大本営の資料室   作:114

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はい

前回のお話の翌日のお話となります

本編に関係するお話ではありはしますが、短いのでBreakとして投稿します



注意、今回のお話では誰1人として傷つきもせず、死にません。ご理解よろしくお願いします(なお、登場人物は殆ど死んでいます)



FileBreak.★★☆☆☆

 

海の鎮守府 談話室

 

 

 

 

 

「…いや、ゴーヤを信じていなかった訳じゃないけれど…凄いね…」

 

 

播磨鎮守府の面々が来てから翌日

 

朝一で談話室にやって来たゴーヤは部屋の様子を見て驚愕

 

そのまま近くの廊下を歩いていた響を呼び止め、無理矢理連れてこられると、談話室の変化に響は驚く

 

 

 

なんと昨日までの談話室よりも一回りほど広くなっていたのだ

 

 

「ね!びっくりだよね!ゴーヤ、ここの窓から朝日見るのが好きだったから今日も見ようって思って部屋に入ってきたらびっくり!なんか広くなってるんだよね!」

 

 

ハイテンションのゴーヤに対して強ばった表情の響は口元に手を当て、考える

 

 

「…人数が増えてきたから…なのかな…けれど一体誰が…どうやって…」

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

海の鎮守府 食堂

 

 

海の鎮守府では少女達は基本的に空腹になることはないが、1日三食食事をすることをルーティンとしている

 

 

その日に決められた2,3人で厨房に入り、食事を作り、皆で食べる

 

 

艦娘らしく、人らしくいられるようにでもある

 

 

 

 

そんな中、新人の1人、村雨は御茶碗片手に憂鬱そうな表情をしている

 

向かいの席に座る暁が頬にこめ粒をつけたまま首をかしげる

 

 

「どうしたの?村雨」

 

「…う…昨日の筋肉痛で御茶碗持つのが辛くて…」

 

項垂れながら暁に返答する村雨に、彼女の左側の席に座った時雨は笑顔を向ける

 

 

「ああ、わかるよ…けど大丈夫、3日もすれば慣れるよ」

 

「…全然フォローになってないし…っていうかあんたはあんたでよく平気ね…狭霧」

 

 

時雨を相手しつつ自分の右側に座り、静かに食事を取る狭霧に問う村雨

 

狭霧は苦笑いし、すぐに表情を曇らせる

 

 

「私は元々トレーニングは欠かさず行っていましたから…特別筋肉痛はありませんが……とりあえず…阿武隈さんとの試合…手合わせ…ですか?…はもうやりたくありませんね」

 

「あ、それわかる…私ももうあの人とは"あれ"はやりたくない…本当に」

 

 

敵同士だった村雨と狭霧は共通の"苦手"な存在が現れたせいか、昨日よりも距離が縮まったように暁には見えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばさ、阿武隈達の…トラック艦隊の親衛隊ってあんじゃん?」

 

 

別のテーブルではご飯粒だらけのゴーヤの口を拭く摩耶が、向かいに座り味噌汁を飲む阿武隈に問うていた

 

 

「トラック艦隊の映像を見た感じ、球磨と神通が圧倒的過ぎる感じしたんだけど、実際は誰が一番強いんだ?」

 

 

摩耶の問いを聞き、阿武隈はふふん、と鼻息を荒くし、どや顔で腕を組む

 

 

「…へっへーん…ねぇ、あたし…第一親衛隊の"隊長"だからねぇ?」

 

 

「うん?…ああ、そうだっけ…」

 

自信満々の阿武隈に対して摩耶の反応は寂しい

 

口を拭いてもらえたゴーヤは満足そうだ

 

 

「…信じてないでしょ!…本当にあたしが一番強いんだからね!!」

 

「…へぇ、そうなんだ」

 

 

摩耶はそう返し、かわいそうなものでも見る目で阿武隈を見ると、阿武隈はため息を吐く

 

 

「…まぁ…パワーだったら多摩ちゃんが格段に強いかな…球磨ちゃんはパワー、スピード、スキル、とバランスが良すぎって感じで…神通さんはパワーもスピードもそこそこだけど、スキルは誰よりも高い…って、あたしは感じてるけど」

