碇シンジはやり直したい   作:ムイト

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第59話 終戦

 シンジとアスカが2人での共同作業を終えて戦力差が上回った頃、レイは攻撃を受け流しては刺すを繰り返しているカヲルの援護に来ていた。

 

「あなた、なぜ倒さないの?」

 

『いや、あれに入っているのは僕であり僕でない。個体としては僕の方が強いかもしれないけど、エヴァンゲリオンの操作技術は拮抗しているんだ』

 

「そう。なら私が倒すわ」

 

『それにこれは人間が決着を付けるべきだ。僕が手を下す意味はない』

 

 カヲルは確かに共に戦うとは言ってくれたが、実際に手を下すのはシンジ達人間に任せようと思っていた。契約を破棄したのは人間側が先だ。いくら使徒側もそれに応じたとはいえ、落とし前はつけてもらわなくてはならない。

 

 これを乗り越えれば後はカヲルやレイも契約の破棄の完了に向けて動いていける。

 

「・・・・・・私は使徒じゃない。綾波レイとして碇君のそばにいたいだけ」

 

『それは僕も同じだ。シンジ君は僕が守る』

 

 バチッ

 

 零号機とMark.06の間に火花が散る。

 両機にのる2人は競うように量産機と戦い、意外にいい連携で追い詰めていった。

 

 なんとか量産機を倒したシンジとアスカは、遊んでいるマリを無視して、レイ達の下へ向かった。

 

『あんたら何やってるのよ!仕事しなさーいっ!』

 

 中々倒さない2人に何を思ったのか、キレて量産機の背後に攻撃をしかけるアスカ。敵の実力を理解したのか、慣れた様子で量産機に攻撃をしかけていた。

 

 シンジもレイと戦っている量産機に斬りかかり、また2人でコアとエントリープラグを破壊した。

 

 ふと辺りが静かになる。シンジは辺りを見回すと、破壊しつくされた第3新東京市に立っているのは、NERV側のエヴァンゲリオンのみ。量産機は壊滅していた。マリも残りの1機を倒したらしく、シンジ達に近づいてきた。

 

『ありゃ?終わっちゃった』

 

『でも念の為確認するわよ』

 

『さんせーい』

 

 マリとアスカはナイフを手に横たわる量産機に近づき、本当に倒したのかを確認した。たまに首をグサグサやっているが、シンジは見ないようにした。

 

(アスカやマリさんみたいに、ああやって確認できない僕はまだまだ甘いのかな)

 

 こんな風に考えるシンジをアスカが見たら、やはり「甘い!」と言いそうだ。

 2回目ともなるとそれなりの覚悟はしてきたが、今のシンジでは人を殺す事はできないだろう。

 

 だが今後、シンジは嫌でもその状況に立ち会うことになるが、それはまだ先の話。

 

 発令所ではシンジ達の勝利に沸き立っていた。男性職員は肩を組み合い、女性職員は自らの命が助かった事に泣いていた。その吉報は本部内やジオフロントのスピーカーから他の人間にもたらされ、他の職員を安心させた。

 

「さぁ皆、まだ仕事は残ってるわ。NERV本部、ジオフロント、第3新東京市の後始末を終えて初めてこの戦いは終わるの。皆、頼むわね」

 

「「「はい!」」」

 

 ミサトの言葉は勝利の空気に水を差す感じではあったが、むしろ職員達はやる気に満ち溢れていた。全ての戦いが終わった事が彼らの士気を高めているのだろう。

 

 後に箱根事変と呼ばれた出来事は、NERVと新政府側の勝利で幕を閉じた。

 死傷者の数は、事件終了時は忙しく確認がとれなかったため、翌年のものを書き出す事とする。

 

 ■箱根事変の死傷者

 ・NERV

 死者 114名(内非戦闘員26)

 負傷者(生還) 249名(内非戦闘員44)

 その他 偶然(・・)内部にいたロシア兵は10名負傷

 ・戦略自衛隊第4機械化歩兵師団

 死者 722名

 負傷者 4850名

 ・戦略自衛隊第1機械化歩兵師団

 死者 28名

 負傷者 461名

 ・民間人(第3新東京市のシェルター)

 死者 14名

 負傷者 53名

 ・計

 死傷者 878名

 負傷者 5623名

 

 以上が死傷者の数である。意外と数が少なかったのは、事前に民間人をできるだけ疎開させていたのと、地上戦は無人兵器群で対応したためだった。また、NERV本部内でも防衛線を構築できた事が大きかった。

 だが民間人を含めこれだけの死者を出してしまった前政権の責任は重く、事件後直ちに逮捕。さらに第4機械化歩兵師団の幹部が軒並みしょっぴかれたため、逮捕者は想像以上に多く、戦自では創設以来最大の粛清とまで(いい意味で)言われた。

 

 その後の裁判で前政権のメンバーと4師の1部は終身刑。それ以外は懲役20年と、全員が重い刑をかせられた。例えシャバに出ようが、氏名を公表したため不自由な生活をおくることとなるだろう。

 

 そして問題となった1つとして、4師の隊員の後任をどうするかが挙がった。人員が豊富とは言えないため、正式な指揮官が着任するまでは中央の人間が4師を率いることとなるだろう。まぁ九州は国防の重要な要所。とっとと解決する必要があった。

 

