大本営の資料室   作:114

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朝霜「やっぱりな…わかっちゃいたが、やっぱり1話完結出来なかったみたいだぜ?」


清霜「わかってたけどね」


File32.磐城海軍基地過労死案件

 

 

「うーみーはーふかいーなーくーらーいーなー」

 

 

 

 

「でっち泳ぐの速いよ〜」

 

 

「ろーちゃん早く早くっ!イムヤもイクも遅いよ〜」

 

 

「う〜…ちょっと待つのね〜」

 

 

「そうそう、これはお仕事なんだから気を抜いちゃ駄目よ?」 

 

 

「はーい」

 

 

 

「ふんふーふーふふふーふーん…」

 

 

 

スクール水着を着た数人の少女達は暗く、冷たい深海をのんきに歌いながら、楽しそうに泳ぐ

 

 

しかし明るい声で楽しそうにお互い通信を使ってお喋りをするのとは裏腹に

 

 

少女達の目には光が宿っていなかった

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇ 

 

 

 

 

昭和91年 冬

 

 

東山支部 時刻1830時

 

 

喫煙室

 

 

「…わ、私が海軍基地提督に…!?」

 

 

日勤業務を終わらせた東山支部中佐、嘉島輝明は上官から言われた言葉に目を大きくして驚く

 

 

「ああ、委員会でも是非嘉島君に、と話が出てな 」

 

 

煙草をふかしながらそう返すのは東山支部中将、強面に白髪をオールバックに固めた宮沢貴明中将だった

 

 

「いやなに…君ももう今年で28だ…1度くらいは鎮守府の提督を経験しておくのも悪くないぞ?」

 

 

 

「あ…そ、そうですね…いやぁ…突然のことでビックリしてしまって…」

 

 

ははは、と笑い合う嘉島と宮沢

 

 

「…えーと…それで私は何処の基地へ…」

 

 

宮沢はこめかみ部分を指で掻き、少し申し訳無さそうな表情をつくる 

 

 

「…あー…磐城…海軍基地…なんだが…」

 

 

「…あ、磐城…ですか…」

 

 

磐城海軍基地…

 

数年前まで、所属する艦娘達を奴隷の様にこき使っていたと噂される鎮守府

 

現在では当時の提督はクビにされて基地は頭無しのほぼ放置状態と嘉島は聞いているが…

 

 

(でも…せっかくのチャンス!)

 

 

日本国海軍に入隊して初めての提督任務

 

海軍の人間としてこれほど光栄な事はない

 

 

嘉島は少しだけ悩んだが…

 

 

 

「もちろん!喜んでお受け致します!」

 

目を輝かせながら宮沢に敬礼する嘉島

 

 

 

その答えを聞いた宮沢は一安心

 

 

「…良かった…よし!じゃあアレだ!詳細は追って連絡するからな!」

 

 

宮沢は嘉島の肩をぽん、と叩き

 

 

「これからよろしくな!…嘉島大佐!」

 

 

「…え?…それって…」

 

 

宮沢はにこっと笑い

 

 

「そうだ!磐城に着任と同時に昇格になる!気張っていけよ、嘉島大佐!」

 

 

「が、がんばりますっ!!」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

上機嫌、そして軽い足取りで禁煙室を出ていった嘉島

 

 

禁煙室には宮沢中将一人が煙草を吸っている

 

 

 

「…未来ある若者に経験を…か」

 

 

(それに大規模討伐作戦が無事終わった今なら…少しくらいそんな時間を作るのも良いか…)

 

 

宮沢は煙草を指で叩き、灰皿に灰を落とす

 

 

「…嘉島君なら…磐城を…」

 

 

そこまで呟くと宮沢は首を横に振る

 

 

 

「いや…まずは様子見か…頼んだぞ。嘉島大佐」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

東山支部士官寮 時刻は2000時

 

 

嘉島の部屋

 

 

宮沢と話した嘉島は夕食を済まし、寮へ戻ってきた

 

そしてデスクの上に立てられた写真立ての前で両手を合わせる

 

 

 

「…親父…お袋…ついに俺も海軍基地の提督だ…!俺の活躍を天国から見守っていてくれよ!」

 

 

 

写真に映る亡き両親にそう報告する嘉島

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

2週間後

 

 

磐城海軍基地のある福島県いわき市

 

 

人口約35万人のこの街はかつて起きた"東日本沖大震災"の影響受けた市の一つである

 

 

昭和91年現在は復興も進み、街並みも以前の様に戻りつつある

 

 

そんないわき市の太平洋側に鎮座する日本国海軍東山支部直下の鎮守府、磐城海軍基地に両手に手提げ荷物を持った嘉島は到着した

 

 

 

時刻0800

 

 

 

「…やっぱ、支部の建物に比べたらちょっと小さいな…ま、いいか…初期艦は現地でって言われてたが…」

 

 

嘉島は基地正門の前をウロウロと歩きだす

 

 

「ど、どうやって中に入れば良いんだ…?」

 

