NERV本部発令所。
ここでは警報が鳴り響く中、いつもとは違う光景を見せていた。
それは武装した職員が1個分隊滞在している事だ。彼らは短機関銃を持って発令所内の出入口の両脇に立っていた。
また、オペレーターの座席下にも弾薬がいつもの2倍置かれており、もしここが襲われても応援が来るまで持ちこたえる事ができる・・・・・・はずだ。
「状況は?」
エレベーターで昇ってきた冬月がマコトに尋ねる。
「現在四国沖に輸送艦隊がいます。また、九州を出発した輸送機は山梨か静岡のどこかの飛行場に着陸する模様」
モニターには戦略自衛隊の現在地と、侵攻ルートをMAGIがいくつか予想して映し出している。
「となると全軍での侵攻は今日ではないのだね?」
「ですが今日だけでも歩兵と航空戦力、小規模の戦闘車両は揃うはずです」
「うむ・・・・・・碇」
「ああ。総員第1種戦闘配置」
『総員第1種戦闘配置!地対地、地対空迎撃戦用意!』
ゲンドウの下命にてNERV本部は本格的に動き始めた。
まず第3新東京市にサイレンが鳴り響き、残った住民が避難を初め、1番頑丈なシェルターへ向かった。この時既にトウジ達は疎開場所に到着しており、残っているのは3割ほどとなっていた。
続いてビルが次々にジオフロント内に降り、代わりに兵装ビルが姿を現して大量の兵器が用意される。
NERVの戦闘員と非戦闘員がそれぞれの配置に着いている頃、パイロット達はプラグスーツに着替え、その上にNERVの制服を羽織って食堂にいた。
「なんであたし達ここにいるのよ」
アスカがグロック26の弾倉に弾を込めながらぼやく。
「姫〜、そんな事言っても私達に出番はないよ?」
「その通り。僕達が相手するのは量産機さ」
なぜかエヴァで待機せずに自分の銃を弄っているパイロット達。弾を届けてくれた職員が言うには、まだエヴァの出番ではないと判断したためらしい。
「そうだよアスカ。餅は餅屋って言うでしょ?」
「むぅー!」
ガチャガチャガチャガチャ
キレながら一気に弾を詰め込むアスカ。ここにいる誰よりも軍歴が長いことだけあって、その作業には無駄がない。
パイロット達がそうしている間も、発令所には次々に情報が入ってくる。だが今すぐに攻めてくるわけではなさそうなので、NERV上層部は隣の会議室に移動していた。
「さて、敵の規模を聞こうか。それと他の戦略自衛隊もな」
さっそく冬月がミサトに聞いた。
「MAGIの計算と衛星写真によるとほぼ1個師団です。1部は九州に置いてきているでしょうが」
ミサトはMAGIの計算結果をモニターに映し出す。
・陸上部隊
2個歩兵連隊
3個装甲機動連隊
1個砲兵連隊
その他後方部隊等々
・航空戦力
3個航空団・・・VTOL攻撃機
2個爆撃航空団
2個支援航空団・・・歩兵連隊所属軽戦闘機
その他輸送機等々
・戦略部隊
2個戦略ロケット連隊・・・九州待機
ほぼ全戦力がNERVに向かっている。
世界最強と謳われる戦闘集団が、騙されているとはいえ人類を救った組織を殲滅するために。
「いかんな。第1師団はどうなっている」
「荒山陸将曰く現在は動けないそうです」
「そうか(現在は・・・・・・か)」
「葛城一佐。NERVの戦力は」
次はゲンドウが口を開いた。
「はい。こちらになります」
ミサトがタブレットを操作すると、モニターに次のページが映し出された。
・NERVの戦力
保安部警備局
800人(4個中隊)・・・要人、パイロット警護を含む。
ロシア軍スペツナズ
1個小隊30人
この数字はあまり正しいとはいえない。純粋な戦闘員は600人ほど。残りの200人は要人やパイロットを警護するための者達と、普段はNERV関連の施設を巡回している警備員なのだ。
「彼我の戦力差は明らかです。しかしこちらにはリツコらが開発した兵器群があります」
そう。ミサトがNERVの低い対人戦力を高めるために考えたのが無人兵器だ。さすがにロボットは無理だったが、レーダーとカメラさえあれば敵を捉える事もできる。
精密さを増した多目的誘導弾も配備済みのため、現在の第3新東京市は対使徒でなく、対人類の要塞都市に変化していた。
午前11時。
第4師団の輸送機はその半分が着陸し、次々に歩兵を後部ハッチから吐き出していた。
彼らがいるのは山梨の基地。ここに侵攻司令部が設けられているのだ。
「師団長。1個歩兵連隊の出動準備完了しました。2個戦闘航空団も配置に着いています」
「残りの部隊はいつ来る?」
「1個歩兵連隊、1個航空団、2個爆撃航空団、2個支援航空団が第2陣として本日午後15時に。残りの装甲機動連隊と砲兵連隊は明日の午前9時丁度に到着、10時に出撃できます」
「よかろう。さて、どう攻めるか」
師団長と参謀長の間には第3新東京市とその周辺の地図が置かれていた。
「政府がNERV本部に潜り込ませた工作員は全滅。なので内部から停電させて攻めるのは不可能です」
