火魅子伝 九洲後記   作: ノーリ

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おはようございます、今回から薩摩編となります。ここでの主役はあの女性ですね。彼女で火魅子の血を引く九峪の妻は最後になります。各地の妻、家族と過ごすという名目はここで一応果たされてしまうのですが、この後については一応プロットとして考えておりますのでそこについてはご安心を。とは言え、執筆した内容が受け入れられるかどうかはまた別問題ですが。

では、どうぞ。


薩摩編
NO.10 一直線は変わらない


火向を発った九峪たち一行は次なる地へと馬を進める。次なる地は薩摩。九洲を統治する火魅子の血を引く各県知事のうち、九峪と婚姻を結んだ相手である最後の人物、香蘭が統治する地である。ここを超えれば残すは藤那の治める火後と、只深に任せてある火前のみ。即ち、巡察の大きな目的の一つである家族との時間を過ごすこともこの地で一段落ということになる。

 

(とは言え、ある意味一番手ごわいのが最後なんだよなぁ…)

 

九峪が薩摩で待つ香蘭の顔を思い出しながらそんなことを考えていた。

 

(真打ちやラスボスってわけじゃないけど、最後が香蘭になるってのは出来過ぎな感じもするけどな。…ま、頑張るか)

 

色々な意味で今までの地以上に頑張らなければいけないのだが、それはとりあえず置いておいて、香蘭だけでなく子供たちをはじめとする他の薩摩の面々についても思いを馳せる。

 

(皆、元気かな?)

 

そんなことを考えながら馬を進ませていると、

 

「九峪様」

 

不意に、清瑞に声を掛けられた。

 

「ん?」

「先方隊から伝令が入りました。鹿児島までの道筋に危険はなし。安心して馬を進めてくださいとのことです」

「そうか」

「また、鹿児島では既に香蘭様以下、皆様がお待ちとのことです」

「はいよ、ありがとさん」

「いえ」

 

軽く叩頭して少し下がる清瑞。薩摩に入ったので火向に滞在していたときのような態度は取っていなかったが、それはあくまでも表面上である。

 

(九峪様…やっぱり浮かれてる)

 

今の簡単なやり取りで清瑞はそれがわかった。ある意味、九峪とは公私ともに一番長い清瑞だからこそ些細な変化の違いで九峪の考えていたことがわかったとも言える。それは清瑞も重々わかっているのだが、それでもやはり自分以外の女に思いを馳せているのがわかってしまったことは面白くない。

 

(薩摩を超えたら、またお仕置きしてやる…)

 

身分、立場や序列は重々わかってはいるのだが、それでも自分がすぐ側にいるのにも関わらず自分以外の女のことに思いを馳せている九峪に対して、一人ドス黒い嫉妬の炎を燃やしながら清瑞は細い目になって九峪を睨んでいた。図らずもそんな清瑞の変化を肌で感じ取った清雅は、鹿児島まで内心ビクビクドキドキしながら過ごすことになったのだった。

 

 

 

 

 

鹿児島に無事到着した九峪一行。ゆっくりと九峪が馬を降りて一年ぶりのこの地に降りる。

 

「ちちうえ!」

「ちちうえ!」

 

馬を降りた自分に駆け寄ってくる子供たちの姿を目に留め、柔和な笑みを浮かべながら手を挙げる九峪。が、

 

「く・た・に・さ・ま・ーっ!」

「わっ!」

 

子供たちの姿が見えたと同時に物凄い勢いで誰かに抱き着かれ、九峪は勢いそのまま倒されていた。

 

「痛ってて…」

 

痛みに顔を顰めながらも誰の仕業だ…と考えることもしない。耳に入ってきた良く知っている声色と、そしてこの地でこんなことをやるのは一人しかいないからだ。

 

「九峪様、九峪様、九峪様ーっ!」

「おいおい、香蘭…」

 

半ば呆れながらも、九峪が自分に抱き着いてきた人物…火魅子の血を引く妻の一人であり、この薩摩の地の頂点である香蘭に視線を向けた。自分に抱き着いてきた香蘭は久しぶりの再会というのもあるのだろうが、ウットリとした表情で熱のこもった視線を九峪に向けている。

 

「お前も少しは落ち着…んっ!?」

 

そんな香蘭を諭そうとした九峪だったが、最後まで言葉を続けることができなかった。そして、周囲も香蘭の行動に固まってしまう。何故なら香蘭が、有無を言わさず九峪に口づけをしたからだ。

 

「ん…あむ…はぁ…」

 

