大本営の資料室   作:114

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はい、資料室のシーンへは戻らずに例の鎮守府シーンの方からスタートになります。

なお今更ですが金剛さんに限り、電の事を電ちゃん(でんちゃん)と呼んでいます


では出発



File44.悔い改める者と名探偵

…そう…か…

 

 

僕は死んだのか…

 

 

 

うん、そうだよね…

 

 

あれだけ頭を殴られたんだ…

 

 

 

艤装を装備してない僕なんて…

 

 

 

練度の低い僕なんて…

 

 

 

本当は弱いくせに…誰かの影に立って優位にいるつもりになって…

 

 

 

何もできない臆病者のくせに…

 

 

 

何も言えない卑怯者のくせに…

 

 

 

 

僕なんて…

 

 

 

僕なんて…

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「…ぅ…」

 

 

 

どこかにいた意識がようやく自分に所へ返ってきた

 

 

軽空母千歳が眼を開けると、そこは陽の光が優しくふり注ぐ大きな木の下のベンチだった

 

 

「…ここは…?…学校…?」

 

 

まるで中学校の校庭のような景色が千歳の視界に広がる

 

確か佐渡でもこんな風に広い校庭の学校があった

千歳はその学校にいるのかと一瞬勘違いをする

 

 

しかしそんなはずはないとベンチに座ったままゆっくりと後ろを振り返ると、そこには校舎ではなく海軍施設の様な…鎮守府の様な建物が建っていた

 

 

「…なん…なの?これ…」

 

 

千歳はベンチから立ち上がり、建物の方へ向かう

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

スクリーンのある大部屋

 

 

佐渡の映像を見終わった電達はやはり黙ってしまう

 

 

 

「…反乱…か…」

 

 

 

ぽつりと嵐が呟くと、朝潮と白雪は苦い顔になる

 

 

それもそのはず

 

三原の起こした事件と、かつての伊豆海軍基地の翔鶴が起こした事件と状況が似たところがあったからだ

 

 

 

ほぼ全ての記録…もとい、記憶映像を見てきた金剛は朝潮と白雪に近づき、二人を抱き寄せる

 

 

 

「…大丈夫デスよ…大丈夫」 

 

 

朝潮と白雪をあやす様に優しく声をかける金剛

 

摩耶も察したのか、嵐の頭を撫でる

 

 

 

「…ねぇ、もしかして…また誰か来たのかな?」

 

 

空気を割るようにゴーヤが皆に声をかけると、響が頷く

 

 

「…かもね…摩耶さん達が執務室…私が上の小部屋…佐渡の誰かがどこかに来てるかもね」

 

 

「…手分けして探してみましょうか」

 

 

 

電の一言で皆頷き、動き出す

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

謎の鎮守府施設内に入る千歳

 

 

人一人いなく、ガラリとしたロビー

 

 

どこの海軍基地にもあり、佐渡にも貼ってあった"海兵隊募集"のポスターすらこの鎮守府のロビーには見当たらなかった

 

 

「…一体ここは何処なのかしら…」

 

「おーい!千歳よー!」

 

 

「!?」

 

 

ロビー内を見て回っていた千歳の名を呼ぶ聞き覚えのある声

 

声のした方を向くと、吹き抜けの2階から手を振る利根がいた

 

 

 

「…利根さん!?…無事だったんですか!?」

 

「まて!今降りる!」

 

 

 

 

大急ぎで階段を降りて一階ロビーにて千歳と合流する利根

 

 

「いや…吾輩はてっきり提督に撃たれて死んだものと思っていたのだが…」

 

 

腕を組み、首を傾げる利根

 

 

「…私は北陸の解体機に入った所までは覚えています…ここは一体何なんでしょう…」

 

 

利根と千歳は2人並んでロビーに設置してあるソファーに腰掛ける

 

 

 

「…さっぱりじゃ…なんとも面妖だな…」

 

 

隣座る利根の言葉を聞いて千歳は小さく笑う

 

 

 

「ん?…どうしたのだ?千歳よ」

 

 

「…ふふ…いえ。…なんだか利根さん明るいなって…」

 

 

「そう…か?…うむ。そうかもしれんな…なんだかこう………心が洗われたような気すらするのだ」

 

 

利根がそう説明すると、千歳も納得する

 

 

「…そうですね…確かに…なんだか心が軽い気がします…何故でしょうか…」

 

 

 

 

