碇シンジはやり直したい   作:ムイト

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第53話 決戦、第三新東京市

 第1次攻撃に耐えたNERV本部の職員には少し余裕ができており、士気も高かった。

 とは言っても戦略自衛隊はちゃくちゃくと次の攻撃の準備を進めている。上層部は冷や汗をかいていた。

 

「葛城一佐、敵の状況は」

 

 ゲンドウはミサトに問う。

 

「はっ、偵察を除いて撤退しました。次の攻撃には動ける全ての歩兵と航空機を運用してくるものと思われます。N2弾道弾はまだ発射体制に入っていません」

 

「よし」

 

「1番苦しいのはジオフロントまで降るエレベーターだな。あそこの防御はどうなのだ?」

 

 今度は冬月だ。

 

「残念ですが防御は不可能です。第3新東京市に潜り込まれたら近接戦は避けられないかと」

 

 そうなのだ。実はこのNERV本部、まともな対人設備を整えていなかったために、有事の際は侵入を防げない。

 

 そのため戦略自衛隊は第3新東京市の妨害を排除すると、ジオフロントまで無傷で降下できる。むろん地対空ミサイルがあるために航空戦力はある程度無力化できるだろうが、それでも近接戦は厳しいだろう。

 

「そうか。食料と弾薬、電力の備蓄はどれくらいだ?」

 

 今度はマヤにゲンドウは聞いた。

 

「はぃ!種類は限られますが食料は生産できますし、電力もS2機関を使った発電機を試験的に運用していますので問題ありません」

 

 聞かれるとは思っていなかったのだろう。マヤは最初はびっくりして変な声が出てしまったが、なんとか最後まで報告し終えた。

 

 NERV本部技術部による成果。その1つにS2機関を発電機として流用するという事。熱を逃がす事さえできれば、永久的に電力を生み出せるのだ。充電量も多く、1時間の運転で半日分(通常時)の電力は貯められる。

 

 ただし、それにはエントリープラグ+パイロットが必要なのと、NERV全ての電力は賄えないという問題がある。スイッチ1つで起動して発電するまでの技術はまだなく、有人でなければならない。しかも試験段階なので発電機は1つしかなかった。パイロットにはカヲルを使い、何かあっても大丈夫なようになっている・・・・・・エヴァや使徒関連でカヲルがパシリにされているのは内緒だ。

 

「電力はMAGIを最優先。その次は防衛設備だ」

 

「はい」

 

 第2次攻撃まで時間がない中、NERVや戦略自衛隊は戦いに備え準備をしている。戦いは始まったばかりなのだ。

 

 

 ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 時刻は16時ジャスト。

 戦略自衛隊は圧倒的な戦力でNERVに再び進軍し始める。

 

「戦略自衛隊が再び侵攻を開始!」

 

「今回はほぼ全ての航空戦力が参加しています!」

 

 オペレーター達が次々に報告を入れる。

 

「今度は爆撃機もいそうだな」

 

「ああ。だが問題ない」

 

 ゲンドウはニヤリと笑う。それは第4の使徒の際に、国連軍から指揮権を渡された時のような顔だった。

 

 戦略自衛隊の爆撃機とそれを護衛するVTOL攻撃機。これに乗っている彼らもどこか余裕な表情だった。

 

「機長。今回は楽に作戦遂行できそうですね」

 

「第3新東京市に遠距離ミサイルが無いのは確認済みだ。ギリギリまで近づいて大型ミサイル(こいつ)をぶつけてやるさ」

 

「了――アラーム!ロックオンされています!」

 

 いきなり爆撃機の中にロックオンされたという合図の音がビービー鳴り響く。

 

「なんだと!回避!」

 

「間に合いません!」

 

 次々に命中するミサイル。

 爆撃機は6割撃墜、4割損傷。

 VTOL攻撃機は5割撃墜、5割無傷。

 という結果だった。

 

 予想外の攻撃に戦略自衛隊は混乱し、VTOL攻撃機は反転して撤退。爆撃機もミサイルを発射、又は投機して撤退した。

 

「大型ミサイル接近、数21」

 