衆人が見ているにもかかわらず熱烈に九峪を求める香蘭。その、突如始まった強烈なラブシーンにある者は目をそらし、ある者は目を閉じ、そしてある者は開き直って微笑ましい目を向けるなど思い思いの行動をとっていた。ちなみに清瑞はムッとしながらも、我が子である清雅の視界を塞いで父親の醜態(?)を見せないようにしていた。父の威厳は保てるし、母の面目躍如にもなるという一石二鳥の行動である。と、少しして香蘭が九峪から離れた。

 

「はあっ…」

「こ、香蘭、お前な…」

「えへへ」

 

予想外の強烈なお迎えに文句を言おうとする九峪だったが、そうしようとする前に香蘭が九峪にギュッと抱き着いたのだった。

 

「お、おい」

「九峪様、九峪様、九峪様ぁ、待ってたのことよ!」

「わかった! それはもうよくわかったから、いい加減一旦離れてくれ」

「えぇ~! 香蘭、まだ足りないのことよ?」

「足りないって…お前な…」

 

熱烈歓迎はありがたいのだが、それでもこんな状況でいつまでもここでこうしているわけにもいかない。どうしたものかと九峪が逡巡していると、

 

「いい加減になさい!」

 

救いの声は二人の頭上から向けられた。そして怒号の直後、派手な打撲音と共に香蘭の全身からがくっと力が抜けていた。

 

「全くこの子は…」

 

呆れた表情で香蘭を見下ろしていたのは香蘭の母親である紅玉である。実力行使の結果、強引に香蘭を黙らせてくれたようだった。

 

(怖…)

 

一応は助けられた形の九峪なのだが、我が子に対しては相変わらず容赦のない紅玉に久しぶりに背筋が凍ったのは内緒である。

 

「すまないけど、この子を運んで頂戴」

 

九峪がそんなことを考えているなどとは露にも思わず、香蘭を力技で黙らせた後、紅玉は後ろに振り返って側にいた兵士に頼んだ。

 

「はっ」

「かしこまりました」

「お願いね」

 

担架のようなものに乗せられ、香蘭が退場していく。せっかくの一年ぶりになる再会だというのに台無しだが、ある意味香蘭らしいと言えば香蘭らしいとも言えた。

 

(やれやれ…)

 

度肝を抜かれる展開ばかりだったがようやく落ち着き、九峪が立ち上がると身体に着いた砂や土を掃い始めた。そんな九峪に、

 

「申し訳ありません、九峪様」

 

と、紅玉が頭を下げる。

 

「いや、ちょっと驚いたけど、気にしないでいいよ。紅玉さんが謝ることじゃないから」

「ですが、母親としては娘があれでは…。しかも今は立場もありますし…」

「わかるけどね」

 

九峪が苦笑する。

 

「まあ確かに時と場合は弁えてほしいけど、ああいうところがなくなったら香蘭らしくないとも言えるしさ」

「…喜んでいいのか、悲しむべきなのか、親としては複雑です」

 

紅玉の返答に、九峪はアハハと乾いた笑いを返すしかなかった。が、いつまでもこうしていても埒は明かない。紅玉は振り返ると、香蘭に出し抜かれたため呆然としていた二人に声をかけた。

 

「香九(こうく)、紅峪(こうや)、お父様にご挨拶なさいな」

「は、はい、おおかあさま!」

「わかりました!」

 

紅玉に紹介された二人…九峪と香蘭の息子である香九と紅峪がトテトテと九峪の許に近寄ると、揃って頭を下げる。

 

「お、おひさしぶりです、ちちうえ!」

「おまちしておりました!」

「ああ、久しぶり、大きくなったな、香九、紅峪」

 

相好を崩しながら屈んで目線の高さを合わせると、九峪は二人の息子に向かって胸を開く。そこでようやく年相応の笑顔を見せた二人が、我先にと九峪の胸元に飛び込んできた。

 

「ちちうえぇ」

「ちちうえぇ」

「本当に大きくなったな、二人とも。それに元気なようで何よりだ」

「はい、はい」

「ちちうえも、おげんきで」

「ああ」

 

一年ぶりの親子の対面に、九峪にギュッとしがみつく二人の息子。その光景にほっこりとする周囲だったが、

 

「二人とも、とりあえずその辺になさい」

 

紅玉にそう言われ、二人が従った。一年ぶりの再会なのに二人が素直に引き下がったのにはちゃんと訳がある。

 

「さ、玉蘭(ぎょくらん)、蘭玉(らんぎょく)、あなたたちも」

 

紅玉が後ろに振り返ってそう声をかけた。紅玉の後ろには、その陰に隠れるようにしてぎゅっと紅玉にしがみついていた二人の女の子の姿があった。こちらは玉蘭と蘭玉。先の香九、紅峪と同じく九峪と香蘭の娘である。

