我々の監視下で生活してもらいます。指揮権も我々に」

 

 日本国政府はシンジ達を国連軍と戦わせる気だ。つまりパイロットとNERV職員は離れさせられる。互いに人質となる状態だ。

 

「回答期間は1週間。それ以降は宣戦布告とみなし交戦状態となります。それでは」

 

「ちょっ!」

 

 ミサトの静止も聞かず、日本国政府の男達は早々に去っていった。

 会議室に残されたゲンドウ達。冬月に至っては頭を押さえていた。

 

「どうします?両方とも危険な条件でしたが」

 

 彼らが会議室付近から消えたのを確認したミサトは、再び元の席に戻る。

 

「やる事は変わらない。やつらはエヴァンゲリオンで世界の覇権を握りたいだけだ」

 

「碇、両方とも断るのか?」

 

「ああ。我々は双方の条件を断る。葛城一佐、戦略自衛隊第1機械科歩兵師団の荒山陸将と連絡を取れ。それと予算はどうなっている?」

 

「はい。S2機関が誕生したためエヴァの電源設備の予算が浮きました。その分を対人システムにまわします」

 

「よかろう。下がりたまえ」

 

「はっ!荒山陸将との接触も了解しました」

 

 敬礼したミサトが会議室を出る。彼女にとって、人生で1番忙しくなる時期になるかもしれない。

 

 国連、日本。

 両方の設けた回答期間は1週間。そこまでにどれだけ対抗策を考えるのか。それがNERVの課題だった。




003型空母、怖いけどちょっと見てみたい気も・・・・・・。
今どこまで建造が進んでるんだろうか。カタパルトの線が見える衛星写真は見たことあるけど、それ以来情報がないなぁ。
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