碇シンジはやり直したい   作:ムイト

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第65話 転校生イベント発生

 

 

 

 ゴールデンウィークが終わり再び学校生活が突入したこの日、シンジのクラスでは担任教師が少し遅れて入ってきた。朝のホームルームの時間はとっくに過ぎていたため、ヒカリは呼びに行こうとしていたのだ。

 

「よーし。今日は転校生を紹介するぞー!」

 

 担任は教室に入ってくるなりそう声をあげた。

 

「せんせーい。なんでこのクラスは転校生が多いんですかー」

 

 クラスメイトの1人が質問をする。確かにこのクラスは去年と同じメンバーという事を考えれば、シンジとアスカら短期間で転入してきている。その上さらに転校生が入ってくるとなると、多少疑問が生まれてもよいだろう。

 

「それは先生もわからない。でも喜べ男子共!転校生は女子2人だ!」

 

「「「うおぉぉぉぉぉおっ!!」」」

 

 転校生の性別が判明するとトウジやケンスケを筆頭にシンジ意外の男子生徒は雄叫びを上げた。対して女子生徒は軽蔑するような視線を彼らに向けるが、男子生徒が入ってきた場合自分達も似たような姿になるというのは予想出来ないのだろうか。

 

 ケンスケ達の歓声もそこそこに、担任は教師の扉の方へ向かいガラリと開けた。

 

「じゃあ入って」

 

 そして転校生が教室に入ってくる。

 1人は活発そうだが動きに一定の規律が見られ、もう1人は大人しい見た目でどこかお嬢様のような雰囲気を感じる。

 

 しかも予想以上に2人は美少女だった。

 男子生徒の歓声は頂点に達し、意外にも女子生徒の反応も悪くなかった。

 

「はいはい静かに!ほら、挨拶して」

 

「はい。第2新東京市から来ました霧島マナです。よろしくお願いします!」

 

「同じく第2新東京市から来ました山岸マユミです。以後お見知り置きを」

 

「というわけで2人は卒業までこのクラスにいる事になった。みんな仲良くするように!」

 

「「「はーい」」」

 

 転校生の2人、マナとマユミは全体を見渡しながら自己紹介をする。その際シンジの事をじっと見つめていた気がするが、気のせいだと思いたい。

 

 朝のホームルームが終わり、そのまま1限目に突入した。そして授業が終わり休み時間になると、2人の周囲には人だかりができた。

 

「なぁ、2人は知り合いなのか?」

 

「うん。親同士で付き合いがあってね。今回の転校も親の都合」

 

「山岸さん髪綺麗ね〜。どんなシャンプー使ってるの?」

 

「えっ!?あ、そうですね・・・・・・」

 

 などという質問をぶつけるクラスメイト達。マナとマユミは気を悪くすることは無く、一つ一つの質問にきちんと答えていた。

 

 質問時間は約10分。昼休みも含めて彼女達の休み時間は全て質問時間となってしまった。他のクラスの生徒も来ていたのだから、さすがに疲れているだろう。

 なお、2人は帰りのゴタゴタに巻き込まれるのを防ぐため、帰りのホームルームが始まるタイミングで真っ直ぐに帰宅させられた。

 

 帰る際も2人はシンジの事をチラリと見たが、それがわかったのはアスカだけだった。

 そして家に帰ったアスカはシンジを捕まえてリビングに正座させる。突然座らされたシンジは「制服がシワになるなぁ」と思いながらしぶしぶアスカに問いかける。

 

「なんだよアスカ。僕何かした?」

 

「シンジ。あんた今日の転校生2人と知り合い?」

 

「ううん。初めて会った」

 

「そう・・・・・・」

 

 アスカはその答えを聞くと難しい顔をして黙り込んでしまう。何やら考え事をしているようだが、シンジにはわからなかった。

 

「アスカ?」

 

「私の予想だけど、多分あのマナって子は軍事訓練を受けているわ」

 

通常ならアスカの言葉に対して冗談だろうと笑い飛ばすだろう。だがいつも以上に真剣な顔をしている彼女にシンジはそうする事はできなかった。

 

「軍事訓練?戦略自衛隊かな」

 

「バカね。高校生ならまだしも中学生よ?普通は入隊できないわよ」

 

 なるほど確かにアスカの言う通りだ。

 だったとしたら彼女は何者なのだろうか。危険因子の場合はミサトから報告がくるはずだがそれは無い。

 まだNERVで調査中なのか、それともシンジ達に情報を伝達するに当たらないと判断されたのか、それはわからなかった。

 

「シンジ。しばらく私と一緒に帰るわよ」

 

「え?」

 

「ミサトがどう判断するか分からないけど、私がシンジを守ってあげる。多分マナって子の目的はシンジだろうから」

 

「別にいいのに・・・・・・あ、もしかして――」

 

 ――嫉妬したの?