 

「え、えっと…」

「とうさま…?」

 

紅玉に促されたためおっかなびっくりといった感じで、モジモジしながら九峪に声をかける玉蘭と蘭玉。そんな二人に、

 

「お前たちも大きくなったな、玉蘭、蘭玉」

 

先ほどと同様に、胸を広げて迎え入れる体勢を作る九峪。だが二人は、香九、紅峪と違って駆け寄ってこない。

 

「?」

 

その、予想していたものとは違う反応に首を捻る九峪。紅玉も、

 

「どうしたのです?」

 

と、不思議そうに眼下の玉蘭と蘭玉を見ている。

 

「え、えっと…」

「その…」

 

相変わらずモジモジしながら紅玉にしがみついている玉蘭と蘭玉の二人に、九峪がちょっと芝居を打つことにした。

 

「そっか…」

 

広げていた手を戻すと、九峪がガッカリと肩を落とす。

 

「父様嫌われちゃったか…悲しいなぁ」

『え!』

 

九峪が言った思わぬ一言に玉蘭と蘭玉の二人が声を揃えて驚いた。そして、慌てて釈明する。

 

「そ、そんなことないもん!」

「そうだよ! ずっとまってたの!」

「でも、こっちに来てくれなかったしなぁ…」

「それは、だから…」

「とうさまとあうのひさしぶりなんだもん…」

 

自分たちが九峪を嫌っていると誤解され、慌てて玉蘭と蘭玉が必死に弁解する。勿論、九峪としてもそんなことは百も承知で、わざとこんな言い回しをしている。そして、それに気づいてる紅玉がクスクス笑いながら二人の背中を押した。

 

「二人とも、早くご挨拶をなさいな。お父様が悲しんでますよ?」

「は、はい、おおかあさま」

「わかりました」

 

舞台を用意され、背中まで押してもらった形の玉蘭と蘭玉がようやく動き出し、そして九峪の前までやってきた。

 

「あ、あの、とうさま…」

「うん」

「おかえりなさい…」

「うん、ただいま」

 

そしてゆっくりと慈しむように九峪が玉蘭と蘭玉の頭を撫でた。それがスイッチになったかのように、二人は先ほどの香九、紅峪と同じように我先にと九峪に抱き着いたのだった。

 

「とうさま、とうさま、とうさまぁ…」

「ヒック…ヒック…」

「ああもう、泣かないでくれって…」

「だって…だって…」

「とうさまがわるいんだもん…」

 

そう言われては反論することはできず、九峪は二人が泣き止むまであやすことしかできなかった。暫く時間をかけ、ようやく二人が泣き止んだところで折り曲げていた膝を伸ばして立ち上がる。そのときには二人の娘はもう九峪にベッタリになっていた。

 

「あらあら…」

 

あまりの変わり身の早さに苦笑する紅玉。そうしながら、県知事の代理としての仕事もこなすべく、深々と九峪に頭を下げた。

 

「ようこそおいで下されました、九峪様」

「うん。毎年のことだけど、ここにいる間はよろしく頼むよ」

「お任せを。何分あの子は、今年もあの調子なので」

「…ホント、ごめん」

 

九峪が苦笑しながら返した言葉に、紅玉が首を左右に振った。

 

「九峪様が悪いわけではありませんから。寧ろ、申し訳ない限りで」

「あー…とりあえずこの話はもうよそうか。これじゃいつまで経っても堂々巡りになりそうだ」

「お気遣い、感謝します。さ、中へ。具体的な仕事は明日からということで、本日はごゆるりと過ごされてください」

「ああ」

 

そして九峪は義理の母親である紅玉に先導され、子供たちと共に鹿児島へと足を踏み入れたのだった。

 

 

 

 

 

その夜。

 

「ふぅ…」

 

寝台に腰を下ろし、一息つく九峪。一年ぶりの九峪の鹿児島来訪ということもあり、今宵は盛大な宴が催された。薩摩の頂点が大陸出身の香蘭ということもあり、こういう場合には大々的、大らかな雰囲気になるのは向こうの気質というものであろうか。更に宴の前には久しぶりに子供四人と一緒に湯浴みをすることにもなり、その際に四人が九峪を取り合ったのもまた記憶に新しい。

そんな四人は今、紅玉が一手に引き受けている。これは九峪がここにいる際の規定事項であった。この地で夜に九峪を独占する特権を持つのはただ一人だけ。

 

「九峪様ぁ♪」

 