 

そうこうしていると、高さのある正門がゆっくりと開く

 

「…あ」

 

 

「お待ちしていました。嘉島大佐」

 

 

正門が半分ほど開くと、そこには金色の髪を束ね、アンダーリムの眼鏡を掛けた碧眼の少女が敬礼して嘉島を待っていた

 

 

「…あ、えぇと…東山支部から着任致しました。嘉島輝明ち…大佐です」

 

 

一瞬たじろぐも、すぐに敬礼を返す嘉島

 

その顔はとても緊張していた

 

 

「東山支部、宮沢中将からの命令を頂きました。嘉島大佐の初期艦の任に付きます、伊号第八潜水艦です。どうぞよろしくお願いします」

 

 

「…潜水艦…」

 

 

嘉島の目の前に立つこの少女はそう言うと、礼儀正しく頭を下げる

 

ここで嘉島は少女の姿を見てふと疑問に思い、声をかける

 

 

「…水着…じゃないんですね…」

 

 

潜水艦といえば水着の制服、と嘉島は勝手に想像していたが、目の前の少女は駆逐艦や巡洋艦達が着用する一般的なセーラー服を着ている

 

嘉島は下心無しに単に疑問に思ったことを口に出したが、瞬間でとんでもないセクハラ発言だと気づいて自分の口を手で隠す

 

 

「あ!いや、すいません!変なこと聞いてしまって…全然いやらしい意味じゃなくて…あの、その…」

 

 

わたわたする嘉島に反してくすりと笑う少女

 

 

「…潜水艦が普通にセーラー服を着てるの…変、ですかね?」

 

 

「ととと、とんでもない!全然そんなことないですよ!はい!」

 

 

 

変な誤解を招いたな、と反省して少女に着いていく嘉島

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

その後、少女に連れられて嘉島は磐城海軍基地の案内を受ける

 

食堂、工廠、ドック、艦娘寮等々…新任提督へのいつもの流れである

 

 

(…話に聞いていたよりも荒れてる感じはないな…やはり噂は噂か…)

 

 

執務室へ続く廊下

 

少女の跡をついていきながら嘉島はここに来るまでの景色を思い出しながら考える    

 

 

正直、特にこれといって気になることはなかった

 

元ブラックな鎮守府だからきっと在籍する艦娘達も荒れてて、提督の自分に対して嫌がらせや暴力を与えられるかもと思っていたが、途中で会った艦娘達から普通に挨拶をされて、中にはよろしくと握手をした者達までいる

 

 

 

(…ま、何もないならないで全然助かるんだが…) 

 

 

 

そう事を考えながら廊下を進んでいると、目の前を進んでいた少女の足が止まる

 

 

「こちらが執務室になります。中へどうぞ」

 

 

「あ、ありがとうございます…伊号…えーと…だい…潜水艦…さん…」

 

 

緊張した青年は目の前の少女の名をすっかり忘れてしまっていた

 

 

少女は眉を八の字にして笑う

 

 

「…伊号第八潜水艦です…以前着任していた提督や他の艦娘達からは"ハチ"と呼ばれています」

 

 

(これは…暗にハチと呼べって事なのかな…)

 

 

嘉島はそう考えて

 

 

「…改めてよろしく、ハチさん」

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

ハチと共に執務室に入室する嘉島

 

中はなかなかに広く、家具類も綺麗に並べられている

 

 

「…今日から…提督なんだなぁ…」

 

 

1つの基地を任せられるという実感をしみじみと感じていると、執務机の上に積まれた書類に視線が向く

 

 

「…早速執務作業か…よし、8年間の事務作業の本気を…」

 

 

そう笑顔になりながら書類を手に取り内容を確認する嘉島

 

 

「…ん?…遠征任務…報告書?」

 

 

積まれていたのは全て輸送任務、遠征任務、出撃任務等の報告書だった

 

 

「…伊…58?…潜水艦か?ハチさん…これって…」

 

 

嘉島が書類の事をハチに聞こうとした時だった

 

勢い良く執務室の扉が開くと、スクール水着の上からセーラー服の上着を着た少女が元気いっぱいに入ってくる

 

「第一潜水艦隊帰還しましたー!って…あれ?新しい提督さんですかー?」

 

 

桃色の髪を揺らして嘉島を見つめる少女、伊58だった

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

「磐城海軍基地、第一艦隊第一潜水隊旗艦、伊58です!ゴーヤって呼んでください」

 

 

嘉島を前に敬礼するゴーヤ

 

嘉島は少し驚きつつも、きりっとした表情で敬礼を返す

 

 

「本日磐城海軍基地に着任した嘉島大佐です…よろしくお願いしますね。ゴーヤさん」

 

 

するとゴーヤは人懐っこくにこりと笑い

 

 

「今度の提督さんは前の提督より若いんですね!嬉しいなぁ!」

 

 

屈託のない笑顔を向けられて緊張する嘉島

 

「あ、あはは…どうも…」

 