 

「お?ちゃんと説明してくれんだな」

 

「色んなタイプがあるんだねぇ」

 

 

意外にもちゃんと説明してくれた阿武隈に対し、摩耶とゴーヤは興味津々

 

 

向こう隣に座る嵐は阿武隈の説明にさりげなく聞き耳を立てている

 

 

 

「じゃああれか?アタシでもあんな…サイヤ人みたいな戦い方も出来るってことか?」

 

「…さいやじんってのがよくわからないけど…どうかな?…少なくともトラック艦隊はみんなボスからのチューニングがあったから戦えるようになったと思う…普通に鍛えるだけじゃあ……どうなんだろ。わかんない」

 

 

阿武隈の素直な返答に摩耶は困ったように笑う

 

 

「じゃあ仕方ないな…アタシも跳んだり跳ねたりしてみたかったよ」

 

「摩耶さんが跳んだらぶるんぶるんだね!…ぐぇぇえぁぁあ…」

 

 

何が、どこが、とは言わない

 

摩耶はゴーヤの頭頂部をぐりぐりと押さえる

 

 

 

 

 

 

また別のテーブルでは白雪、朝潮、長波と霰で食事を取っている

 

 

 

静かに食事を取っていると、食べ終えた朝潮が口元をナプキンで拭きながら長波をじっと見て

 

 

 

「…長波さん」

 

「ん?…んぐんぐ……っくん…なんだ?」

 

 

朝潮から声をかけられるとは思ってなかった長波は、噛んでいたおかずを飲み込み返事

 

 

 

「ゲスカビアン、とはなんでしょうか…?」

 

 

朝潮の問いかけに長波の表情はぴしりと硬直する

 

「…?」

 

「…え?…ゲ…なんですか?それ」

 

よくわかっていない霰と白雪は首をかしげる

 

 

「…なん…で……!」

 

 

ぽろっ、と思わず箸を落としてしまった長波は動揺しながら朝潮に聞き返す

 

 

「…あの映像が終わり、皆で捜索するときに長波さんが呟いていたのが聞こえたので…それでゲスカビ「やめろ!その名前を出すな!」

 

 

がたん、とテーブルを鳴らし朝潮に掌を向ける長波

 

 

「…長波さん…」

 

「…あれは…あれはそう易々と見て良いものじゃあない…………私達が…見ちゃあ駄目なんだ…!」

 

 

両手で自分の頭を押さえる長波の表情はまるで鬼気迫るものを感じる怯える者の様

 

 

冷や汗を1滴垂らした朝潮はむむ、と唸ると、息をひとつ吐く

 

 

「…わかりました…長波さんがそこまで言うのなら…朝「なんだ長波…お前もゲスカビアンを知っているのか」

 

 

予期せぬ言葉が長波の隣から聞こえてきた

 

喉元に刃を突き付けられたような表情の長波はゆっくりとそちらを見る

 

 

「…知ってんのか…?…初月」

 

 

納豆をぐぁしぐぁしと力強くかき混ぜる初月が良い顔で長波を見ていた

 

 

「驚いたな。まさかここで僕の同志と出会えるとは…ならばゲスカビアンを知らない朝潮達にこの僕が教えてやろう…ゲスカビアンとはまさに聖書…人々の救いとなる女神の聖水「うるせぇやめろ!そんな真っ黒な聖書があってたまるか!」

 

 

そう叫び、思わずバチン、と初月の顔を平手打ちする長波

 

平手打ちをされた初月はどこ吹く風と言った風に余裕そうに笑い

 

 

「…なるほど、黒い聖書とは…は!?……まさにバイブルブラックとはこのこ「黙るか喋らないかどっちかにしてくれ!」

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

「…これでどうだ」

 

 

鎮守府 グラウンド

 

 

暖かい日の光を浴びながら、グラウンドの端に設置されたベンチでチェスを行うネっきゅんとビスマルク

 

その近くの花壇では霰と比叡が花に水をあげている

 

 

「…やるわね…参ったわ…正直侮ってたわ。ネっきゅん」

 

詰みのビスマルクが降参

ネっきゅんも穏やかに笑う

 

 