 と、口に出す前に、ガッシャーンとシンジは真横に吹き飛ばされる。アスカの回転蹴りをくらったのだ。

 

 まだ何も言ってないのに・・・!

 

 とシンジは思ったが、彼女に頭の中を読まれる事はこれまでにも何回かあったので、そこにはあえてツッこまない。

 

「バ、バカ言ってんじゃないわよ!そんな訳ないじゃない!」

 

「でも・・・アスカの様子少し変だ――むぎゅ」

 

 意外と彼女の一撃をもらっても元の位置まで這いずってこられる辺り、シンジも多少は成長している。こんな事で成長を実感したくないが。

 

 シンジはアスカの言い訳を受け入れるならまだしも、それに対して反論してしまった。こういった経験は少ないため、まだ乙女心が全くわからないのだ。

 そして再びアスカの足が降ってきて背中を踏まれ動けなくなる。

 

「とにかくアンタも転校生には警戒すること!いいわね!」

 

「・・・・・・ふぁい」

 

 これからも幾度とこういった事が起こるだろう。おそらくシンジは男女関係無くモテる。それを自覚し断るくらいの能力を身につけない限り、彼は一生アスカの尻に敷かれたままだろう。

 

 シンジがアスカから注意喚起を受けている一方で転校生の2人は何をしているのだろうか。

 

 とあるマンションの一室。ここに霧島マナは暮らしていた。

 マナは洋室の1つを改装して隠しスペースを作り、そこに通信機器を始めとした機材を設置している。

 

 学校から帰宅したマナは通信機器と通信傍受妨害装置の電源を入れてマイクに話しかけた。

 

「こちらソロモン、こちらソロモン。本部応答を願います」

 

『・・・・・・こちら本部。ソロモンは状況報告せよ』

 

 通信に出たのは戦略自衛隊の上司だった。

 

「本日予定通りに第3新東京市第壱中学校へ転校。対象の護衛を開始しました」

 

『対象はどうか』

 

「共に下校しています」

 

『NERV関係者はどうか』

 

「パイロット3名の内、丙(アスカ)は怪しんでいましたが、確信には至っていないようです」

 

『よかろう。そのまま対象の護衛に努めよ』

 

「了解」

 

 マナは同じく転校してきたマユミの護衛だった。彼女は戦略自衛隊の存在しない三等陸士という階級を持ち、同じく存在しない組織【幼年学校】の生徒である。入隊したのは中学1年生の時で、マナ以下数名が同じ宿舎で暮らしていた。

 

 彼女が戦略自衛隊に入った理由は、天涯孤独の身であったとか、スパイとかに憧れたとかという事でもあるが、やはり組織からの勧誘が大きかった。

 使徒が襲来し始めても彼女達は訓練を行い、今では立派な軍人になれる段階まで到達していた。

 

 その時だった。マナは突然第3新東京市行きの命令を受けた。内容は同い年の少女の護衛、そしてNERVとの若手交流。一応前者が主な任務だ。詳細は伏せられているが、彼女はマユミの目的をなんとなく察知していた。

 サバイバル訓練や諜報任務訓練もこなしてきたマナは特に難しい内容ではなく、こうした定期的な通信が求められるのみで、基本的には命令通りにやれば良いとのこと。

 

『・・・霧島、すまんな』

 

「え?」

 

『いやなんでもない。では次回は1週間後、同じ時間に行う。オワリ』

 

 そうして通信は切れた。

 報告相手はマナが幼年学校に配属した時の上司・・・というか教官で、厳しくもありながらマナ達にきちんと接してくれる信頼できる大人だった。

 ただし、普段ならあのようなセリフは言わないため、マナは通信が切れた後もしばらくヘッドホンに視線を向けていた。

 

 一方で、マユミの方も携帯端末にて通話をしていた。引越し先はマナと同じマンションで、彼女の部屋と同じ階に暮らしている。

 

『マユミ。上手く潜入できたようだな』

 

「はい」

 

『そのままエヴァパイロットと交流しろ。碇シンジとそういう関係(・・・・・・)になっても構わん。情報を引き出せ』

 

「・・・はい」

 

 山岸マユミ。彼女は周りより少しだけ良い暮らしをしていた少女であったが、数ヶ月前に父親を失い、野党議員である叔父に母親共々引き取られた。

 

 だがその叔父というのがやっかいだった。

 ゼーレという組織の派閥にいたらしいが、彼らが壊滅したことにより叔父の居場所はなくなってしまい、美味しい思いもできなくなってしまった。今では一野党議員として活動しているが、今の彼を動かすものはNERVへの復讐心だろう。

 