利根と千歳が二人して頭を悩ましていると、二人の座るソファーの端にもう一人少女が座る

 

 

 

「…分かる範囲でなら…私達から説明するよ」

 

 

 

駆逐艦、響だった

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

談話室

 

 

 

摩耶達と同じく、電達からこの鎮守府の説明を受けた利根と千歳

 

 

 

「…にわかには信じられんが…」

 

「…でも…これが真実なんですね…」

 

 

 

難しい顔で答える利根。そして何故か安堵の表情で納得する千歳

 

 

「…それにしても…ここに来る艦娘のチョイスがわからないデスね」

 

 

「…そうですね…」

 

 

 

 

千歳達を前に電と会話する金剛

 

 

「…うーん……死んだ…からか?」

 

 

摩耶が答え

 

 

「よくわからないでち…」

 

 

ゴーヤが悩む

 

 

そんな中、千歳達を見つけた響は帽子を被り直し一言

 

 

「…多分…ここにやってくる人の条件の1つはわかったかもしれない…」

 

 

響の言葉に驚く一同

 

 

 

「えっ!?…ほ、ほんとかよ!」

 

 

「…多分、ね」

 

 

興奮した嵐に涼しく返す響 

 

朝潮が響に近づき

 

 

 

「…条件…というのは?」

 

 

「…ああ…もしかしたらだけど「ああああああああああ!!!」

 

 

 

響が答えようとすると、談話室の外、どこからか誰かの叫び声が聞こえてきた

 

 

 

「…この声っ!」

 

 

利根が走り出して談話室の扉を開けて飛び出してしまった

 

 

「あっ…おいっ!……嵐!行くぞ!」

 

「え?あ?…お、おうっ!」

 

 

利根が走り出した姿を見て空気を読んだ摩耶が嵐を連れて走ってついていく 

 

 

 

「皆さん!私達も行きましょう!」

 

 

残った朝潮、白雪、ゴーヤ、金剛、千歳は電の指示に従い、摩耶達を追いかけていった

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

談話室から3部屋ほど離れた大部屋

 

扉の横にはプレートで"作戦会議室"と書かれていた

 

 

 

「あああっ!あああああっ!!!」

 

 

ガツンガツンと扉に頭を勢いよく打ち付ける少女がいた

 

駆逐艦時雨だった

 

 

 

「やめるんじゃ!時雨!」

 

 

「ぅあぁあああ!!!」

 

 

ガツン、と鈍い音が再度響く

 

 

「時雨っ!!」

 

 

利根はなんとか時雨の背後から羽交い締めにし、訳のわからない自傷行為を止める

 

 

「…はぁ…はぁ…と、利根…さん…?」

 

 

利根の声を聞いて、息を切らしながら利根に問う時雨

 

その眼には涙を浮かべ、苦渋の表情となっていた

 

 

 

「…!?…時雨…おまえ…!」

 

「おーい!大丈夫かよっ!」

「う、うぉおっ!?…白露型!」

 

 

利根に追いついた摩耶達が時雨の姿を見て驚く

 

しかし利根だけ時雨の顔を見て眉間にしわを寄せる

 

 

(…あれだけ強く頭を打って…血が出てなく傷一つない…だと?)

 

 

利根が来るまでに数発同じ様に鉄扉に頭を打ち付ける音が聞こえた

 

しかし羽交い締めにしたこの少女には傷一つなかった

 

 

 

「…ふ、ふふ…おかしいんだよ…利根さん…僕…何度も頭を打ってるのに…全然痛くないんだ…」

 

 

「…時雨…」

 

 

羽交い締めにされ、時雨は涙を流したまま力なく笑う   

 

 

 

「時雨さんっ!」

 

 

そこへ遅れてやってきた電達が合流する

 

作戦会議室前の廊下に全員が集まった

 

 

 

「…ち、千歳…さっ…あ、ああ…ああああっ!!」

 

 

羽交い締めにされた時雨は千歳を見た途端暴れ、無理矢理利根の腕を振り払うと千歳の目の前に来て床に頭を押し付け土下座する

 

 

 

「ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!…全部…全部思い出したんだ!…僕が何をやったか!どんな酷いことをみんなにしたか!…本当にごめんなさい!!」

 

 

ゴンゴンと床に額をぶつけ、千歳に謝罪する時雨

 

 

「…時雨…さん…」

 

 

千歳もあの時…佐渡で時雨が北上派と呼ばれる艦娘達に何をしたのかをおおよそ理解はしている      

 

