火魅子伝 九洲後記   作: ノーリ

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おはようございます、お久しぶりです。色々あって暫く執筆から離れていましたが、またつらつらと再開しようと思います。いつもの不定期投稿は相変わらずですがご容赦ください。

今回から火向編になります。この二次創作は小説準拠なのでここで待っているのは彼女。しかし、彼女は九峪の妻ではありません。ではどういう流れになるかというと…。そこは本文を読んでいただければと思います。勘のいい方はタイトルでわかっちゃうかもしれませんが。
また、本作は久しぶりの執筆なので表現がR15ですまなくなっちゃってるかもしれませんが、そう感じられたらご指摘いただければ。

では、どうぞ。


火向編
NO.07 一心同体の影


豊後を旅立った九峪一行は一路豊後を南下していく。最後まで悲しげな、諦めきれない表情をしていた伊万里と三人の娘たちに後ろ髪を惹かれる想いはありながらも、予定を変更するわけにはいかない。この先にはまだ九峪を待っている数多くの人がいるからだ。

そんな複雑な心境を抱えながらも、表面上にはそのことを億尾にも出すことなく九峪は馬に跨ってその手綱を捌く。次の目的地は火向。待ってるのは志野である。と言っても、志野は立場こそ伊万里と同じだが自分の妻ではない。だがそれでも、かつての戦友と久しぶりに顔を合わせるのだ。気分が高揚するのは仕方のないことだった。

その九峪の隣で馬首を合わせるのは今も専属の護衛である清瑞。そして、九峪と清瑞の周囲をぐるりと車座のような形で乱破が囲んで警戒していた。ここは耶麻台国内であり、対外戦争自体はもう何年も前のことだから厳重過ぎる警戒ともいえるが、九峪の、余人にとっては代えがたい立場であることを考えれば仕方のない処置とも言えた。と、

 

「ははうえ」

 

清瑞の隣に近寄ってくる幼い声が九峪の耳朶を打った。と同時に、一瞬だが清瑞のこめかみがヒクついた。が、声の主は元より九峪もそのことに気付くこともなく、その幼い声の主は清瑞の隣に馬首を並べる。

 

「せんぽうたいからのでんれいです。このさきのみちすじにきけんなところはなく、ふしんなけはいもないとのことです」

「そうですか、わかりました」

 

清瑞が一つ頷く。そして、

 

「清雅(きよまさ)」

 

と、その幼い声の主の名前を呼んだ。

 

「はい」

 

少年…清雅が顔を上げる。と、その直後、パーンという乾いた音が周囲に響いた。

 

『!』

 

突然の耳慣れない音にぎょっとしながら音源に目を向ける乱破たち。そこには、自分の頬を押さえている清雅と自分たちと同じように驚いている九峪の姿があった。そしてその頬は真っ赤になって熱を帯びているのが一目でわかった。

 

「は、ははうえ?」

 

清雅は何故こうなったのかわからず、ただ痛みと熱を帯びた頬を押さえながら清瑞を見上げた。と、

 

「何度言ったらわかるのです」

 

清瑞はいつも以上に怜悧で冷徹な眼差しで清雅を見下ろした。

 

「任務中は母でも子でもないと。任務中は私のことは何と呼べと教えました?」

「! し、しつれいしました! とうりょう!」

 

そう諭され、ようやく自分がなぜこのような目に遭ったのかがわかり、清雅は慌てて頭を下げた。その光景を九峪は頼もし気ながら、しかし一方で悲し気な表情で見つめている。

 

「お前ももう、年の頃は七つを数えるのです。いつまでも同じことを言わせないように」

「はい、すみません」

 

再度、深々と清雅が清瑞に頭を下げた。

 

「よろしい」

 

その姿に、清瑞がコクンと首肯する。

 

「では持ち場に戻りなさい。そして、引き続き周囲への警戒を怠らないこと。わかりましたね?」

「はい」

「結構。他の皆にも同様に、周囲への警戒を怠りなくと伝えなさい」

「はい! しつれいします、とうりょう、くたにさま!」

 

清雅は九峪と清瑞に頭を下げると持ち場に戻った。清瑞の指令は持ち場に戻った清雅から即時に他の乱破たちに伝えられ、乱破たちの間にピリッとした空気が走った。

 

「…少し、厳しすぎるんじゃないか?」

 

一連の行動を目にした九峪が清瑞に馬を寄せると、声を潜めながらそう指摘する。が、

 

「そんなことはありません」

 

清瑞は一向に意に介さず、涼しい表情だった。

 

「けどなぁ…」

 

納得いかないのか九峪が食い下がる。が、

 