 

「…ゴーヤ?」

 

 

ハチがゴーヤに視線を向けるとゴーヤははいはいといった風に書類を嘉島に渡す

 

 

「…これは…」

 

 

"輸送務報告書"

 

 

と、記載されており、報告記入者としてゴーヤの名前が書かれていた

 

 

「大湊警備府への資材輸送任務、無事終わりました!ご確認お願いします!」

 

 

「あ、ああ…お疲れ様…ゆっくり休むと「それでは行ってきます!」

 

 

嘉島が労いの言葉を話してる最中にゴーヤはそう言って執務室を出ていってしまった

 

 

「…あ…あ?…え?…」

 

 

言葉を無くした嘉島はハチに視線を向ける

 

 

 

「…次の潜水艦隊任務へ行ったんですよ…では基地の規律等ご説明しますね」

 

 

(え?…え?…?)

 

 

ハチの差も当たり前かのような態度にますます疑問符が出てくる嘉島

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇  

 

 

 

 

 

「…あ…ハチさんって船下ろしされた艦娘だったんですね…あ、元々は大学生…さん?」

 

 

「はい、以前は京都の大学に通ってました」

 

 

執務椅子に座り、ハチから渡された艦娘名簿を開き、ハチの項目に目を通した嘉島はそう話しかけた

 

 

ハチは嘉島の机にコーヒーを置く

 

 

「…あ、どうも…」

 

 

 

「…在学中の健康診断で艦娘としての適性がある事が分かりまして、色々考えた後にそのまま日本国海軍へ従軍、船下ろしの儀式にて艦娘になりました」

 

 

(…船下ろしされた艦娘…初めて見たな…)

 

 

嘉島はちらりとハチの身体に視線を送る

 

 

 

(…見た目はただの艦娘…いや、人間と変わらない…あー…たしか同型艦よりも戦闘能力が高いんだっけ…不思議なもんだなー…)

 

 

「あの、提督?」

 

 

「え?…あ、はい」

 

 

いつの時代も男性の視線とは女性にはバレバレなものである。ハチはジト目で嘉島を睨む

 

 

「…あんまり…じろじろと見られるのは恥ずかしいです…」

 

 

「あ!すいまっせん!」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

それから昼食は執務室で済まし、執務室で溜まった書類整理をハチと共に行った嘉島

 

 

 

「…あの、ハチさん?」

 

 

「はい、なんでしょう?」

 

 

嘉島はハチに視線を向けることなく書類と睨み合いながら声をかける

 

 

「…この…任務報告書?…ゴーヤさんのサインばかりな気がするんですけど…潜水艦隊ってそんなに忙しいんですか?」

 

 

「…」

 

 

何気ない疑問

 

しかしその疑問を問われたハチはすぐには答えられずにうーん、と悩みながら

 

 

 

「…ここの潜水艦の娘達は働くのが好きなんですよ…」

 

 

静かに、ふんわりした声でそう返答する

 

ハチからの返しを聞いた嘉島はペンを持ったまま頭をぽりぽりと掻く

 

 

「…働くのが好き…ねぇ…」    

 

 

(…ブラックって…やっぱそういう事なのか…?)

 

 

(うむ、俺が着任したからには労働環境をしっかり変えられるように務めよう)

 

 

 

ふん、ふん、と鼻息荒く、しかし静かに自分に気合を入れる嘉島

 

そんな嘉島を申し訳無さそうに見つめるハチ

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

「本日はお疲れ様でした」

 

 

夕刻、着任初日の執務を終え、疲れた眼をあくびをしながら擦る嘉島

 

 

「ん…んん〜…ええ、ハチさんもお疲れ様でした」

 

 

ハチは秘書艦用の執務椅子から立ちあがり、嘉島を前に執務机の前に立つ

 

 

「明日の朝の朝礼では全艦娘の前での着任のご挨拶をお願いします」

 

 

そう言って頭を下げるハチの姿を見てはっとする嘉島

 

 

「…あ…そういえばまだだったっか…うん。分かりました。教えてくれてどうもありがとうございます。ハチさん」

 

 

礼儀正しくハチに頭を下げる嘉島

その姿だけで彼が真面目な人間というのがわかる

 

 

「…嘉島提督のお部屋…私室は本館2階の方にあります…ご案内しましょうか?」

 

 

いや、と嘉島はハチに掌を向ける

 

 

「朝の施設案内で確認させてもらいました…一人で行けますよ。わざわざありがとうございます」

 

 

そう礼を言うと嘉島も執務椅子から立ち上がり、石になりかけた腰を左右に撚りほぐす

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

磐城海軍基地を西日が照らす

 

基地からでは太陽が海に沈む様を見れないのが残念だが、ただでさえ青かった水平線が更に青暗くなっていく様はまるで…

 

 

「…夜が海を渡り、此方に近付いてくる様…か…」

 

 

廊下を進む嘉島は窓の外に広がっていく景色を見てつい呟いてしまう

 