その人物、香蘭はベッタリと九峪に抱き着いて甘えた声を出している。しかもこれが寝所についてからのものではなく、寝所に向かう際の道のりからこの状態だったのだ。感情をストレートに表すのは昔からなのだが、正直なところ時と場合も考えてほしくもある。その反面、

 

(でも、変に遠慮するとそれはそれで香蘭らしくもないんだよなぁ…)

 

とも思っており、九峪としては香蘭の行動は痛し痒しだった。ただその中でも、所構わず引っ付くのだけは止めてほしいとは思っている。それも結構切実に。理由は香蘭が嫌いとか振る舞いにうんざりしたとかいう後ろ向きなものではなく、ただただ困るからだ。何がと端的に言えば、その身体がである。

復興戦争当時から香蘭のスタイル、プロポーションは妻にした女性たちの中でも一際群を抜いていた。今は年齢相応の色気がそこに加わり、尚且つ他の女性陣が羨み、嫉妬するスタイル、プロポーションには更に磨きがかかっている。そんな身体を何かあるたびに度々押し付けられ、更に四六時中好意を向けられては、ムラムラして仕方ない。

だが当の香蘭はただただ九峪愛しさの一点から、逢えない間の時間を取り戻すかのようにこのような真似をしている。それは九峪もわかりすぎるほどわかっているので、香蘭の行動を無下にすることもできないのが頭の痛いところだった。そのため、そのムラムラを解消できる今からの時間は九峪にとってももってこいではあるのだが、大きな問題が一つあった。

 

「九峪様」

「ん?」

 

そのことに思いを馳せていた九峪だったが、今の香蘭の声色が今までと少し変化したように感じ、眼下の香蘭を覗き込む。と、

 

「香蘭、もう我慢できないね」

 

目を潤わせながら、そのまま香蘭が九峪を押し倒した。

 

「あーっと…香蘭?」

「九峪様ぁ」

 

この後の展開が容易に予想できるため、表情を凍り付かせながら香蘭を覗き込む九峪。そして九峪を押し倒して微笑む香蘭は、その笑顔だけ見ればいつもと変わらなかった。ただ一つ、その目に淫蕩の炎が宿っていることを除けば。そして、それを理解した九峪がこの後の展開も悟って背筋をゾクッと震わせる。

 

「ふふふ、もう逃がさないね」

「えーっと…」

 

渇いた笑いを浮かべるも、今の九峪には実質それしかできない。火魅子の血を引く者だけではなく、耶麻台国の全幹部の中でも単純な力では今でもトップクラスの香蘭を跳ね除けることなど九峪には土台無理な話である。そんな九峪との力関係を十分に理解している香蘭が思い切りよく寝巻の前をはだけた。当然、九峪の視線は露になった香蘭のその胸に集中する。

 

(相変わらず、すっげー迫力…)

 

もう何度も見て、触って、味わった香蘭の胸だったが、今になっても全く飽きることはない。元から耶麻台国の女性幹部たちの中でもトップクラスの大きさだったが、初めて逢った当時から比べても間違いなく香蘭の胸は成長していた。それが香蘭の元々の成長によるものなのか、それともこれまで九峪に丹念に可愛がられた結果によるものなのかはわからないが、とにもかくにも息を呑むほどのその巨大な胸は相変わらずの迫力で九峪の視線と視界を奪う。

 

「ふふふ」

 

目に宿る淫蕩な炎はそのままに妖艶な笑みを浮かべると、香蘭はその胸で九峪の顔を押し潰した。

 

「んっ!?」

「はぁ…九峪様…早くいつものように可愛がってほしいのこと」

 

自分の胸の下で短く呻いた九峪を窒息させないように香蘭が少しだけ離れる。そうしながらも九峪の顔を自分の胸で挟み、九峪の性感を高めるようにその柔らかな感触を存分に活用したのだった。

 

「香蘭」

「九峪様、早くぅ」

「……」

 

せっつかれた九峪がまるで催眠術にでもかかったかのようにその頂点を口に含む。その瞬間、

 

「はあん…」

 

香蘭が敏感に反応した。その反応を窺いながら九峪は香蘭の望み通り、その頂点を舐め、しゃぶり、舌で転がしながら、両手で両方の房全体をゆっくりと可愛がっていく。

 

「あ、あ、あっ!」

 

九峪の行為に香蘭の快感が一足飛びに高まっていき、口をついて出ていく声が高く、大きくなっていく。そして少し後、一際甲高い嬌声を上げると、糸の切れた操り人形のようにガクリと九峪の上にのしかかってきたのだった。

 

「おっと」

 