「甘やかした結果、生命を落としてしまうことになるよりは余程ましでしょう」

「……」

 

そう言われては九峪にそれ以上この件で口を差し挟むこともできず、元の位置に戻ったのだった。

 

(はぁ…)

 

内心で溜め息をつきながら清雅と清瑞の様子を窺う。清瑞の様子には変わりはないが、清雅も清瑞に頬を叩かれたことについては何も蟠りがないように見受けられた。

 

(……)

 

当事者の二人がこうであるならばこれ以上九峪の出る幕はない。忸怩たる思いは抱えつつも、九峪は引き続き護衛の一段と共に火向に向かったのだった。

 

 

 

 

 

「九峪様、お待ちしておりました!」

「やあ、志野」

 

火向県県都、川辺。出迎えた志野に九峪が手を挙げて答えた。元々芸人である志野は若かりし頃から魅力的な色気があったが、今は年輪を重ねてその色気に更に磨きがかかっていた。復興戦争当時の九峪であればどうしようもない劣情を催すほどの色気である。が、火魅子…星華や伊万里といった面々と夫婦…男女の関係になっている九峪には大分女性に対する免疫ができていた。そのため、下心という意味で言えば若かりし頃より余裕をもって志野と向き合うことができるぐらいだった。相変わらず目のやり場に困る露出の高い衣装だが、そこに好色な目を向けずに済むぐらいには九峪も男としての余裕や経験を積んだのだった。と、

 

「九峪様」

 

当然のように隣にいる珠洲が口を開いた。

 

「よう、珠洲。お前も元気そうだな」

「ん」

 

軽くぺこりと頭を下げる珠洲。復興戦争当時は小生意気な子供であった珠洲も九峪や志野たちと同様の年数を積み重ね、志野の傍らでその補佐をしていたこともあって世間にもまれ、年齢相応の態度や姿勢を取れるようには成長していたのだ。

九峪としてはそのことに喜びを感じる半面、昔の小生意気な珠洲の姿を思い出して懐かしさも感じていた。と、

 

「え…」

 

その視線に気づいたのだろうか、珠洲がイヤそうな表情になる。

 

「何ニヤニヤしてるの? 気持ち悪いよ」

「す、珠洲!」

 

慌てて志野が窘めるが、九峪は九峪でこいつはこれぐらいでちょうどいいよなとも思っていた。難儀なものである。

 

「ああ、悪い悪い」

「…ふん」

 

軽く手を挙げて謝る九峪に珠洲がプイッとそっぽを向いた。その態度に内心でクツクツと笑いながら他の面々にも目を向ける。

 

「織部、重然、愛宕。みんなも息災なようだな」

「どうも、九峪様」

「ご無沙汰しておりやす」

「見ての通りですよ」

 

三人がそれぞれ返答した。石川島という九洲沖合のとある小さな島を根城にしていた義賊の娘だった織部。その織部は志野と同じ一座の団員だった縁で、そして重然は織部の父親の部下であり、愛宕はその重然の部下だったことからその流れで今も志野に協力していた。

 

「さて、積もる話と行きたいところだけど、ここじゃなんだな」

 

一通りの顔見知りとの挨拶を終えた九峪が志野へと振り返った。

 

「出迎えてもらって早々で悪いけど、案内してくれるかい?」

「はい、九峪様」

 

頷いた志野(と、珠洲)が九峪を先導するかのように歩き出す。その後に九峪と清瑞の一隊。そして後詰を織部たちが務めて、九峪は川辺城へと入ったのだった。

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

 

川辺城執務室。湯呑みから口を離した九峪が大きく息を吐いた。

 

「お疲れ様でした、九峪様」

 

その姿に、志野が楽しそうに微笑んだ。成長したのはわかっているが、それでも根っこの部分は初めて逢ったときから何も変わらない、飾らない九峪の姿に志野は嬉しく思っていた。

 

「いや、基本俺は報告を聞いただけだからさ」

「ふふふ…」

 

そんな九峪の返答に、志野がクスクスと微笑む。

 

「でもま、一年前と特に変わりないようで何よりだよ」

 

九峪が湯呑みを床に置くと周囲に視線を送った。九峪の知識から九洲でも大分椅子やテーブルが製造されて活用されるようになったが、従来の敷物を敷いた車座でのスタイルも未だ廃れることはなく、今日のこの場もその形でこの一年の火向の政務報告を聞いていた。

 

「やっぱり、有能な人材の頭数が多いだけあるな」

「いや~、照れるねぇ」

「ありがとうごぜえやす」

「やった! 九峪様に褒められた!」

 