「…いや、お前達の教えてくれたこのチェスはなかなかに楽しめるな…まさかこんなものが人の世界にあるとは…うん…興味深い」

 

 

ネっきゅんはそう言い、キングを指でつまむとそれをじっと見つめる

 

 

「…ところで…播磨の映像で見たあの深海棲艦の兵器…あれはなんなの?」

 

 

ビスマルクの言う兵器とは港湾棲姫の使っていた地対艦ミサイルの事である

 

自分が深海棲艦と戦った時もあんな兵器は見たことがない

 

 

花壇に水をやっていた比叡も反応する

 

 

「あ、それ思いました…私もあんな兵器見たことありませんでした…噴進砲の様ではありましたけど、それにしたって命中率が良すぎるというか…」

 

 

 

装備開発で有名な八木提督の秘書艦が見たことのないという兵器

 

ネっきゅんはふむ、と唸る

 

 

「…私もあんなものは見たことがない…ベータでもアルファでも…うん。私の知る限りあんな連発式の砲弾…砲弾か?…ロケットような…そんなものを使っている者はいなかった…」

 

 

「…そう…面白い情報が聞けると思ったのに」

 

 

そう返し肩を落とすビスマルク

 

けど、と比叡が続ける

 

 

「…どうも深海棲艦だけで作られたような気はしないんですよね…あの兵器…新しすぎるというか…なんと言えばいいのかわかりませんけど…ほら、深海棲艦の艤装って、こう…身体の一部っていうか、生き物感あるじゃないですか…それが播磨の映像を見たとき、感じなかったんですよね」

 

比叡の言葉にビスマルクとネっきゅんは頷く

 

 

「…確かに言われてみればそうね…無機物といか、ただ謎の兵器を背負っただけって感じはしたわ」

 

「ふむ……我々…いや、深海棲艦の誰かがあんなものを作り出したとは思えにくいが…」 

 

 

 

 

花に水をあげおえた霰がちょこちょこと比叡達に近づいてくる

 

 

「比叡さん」

 

「あ、ごめんね霰ちゃん!」

 

 

霰1人に水やりをやらせてしまった比叡は霰に謝罪

 

じょうろを持った霰と比叡は鎮守府本館へと戻っていった

 

 

 

「…ま、とにかく今考えても仕方ないわね…また「やぁ、珍しい組み合わせだね」

 

 

次いでビスマルクとネっきゅんに声をかけてきたのは時雨だった

 

トレーニングを終えたばかりの彼女はトレーニングウェア…所謂白の体操着と青い短パンという体育を行う中高生の様な出で立ちだった

 

 

「…ああ、彼女とチェスをやっていた…なかなかに楽しめたよ」

 

「…チェス?…へぇ」

 

ビスマルクとネっきゅんの座るベンチに置かれた駒の乗ったチェス盤を見て、シャツの裾で額の汗を拭う時雨

 

 

ちらりと見えた彼女のお腹はほどよく筋肉がつきはじめていた

 

 

「…時雨?レディがはしたないことするものじゃないわ…ハンカチなら私のを使いなさい」

 

時雨に注意し、自分のハンカチを取り出すと彼女へ差し出す

 

それを見てわたわたと両手を振る時雨

 

 

「や、あ、いやっ…わ、悪いよ…臭くなっちゃうし…汚れちゃうから「良いのよそれくらい…人前で肌を露出させる方が見てられないから」

 

 

ビスマルクの台詞を聞き、ネっきゅんは密かに思う

 

 

 

「(…ビスマルク…お前の格好も大概だと思うがな…)」

 

 

じっとチェス盤を見つめる時雨

 

彼女の視線に気づいたビスマルクはふ、と笑う

 

 

 

「…興味あるなら…時雨もやってみない?なかなか楽しめるわよ?」

 

「…ん…あ、でもこの後もまだトレーニングが…」

 

「トレーニング再開までの時間だけよ。少し位良いじゃない」

 

 

ビスマルクの提案に時雨はんー、と悩む

 

 

「…じ、じゃあ少しだけ…」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

◇  ◇

 

 

 

 

 

 

「…時雨さん…どこ行ったのかしら…」

 

 

神通トレーニングが始まってしばらく

 