 始めは抵抗しようとしたが、現在母親は病気となってしまいその治療費は全て叔父に出してもらっている始末。つまり母親を人質にとられたのだ。

 マユミは賢くも優しい子であった。良心と圧力に耐えながらも、ついに心が折れて叔父に協力したのだ。

 

 叔父の命令。それはNERVへの復讐のため、弱みとなる情報を収集すること、そしてパイロットに関しての報告を行うこと。

 おそらくNERVに何らかの形で交渉を行い組織の弱体化又は解体を狙っているのだろう。そうマユミは思ったが、同時に上手く行くとは考えていない。一定のラインを超えた場合彼らはなんの躊躇も、微塵もなく、一切の手加減も無しに消しにくるだろう。

 

 だが叔父は止まらなかった。マユミも止まれなかった。やるしかないのだ。その行動が自らを破滅に誘おうとも。

 

 マナとマユミが転校してきたその日の夜、NERVでは緊急会議という事でNERV上層部の人間は居残りとなってしまった。ミサトも例外ではない。

 

「加持特殊監査部長。報告を」

 

「では本日第壱中学校3年E組に転校してきた霧島マナ、山岸マユミについて報告します。彼女達は少々面倒な存在です」

 

「と、いうと?」

 

「最初に霧島マナ。彼女は戦略自衛隊幼年学校3年生です。もちろん幼年学校は表向きには存在しない事になっているので秘密の組織です」

 

「なにそれ。子供を兵士として育てているの?」

 

「ミサト、私達が言える事ではないわ」

 

 ミサトは呆れたように言うが、リツコに反論される。

 ただ、リツコの反論は至極真っ当なものなのでそれに対しての返しが見つからない。エヴァパイロットは既に実戦投入しているし、アスカに至っては1桁代の頃から訓練を行っているのだ。いくら超法規的な組織とはいえ人様に言えることではない。

 

 また、加持の情報によると戦自の幼年学校生はエヴァパイロットとして育てる1面もあったそうな。

 まだシンジが第3新東京市へ来ていない時期、つまりレイのみが訓練を行っていたタイミングに戦自の諜報部隊はNERVの秘匿兵器のパイロットが中学生くらいであるという情報を掴んでいた。

 有事の際は消耗するパイロットを戦自で補い、そのまま指揮系統をNERVからかっ攫い、組織ごと吸収する計画もあったらしい。

 

「荒山統合幕僚長からは?」

 

「秘匿回線で連絡が来ました。どうやら戦自内に前政権の関係者が残っていたようでして、その者が送り込んだようです。霧島マナは戦自として表には出せない存在・・・命令の撤回は難しいのかもしれません」

 

「ではこちらとしても下手に動けんな。碇、動きがあるまでは警備課の隊員を都市内に散りばめておく、というのはどうか?」

 

「いいだろう。直ちに実行せよ」

 

 ゲンドウの命令を受けた加持はそのまま携帯端末にてどこかへ連絡をした。おそらく警備課だろう。

 ちなみに荒山は第1機械化歩兵師団長から統合幕僚長へ昇格した。粛清による人員不足もあるが、彼のみがその役職につける人員だったということが大きい。

 

 加持が連絡を終わらせ、再び席に着いたタイミングでミサトが口を開く。

 

「山岸マユミどうなの?」

 

「彼女は野党議員の叔父がいること、母親が入院していることだけわかっている。その叔父なんだが、どうやら彼も前政権の関係者らしい。おそらく山岸マユミの護衛として霧島マナがついてきた形だろう」

 

「こっちも面倒ね」

 

 結果として山岸マユミに対してはマナと同様の対策をとることに。現段階では手が出せないのがやはり辛いところだ。

 

 彼女達の目的は不明だが、前政権の関係者が送り込んだという事から、NERVに対して何らかの行動を起こす可能性は高い。

 こういう時は手っ取り早く始末するのが簡単だが、今の段階で手を出す事はできない。目的が何であれ、尻尾を出すまで監視するしかない。

 

「ところでパイロットには何か説明を?」

 

 ここで初めてリツコが口を開く。こういった畑違いの事にはあまり口を出さないので少し意外だった。

 

「あれらにはまだ詳しい情報を与えるな。余計な気を使わせて向こうに悟られるわけにはいかない」

 

「わかりました。じゃあ頑張ってね、ミサト」

 

「わーかってるわよ」

 

 やはりその辺の情報管理は自分がやらなければダメか、とミサトはダルそうに応える。

 むしろパイロット保護者として当たり前なのだ。

 それよりミサトは2人がシンジに接近しすぎた場合のアスカの対応を心配していた。

 ミサトの感ではアスカは嫉妬深く、気を許した者でさえ一定のラインを越えさせないだろう。

 

 これからしばらくは自宅でアスカがシンジをシバキ倒す光景がみられるだろう。ミサトは心の中でシンジに合掌をした。

 

 

 

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