お褒めにあずかった織部、重然、愛宕が面映ゆくも誇らしげに照れた。が、九峪は噓は言ってはいない。多少、誇張したところはあるが志野をはじめとした火向の幹部連中が有能なのは事実だった。その面々が毎日頑張ってくれているのだ。発展はすれど衰退や混乱が発生するわけはなかった。今回九峪が聞いた政務報告も、それを裏付ける内容だった。

 

「相変わらず、火向の政情は安定しているのを確認できて良かったよ」

「ありがとうございます」

 

志野も嬉しそうに頭を下げた。何も言わないが珠洲も叩頭する。

 

「それで九峪様、陳情させていただいた件ですが」

「ああ、早速手配するよ。清瑞」

「はい」

「火向の政務報告書を耶牟原城へと届けるように手配してくれ。予算については国庫と相談になるが、出来る限り陳情に沿った内容で決済するように添えてな」

「かしこまりました」

 

九峪の指示に頷くと、清瑞が瞬時にその場から姿を消した。

 

「…相変わらず、見事な手並みですな」

 

跡形もなく消え去った清瑞に、重然が感嘆の溜め息を漏らした。

 

「おかげでこっちは助かってるよ」

「でしょうなぁ」

 

九峪の返答に、したりしたりといった感じで重然が頷いた。

 

「九峪様」

 

そこで、今度は織部が九峪に話しかける。

 

「ん?」

「こちらへの御滞在は、今年もいつも通りのご予定で?」

「ああ、そのつもり」

「ええ~」

 

その返答を聞いた愛宕が不満そうな表情を見せる。

 

「もうすこしあたしらに時間割いてくれてもいいじゃないっすかぁ!」

「耳が痛いね」

 

不満そうな愛宕に九峪が苦笑する。

 

「お、おい、愛宕!」

 

そこに、慌てて重然が割って入った。

 

「お前、九峪様になんて口の利き方を!」

「だってお頭ぁ…」

「だってじゃねえ!」

 

重然が顔を真っ赤にして愛宕に怒鳴った。が、

 

「いいって」

 

九峪は気分を害した様子もなく苦笑しながら重然を宥める。

 

「愛宕の言ってることはもっともでもあるんだから」

「い、いや、しかし…」

 

九峪に宥められて恐縮しきりといった感じの重然だったが、それでも愛宕の言動は許せなかったのか納得いかない様子だった。

 

「はいはい、そこまで」

 

と、見計らったかのように志野がぱんぱんと手を叩きながら割って入る。

 

「愛宕さん、気持ちはわかりますけど九峪様は他にも回らないといけませんから。それに、薩摩では香蘭様がお待ちですし」

「ぶー、わかってるよぉ」

 

愛宕が頬を膨らませ、不承不承ではあるが納得した。九峪のこの九洲全土への巡察は各県の実情などを実際にこの目で確認することが目的だが、もう一つ大きな目的がある。それが家族と共に過ごすことだった。そのため、各県でも九峪の妻がいる耶牟原城、豊後県、薩摩県での滞在は必然的に長く期間を取っており、その反面、それ以外の地での滞在は短かくしているのだった。政務報告と、どうしても必要な箇所の現地視察ぐらいで、それが終わったら慌ただしく去る。それが、前述の三か所以外での九峪の巡察のルーチンだった。

 

「では九峪様、今回もいつも通りに?」

「ああ。慌ただしくて悪いけど」

「いえいえ。その代わり、ご滞在中はしっかりと働いていただきますよ?」

「怖いな」

 

苦笑した九峪に、志野をはじめとした火向の幹部一同が楽しそうに笑みを見せたのだった。

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

 

政務報告後、毎回恒例の歓迎の宴が開かれて楽しい時間を過ごした九峪が湯浴みを終えて川辺城の奥の間にある寝所で横になっていた。

一年ぶりの再会はやはり嬉しく、そして楽しい。誰も欠けずにこうしてまた顔を合わせることができたことに感謝しながら、楽しいときを思い出してその余韻に浸る九峪。本来ならばここの長である志野が使用するべきこの場所なのだが、旅芸人として育ってきた性が抜けないのか、私生活は今でも一座の中で行っているのだ。もっとも、流石に立場が立場なので街中に一座を構えるわけにはいかず、城内の敷地を間借りしてそこに一座を構えるという形になっているが。

ともあれ、そんな事情もありこの奥の間の空間は普段は使用することなく、このような時に介抱するだけの形になっていた。警備を担当するのは火向の兵士たちとそして、

 

「九峪様」

 