「迎撃ミサイル発射・・・・・・インターセプト10秒前・・・・・・5.4.3.2.1!」

 

 第3新東京市から発射されたミサイルは、接近する大型ミサイルに命中。というか今の技術で音速ですらないミサイルを迎撃できないほうがおかしい。

 

 その光景は戦略自衛隊の司令部も観ており、上層部では混乱が生じていた。

 

「なんだと!?奴ら精密誘導兵器を持っていたのか!」

 

「閣下、ここは・・・・・・もう」

 

「よかろう。戦略ロケット連隊に通達。N2弾道弾発射せよ」

 

「はっ!」

 

 最終手段として用意していたICBM。まさかこんなに早く使うとは思ってもみなかった。

 

 九州の各地で次々に展開されるN2弾道弾搭載車両。世界の軍隊の中で陣地展開力がトップクラスの自衛隊。それは戦略自衛隊にも受け継がれ、あっという間に大量の弾道弾が上を向いた。

 そして10分ほどの差をつけて半分ずつ発射。その数は50を超える予定だ。

 

 NERV本部でもその情報は直ちに共有され、警告音がいつも以上に鳴り響いた。

 

「九州よりN2弾道弾が発射されました!数25!」

 

「まだ発射していない車両もあるため再び発射される可能性有り!」

 

「MAGIの計算でも確実に第3新東京市への命中コースをとっています!」

 

 オペレーター達が叫ぶように報告する。先程とは違い使徒の表面を少しだけ溶かすほどの威力だ。くらったらひとたまりもない。

 

「直ちに迎撃!」

 

「はい!」

 

 弾道弾が予定の位置に到達した時点で第3新東京市から大量の迎撃ミサイルが発車される。

 現在第3新東京市の弾道弾迎撃能力は2種類ある。まずは中間段階で迎撃するSM-3相当のミサイル、次に終末段階で迎撃するパトリオットミサイルPAC-3。今発射されたのは中間段階のミサイルだ。

 

 中間段階で迎撃されたのは19発。

 命中しなかったミサイルはその先っちょを第3新東京市へ向けて降下を始める。

 

「次!PAC-3!」

 

 ミサトの命令で第3新東京市からはPAC-3が発射され、迫るN2弾道弾へ向かう。

 そして破片が付近に落ちるも、残る6発もなんとか迎撃に成功したのだった。

 

「よ、よかった・・・・・・」

 

「ミサト!次が来てるわ!」

 

「そうね。第2陣は!?」

 

「発射されました!数30!」

 

「迎撃して!」

 

 再び第3新東京市から迎撃ミサイルが放たれる。先程より迫る弾道弾の数は多いが、発射されたミサイルの数は同じだった。

 これには防空システムが関係しており、ミサイルができたはいいものの、それを誘導するシステムが満足に開発できなかったのだ。

 

 そのためか、中間段階で迎撃できたのは16発。残る14発は降下軌道に入った。

 続いてPAC-3が発射される。こちらは元々装備されていたミサイルなので問題はない。しかし――

 

「4発に防空網を突破されました!内2発が命中コース!」

 

「総員衝撃に備え!」

 

 4つの光が第3新東京市へ落ちてゆく。

 その内2つは付近の山へ。

 2つは都市部へ。

 巨大な閃光と衝撃が都市を包んだ。

 

 24もの特殊装甲板で覆われたジオフロントとNERV本部。弾道弾が着弾した衝撃はもろに彼らを直撃した。

 

「うわっ!」

 

「な、なにごと!?」

 

 マガジンに弾を込めていたシンジとマリは声をあげる。

 

「・・・・・・まずいわ。みんな、N2弾道弾が直撃よ。1区画分の装甲板は全滅したみたい」

 

「なんですって!?」

 

 カリーナの報告にアスカは立ち上がる。

 そして全員で窓際に駆け寄り上を見上げる。すると、ここにいる間は見られないと思っていたジオフロント外の景色が見えてしまっているではないか。

 