しかし瞬時に今日の反省が嘉島を襲う

 

 

(…今日ハチさんにセクハラしかしてない…いや、セクハラするつもりは無かったんだけどなぁ…)

 

 

ぱんぱん、と自分の頬を叩く嘉島

 

 

「…しっ!…明日こそ頑張ろう!……ん?」

 

 

気合を入れた直後、窓の下、薄暗くなった基地の中庭に数人の少女達がいるのが見える

 

 

「…こんな時間まで遊んでるのかな?」

 

 

「…やっぱ見た目相応に若いなぁ…まぁ、良いか…」

 

 

慣れない執務業で心身ともに疲れ切った嘉島は少女達に一目だけ視線を向けるが、すぐに廊下正面の方へ向いてしまった

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

「は、離してよぉ!」

 

 

「おらっ!こっち来いよ!」

 

 

中庭

 

 

嘉島が私室に向かっている頃、日も沈み薄暗い中庭には潜水艦艦娘と数人の巡洋艦艦娘がなにやら言い合いをしていた

 

呂号第五百潜水艦、呂500の手を強く掴んだ軽巡洋艦の天龍は自分に引き寄せるように彼女を引っ張る

 

 

「やめてよ!ろーちゃんを離して!」

 

 

天龍に対峙するように声を上げるゴーヤを摩耶が抑える

 

 

「おい、暴れんなよ潜水艦」

 

 

「ろーちゃん!…ろーちゃーん!」

 

 

摩耶の腕を振りほどこうとするゴーヤだったが、艤装展開をしていないとはいえ、重巡の腕力には勝てなかった

 

 

「でっち!でっちー!」

 

「…ははっ、明日には解放してやるよ」

 

 

天龍はゴーヤに悪い笑顔でそう吐き捨てる様に言うと、そのまま呂500の手を引いてどこかへ連れて行く

 

 

「ろーちゃーーん!!」

 

 

まるでロミオとジュリエットの様な二人は不幸にも引き裂かれてしまう

 

 

「痛っ!」

 

 

摩耶の隣にいた那智はゴーヤの肩を掴む

 

 

「…お前も大人しく寮に戻ってもう寝たらどうだ?明日は新しく着任した提督の着任式だ…そんな赤く腫れた目で参列するつもりか?」

 

 

那智がそう言うとゴーヤは那智と摩耶をギロリと睨みつける

 

「おぉ?あんだよ…なにガン飛ばしてんだ?潜水艦」

 

「摩耶、やめろ」

 

 

くって掛かろうとする摩耶を止める那智

那智に止められた摩耶は舌打ちをして一歩退く

 

 

「ぅううっ!!」

 

 

半泣きでぺたぺたと裸足で摩耶と那智から走って逃げ出すゴーヤ

 

 

「っ!…おい那智!お前邪魔すんじゃねぇよ!」

 

「…ふんっ…」

 

 

那智の胸ぐらを掴む摩耶

 

しかし那智が摩耶から視線を外し、鼻で笑うと摩耶は那智を掴んでいた手を離し

 

 

「…糞がっ!」

 

 

そう吐いて、そのまま摩耶も寮の方へ帰って行ってしまった

 

 

一人になった那智の背後に、背の高い女性が近付いてくる影が見える

 

 

「!?」

 

 

背後を振り返る那智

 

それと同時に気まずそうに目を伏せる

 

 

「…ああ、貴女か…」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

翌朝 磐城海軍基地体育施設

 

 

冷たい風が、まだ暖の行ききらない体育館内を包む

 

 

磐城海軍基地の艦娘、総勢約80名が列を作り、昨日着任した提督を待っている 

 

 

その中には昨夜今生の別れの様な姿を見せたゴーヤと、呂500…それに潜水艦隊の面々もひそひそと楽しそうに小声でお喋りをしていた

 

 

そこへ舞台袖から現れた嘉島

 

その後ろには初期艦のセーラー服姿のハチが続く

 

 

舞台を歩く2人の姿を見た体育館のフロアに立つ艦娘達はお喋りをやめ、緊張する

 

 

(…思ったよりも多いんだな…それに…うん、みんないい顔をしてるなぁ)

 

 

そんな艦娘達の緊張した表情を違う意味で捉えた嘉島はこれから受け持つ艦娘達を誇りに感じていた

 

 

 

「ゔゔん…皆、よく集まってくれました。昨日ここ磐城海軍基地に着任した嘉島輝明大佐です」

 

 

舞台上中央に立った嘉島は艦娘達に敬礼し、着任の挨拶を行う

 

 

 

「基地提督としてはまだまだ駆け出しの身…皆に迷惑をかけないよう更に学び、精進するつもりです。とうぞよろしくお願いします」

 

 

嘉島の言葉を聞いていた艦娘達も脚を揃え、嘉島に敬礼を返す

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

それから数日間、嘉島の真面目な人柄もあって、艦娘達とは良好な関係で日々は過ぎる

 

…ある一つの問題を残して

 