「…夕立が虐められたときも僕は笑っていた…照月にも酷いことを言った…千代田さんたちや春雨にも酷いことをしようとした…!!…それに…」

 

 

「…」

 

 

利根は何も言えずに土下座する時雨を見つめる

 

 

「…ち、筑摩…さんも…あ、ああ…ああああ!!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!」

 

 

土下座を解いた時雨は利根の両手を掴み、自分の首に当てる

 

 

 

「利根さんっ!お願いだよ!僕を殺して!苦しめて!罰を与えて!!お願いだよっ!僕は生きてたら駄目なんだ!利根さんっ!!」

 

 

時雨は涙も鼻水も流しながら利根に自分を殺してくれと悲願する

 

 

佐渡の時は三原の影響を受けていたとはいえ、なかなかに人の道を外れたような事ばかりしていた時雨

 

 

それがここに来た事によって三原に影響を受けていた時雨の心がリセットされた様に見える

 

 

しかし過去の記憶は残っている

  

 

つまりは時雨は自分自身の犯した罪に苛まれているのだ

 

 

 

「だ、だれでも良いんだ!どうかっ!僕を…殺してくれ!殺せっ!殺せっ!!あああああああ!!!」

 

 

 

「…おいおい…」

 

摩耶と嵐は時雨の叫び声に圧倒され、ゴーヤも足がすくむ

 

 

しかし一人だけ青筋を立てた少女が時雨に近づく

 

 

「…え?…あ…」

 

 

時雨の近くにいた千歳の横を小さな少女が無言で通り抜ける

 

 

駆逐艦電だった

 

 

「い、電さん…?」

 

 

朝潮が電に声をかけるも電の脚は止まらない

 

 

 

「殺してぇぇええ!殺してくれぇええ!!」

 

 

ボロ泣きしながら床に這いつくばる時雨の制服の襟を掴み、無理矢理立たせる電   

 

 

 

「いい加減に…!」

 

 

電は拳を握り、腕を大きく振り上げ

 

 

 

「あぁぁあああああ!!」

 

 

涙が止まらない時雨の顔目掛け…

 

 

 

「…しろぉぉおおおお!!!」

 

 

電の拳が時雨の顔面に炸裂する

 

 

 

 

「あーらら…」

 

 

そんな電を見て金剛は呆れながら苦笑い

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇   

 

 

 

嗚呼…

 

 

 

痛かった…なぁ…

 

 

 

消火器よりは全然痛くないけど…

 

 

 

なんだろう…  

 

 

 

心にずしりと…

 

 

 

重いものがぶつかった…

 

 

 

そんな感じがした…

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「…あ…」

 

 

 

時雨、2度目の目覚め

 

 

 

そこはあの廊下ではなく、どこか医務室の様な部屋だった

 

 

 

「…目が覚めましたか?…時雨さん」

 

 

 

ベッドで目覚めた時雨

声のかかった方に顔を向けるとベッド横の椅子には朝潮が座って時雨を見つめていた

 

 

 

「…朝潮型の…」

 

 

「ええ。朝潮です…顔は痛みますか?」

 

 

 

電に思い切り殴られたのは覚えている

確かにあの時は痛みを感じたが…

 

 

「…大丈夫…だよ…ごめん…わざわざここまで僕なんかを運んで「電さんからの伝言です」

 

 

「…え?」

 

 

「電さんが言ったことをそのまま伝えますね…」

 

 

朝潮は一度目を瞑って息を吸い…

 

 

 

「"死んで楽になろうだなんて甘い考えだよ!そんなのただの逃げだよ!艦娘なら…あの激戦の時代を生きた艦艇の魂があるなら、逃げずに自分自身と…罪と向き合って!…戦って!"」

 

 

「…」

 

 

朝潮の言葉…もとい電の言葉は時雨に衝撃を与えた

 

 

三原も日向も五十鈴も…今まで佐渡ではこんなに言われることはなかった

 

 

…最後の最後に妹には叱られたが

 

 

心がリセットされた今の時雨には三原の影響が薄くなったことで尚更、電の言葉が心に染みた

 

 

 

そこまで言うと朝潮はふぅ、と息を吐き

 

 

「…まぁ、最後の"戦って"…の意味がよくわかりませんが…そうですね…」

 

 

朝潮はきょとんとする時雨に微笑みかける

 

 

 