 ちなみにこのNERV本部のピラミッド部分はエヴァの装甲板と同じ素材が使われているため、戦車砲はおろか、艦砲をも弾く性能を持っている。N2弾道弾には耐えられないかもしれないが、その衝撃波だけならなんとか耐えられる。

 

 第4機械化歩兵師団の司令部では、穴の空いた第3新東京市が映し出されていた。

 

「よし!命中しました!」

 

「やっとか・・・・・・直ちに攻撃再開。警戒部隊を除く全部隊を投入せよ。一気に制圧する」

 

「「「はっ!」」」

 

 命令が下令されると、隊員らは次々とトラックや装甲車両、航空機に乗り込み、第3新東京市へ向かっていく。

 その数1個歩兵連隊。

 さらに彼らの援護でそれぞれ装甲機動連隊も向かう。砲兵部隊が直接乗り込まないのは、近接戦となれば出番がなくなるからだ。その代わり、残った航空機の1部と砲兵は松本の1師を警戒して配置された。

 

 一方、NERVの発令所でも予想外の事態に混乱が生じていた。なんと第3新東京市の防衛システムがN2弾道弾の着弾の衝撃で1部ダウンしてしまったのだ。

 

「葛城一佐!第3新東京市の防衛システムが1部ダウン!」

 

「なんですって!?規模は!」

 

「パネルに出します!」

 

 マコトは慌てて被害状況を映し出す。そこにはあまりにも予想外すぎる被害が並んで映っていた。

 

 ・精密誘導兵器一部発射不能

 ・格納してある兵器の展開不能

 ・砲の精密射撃不能

 ・レーダー及び観測機8割使用不能

 

 この4つを始めとして10以上もの被害が出ていたが、1番甚大な被害なのは最初の4つだけだった。

 精密誘導兵器が発射不能なのは、それ即ち敵航空機やミサイルを迎撃する事が不可能という事。幸い対使徒用のミサイルは残ってはいるが、当たるとは限らないし、展開すらできない物もある。

 

 ガトリング砲も健在だが、おそらく次の攻撃で真っ先に破壊される兵器だろう。敵もそれをわかっているはずだ。

 

 だがN2弾道弾のわりには被害は少ない。おそらくN2弾道弾の中に威力を落として貫通力を高めた物が存在していたのだろう。確実に穴を開けるために。

 

「そんな・・・・・・」

 

 ミサトは思わず固まってしまう。

 

「まずいわね。マヤ、空いた穴の大きさは?」

 

「まるまるひと街区分です。VTOL攻撃機は楽に通れてしまうかと」

 

「ミサト!次の指示を!」

 

 リツコはマヤからの報告を聞くとミサトの肩を揺さぶる。

 

「そ、そうね。でも迎撃手段は限られ――」

 

 そうミサトが言った瞬間、何度目かわからない警告音が鳴り響いた。

 

「葛城一佐!敵の攻撃部隊が!」

 

「くっ・・・・・・!」

 

 パネルにはこちらに迫る戦略自衛隊の大部隊が映っていた。

 

「総員近接戦準備。非戦闘員は退避せよ」

 

「碇司令!?」

 

「どうした葛城一佐。命令だ」

 

「は、はい!総員近接戦準備!非戦闘員は退避!」

 

 ゲンドウの命令でNERV本部の廊下は武装した保安部と非武装の職員で溢れかえり、武器庫からは様々な火器が運び出された。

 

「エヴァパイロットは直ちにエヴァに乗せろ。そこが1番安全だ」

 

「はっ!」

 

 そしてパイロットにも命令が下され、カリーナ達と別れたシンジ達は保安部の護衛のもと、格納庫へと向かった。ちなみにカリーナはレイラ率いるスペツナズの小隊と共に防衛にあたるらしい。

 

 ここに【箱根事変】の中の1戦、【NERV本部防衛戦】と後にそう言われた戦いが始まろうとしていた。

 

 

 




大晦日には終章の最終話をあげられたらいいなぁ・・・・・・

最近ノゲノラが発売されましたが、私まだ買えてません。すげー久しぶりの最新巻な気がする。

・・・11月28日にサブタイトルを直しました。ご指摘ありがとうございます。
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