 

 

「提督、輸送の任務が終わって無事帰投したぜ…なんだ。ハチさんもいたのか」

 

 

任務を終え、執務室に入って来たのは暖かそうなもこもこの白いマフラーを首に巻いた天龍だった。

 

天龍は秘書艦机で書類作業をするハチに気づくと手を上げて挨拶をする

 

 

「あら?私がいたら駄目だったかしら?」

 

 

笑いながらハチはペン先を天龍に向かってつんつんと向けると天龍はマフラーを外しながら頭をポリポリと掻き

 

 

「んなこと言ってないじゃないすか…ほら、報告書」

 

 

天龍は嘉島の執務机まで来て任務終了の報告書を渡す

 

 

「うん、任務お疲れ様…今日はもう休むといいよ」

 

 

嘉島は天龍にそう言うと、天龍は自分の肩に手を当ててコキコキと首を鳴らす

 

 

「ああ、そうさせてもらうぜ…今日は特に疲れちまった」

 

 

「提督ー!戻りましたー!」

 

 

「「!?」」

 

 

続いて元気一杯に執務室に入ってきたのは潜水艦隊旗艦、ゴーヤだった

 

 

 

「…ゴーヤ…入る時はノックしなきゃ駄目よ」

 

 

ハチは机の上の書類から目を離すことなくゴーヤを注意する

 

「はーい…あ…て、天龍…さん…」

 

 

ハチに向かって元気よく返事をするも、天龍の存在に気づいて警戒するゴーヤ

 

 

「…あぁ?…なんだ。潜水艦か」

 

 

「ご、ゴーヤだよ!潜水艦なんて呼び方しないで!」

 

 

天龍は腕を組んで頭一つ分背の低いゴーヤを睨む

 

 

「こ、これ任務完了の報告書です!」

 

 

ゴーヤは逃げる様に嘉島の目の前、執務机に遠征の報告書を打ち付けるように置くと、執務室から逃げていく様に退出していった

 

 

「あ!おい!こらっ!」

 

逃げていくゴーヤに声をかける天龍だが時既に遅し

 

 

 

(…またか…)

 

 

嘉島の悩みの一つ、問題なのがこれだ

 

 

潜水艦と他の艦娘達の仲

 

 

嘉島は提督として基本磐城の艦娘達とは上手くやっている

 

それこそブラック鎮守府だった時代が霞む程に

 

 

しかしその中身

 

一部の艦娘同士がどうも不仲の様に嘉島は感じていたのだ

 

 

特に潜水艦に対しての他の艦娘達の関わらないようとする姿、嘉島には潜水艦の娘達がいじめられているのではないかとも危惧している

 

 

艦娘達の中には潜水艦に対してトラウマを持つ娘も多いと聞く

 

しかし前世の記憶を持っている艦娘は非常に稀で、船下ろしをされた艦娘以外で前世の記憶を持っている艦娘など嘉島は見たことなどなかった

 

 

よってトラウマ系で巡洋艦連中が潜水艦をいじめているとは考えにくいと嘉島は思ってはいるが…

 

 

 

「…天龍…」

 

 

「あん?なんだ、提督」

 

 

ゴーヤに対してのものとは違う天龍の反応

 

やはり、と嘉島は一人納得する

 

 

 

「…天龍は…ゴーヤが嫌いなのか?」

 

 

「…はぁ?」

 

 

まさに"何言ってんだお前"といった表情の天龍 

 

ボリボリと髪を掻き、はぁ、とため息を吐く 

 

 

「別にそんなんじゃねぇよ…」

 

 

嘉島に視線を合わせることなくそう返す天龍

ハチはそんな天龍の姿をじっと見つめる

 

 

「…そうか…なら、出来ることなら潜水艦の娘達を「んじゃ、俺行くわ」

 

 

潜水艦の娘達の面倒を見てくれ、そう言おうとした嘉島の言葉を遮って天龍は執務室から出ていく

 

 

「…あら…」

 

 

なんとも間抜けな声を出してしまった嘉島

 

 

「…さ、提督。執務を続けましょう?」

 

 

仕切り直しといった風にハチが嘉島に他の書類を渡す

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

磐城海軍基地 喫煙所

 

 

中庭横にある喫煙所

しかし現在この喫煙所を利用するのは嘉島だけだった

 

 

タバコを吸いながらベンチに座った嘉島は考える   

 

 

(…うーん…どうにかして潜水艦の娘達と皆を仲良くさせなきゃな…何が原因なのか…)

 

 

"士気に関わったら面倒なことになる"

 

 

そう思っている嘉島は早急になんとかしなければと頭を悩ませていた

 

 

「やぁ、隣…構わないか?」

 

 

嘉島の横から女性と思われる声が聞こえてきた

 

 

「ええ。どうぞ…って、おや?」

 

 

嘉島が声の方に顔を向けると、健康的な褐色の肌の背の高い女性が静かに嘉島の隣に腰掛ける

 

 

「…武蔵か…」

 

