NERVの第1防衛線と戦略自衛隊がぶつかった頃、松本では装輪装甲車が市内を走り回り、その半分以上は歩兵戦闘車と共に西へ移動していった。
1個歩兵連隊は警視庁、警察庁、防衛省、国防省、首相官邸、国会議事堂の制圧に向かった。
ちょうど現在は国会で会議中。内容は特務機関NERVの今後についてで、マスコミは締め出されて完全に国会議員のみが集まっていた。
すると突然外から銃声が鳴り響き、警備員の悲鳴が聞こえた。
「な、なんだ!」
内閣総理大臣の大森は銃声にビビりながらも状況を把握しようとする。
銃声は止まらず、バタバタという足音も近づいてきた。そして扉が開かれ、完全武装の歩兵がなだれ込んだ。
その銃口は議員らの方へ向けられる。
「君達は戦略自衛隊か!なぜこの様な事を!」
そう大森は叫ぶが、新たに入ってきた男が拳銃を1発放つと、すぐ大人しくなる。
そして男は壇上に上がるとマイクをのスイッチを入れてこう言った。
「私は戦略自衛隊第1機械化歩兵師団、第1歩兵連隊長の原一佐です。現在我々1師はこの松本を制圧いたしました」
「何が目的だ!」
「そうだっ!軍のクーデターは認められんぞ!」
自己紹介をする原に議員達は非難の声を浴びせる。
「ええ。私から説明してもいいのですが・・・ここは協力者に説明してもらいましょう。東郷議員、お願いします」
クーデターの協力者。それは野党第一党の党首、東郷ヒデアキだ。
東郷が席から立ち上がり、壇上へ歩き始める。他の議員達は先程とは違ってシーンと静かになり、東郷を見守る。
「東郷ヒデアキです。今回クーデターを起こしたのは現在の政権が第3新東京市へ侵攻作戦を開始し、不当にNERVを制圧しようとしているからであります」
静かになった国会は再びざわめきが発生し、何も知らない議員は隣と議員と不思議そうな表情で話していた。
この様子ではNERVへの侵攻は限られた人間にしか知らされていないらしい。
「特務機関NERVは日本、世界を救ってきた組織です。それを現政権は事もあろうに武力による侵略で組織を摂取しようとしているのです!」
東郷はそう話すと隣にいる原にマイクを渡した。戦況を説明しろというのだろう。
「既に2発のN2弾道弾が第3新東京市へ命中。4師はジオフロント内・・・いえ、NERV本部内へ侵入を開始、戦闘が始まっています」
「・・・・・・先程の地震はそういう事だったのか」
議員の1人がポツリと呟く。
実は会議が始まる少し前、地震が松本を襲ったのだ。しかしテレビには震源地不明としか情報が載らず、国民もわからないでいた。
この様子からだと4師がNERVを攻めているのも知らないだろう。
「奴らは世界で最も強大な戦力を持っているのだぞ!通常兵器どころかN2兵器も効かないような兵器をだ!」
大森は立ち上がって叫ぶ。
「それを国内に抱えているのは危険なのだ!交渉もしたが奴らはそれを無下にした!」
必死にNERVを悪者にしようとしているが、その事を国会で発表していなかったために彼を見る目は冷たかった。
それを見た東郷はさらに追い打ちをかける。
「交渉?違うでしょう。約1週間前にあなた方が行ったのは無条件降伏を迫る脅しです」
そう言って東郷は政府がNERVに提出した要求をひとつ残らず読み上げた。一言も間違う事無く読み上げられる要求に他の議員はポカンと口を開け、関係している議員は顔の色がだんだんと青くなっていく。
全ての要求が読み上げられると、シン・・・と静まるが、議員らの視線は大森達に向けられていた。
「さて、ここで皆様、戦略自衛隊の暴挙を止めるか止めないか。今から議決を取りたいと思います」
東郷がスイッチを押すと、モニターに賛成と反対の文字が映し出される。
「では押してください、この場で」
そう東郷は言うが、戦略自衛隊に制圧された部屋の中で反対を押すなんてできるわけが無い。首謀者達以外はおそらく賛成を押す。出来レースみたいなものだ。
少しすると集計が終わり、モニターには圧倒的な人数差で賛成派が勝った様子が映された。
「決まりですね。東郷議員、現在戦略自衛隊の統合幕僚長は北海道へ視察へ出かけているため、指揮系統は我が師団長の荒山陸将がトップです」
「わかりました。では・・・・・・」
東郷は原から差し出された携帯端末を受け取り、そこに表示している番号にかけた。
「初めまして、私は臨時政府の東郷です。命令を下します。第3新東京市の反乱軍を鎮圧してください。武器は無制限使用を許可します」
それだけ話して通話は終わる。しかしこれで第1機械化歩兵師団は官軍という大義を手に入れる事ができた。この時荒山は自分の執務室にいたのだが、この命令が来て通話が終わった瞬間直ちに第3新東京市へ向かっている2個歩兵連隊に命令の内容を伝えた。
官軍となった1師の2個連隊は、援軍として合流した1個機動連隊を先頭に再び進軍を開始。反乱軍の鎮圧に向かった。
そしてそれは山梨の4師師団臨時司令部に偵察隊や通信班からの情報としてもたらされた。