「電さんの気持ちはよくわかります…確かに死んで償いにはなりません…」

 

 

 

 

 

『ず、ずまん……わ…わだじも…すぐに…おばえのあどを…おゔぅ…!』

 

 

 

 

 

ふと、いつか自身の司令官に言われた言葉を朝潮は思い出しながら…

 

 

 

「罪も、責任も…生きて償うべきかと…私は思います…」

 

 

「…朝潮…」

 

 

 

 

「…そうね」

 

 

 

朝潮のものとは違う、聞き覚えのある声が聞こえてくると、開いた窓からそよ風がふいてカーテンが揺れる

 

 

 

朝潮の背後にあった布のパーテーションから出てきたのは千歳だった

 

 

 

「…千歳…さん…」

 

 

 

千歳は朝潮の隣に置いてある丸椅子に座り、ベッドの上に座る時雨と目線を合わせ、笑う

 

 

「…なら共に生きましょう?…そして、私と一緒に罪を償いましょう?…それがきっと…今の私達のやるべき事だから…」  

 

 

「…ぼ、僕…も…」

 

 

もう何度目か…時雨はここに来てから涙しか流してないないような気さえする

 

 

両手に掴むシーツにぽたりぽたりと大粒の涙が落ちる

 

 

「…僕も罪を償いたい…そして…ぐすっ…そして出来るのなら…許されるのなら…もう一度夕立に…春雨達に謝りたい…妹達を…皆を今度こそ守りたい…!」

 

 

時雨は鼻を啜りながらもしっかりと自分の意志を千歳に伝えると、千歳は椅子から立ち上がり、時雨に右手を差し出す

 

 

 

「…三原提督派も…北上提督派も関係ない…佐渡海上防衛基地の艦娘として…共に頑張りましょう?…これからよろしくね。時雨さん」

 

 

涙の流れが穏やかになってきた時雨も目元の涙を払い、右手を差し出し千歳と硬く握手する

 

 

「…うん…ありがとう…改めてこれからよろしく…千歳さん…いや、千歳先輩」

 

 

 

「…なら」

 

 

千歳と時雨が握手する手の上に更に手が1つ乗る 

 

 

「吾輩も償いの仲間に入れてくれないか?千歳、時雨よ」

 

 

「…利根さん…」

 

 

 

にひ、と屈託のない笑顔で手を乗せたのは利根だった

 

 

「…では」

 

 

そう一言言って更に朝潮も手を乗せる

  

 

「私達もお手伝いします…って、電さんがいれば言っていたでしょうね…それに私達も自分の罪を背負う身…共に頑張りましょう」

 

 

せっかく引っ込んだ時雨の瞳が再度潤う

 

 

 

「うん…うん…ありがとう…みんな…ありがとう…」

 

 

 

時雨の座るベッドを中心に、明るく、優しい空気が流れる

 

 

 

千歳や朝潮達がああは言っても決して時雨の心の中の罪の意識が消えるわけではない…

 

 

…否、"消える"ではない…

 

 

 

(…"忘れて"はいけない…けど…今死ぬ事が償いじゃない…)

 

 

きっと断罪される事もあるだろう…

 

 

 

(断罪されるならその時までは…それまでは…生きて…前を向いて…罪を償いつづける…!…今度こそ…皆を守れるように!)

 

 

時雨は静かに1人決心をする

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

執務室

 

 

 

執務椅子にちょこんと座っていじける茶髪の暁型が一人 

 

そして執務机の前でポールペンを手に持つ白髪の暁型がもう一人

 

 

 

「…そろそろ元気を出しなよ。電」

 

 

 

「…うー…やってしまったのです…」   

 

 

 

電は時雨を殴った事の罪悪感に悩まされていた

 

 

「…電のやった事は……うん、まぁある意味正解かもね…あのままじゃ時雨が何していたかもわからないから」

 

 

「…脳筋な自分に嫌悪感、なのです…」

 

ぐでっと執務机に項垂れる電

 

 

「…自決自殺は…許せないかい?電」

 

 

「…はい」

 

 

 

電が愛した司令官…彼の最後は自殺だった

 

電の言い方をとるなら、彼は死んで逃げてしまった

 

先程の時雨の行為は電のトラウマ…もとい逆鱗に触れたのだ

 

 

 

「…そう…だよね」

 

 

 

響は左手を執務机に置く

 

 

「…?…響ちゃん?」

 

 