磐城海軍基地第一艦隊旗艦、大和型二番艦の戦艦武蔵だった

 

 

「何か悩みでもあるのか?…提督よ」

 

 

余裕のある雰囲気で、煙草の灰を灰皿に捨てる嘉島に問う武蔵

 

 

「…いや…悩み…うーむ、悩み…かな?」

 

 

着任二日目で武蔵の存在を知って驚いた嘉島だったが、磐城には"何故か"潤うほどに資材がある

 

超弩級戦艦の武蔵が出撃しても有り余るほどに

 

故に、武蔵も気兼ねなく胸を張って磐城の主力戦力の一角として戦っているのだ

 

 

そんな"強い"武蔵の存在のおかげか、嘉島は潜水艦の艦娘達の事を武蔵に相談する

 

 

武蔵は嘉島の話を黙って聞いていた

 

 

そして嘉島が話し終わると

 

 

 

「…なるほど…確かに潜水艦の者達を心配する気持ちはわかる…だが提督はまだ磐城に着任して日が浅い。もう少し様子を見てはどうだ?」

 

 

「…むぅ…しかしなぁ…」

 

 

武蔵の言葉に腕を組んで悩む嘉島

 

もちろん早とちりの可能性もあるが、早期解決が遅れれば最悪の事も起きる可能性がある

 

 

「…なに、この武蔵も気をつけて皆を見ておいてやるさ…それに、しっかりと様子を見る事で提督の固定観念にも変化が現れるかもしれんぞ?」

 

 

「…そんなものだろうか…うん、済まないな…気を使わせてしまって」

 

 

嘉島がそう謝ると、武蔵は嘉島の肩に手を置き

 

「そんなことを言うな…また何かあればいつでもこの武蔵に相談してくれよ、提督」

 

 

武蔵はそう笑って言うと、ベンチから立ち上がって寮の方へ歩いていった

 

 

 

「…固定観念……か」

 

 

 

「ん?」

 

 

武蔵の対応に違和感を感じる嘉島

 

武蔵は嘉島よりも長く磐城にいるはずだ

 

 

「…武蔵…潜水艦の娘達のこと知ってて俺の話を聞いてくれてたのか?…元々知っていた…?…なら何故…」

 

 

武蔵の様な人にも艦娘にも影響を大きく与える存在がいてこの状況…

 

 

嘉島は更に頭を痛めた

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

磐城海軍基地艦娘寮

 

 

寮の廊下を歩き、扉の開いた談話室の前を通る武蔵

 

 

「あ、武蔵さん…」

 

 

「む?…お前たちか」

 

 

武蔵に声を掛けたのは天龍、摩耶、那智の3人だった

 

 

「…窓から見てましたよ?提督と話してたんすか?」

 

 

天龍が武蔵に問いかける

武蔵はうむ、と唸り自分の顎に手を添える

 

 

 

「…提督はやはり潜水艦達の事を気にしているようだ」

 

 

「…まぁ、そうすよね」

 

 

椅子に座った天龍が天井を見ながら椅子に更に深く腰かける

 

 

「…提督に言わなくて良いのかよ…」

 

眉を寄せて摩耶は那智の方を見る

 

 

「…言ったところで鹿取提督と同じ事になるさ…なら私達だけで…」

 

 

那智はそこまで言うとコーヒーに口をつける

 

 

「…提督にも言ったが…まずは様子を見よう。すぐに動けば鹿取提督の二の舞いになってしまうぞ」

 

 

窓の方へ近づき、外の喫煙所のベンチに座る嘉島を見つめて呟く武蔵

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

それからしばらく

 

 

嘉島は磐城の艦娘達を観察した

 

 

誰と誰が仲がいいか

 

艦娘同士でいじめなどはないか

 

演習、訓練での現場の空気はどうだろうか

 

 

 

武蔵に言われた通り、嘉島は塗り抜かることなくしっかりと彼女達を観察、様子を見た

 

 

その結果、はっきりとした事がわかった

 

 

 

 

「提督!第一潜水艦隊帰投しましたー!」

 

 

「…敵通商破壊…うん、ご苦労さま。ゴーヤ」

 

 

「えへへ」

 

 

 

ノックをする事なく執務室に元気よく入ってきた伊58ことゴーヤ

 

ゴーヤからの報告書を受け取り、労いの言葉をかける嘉島

 

 

「なぁ、ゴーヤ…」

 

「ん?なんですかー?提督」

 

 

人懐っこそうにニコニコと返事をするゴーヤ

 

嘉島は一瞬隣の秘書艦用の執務机にいるハチに視線を向けるが、すぐにゴーヤの眼を見て

 

 

「…潜水艦隊は少し…というかかなり出撃の数が多い…多すぎると思うんだ…だから「提督」

 

 

「…む?」

 

ゴーヤは遮るように嘉島の名を呼ぶと敬礼する

 

 

「…まだ次の任務があるので…ゴーヤ、これで失礼します!」

 