「なに!?松本の1師がこちらへ向かっているだと!?」
「はい。どうやら松本が野党議員と1師のクーデターにより制圧され、我々を反乱軍として鎮圧せよと命令を受けたそうです」
「あと2時間もしない内に到着するはず。早く体勢を整えねばなりません」
「出せる戦力は?」
「予備兵力の2個中隊と1個装甲機動連隊、1個砲兵連隊その他航空機が十数機です」
松本の1師は歩兵の数はこちらよりも多い。その分機動連隊は4師よりも少ない。だがそれでも現在航空機と砲兵の数はこちらより上だ。
「機動連隊の歩兵が頼りだな。無理に戦わなくていい。時間を稼ぐんだ」
「「はっ」」
臨時師団司令部から予備兵力が出動し、連絡を受けた機動連隊と砲兵連隊は1師の侵攻ルートに照準を合わせた。VTOL攻撃機も展開し、来たる1師に備えた。
♢ ♢ ♢ ♢
第2防衛線に到達した戦略自衛隊を待ち受けていたのは、先程よりも密度の濃い弾丸の雨だった。
特に遠隔操作の機関銃が効いているらしく、切れ目のない弾幕に戦自は進めないでいた。
「第2防衛線で戦闘発生。しかし1部を除いて完全に足止めできているもよう」
「順調ね・・・・・・カリーナに伝えて。作戦開始」
「了解」
第2防衛線で待機しているスペツナズに作戦開始命令が出される。1個小隊という少なさだが、それでも彼らは精鋭中の精鋭。士気は高かった。
「やっとね。レイラ、行くわよ」
「はい。状況開始」
カリーナ達はP90を装備し、戦自を横から殴りつけるように向かって行く。スペツナズは今回唯一攻撃のための部隊だったのだ。
第2防衛線のエリア全てを熟知したカリーナとレイラは、NERV職員以上に迷う可能性が低い。その証拠にすいすいと進んでいき、保安部と戦自が交戦している所まで無事にたどり着いた。
「いい?私達の目的は敵を確実に始末する事。ただし直ぐに移動するわよ」
「
隊員の1人がP90を構えながら言う。
「仕方ないでしょ。NERVにはこの武器が限界だったの・・・・・・よし、やるわよ」
スペツナズはカリーナとレイラの半分に別れて攻撃を開始。アーマーの隙間と頭を狙って撃ったため、一撃で仕留められる戦自もいた。だが仕留めそこなった隊員もおり、攻撃を開始して10秒後には反撃をもらうようになった。
どちらも独特な形と弾の特徴を持つ銃だ。ある意味注目される戦いだろう。
数の上では戦自有利に見えるが、保安部とスペツナズの十字砲火を受けているため死傷者は増えるばかり。小隊長か分隊長と思わしき男の指示で戦自は撤退を開始。体勢を整えるために下がっていく。
「よし。何人殺った?」
「死者11名、負傷者9名。ミノロフ大尉の所も似たような戦果です」
「でもさすがは戦自だ。一人一人の練度が高い」
カリーナと他の隊員は周囲を警戒しながらも、死んでいる戦自の装備から拳銃と弾倉を抜き取っていた。G11は論外だが、拳銃だけは鹵獲する価値はある。
幸いスペツナズに死傷者はいない。彼らの状態からあと何回かは攻撃できるだろう。
武器を鹵獲したカリーナ達は、防衛線を築いている保安部に鹵獲品を渡し、自分達は別の陣地に向かって行った。
他の防衛線ではさらに激しい戦闘が繰り広げられ、遠隔操作の機関銃が火を吹いていた。短機関銃以上の武器はないと予想されていたために戦自は進めずにいる。手榴弾やバズーカで攻撃する隊員もいたが、効果があったのは1部の陣地で、全体的に第2防衛線は突破されずにくいとめられていた。
防衛線が膠着してから1時間。戦自は後退を始め、最終的にジオフロントまで下がった。第1防衛線に留まらなかったのは、遠隔操作の武器を警戒してのことだろう。
「なんとか耐えましたね」
マヤがデスクに置いたコーヒーを飲みながら言う。
「だが奴らは体勢を整えてまた来るぞ。今のうちにこっちも再編成しないと」
「次は火炎放射器でも持ち込むんじゃないか?」
「まさか!」
「「ハハハハハハハハハ・・・・・・ハ」」
マコトとシゲルは軽く笑いあったが、フラグに近い事を言ってしまったのに気が付き、直ぐに真顔になって指示を出し始めた。
パイロットも一旦エヴァから降りて格納庫の真ん中、初号機のゲージに集まっていた。
「いや〜何もしないのは疲れるねぇ」
集まってそうそうマリはシンジの肩を叩きながら言った。
「ねえ渚、量産機は本当に来るの?」
「間違いなく来るよ。戦略自衛隊がここを占領する前にね。だからいつ来てもおかしくはない」
アスカはカヲルに聞くが、カヲルは当然だと言うふうに答える。その意見にはシンジも賛成しているが、カヲルほどゼーレを知っているわけではないので言わないでいた。
体勢を整える両陣営。
4師鎮圧に向かう1師。
いずれも全力を尽くして行動しているが、ヨーロッパを離陸した輸送機9機の存在には気がついていなかった。
あーー・・・さーやぁ・・・・・・
ユナがアンダーワールドに出てきて嬉しかったんだけどなぁ・・・