時雨と同じように体操着を着たトレーナーこと、神通が時雨を探しに本館の近くを歩いている

 

 

 

『…ちょっ…は、離してビスマルクさん…!』

 

『お、お願いよぉっ!』

 

 

 

聞きなれた声が聞こえ、声のする方へ向かう神通

 

 

「…な、なにをしているんですか…?」

 

 

 

声のする方に近づき、建物の角を曲がると何故か涙目で時雨の腕をつかむビスマルクと、必死に逃げようとする時雨

 

 

そしてそんな2人のやり取りを面白そうに見ているネっきゅんの姿があった

 

 

 

流石に意味がわからずたじろぐ神通

 

彼女に気づいた時雨は慌てる

 

 

 

「あ、じ、神通さん!…たすっ…や…これはサボっている訳じゃなくて…は、離してくださいビスマルクさん!トレーニングの時間がぁ!」

 

「おねっ…お願いよ時雨!もう一回!…もう一回だけやりましょ!ね?ね?」

 

 

いつもの余裕たっぷりで優雅なドイツ艦娘は何処やら…よく見ればナイトの駒がビスマルクの官帽に器用にも挟まっている

 

 

『うん、これは面倒そうだな』と、理解した神通はなにも見なかったことにして踵を返す

 

 

「じっ…神通さん!…見捨てないでぇ!」

 

「後生よ!もう一度だけぇ!」

 

「ははは」

 

 

短パンの裾を捕まれ、下着が半分見えてしまっている時雨は届かぬ手を神通に…ビスマルクは鼻息を荒くしながら逃がさないぞと時雨をつかみ、ネっきゅんはのんきに笑っている…

 

 

 

神通はふと以前嵐が使っていた単語を思い出す

 

 

 

「(これが……カオス、というものですか…)」

 

 

 

遠くなる時雨の叫びを聴きながら、神通は朝潮達が待つ広場の方へと向かう

 

 

 

 

「じ、神通さぁーーん!」

 

「時雨ぇ!お願いよ!ラスト!ラストにするからぁ!」

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

太陽が沈みきり、月が空の王となる頃

 

海の鎮守府ドックの通路の窓から三隈が真っ暗な水平線をぼうっとした表情で眺めていた

 

 

 

「…こちらの海も…夜になると真っ暗なのね…」

 

「…よぉ、なんか考え事か?」

 

 

声をかけられ、そちらを見る三隈

 

 

通路の扉を開けて入ってきたのは天龍だった

 

「…天龍さん」

 

「さんはやめてくれ…普通に呼んでくれて構わねぇよ」

 

 

天龍に言われ、ふふ、と笑い再び窓の外を見つめる三隈

 

 

「…天龍はどうしてここに?」

 

 

三隈の隣に天龍は立ち、同じように窓の外に視線を向ける

 

 

「…浜辺散歩してたらここの明かりが見えてな…様子見って訳じゃあないが…邪魔だったらどっか行くが?」

 

「…いえ………いて…くれると嬉しいわ」

 

 

弱々しくそう返す三隈の顔をちらりと見る天龍

 

「…もしよかったら話さないか?…何かに悩んでるのはわかるが…話してくれなきゃわからねぇ」

 

「…」

 

三隈はぐっと胸の前で拳を握る

 

そして息をふぅ、とひとつ吐き…

 

 

 

「…鈴谷は…とてもいい娘なの…確かに最初こそあの娘は選択を間違えた…けれども償って…誰かのために、といつも走り回っていたわ…」

 

 

間違えた選択、とは田中達が播磨に着任した当日の暴行事件のことだろう

 

 

「…そんな鈴谷を支えよう、手助けしよう…そう思って私も鈴谷のためと思って色々協力した…大切な妹のために、大事な鈴谷のために、と…」

 

 

話しながら手を震えさせる三隈

だが天龍はなにも返さない

 

黙って三隈の話を聞いている

 

 

「…けど…いつのまにか助けられていたのは私の方だって死んでからようやく気づいた…白雪ちゃんに聞いたの…鈴谷は…鈴谷は死体となった私と赤城さんの身体を最後まで放さなかったって…自分が殺されるその時も…鈴谷は私達のために…」