左手を執務机に置いた響は右手に持つボールペンを振り上げ   

 

 

 

「えっ!?響ちゃん!?何を!…やめっ!」

 

 

 

ドン、と右手に持ったボールペンを自身の左手に勢いよく突き刺す 

 

 

 

「…っ!!!!」

 

 

 

しかし響の表情は変わらない

痛みすら感じてはいなかった

 

 

 

「響ちゃん!?…だ、大丈夫…なの…ですか?」

 

 

すっ、と響は左手に刺したボールペンを引き抜く

 

 

 

「…あれ…血が…出ていないのです…傷も…」

 

 

突き刺したはずのポールペンを抜いた左手の甲にはなんの傷もなく、その刺した部分は響の水弾く白く無垢な肌が広がるだけだった

 

 

「…やっぱりそうか…」

 

 

「…????」

 

 

「…いや、もう少しだけ考えたいな…でも…うん…そう、か…」

 

 

心配そうに首を傾げる電と対象的に冷静に何かを分析、思案しながらぶつぶつと独り言を呟く響

 

 

「…ああ、すまない…とにかく、元気を出したほうがいい…電の元気がないとみんなも暗くなってしまうよ?」

 

 

響は電に優しくそう言うと、小さく笑う

 

 

「…は、はいなのです…」

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

がちゃり、と談話室の扉が開き、朝潮、時雨、利根、千歳が入ってくる

 

 

 

「よ、もう大丈夫なのか?」

 

 

最初に声をかけてくれたのは摩耶だった

摩耶は座っていたソファーから立ち上がり、時雨に近づく

 

 

「うん…心配かけてごめんなさい…」

 

 

時雨は少しだけ恥ずかしそうに小さく笑い、摩耶に頭を下げる

 

 

摩耶の座っていたソファーにはゴーヤと嵐が座り、二人も時雨を心配そうに見つめている

 

 

視線をソファーから部屋中央へ向けると、白雪、金剛、電がおり、電も申し訳顔で時雨に一歩近寄り頭を下げる

 

 

 

「ご、ごめんなさいなのです!あんな事をしてしまって!…本当に…ごめんなさい…」

 

 

涙目で時雨に頭を下げる電を見て時雨は肩の力を抜いて微笑む

 

 

「…僕の方こそ…殺してくれ、なんて馬鹿なことを言って騒いだりしてごめん…うん、みんな…ごめんなさい…」

 

 

そう言って時雨は皆に対して頭を下げる

 

 

「…時雨さん…時雨ちゃんとはちゃんとお話したから…私や利根さんをそうしてくれた様に…改めてみんなの仲間として迎えてほしいの…」

 

 

千歳が心配そうにそう言うも金剛はふふっと笑い

 

 

「もっちろんデース!ここにいる艦娘はちゃんと仲間の大切さもわかってる娘達ばかりだから心配ご無用デース!ね!電ちゃ「大歓迎なのです!」っておーい…」

 

 

金剛と電のコントっぷりに皆くすくすと笑う

 

穏やかな空気が談話室を包む

 

 

 

「…よかった…ありがとうございます。みなさん」

 

 

みんなの優しいリアクションに安心した千歳は安堵し、礼を言う

 

 

「よかったのう、時雨よ」

 

「…うん…本当に…う、うぅ…」

 

 

突然涙ぐむ時雨を見て嵐がソファーから立ち上がり時雨に近づく

 

 

「お、おい…なんで泣くんだよ…誰もいじめたりなんてしないって…」

 

 

「…うう…みんなのあたたかさが…身に沁みて…うれ…ひっく…嬉しくて…」

 

 

ぽろぽろと涙を流す時雨を見て開いた口が塞がらない嵐

 

 

そんなやりとりを見た金剛が電に小声で

 

 

「…落ち着くにはもう少し時間かかりそうデスね…」

 

「…そ、そうですね…うん…」

 

 

苦笑いで金剛に返す電

 

 

 

「…話はまとまったようだね。よかった」

 

 

そう言って談話室に遅れて入ってきたのは響だった

 

響の姿を見てゴーヤがあっ、と思い出す

 

 

 

「そういえばここに来る娘の条件がわかったってひーちゃん言ってたよね!?」

 

 

ゴーヤから聞き慣れない呼び方をされた響は一瞬表情が固まる

 

 

 

「…ひ、ひーちゃん……うん…いや、でもよく考えたらまだ不確定な情報だから…」

 