慌てて九峪が受け止める。先ほど同様に胸に押し潰されて呼吸困難になっては困るために身体をずらし、取り合えず自分の頭部が香蘭の胸の下敷きになることは回避した。そして香蘭を、自分の胸の上にその肢体が重なるように調整して抱きかかえ直す。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

久しぶりの快感が脳天を突き破ったため、九峪が自分の下でそんな真似をしているとは思ってもいない香蘭が息を荒くさせながら大きな呼吸を繰り返していた。約一年ぶりの情事ということもあり、とんでもない快感が全身を駆け抜けたのだ。だが、この程度で終わるわけも終わらせるわけもない。それは香蘭もそうだし、九峪もそうだった。

 

「はうっ!」

 

不意に股間に感じた強い快感に香蘭がまた短い嬌声を上げ、身体を捩る。香蘭の拘束から一応逃れた形の九峪の手がもう伸びていたのだ。全ては香蘭の望みを叶えるため。そして、このときを待ち続けていた香蘭にとってもこの快感は甘美なものだった。

 

「あ…あ…あ…」

 

九峪の身体の上で全身を投げ出しながら、ビックンビックンと小刻みに震える香蘭。股間から断続的に全身に響き渡っていく強烈な快感に成す術なく、ドロドロに蕩けた顔で嬌声を上げることしかできなくなっている。真っ赤に染まったその顔は淫らながら、とても幸せそうだった。

 

(ーっ!)

 

その、一年ぶりに見る香蘭の淫らな姿にリミッターが飛んだ九峪が体勢を入れ替えた。普通に考えれば香蘭が九峪に組み敷かれるなんてことはないのだが、唯一の例外が閨の時間なのだ。

体勢を入れ替え、組み敷いた香蘭の姿を改めてまじまじと見つめる。どの妻たちもスタイル、プロポーションは抜群だが、その点でのトップとなるとやはり香蘭だろう。何しろ、出るところの出具合が凄い。他の妻たち以上のボリュームで自己主張するその胸は、何度見ても飽きることはなく興奮が冷めることもなかった。

 

(元々格闘家で今でも身体を動かすことは好きだし鍛錬を欠かさないからなんだろうけど、それでもこのボディラインを維持できてるってのは凄いよなぁ…)

 

素直に感心しつつも、その身体を堪能できることに九峪は毎度感動を禁じ得ない。しかし、その感慨にふけることができたのもここまでだった。不意に、九峪の股間に刺激が走ったのだ。

 

「うっ!」

「ふふふ、九峪様ぁ…」

 

とろんとした表情はそのままに、香蘭が甘えた声を出す。それだけで、今の刺激は香蘭の手が伸びたことによるものだと九峪が理解した。そして香蘭が上下に己の手を律動させ始める。

 

「ちょ、ちょっと待った、香蘭」

 

ゆるゆるとした律動だったが、刺客的にも触覚的にも味覚的にも香蘭の胸を堪能し、それで興奮が高まっていたため、ちょっとの刺激でも果ててしかねない。それがわかったからか、

 

「はいのこと」

 

香蘭は素直に九峪の言うことを聞いて手を離した。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

九峪が呼吸を整える。もう数えられないぐらい情事の経験はあるが、それでも果てるときはあっという間に果ててしまう。そしてまさに今がその危機だった。だが香蘭が思いもせず素直に九峪の願いを聞いてくれたため、何とか暴発することなく一旦、快感の波を引かせてゆくことができた。

 

「九峪様」

 

そんな九峪を見上げていた香蘭が、頃合いを見計らって九峪に声をかける。

 

「ん?」

「香蘭、なぜ今九峪様の願い聞いたかわかる?」

「え?」

「香蘭、九峪様にあのまま気持ちよくなってもらっても良かった。でも今夜は、再会後の初夜。だから…」

 

香蘭がゆっくりと股間を開く。

 

「九峪様、香蘭と一緒に気持ちよくなって?」

「こ、香蘭…」

 

ストレートな香蘭の誘い文句とその肉感的な体つき、そして淫らな仕草に九峪は、一度は退かせた快感の波のボルテージが再び高まっていくのを感じていた。

 

「九峪様、香蘭のこと、沢山愛してほしいのこと」

「こ、香蘭!」

 

九峪がなんとか我慢できたのはそこまでだった。ここまで求められてはその気にならない男などいない。ましてや香蘭ほどの女性なら尚更である。

 

「きゃん! 九峪様ぁ♪」

 

嬌声を上げながら再び寝台に組み敷かれる香蘭。そして直後に寝台の軋む音と男女の嬌声が一晩中寝所に響き渡ることになったのだった。

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