 

「え?は?…お、おいっ!」

 

嘉島の呼びもむなしく、ゴーヤはぺたぺたと執務室を出ていってしまう

 

 

そう、嘉島が気がついた事とは、潜水艦隊の異常なまでの出撃回数だった

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

「お疲れ様。ゴーヤ…このあと良かったら「行ってきます!」

 

 

 

「よく帰ってきたな。イク…そうだ、貰い物のクッ「それでは失礼しますなの」

 

 

 

「やぁやぁ、こんな時間まで「しおい、出撃します!」

 

 

 

 

更に数日

 

嘉島はなんとか潜水艦隊の面々に出撃回数を減らす様にと話しかけて努力をするが、全て躱されてしまう

 

 

「…うーん…」

 

 

「…提督?お茶でも淹れましょうか?」

 

 

「ん?…ああ…ありがとう、ハチさん」

 

 

 

やはり季節のせいもあって日が落ちるのが早い

 

窓の外は既に真っ暗だった

 

 

「…ハチさん…」

 

「…はい?」

 

 

嘉島の執務机にお茶の入ったカップを置いたハチが嘉島の呼び掛けに反応する

 

 

「…何故あの子達はあんなにも出撃をしたがるのだろう…同じ潜水艦として私に教えてくれないか?」

 

 

「…」

 

ハチは自分の執務椅子に座ると、その重い口を開く

 

 

「…以前…以前着任されていた提督さんの影響だと…思います…」

 

 

初めて聞いた前任者の話

 

嘉島はほぅ、と唸る

 

 

「…以前の提督が…無理矢理彼女達に出撃させて…それが身体に染み付いてしまったと?」

 

 

「…いえ…そうではなくて…「提督!第二潜水艦隊戻りました」

 

 

 

そう言って執務室の扉を開けて入ってきたのは呂500だった

 

 

「あ、えーと…ろー…ちゃん、か…」

 

「はい〜」

 

 

ろーちゃん

 

嘉島としてはなんとも呼ぶのに抵抗のある呼び方

 

呂500はニコニコと笑顔で嘉島の執務机に報告書を提出する

 

 

「何のお話していたんですかぁ?」

 

 

呂500は執務机越しに嘉島の顔を覗きこむ

 

キラキラとした瞳に見つめられた嘉島はなんとも言えない気分になり、あははと笑う

 

 

「いやなに…潜水艦隊の…その、仕事ぶりが良いものでね…褒めていたんだよ」

 

 

「あ〜…そうだったんですね〜…ろーちゃん、褒めてもらえて嬉しいって!」

 

 

呂500はニコニコと笑うがハチは気まずそうに視線を下げる

 

 

「じゃあろーちゃん、次の任務に入るので、ここで失礼しまーす」     

 

 

そう言い残して呂500も執務室を出ていく

 

 

「…」

「…」   

 

 

ハチと嘉島はお互い変な空気を感じて黙ってしまう   

 

「提督…少し体調が優れないので…今日は私もこれで失礼しますね…ごめんなさい」

 

 

焦るように、冷や汗をかきながらハチも嘉島にそう挨拶すると、足早に執務室から出ていった

 

 

「…え…あぁ…お大事に…」

 

 

呆けた様子でそう返した嘉島は壁に掛けられた時計を見る

 

いつの間にやらゴールデンタイムの時間も終わろうとしていた

 

 

「…うむ…今日はここまで、かな?」

 

 

(…前提督…か…)

 

 

 

嘉島は支部に提出する資料報告書をとんとん、とまとめて机横に置くと、磐城海軍基地の在籍艦娘や施設案内の書かれた名簿を取り出して開く

 

 

名簿の文字を指でなぞりながらある名前を見つける

 

 

「……………か、とり…?鹿取、提督…か」

 

 

前提督の名を知った嘉島は机の上に設置してある黒電話に手を伸ばす

 

 

 

「………」

 

 

「……」

 

 

「…」

 

 

 

「…お世話になります。夜分遅く申し訳ありません…はい…はい…ええ…まぁ…」

 

 

受話器を耳に当て、誰かと通話する嘉島

 

 

「…はい、鹿取敬司という方に関してお聞きしたいことがありま…あ…はい、お願いします」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

同時刻 北山支部宮沢中将の私室

 

 

ベッド横の椅子に座った宮沢は紅茶片手に嘉島の電話に出ていた

 

 

「鹿取敬司!?…驚いたな…もうそこまで調べたのか…」

 

 

《やはり…ご存知なんですね…?》 

 

 

ふー、と鼻でため息を吐く宮沢

 

 

「まぁそりゃあ…磐城は俺の担当だからなぁ…前任者の事も当然知ってはいる…だが…」

 

 

《…だが…?》

 

 

「嘉島君…多分君が知りたがってる事は俺は知らないぞ?…鹿取は確かに磐城の…君の前任者だった…だがある日突然提督を辞めたいと言ってきてな…」

 

 

宮沢は煙草を咥えて部屋の窓を開ける

 