 

時雨の横に並んだ響がぽん、と時雨の頭に手を乗せながらゴーヤに答える

 

 

「…それでも…聞きたい…ですね…」

 

 

千歳達を談話室に連れてきた朝潮が神妙な顔つきでソファー…白雪の隣に座りながら響に催促する

 

朝潮から問われた響はふぅ、と息を吐いて近くの椅子に座り

 

 

「…そう、だね…意味有りげに言おうとしたのは私だね…それは申し訳ない」

 

うん、と頷く響

 

 

「…わかった。けどこれはあくまで私の推測であり憶測だよ…信憑性も信頼性も無いからただの…そうだね…戯言だと思って聞いてほしい」

 

 

響の言葉に電達は緊張する

 

ここに来たばかりの千歳達でさえ響の雰囲気に圧される感覚すら感じた

 

 

 

「…この鎮守府に来る条件…うん、いくつかあるであろう条件の一つは多分…解体。だと思う」

 

 

「…解体…」

 

 

摩耶が呟き、響が頷く

 

 

「…まだ朝潮達や摩耶さん達の記憶は視ていないからはっきりとは言えないけども…電と金剛さん…そして千歳さん達の記憶を視て…だね」

 

 

「…けど時雨ちゃんや利根ちゃんは死んでからここに来てマスよ?」

 

 

金剛が問うと、響は頷く

 

 

「…確かに…けど反乱…佐渡の事件の後は遺体を建造機に入れて解体されたって話だ…立派な解体行為だろう?」

 

 

響は朝潮達の方に視線を向ける

 

 

「…電から聞いた話だと…君達は3人とも殺されたと聞いた…けれどもその遺体はどうなったのかな?」

 

 

 

「…そこまでは…あの映像じゃ見れなかったのです…」

 

 

朝潮達の代わりに伊豆の映像を見た電が答える

 

 

「…もしかしたら…誰かが君達3人の遺体を建造機で解体した人がいるのかもしれないね…」

 

 

「…」

「…」

 

 

響の推測に黙ってしまう朝潮と嵐

 

 

確かに、当時の伊豆…いや、静岡の提督で一人だけそんな事をやりそうな人がいる

 

 

"艦娘は艦娘らしく"なんてあの提督なら言いそうだなと思う朝潮と嵐だった

 

 

 

「…それに私もそうだ…あえて皆には言わなかったけれど、私はロシアで包丁で刺されて死んだ…はずだ。…けれどももしかしたら私の遺体を海軍関係者が発見して建造機に掛けてくれたのかもしれない…」

 

 

 

最後に響の告白で談話室の空気が少しだけ重くなる

 

 

 

「…なんてね。これが私の予想だよ…ただの戯言だろう?」

 

 

ふふ、と笑う響 

 

しかし周りの反応は意外なものだった 

 

 

 

「…いや、ありじゃねぇのか?」

 

 

嵐が摩耶に問う

 

 

「…可能性はあるよな…けど…」

 

 

摩耶の言葉に白雪が頷く

 

 

 

「…私達以外にも解体された艦娘はいます…何故私達なんでしょう…」

 

 

時雨は少しだけ顔を俯かせ呟く

 

 

「……ぅ…筑摩さん……」

 

 

 

響は両手を小さく上げ

 

 

「…さぁね…恐らくそれがもう一つの条件に関係する事なのかもしれないけど…私にはさっぱりだよ」

 

 

響の返答に皆肩を落とす

 

 

「…」

 

 

 

実は響はもう一つ気になる事があった

 

それは先程電の前で見せた事だが…

 

 

「…まぁ、きっと時間はある…皆でゆっくり考えようじゃないか」

 

 

 

あえて今は言わない事にした響だった

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、時雨懺悔編でした。

最初は時雨の立ち位置を日向にしようかと考えていたんですが…時雨の方がそれっぽいなと思ってですね…

あと後々のお話にもちょっと絡ませる為にも…はい。


また、千歳さんは大人っぽい雰囲気もある方なので、電達の話の吸収が早く、電達の説明後の現状…自分に起きている状況も利根さんよりも理解が早めとなっています。


そして名探偵響の誕生です。彼女は伊達に長く生きてませんね。

この鎮守府の艦娘達は何故傷がつかないのか…そして自傷行為で痛みを感じなかった時雨が電のパンチで何故痛みを感じたのか…


それはもう少し先のお話になります
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