碇シンジはやり直したい   作:ムイト

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第63話 平行世界

 

 

 

「やぁシンジ君」

 

「カヲル君。おはよう」

 

 NERVのロッカーで会うシンジとカヲル。今日はこの2人が当番なのだ。まぁエヴァが出るほどの事件は起きないとは思うが・・・・・・。

 

 私服から制服に着替える2人。少し前までヒトではなかった2人だが、今ではすっかり元通り。この前カヲルも身長が伸びたらしく、リツコが驚いていた。

 

 着替え終わると待機室へ向かう。もはや待機室はもう1つの家に等しい。

 しばらくダラダラと過ごしていると、珍しくカヲルが口を開く。

 

「ねぇシンジ君。僕達は似ているとは思わないかい?」

 

「え?」

 

「君はこの世界のシンジ君じゃない。じゃあここにいる君はなんなのだろうね。まぁ僕も同じさ」

 

「・・・・・・」

 

 カヲルの言葉にシンジはどう反応してよいかわからなかった。ここはNERV本部の一室。しかも監視カメラ付きで見張られている。というかシンジ達は24時間監視されているので変な会話はできない。例えば別世界の人間だとか平行世界を知っているとか。

 

 以前も同じようなことを言われた気がしたが、その時も周りに人がいたため話せなかった。

 

「大丈夫。ここは映像だけで音声はとられていない」

 

「・・・そっか。それで、カヲル君は何を聞きたいの?」

 

「全てを。シンジ君はヒトであるにも関わらず他の世界を知っているみたいだ。使徒である僕みたいに。あ、今はもうヒトか・・・・・・」

 

「実は僕もわからないんだ。世界を滅ぼしかけたのは確かなんだけどね」

 

 シンジはこれまで体験してきたことを話し始める。

 前の世界でサードインパクトを起こしかけたこと。

 気が付くともう一人の自分がいたこと。

 そしてこの世界に戻ってきたこと。

 

「なるほど。じゃあ君はやり直すために戻ったと」

 

「うん」

 

 使徒も前の世界には出てこなかったヤツが出現したが、シンジはそれらを乗り越えて今ここにいる。

 やり直してから半年以上が経った。使徒との戦いを終え、人との戦いを終え、シンジはもうエヴァの出番が無いと思っていた。

 

 後は一般人として第3新東京市で生きてゆく予定だったが、周りがそれを許してはくれなかった。

 世界の治安組織になると宣言したゲンドウに最初は心の中で素直に拍手をしていた。しかしそれにはエヴァの力が必要であったのだ。

 

「初めは戸惑ったけどね、僕は受け入れたよ。これも運命だって」

 

 引き続きエヴァパイロットをしているシンジ達だったが、彼以外は全くと言っていいほど問題視していなかった。

 よく考えてみれば一般人からパイロットになったのはシンジたけだ。

 

「もしNERVがエヴァンゲリオンやパイロットを手放したら世界が僕達を放っておくと思うかい?碇司令が僕達を手放すはずがないよ」

 

「だよね」

 

「14歳の君に裏の事情を察しろなんて酷だけど、むしろ知っている方がおかしいのさ」

 

「まぁ僕中学生だし・・・・・・」

 

 そう。忘れてはいけないのが、シンジが14歳だということ。もう1人の自分の記憶もあるにはあるが、それは戦略自衛隊や量産機を倒すまで。それ以降の記憶なんて存在していない。

 

 そのため、今は政治の話なんて全くわからない、普通の男の子になってしまったのだ。

 あるのはエヴァの操縦技術と戦闘技術だけ。むしろこれ以上何を求めるのか。

 

「シンジ君はこれからどうするんだい?」

 

「うーん・・・・・・高校に行って、大学に行って、多分NERVに就職するんじゃないかな」

 

「NERVにねぇ」

 

「僕は父さんと母さんの子供だし、実際に使徒と戦ってきた。だから死ぬまでこの世界を見届けなきゃって思ったんだ」

 

「君がそれを望むのならそうしたらいい。止めはしないよ」

 

「じゃあカヲル君はどうするの?」

 

 シンジはカヲルの質問に答えてから、ふと彼が今後どうしていくのかが気になった。NERVにいるのは間違いない。しかしカヲル自身がやりたい事がわからなかった。

 

「僕は加持さんと畑を耕してみるよ。この前誘われたんだ」

 

 なんと、意外なことにカヲルは農業をやってみたいというでなはいか。そもそも加持とそこまでの接点があったことにシンジは少し驚いた。変わり者同士気が合うのだろうか。

 

 カヲルは人間となった。今後はシンジ達と同じように成長していくだろう。となると、加持の後釜はカヲルとなるのだろうか。

 そんな事を思うシンジは、ふと別の事が頭に浮かぶ。

 

「そういえばさ、L.C.Lと一体化した時に妙な光景を見たんだ」

 

「妙?」

 

 シンジはその時の光景を話した。夢のような、でも実際に体験したかのような感じがしたのだ。

 全ての話を聞き終えると、カヲルは少しだけ考えてから口を開いた。

 

「多分、それはシンジ君の歩む未来の1つだと思う。もしやり直しを望まなかったらそれが現実のものになっていただろうね」

 

「あれが・・・・・・」

 

 思い出しても実に嫌な光景だ。

 世界は滅び、僅かな人類は細々と暮らし、父親とミサトが戦っていた。しかも自分は世界を滅ぼした張本人で、何億という人間を殺してしまった。

 

 初号機は空中戦闘艦の主機に転用された上に首に爆弾を着けられたシンジは戦う事も逃げる事もできない。もはや地獄だ。

 