 

《…突然…ですか…》

 

 

「ああ…何の理由も話さなくてな…だから実際に磐城で何があってどうして鹿取が辞めたのか正直さっぱりわからねぇんだ…だが実際に鹿取に会って、奴の姿を見て除隊届を受理したよ」

 

 

《…》

 

 

「ストレスで白髪が増えてたよ…頬もやつれて目は虚ろ…どうしたって聞いても"言いたくありません"の一点張り…磐城の艦娘にも聞いても皆口を閉ざして…」

 

 

《…そうですか…わかりました。貴重なお話ありがとうございます。宮沢中将》

 

 

 

すぅー、と煙草の煙を吸い、吐く宮沢

 

 

「…何かあったのか?」

 

 

《…》

 

 

《…いえ、今はまだなんとも…もう少し様子を見て御報告しようと思います》 

 

 

「…そうか。頼むから無理だけはするな。何かあればすぐに支部に…いや、俺に連絡しろ、いいな?」

 

 

《はい、ありがとうございます…それとは別に…もう一つお聞きしたいことが…》

 

 

「…あん?」

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

「…ふぅ…ん?」

 

 

電話をし終わった嘉島は窓辺に立って外を眺める

 

すると下、中庭の方からまたもや艦娘達の声が聞こえてきた

 

 

「…まぁ…元気なのはいいが…1度くらいは注意しておくか…」

 

 

嘉島はそう呟くと脱いでいた官帽を被り直して私室を出ていく

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

「やめてっ!やめてよー!」

 

 

「ちょっと!離しなさいよ!」

 

 

「はいはい、暴れないでね」

 

 

 

今回は何故か戦艦伊勢に抱きかかえられた伊19

 

その伊19を離せと睨みつける伊168と、彼女を止める摩耶と那智の姿が中庭にあった

 

 

「良いから黙っとけよ潜水艦」

 

しっしと追い払う様に伊168に手を振る摩耶

 

 

「なんで貴女達こんなことするのよ!」

 

 

伊168が摩耶達に問うと、懐中電灯の光が彼女達を照らす

 

 

 

「おい、お前達何をしているんだ!?」

 

 

懐中電灯片手に持った嘉島が那智達に声をかける

 

 

「…て、提督…」

 

 

嘉島の存在に驚く艦娘面々

 

 

「あんでここに提督がいんだよ…」

 

 

バツが悪そうに摩耶が問う

 

「いや…あんな大声で言い合ってたら私室まで聞こえてくるぞ…?」

 

 

「今っ!」

 

 

嘉島の存在に面々が気を取られていると、伊168が伊19の手を掴んで伊勢から引き離す

 

「あっ!ちょっと!」

 

 

「イク!行くわよ!」

 

「のねー!」

 

 

伊勢が手を伸ばすも伊168と伊19は走って寮の方へ向かって行った

 

 

伊勢、摩耶、那智の3人が嘉島と睨み合う

 

 

「…どういう事だ…お前達、なんであいつらを虐めている?」

 

「はぁ!?提督…お前何言って…「摩耶!」

 

 

嘉島に向かって言い返そうとする摩耶をまたしても那智が止める

 

 

「…提督…私達は彼女達を虐めてる訳ではない」

 

 

那智が嘉島にそう説明すると、嘉島は首を振る

 

 

「…いや、お前達…ここ数日ずっと同じ事をしているだろう…何度もやり取りの声を聞いているぞ?」

 

 

「…」

 

嘉島の言葉に俯く3人 

 

 

「…すぐにこんな馬鹿なことは止めるんだ…これは上官としての命令だ」

 

 

「…わかった…」

「…了解」 

「……了解」

 

 

嘉島の命令に3人は渋々了解する

 

 

「うむ、ではお前達も早く寮に戻って休みなさい…いいな?」 

 

 

その言葉を最後に3人は重い足取りで寮の方へ歩いていった

 

 

 

 

中庭に一人残った嘉島は寮に帰っていく3人の姿を見て

 

 

「…これで仲違いの件は落ち着いてくれるといいが…」

 

 

(…というかあいつら…潜水艦艦娘と寮が違うのか?…伊168達とは違う方へ向かったが…)

 

 

嘉島の頭にいくつかの単語が過る

 

 

ブラック鎮守府…

 

潜水艦と巡洋艦達…

 

鹿取敬司…

 

潜水艦隊の異常な出撃数…

 

 

 

「…早急に話を聞きに行かないとな…」

 

 

一人、そう決心する嘉島

 

そんな彼の背を褐色肌の戦艦が暗い表情で遠目に見つめていた

 

 

 

 

 

 

 





はい、始まりました。

海の幸が美味しい磐城編でございます。
今回のお話でまたもや登場人物ががらりと変わりました


前編、後編くらいでまとめられたらいいなと思っています(希望)


…あんまりお話を長くすると松井くんの股間が大変な事になってしまうので…


次回もどうぞよろしくお願いします


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