 

 

声を震わせて話しながら、ぼろぼろと涙する三隈

 

 

「…鈴谷は…あの娘はいい娘よ…本当にいい娘…誰よりも強い心を…勇気を……もう持ってる…」

 

「…」

 

 

顔を伏せる三隈

 

彼女の流した涙は床にいくつも落ちる

 

 

 

「…対して…私なんか…なんの役にも立たない…鈴谷も…どうして私なんかを…「まぁ、その辺にしといてやれよ」

 

 

今まで黙っていた天龍に遮られ、顔を上げる三隈

 

 

「…え…?」

 

 

「…私なんか、なんてさ……そんなこと考えるよりも鈴谷が…大事な妹が成長したことを素直に喜んだ方がいいんじゃないか?……それになんだ…お前を助けた理由?…んなもん決まってんだろうが」

 

 

天龍は三隈の右側の肩を掴み、ぐっと自分に引き寄せる

 

 

 

「アイツにとって…お前は大切な姉だからだろう?」

 

 

静かに、しかししっかりと、はっきりとそう言いきる天龍

 

 

「…大切な…姉…?」

 

「…ああ。自分を好いてくれて、気にかけてあげて守ろうとしてあげた…そんな自分のことを大事に思ってくれて行動してくれる姉を助けたくないなんて思わねぇ妹なんていねぇよ」

 

 

そう言い、少しだけ…ほんの少しだけ羨ましそうに三隈を見つめる天龍

 

思い出すのはかつての自分の妹…

 

 

天龍は三隈の肩から手を離す

 

 

「…お前は……いや、お前だっていい姉じゃないか…だから胸を張れって…な?」

 

 

「…天龍…」

 

三隈は彼女の名を呼び、少しだけなにかを考え、うん、と頷く

 

 

「…ええ……ありがとう…そうね。まずはあんなに必死になってくれた鈴谷に御礼を……その後いっぱい褒めてあげなきゃ、ね…」

 

 

「…ああ、そうしてやんなよ」

 

 

少しだけ微笑む天龍

 

その笑顔を見て三隈はうん、と頷いて通路の扉の方へと向かい、扉を開けて行ってしまった

 

 

 

「…ふぅ…」

 

1人で通路に残った天龍は再び真っ暗な水平線を見つめる

 

 

 

「…妹…か…」

 

 

鈴谷の行い…初めての艤装展開であの状況を考えればよく遂行できた行いだと思う…

 

故に三隈の気持ちは痛い程によく分かる

 

 

「……龍田……」

 

 

あの時妹は死んだ

 

尾張の仲間と共に…

 

今まで天龍はそう考えていたが、尾張の記憶を見た"ここ"の仲間の話だと、その可能性は低い、と聞いた

 

 

 

「……人の心配してる場合じゃあねぇのにな…馬鹿だな…オレは…」

 

 

何が真実かはまだわからない

 

ただ、1つ言えるのは、自分の目で見たことだけが真実ではない

 

 

ため息を吐きながらちらりとドックから少しだけ離れた浜辺の方へ目を向けると、その砂浜を走る影が1つ

 

 

 

時雨だった

 

 

彼女は神通の訓練だけでなく、自主的にもトレーニングに励んでいるようで、夜な夜な浜辺を走っていたのだ

 

 

 

「…おいおい…お前は一体どこへ向かってんだ?」

 

 

時雨を見て、ついぼそりと呟いてしまった天龍

 

どこへ、とは決して時雨の走る先のことではない

 

神通のトレーニングを介し、身体を鍛えてどんな到着点を目指しているのか、である

 

 

 

 

 

 

「…そういやぁ……オレも最近走ってないな…」

 

 

 

踏みづらいであろう砂浜を迸る汗を振り撒きながら、いい顔でランニングする時雨を見て、天龍は呟いた

 

 

 

 

 

 




はい

お疲れ様でした


わりとほのぼの…にシリウスが少し入った感じでしたね。

神通ブートキャンプ、続々と門下生増えてます


次回から本編に戻り、第四資料室、また現在の播磨鎮守府等のお話になるかと思います


次回もどうぞよろしくお願いします


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