「航空隊のロケット弾で破壊するのはどうでしょう?」
「ダメだ。あの都市全体が要塞なのだぞ。撃ち落とされる」
師団長は部下の提案を却下する。第3新東京市やその周囲にある兵器群の事を覚えているからだ。
「しかし精密誘導兵器は存在しないはずでは?」
「・・・・・・閣下、ある程度の損害は覚悟しましょう」
「そう・・・・・・だな。よし、まずは1次攻撃で第3新東京市周辺の設備を破壊する。まずは様子見だな。それと・・・・・・政府からの命令だ。無人観測所とレーダーは極力破壊するなとの事だ」
「しかし破壊しなければ我々の行動は筒抜けに・・・・・・」
「上はできるだけあの都市を傷つけたくないらしい。だが対使徒用の兵装ビルは破壊していいそうだ。やるぞ!」
「「はっ!」」
この命令は直ちに伝わり、装輪装甲車や軍用トラック、VTOL攻撃機が次々に出撃して行った。
また、その情報はすぐにNERV本部に伝わる。ゲンドウ達は新たな警報が鳴ると、会議室から出てきてそれぞれの場所に戻った。
「戦略自衛隊が動きました!」
「規模と進路は?」
「歩兵連隊が1つ、航空隊がおそらく2個航空団規模。目標はここではないようですが」
発令所のモニターには戦略自衛隊がこちらへ向かっているのが映し出されている。
「第3新東京市周囲の要塞を狙ったのね。司令、ご指示を」
「速射砲で施設ごと吹きとばせ。どうせ破棄する施設なのだ。問題ない」
ゲンドウは冷静に指示を出す。
「はっ!目標戦略自衛隊、敵が施設に到達し次第攻撃開始!」
戦略自衛隊の歩兵連隊は中隊ごとに施設の破壊を始めようとした。ただ周囲に敵がいない事をわかってるのか、隊員らは楽観的だった。
「隊長、全部隊配置につきました」
「よし。連隊長の指示があるまで待機せよ」
「これで外堀は潰せま――」
各地に散らばった戦略自衛隊。そこへオート・メラーラ127mm砲が攻撃を開始。連射で攻撃したために命中率は下がっているが、それでも被害は続出していた。
「なんだ!」
「第3新東京市の速射砲です!」
「そんな!ここは奴らの施設なのだぞ!」
中隊長が驚くのも無理はない。NERVは自分達の施設を壊れるくらいまで攻撃したのだから。しかもそれが散らばっている連隊全てに降り注いだ。被害は予想以上に大きい。
「被害は!連隊本部に連絡を取れ!」
「今やってます!」
各地でこのような光景がみられた。
だがこの程度の攻撃では彼らの士気は落ちない。連隊長の下には損害報告が次々に入ってきた。
この攻撃で出た被害は以下の通り。
第4歩兵連隊 3000
内攻撃参加は2000
負傷者・・・約600
死者・・・約200
装甲車、トラックは多数大破又は中破
攻撃参加の部隊から1割の死者が出た。これは彼らにとって前代未聞だろう。
『機長、地上部隊がやられています!』
「落ち着け、こちらは射程外から攻撃する。目標前方の要塞。撃てっ!」
VTOL攻撃機が放ったミサイルは山腹のVLSに命中。完全に破壊した。
2個戦闘航空団による一斉攻撃。箱根の山々が一斉に噴火したのかというくらいの迫力であった。
「第3新東京市からの反撃ありません」
『こちら攻撃機隊。損害なし』
師団本部にも映像と共に戦況が入ってくる。
「・・・・・・第1次攻撃終了。撤退しろ」
師団長は攻撃部隊に撤退の指示を出す。航空隊に損害が無いのは嬉しいが、歩兵が800人の死傷者を出してしまった。
「やはりレーダーを破壊できないのが痛いですな」
「だが奴ら自身の攻撃で3割は潰れた。問題あるまい」
そう言って師団長は部屋の時計を見る。
時刻は午後1時前だった。
「1600に第2陣を含めた部隊で再攻撃だ。いいな」
「了解です」
こうして第1次攻撃は終了。結果は戦略自衛隊の敗北となった。NERV側に被害無し。破壊された施設は元々破棄する予定だったため、これは損害に入らなかった。
食堂ではパイロット達が止んだ振動に気がついていた。
「ん?攻撃終わったかにゃ?」
「みたいね。戦況はどうなってるのかしら」
マリとアスカはメンテナンスが終わったグロックで窓の外を狙いながら呟く。
「大丈夫よ!初戦は勝ったわ!」
「カリーナさん?」
P90を抱えて完全武装のカリーナは、台車で何かを押しながらこちらに近づいてくる。
「本当なの?」
「ええ。でも次はどうなるかわからないわ。だからこれ、ヨロシク!」
「「はい?」」
シンジとアスカが箱を開けると、なんとその中には短機関銃の弾倉と弾丸が詰まっていた。え、という事はつまり・・・・・・。
「ま、まさか・・・・・・」
引きつった顔でカリーナを見るアスカ。対するカリーナは笑顔でこう答えた。
「め・い・れ・い・よ!」
装甲機動連隊:
機動戦闘車と装輪装甲車を主力とした部隊。軽装甲機動車もいるが、歩兵の数は歩兵大隊より少ない。
戦略自衛隊の編成を考え直すべきか……師団にしては多すぎかな。