寝所の戸が開き、清瑞が入ってきた。当然、清瑞をはじめとする乱破も九峪の警備を担当するのだが、一般の者が担当できるのはこの奥の間に続く入口の場所まで。九峪の寝所の警備については清瑞の専任事項となっており、他の者は火急の用件のとき以外は内部に入ることは固く禁じられていた。それを考えれば清瑞がこうして姿を現すのは不思議なことではない。しかしその出で立ちはいつもの乱破装束ではなく、九峪と同じような寝巻を羽織っていた。そしてこれもまた九峪と同じく湯浴みを終えているのだろう、ほのかに火照っていた。

 

「清瑞」

 

清瑞の姿を確認した九峪が上体を起こして寝台に腰掛ける形になる。清瑞は戸を閉めると、いつもより心持ち足早になって九峪へと近づいた。そして、九峪の隣に同じように寝台に腰を下ろす。と、それを合図としたかのように九峪が清瑞を抱き寄せた。

 

「あっ」

 

短く声を上げたがまるで抵抗することなく清瑞が九峪にもたれかかる。そして九峪の成すがままにその胸に顔を埋めていた。目を閉じ、うっとりとしているその表情は、決して普段の清瑞を知る者からは想像できない表情だった。そう、九峪の前だけでしか見せない表情なのである。九峪は清瑞の顎に手をかけるとその整った顔をクイッと持ち上げる。そして、徐に口づけをした。

 

「んっ…」

 

九峪に応えるように清瑞が九峪の首に手を回す。しばらくの間淫らな水音が寝所に響き渡った。

 

「ぷあ…っ」

 

やがて、どちらからともなく顔を離す。

 

「今夜から、また可愛がってくださいね」

「ああ」

「嬉しい…」

 

清瑞が再びうっとりとした表情になった。そのまま九峪が清瑞を寝所に押し倒す。普通に考えれば清瑞が九峪に組み敷かれることはあり得ないのだが、このときだけは別だった。乱破の清瑞ではなく、一人の女性の清瑞として九峪に向き合っているからだ。

 

「んっ…」

 

清瑞に覆い被さった九峪が再び口づけをする。清瑞もそれに当然のように応え、腕をその身体に回して密着させた。

思えば九峪ともっとも古い付き合いになるこの世界の人間が伊雅、そしてこの清瑞だ。最初は清瑞が九峪に反発していたが共に時間を過ごすことによって少しずつその関係も変化していった。九峪と清瑞の二人だけのことではないが、生死を共にすることでお互いの想いや感情は刻々と変化していく。更に清瑞は一時期生け捕られて天目のところに拘束され、その間九峪の側に居れなかったことがまた九峪への想いに気付かせ、そして拍車をかけたのだろう。それを考えれば遅かれ早かれこのような関係になることは必然とも言えた。

ただし、清瑞は一介の乱破である。復興戦争を終えた後に伊雅の口から自身の出生について聞かされたのでそれを名乗り出ることはできたが、そのときにはもう既に立場や体制はほぼ固まっているため名乗り出たところでそれがどうなるものでもなかった。しかし、九峪への想いは如何ともしがたかったので、引き続き乱破として九峪の側に仕えることを選んだのである。

表出している立場や身分から星華、伊万里、香蘭とは同格にはなれないが、それと引き換えに九峪とはもっとも長く同じ時間を共有できる立場になることができた。清瑞にはそれだけで十分だった。他の連れ合いがいるときにはその人物に譲るが、それ以外の時間は全て自分が九峪を独占できる。それを選んだだけだったからだ。

これまでは星華、伊万里がいたため清瑞は控えていた。だが志野は九峪とは男女の関係にない。だからこそ、今は自分の出番なのである。毎度のこととはいえ控えていた間に募る思いは、こうやって独占できたときに爆発するのだ。

 

「ふっ…ふっ…ふうぅ…」

 

口づけの間に鼻を鳴らし、息を荒くしながらもひたすら九峪を求める清瑞。独占欲が取り立てて強いというわけでもないのだろうが、側仕えという立場から星華たちと九峪が過ごしている間もその様子を遠ざけることができないため、解放されたときは余計に歯止めが利かなくなるのだろう。貪るように九峪を求めていた。

 

「ぷは…っ」

 

やがて、九峪がその攻めに耐えきれなくなり清瑞から離れる。といっても、離れることができたのは顔だけで、しっかり背中に回した腕でガッチリと身体は固定されているのだが。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

しかし清瑞も夢中になっていたため、九峪が離れた直後、肩で呼吸をしながら荒い息を繰り返す。そんな清瑞の様子に困りながらも愛おしくなり、九峪は今度はその首筋に口づけをした。