 さて、黒幕のゼーレはどうなったかというと、NERV本部の制圧に失敗し、なおかつ量産機も壊滅した事を知った国連軍が、箱根事変の3日後にユーロNERVへの突入作戦を試みていた。なんという見事な手のひら返し。

 まぁ実力は確かなので一応信用しているが、結果はまだ届いていない。NERV本部ではその報告を待っているが、あまり結果に期待はしていなかった。

 

「・・・・・・そろそろね」

 

 リツコが腕時計を見て結果報告の時間になった事を確認する。

 すると会議室の電話が鳴り、ミサトが受話器を取った。

 

「はい葛城・・・・・・はい、はい、わかりました。ありがとうございます。では」

 

「どうだった?」

 

「部隊が突入した時にはゼーレの連中は皆死んでたって」

 

「なんですって・・・・・・」

 

 国連軍が侵入したユーロNERVは、意外とあっさり陥落し、ゼーレがいる地下へ部隊が向かう。そこにいたのは身体を椅子に固定し、首からコードが伸びているゼーレの面々だった。

 また、何かが入っていたような細長い水槽も別の部屋にあった。金属板には【S.A.L】と書かれていたが、中はオレンジ色の液体だけだった。

 

 2人が難しい顔をしていると、冬月が会議室に入ってくる。

 

「ゼーレの老人共は死んだか?」

 

「副司令・・・・・・」

 

 リツコは冬月に先程の電話の内容を説明する。

 

「なるほど。連中は既に限界を迎えていたというわけか」

 

 キールを初めとするゼーレは、存在があまり知られていない。構成員数でさえ人によってバラバラだ。

 しかし、ゲンドウ並みに近い人間になると、ある疑問が浮かぶ。「こいつら何歳だ?」と。

 

 ゼーレは人体を無理やり延命させていた改造人間の集まりで、1番若くても100歳は超えていた。彼らの周りを調べても、データは消されているか破壊されており、いつから生きていたのかはわからない。一説によると第一次世界大戦を裏でゼーレが引き起こしたという。本当かどうかはわからないが・・・・・・。

 

 それはともかく、結果としてゼーレには時間がなかったのだ。自分達の身体は延命していても、もってあと数年。生きている間に補完を成立させるには、もうこのタイミングしかなかったのだ。

 

 ゼーレが消えた事により、国連の人類補完委員会は烏合の衆となる。こちらも国連が逮捕に向かったが、既に姿はなく、どこかへ行方をくらませてしまった。

 

「人類補完委員会はやっかいだが、まぁここが落ちる事はないだろうな」

 

「対策としてエヴァパイロットへの護衛を通常通りに実行します」

 

「頼む。ところで、パイロットはどうしているのかね?常に2人は本部にいる状態になっているらしいが」

 

 シンジ達は使徒も倒し、量産機も倒した。おそらく彼らが世界で1番危険な者達だろう。そんな彼らは現在、ローテでNERVに2人は常に待機している。使用する機体は2号機と3号機改。残りの3機は格納庫で眠っている。S2機関を搭載しているため、メンテナンスをほとんどしなくていいのが素晴らしい。

 

 現在はこの2機だが、今後は初号機、2号機、3号機の3機を使い、残りの2機は地下に封印する予定だ。

 エヴァの中で1番性能がいいのは初号機だが、残念ながらシンジしか乗せてくれないため、彼の専用機となっている。

 

「今日はシンジ君とレイです。格納庫の隣に作った部屋にいますよ」

 

 リツコはそう言って持っていたタブレットに監視カメラの映像を映した。

 この部屋はパイロット専用の待機室となっており、新しく作られた部屋だ。ここには冷蔵庫やテレビ・ソファなど住んでいる部屋並に設備が整っている。

 

 そんな中、シンジは学校の教科書を開いて勉学に励み、レイは本を読んでいた。平日の昼にやってるテレビ番組はつまらないし、ゲームは持ち込み可だがそもそも持っていないのだ。

 

「ひ、暇そうね」

 

「使徒は殲滅。世界も我々に害さない程度には平和になった。仕方あるまい」

 

「アスカとマリはお買い物。カヲル君は部屋から出ていない。平和でいいわ〜」

 

 ミサトは他のパイロットの事を思い出すと、ポツリと呟く。この日、カヲルはいつも通りに自室に、アスカとマリは第2新東京市松本にてお買い物。加持率いる保安部が護衛としてついている。

 

 しかしNERVの子供達(マリも・・・か?)は人類のために戦ってきたのだ。それも命懸けで。彼らはもう一生分戦った。後は大人達が頑張る番だ。

 

「マリ君は違うがパイロットは子供だ。休みは遊んでいるくらいがちょうどいい」

 

「それに第壱中学校も4月から再開できます。シンジ君も学友に会えることができるでしょう」

 

 今回の戦いで第3新東京市は壊滅的な被害を負った。第壱中学校やコンフォート17も例外ではなく、窓ガラスが割れたりヒビが入ったりした。だが構造的に問題はなく、修復してしまえば倒壊する心配はなかった。

 

 とは言っても新学期まで約2ヶ月。その期間を都市の安全が確保できるように徹底的に調べるための時間とした。

 学校再開の知らせは疎開していたトウジ達にも連絡がいき、中学校の生徒達は喜んだのだった。




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