「でもシンジ君はその未来を回避した。その事は誇ってもいいと思うよ」

 

「そう・・・だよね」

 

 そうだ。あの光景になるはずだった世界を変えたのだ。死ぬはずだった人間も死ななかった。

 

 これでいい。

 シンジはそう決め、日課の勉強をするために中学2年生の教材を手に取った。が、ふと脳内にある疑問が浮かぶ。

 

(あ、僕が世界をやり直した事はアスカにどう説明しよう・・・・・・)

 

 シンジが秘密を共有できる相手は5本の指にも入らないだろう。おそらくミサトも対象外だ。だがアスカは違う。人生のパートナーとして付き合う覚悟があるのなら、話し合う必要があるのだ。

 

 

 ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 先月シンジと密かなお付き合いを始めたアスカ(周りにはバレている)は、久々のコンフォート17の自室でゴロンと横になっていた。

 

 なぜいつもの部屋にいるのかと言うと、先日ミサト宅の検査が終了したため寮から戻ってきたのだ。付き合い始めた思春期の男女が一緒に住むのもどうかと思うが、軍隊生活に近い日常を送っておりそういう事にはほとんど触れてこなかった事もあり案外上手くやれている。

 

(う~。せっかくの休みなのにシンジは当番だなんてついてないわ)

 

 ミサトは仕事だし、シンジもNERVで待機状態。暇つぶしに学校に行こうにも、そもそも再開していない。つまり、アスカは暇なのだ。そろそろ3月中旬に差し掛かるというのに、どこにも出かけることができていない。

 

 それに若干の焦りもある。付き合い始めてから、シンジと他のパイロットを2人きりにするのが不安になってきていた。

 今度ミサトにシンジは自分としかペアを組めないように頼もうとアスカは考えた。まぁそれだとシンジは1回しかローテを組めないため、その願いは受け入れてもらえないだろう。

 

「にしてもいつ話そうかしら・・・・・・」

 

 アスカは自分の出自について、いつシンジに話そうかと迷っていた。自分がクローンである事はマリを含めた一部上層部しか知らない。

 もしかするとミサトはリツコから聞いているかもしれないが、アスカは自分の正体を知っている者を把握できていなかった。

 

 まぁそこはいいとして、重要なのはシンジに対してどうするかという事。似たような事で悩んでいるカップルであった。

 

 式波シリーズで最後に残った1体であるものの、アスカはもう様々な呪縛から解き放たれている。

 オリジナルを名乗って現れた惣流とやらは倒したし、エヴァには乗らなくていい。自分の価値はエヴァでしか示せなかったが、シンジというパートナーも手に入れることができた。

 

 そもそもオリジナルを名乗っていたあの自分はなんだったのだろう。

 本人の言う事が本当だとすれば、彼女は別の世界から来たことになる。そんな非現実的な事はとても信じられないが、使徒という非現実的なモノが来た以上、ありえないなんて事はありえないのだ。

 

「ちっ。本当はしたくないけど・・・・・・」

 

 アスカは携帯端末を手に取り、今ではシンジの次に息の合う者に連絡をとった。

 

 〔相談したい事があるんだけど〕

 

 〔なんだい姫!〕

 

 文章を送ると直ぐに返信があった。これには若干の気持ち悪さを感じながらも、マリに今悩んでいる事を話した。

 

 〔うーん。多分ワンコ君は気にしないと思うなぁ。正直に言ったらどう?〕

 

 〔でも・・・・・・〕

 

 〔嫌われないよ。これは断言できる。子供も作れるでしょうに〕

 

 〔何言ってんのよ!〕

 

 とっさに反論したが、間違った事を指摘されているわけではない。今月の健康診断でリツコに似たような事を言われた。

 クローンかつエヴァの呪縛の影響を受けていたが、今では全く問題ないという。歳に似合わない身体を持つが、普通の女の子として生きていける。もちろん子供も産める。

 

 だが、アスカは子供を産む事など全く考えてこなかった。それどころか彼氏を作ることも。そのため、あの日が来ると女の身である自分を呪った事もあったのだ。

 

 〔別に子供なんかいらないわ〕

 

 〔どうかな~。ま、とりあえず話してみたら?〕

 

 〔わかった。ありがと〕

 

 そう打ち込んでからアスカは携帯端末を机の上に置いた。ひとまずやることは決まった。確かミサトは今日も遅くなると言っていたため、シンジが帰ってきてからゆっくり話せる。

 

 しかしいざ話すとなると、チョコを渡した時以上に緊張する。自分の全てをさらけ出すのだから。だがそうでもしないと納得しない自分がいる。

 

 リビングに移動してソファで膝を抱えてあーだこーだ考えていると、玄関からパートナーの声がした。

 

「ただいまー」

 

 来た!

 と、アスカは覚悟を決めて玄関に向かう。

 

「おかえり。あ、あのね。話したい事があるの」

 

「アスカも?実は僕もなんた。ちょっと待ってて」

 

 シンジは手を洗って部屋着に着替えてからリビングに来た。アスカは珍しくペットボトルのお茶をコップに注いでシンジを待っていた。

 

 2人はソファに座る。数秒沈黙が続いたが、シンジから自分の事を話し始めた。

 この夜、ミサト宅は珍しく静かだった。互いの事を打ち明けて驚いたのは間違いないが、この日は2人だけの秘密を共有した思い出の日となった。




うーん、ごちうさの新作もやんなくちゃなぁ。
エヴァの本編の新しい話も内容は半分くらい決まってるけど書く時間ががが。
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