 

「あっ!」

 

ぼーっとしたところに不意打ち気味に吸い付かれ、いつもより感じてしまったのだろう。清瑞が思わず両手の拘束を緩めてしまった。と、今がチャンスとばかりに九峪は片手を清瑞の胸に、片手をその股間へと滑らせた。

 

「ああっ!」

 

首筋も含めて三か所からの刺激に清瑞のソプラノボイスが一オクターブ上昇する。その様子を窺った九峪が、手を緩めずに追撃をかける。

 

「あっ、あっ、あっ!」

 

九峪から与えられる快感に昇り詰めていく清瑞。星華、伊万里と続いていて自分が独占できる期間が大分空いてしまったためその上乗せもあるのだろう。程なく、

 

「あああっ!」

 

一際甲高い声を上げて清瑞の身体がしなった。そして少し後に、グッタリと身体を弛緩させて寝台にその身体を投げ出した。

 

「お、随分、感度がいいじゃないか」

 

ぐったりした様子の清瑞を揶揄するかのように九峪が清瑞を覗き込んだ。それに対して、

 

「あ、あ、当たり前じゃないですか」

 

清瑞が夢見心地の表情になりながらも答えた。

 

「どれだけ私がお預け食らってたと思うんですか。九峪様は不自由しないからいいですけど、こっちの身にもなってください」

「…そうだな、悪い」

 

痛いところを突かれた九峪が素直に謝る。己の優柔不断で自分に思いを寄せてくれている女性陣には随分と不自由をさせているのだ。相手をしたときの昂ぶりが予想以上のものでも、それは自分が蒔いた種である。であれば、それに全力で応えるのが義務というか礼儀というものであろう。

 

「わかればいいんですよ、わかれば」

 

波が引いて落ち着いたのか、清瑞が微笑んだ。但し、久しぶりの情事で身体に火が点いてしまったのか、その笑顔から淫蕩な笑みは消えていない。その表情にゾクッとした九峪だったが、気づいたときは遅かった。あっという間に身体の位置を入れ替えられ、上下が逆転していたのである。即ち、今度は九峪が清瑞に組み敷かれる状態になっていた。

 

「ふふ…」

 

清瑞が淫蕩な笑みそのままに九峪の股間に片手を伸ばす。そうしながら、もう片方の手で九峪の胸板をまさぐっていた。まるで、先ほど自分がやられたことのお返しのように。

 

「き、きよみ…」

「んっ」

 

九峪が清瑞の名前を呼ぶより早く清瑞が行動を起こした。そのまま顔を近づけると九峪の唇を己の唇で塞いでしまったのだ。そうしながら、両手の動きは止めていない。股間と胸板をまさぐり、九峪をどんどんと昂らせていく。そして、十分な準備が整ったのを肌で感じた清瑞がようやく九峪から離れた。

 

「ぷはっ!」

 

息を荒くしながら口元を濡らした唾液を袖口で拭う清瑞。その表情は実にやる気マンマンといった感じで、表情から見ればどちらが攻めでどちらが受けかわからないほどである。

 

「んっ」

 

清瑞は少し腰を浮かせて自身の股間に九峪自身を宛がう。そして、そのままゆっくりと腰を沈めていった。

 

「っ!」

「はあぁ…」

 

お互いが感じる久しぶりの相手の感触に九峪は歯を食いしばり、清瑞はうっとりとした吐息を漏らしながら表情を淫らに歪ませた。清瑞はそのまま前傾姿勢になると九峪に覆い被さってその首筋に己の腕を回す。

 

「き、清瑞」

「もう離さないんですから…」

 

見方を変えれば狂気ともとれるような淫らな表情を浮かべながら清瑞は律動しだした。そうしながら九峪の頬といい首筋といい唇といい、口づけの雨を降らせていく。そしてさらに自信を主張するかのように己の胸を九峪の胸板に圧しつけて微細に動かし始めた。

 

(うわっ!)

 

三点から感じる極上の責めに、九峪はすぐに果ててしまわぬようにするのが精一杯の防戦一方だった。

 

「九峪様、九峪様、九峪様ぁ…」

 

九峪の名をしきりに呼びながら、しかし清瑞の律動のペースは緩まることなく、それどころか激しさを増していく。九峪はわざとではないにしろ、自分に思いを寄せてくれている女性陣を結果的に弄んでいる罪の代償を、文字通り身体で支払うこととなっていた。

こうして久しぶりに共に過ごす夜を迎えることとなった清瑞にいいように攻められ、この日の九峪はこのまま一夜を明かすことになるのだった。

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