大本営の資料室   作:114

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はい、始まります



File45.田中、播磨へ行く

「…んにゃ…」

 

 

 

東海支部 第4資料室

 

 

窓からオレンジ色の光が差し込む

 

 

どうやら例のごとく、夕方まで佐渡の資料の世界に入り込んでいたようだった

 

 

じゅるりと垂れた涎を拭いた山田はきょろきょろと周りを見る

 

 

「…あ、れ…みんないな「いますよ」

 

 

「ぴゃぁぁああっ!」

 

 

視界の外、ソファーの隣に座っていた不知火ことデコポンが声をかけると山田は座ったままの姿勢でビクンと跳ね上がる

 

 

「くぁっ…くぁあっ!!ビックリした!…って、デコちゃんだけ?」

 

 

ソファーから立ち上がり、デコポンは窓の方へ近づく

 

 

「…ええ。山田少尉が"世界"に入ったあとに田中中尉が早退して…ああ、まぁアレは仮病ね。間違いないわ…松井准将達は買い出しよ」   

 

田中、松井、犬飼がいない事で敬語をやめるデコポン

 

夕日の照らされる海を背に、窓枠に腰掛けて山田の方を見る

 

 

「…佐渡の事件の事を松井准将と犬飼少佐から聞いていたわ…三原提督とその秘書艦千歳が反乱を起こしたというのは本当なの?」

 

 

 

デコポンの問いに、苦い顔でゆっくり首を横に振る山田

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

佐渡の内容をデコポンに説明すると、デコポンはやっぱりね、と頷く

 

 

「…准将もその報告書を怪しんでたから…そう…そうだったの…」

 

 

「うん…なんだろう…本当に、その基地に就く提督によって艦娘も変わるんだなって…そう思ったかな…」

 

 

「…そうね。私達艦娘が司令…提督から受ける影響はとても大きいから…」

 

 

自身の事も含めての意味なのか、デコポンは自嘲する様に説明する

 

 

 

「…でもデコちゃんは良い子だよね。やっぱり提督さんから良い影響を受けたのかな?」

 

 

「…ふふ、さぁ、どうかしら…」

 

 

 

そう言うデコポンは自分の提督とのいつかの思い出を思い出したのか、穏やかに笑う

 

そんな彼女の小さな笑みを見た山田もふふ、と笑い

 

 

「…早く会ってみたいなぁ…どんな人なの?」

 

 

 

山田にそう問われ、デコポンは資料室内の本棚に視線を向け、遠い目をしながら

 

 

「ぐうたらで…怠け者な提督よ…でも…私達艦娘を大切にしてくれた…人間と同じ様に…我が子の様に護ってくれようとしてくれた…口は悪いけど根は良い人…ね」   

 

 

「田中先輩みたいだね」

 

 

山田に言われるとデコポンはしかめっ面の田中と、自分の提督を頭の中で並べて"確かに"、と笑う

 

 

 

「…そうね…似てるかも…」

 

「ならその提督さんも田中先輩と仲良くなれるんじゃないかな?」

 

 

へらへらと山田がそう言うが、デコポンは小さく苦笑い

 

 

「…似た者同士だからって仲良くなるとは限らないわ…」

 

 

「あらあら…酷い言われようやな…」

 

 

資料室の扉を開けてそう声をかけるは買い出しから戻った松井と犬飼だった

 

 

 

はい、と犬飼は紙パックのカフェオレをデコポンと山田に渡す

 

 

「え、いいんですか!?」

 

「…ありがとうございます」

 

 

 

松井はソファーに座りながら缶コーヒーのタブを開ける

 

 

「タナちゃんは怠け者ちゃうでー?やる時はバチッとやる男や」

 

 

「…ま、艦娘には甘いというのは言えてるのかもしれないっすね」

 

 

犬飼も扉近くの椅子に座り、紙パックのカフェオレにストローを差して吸う

 

 

「…あー…あはは…そうかもしれませんね…」

 

 

「…よっしゃ!…イジケ虫の事はほっといて…山ちゃんの報告聞こうやないか」

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

東海支部本館 加藤の執務室   

 

 

 

1800

 

 

加藤と秘書ヴェネッカが書類作業を行う中、執務室の扉が少し強めにノックされる

 

 

「…ん?…誰だろう…?」

 

「…特に今日はもう来客の予定はありませんが…」

 

 

ヴェネッカが椅子から立ち上がり、執務扉に近づくとノックをした本人は勝手に扉を開けずかすかと入ってくる

 

 

 

「おう、加藤!少し付き合え!」

 

東海支部大将、強面老将校の鈴木だった

 

 

「…鈴木大将…突然付き合えとは…何処かで問題でも起きましたか?」

 

 

対する加藤は席に座ったまま、書類に視線を向けたまま静かに返す 

 

 

 

少将が上官の大将に敬礼もせず、目線を合わせずに答える

 

通常不敬だと殴られても文句を言えないような態度を加藤がとるが、鈴木は気にすることなくがははと豪快に笑う

 

 

 

「がはははっ!ちげえよ!メシだメシ!」

 

 

 

加藤は鼻でため息

 

 

「…青山ですか?六本木ですか?…申し訳ありませんが今日中に終わら「クロクマのジジイんとこだ」

 

 

「…ふむ…わかりました」

 

 

それまで興味無さそうだった加藤がクロクマのじじい、と聞くと書類から目を離し、眼鏡を外す

 

 

「…加藤少将…」

 

 

ヴェネッカが加藤の名を呼ぶも執務机から立ち上がる

 

 

「おう、んじゃあ俺ぁ先に正面にいるぞ。待たせんなよ」

 

 

「ええ。直ぐに」

 

 

 

それだけ言うと、鈴木は加藤の執務室から出ていく

 

 

 

「じゃあ、私はちょっと出てくるので…申し訳ないがヴェネッカ達は引き続き頼めるかな?」

 

 

 

「…それはもちろん…ですが、お一人では…」

 

 

普段表情の変わらないヴェネッカが心配そうな顔で加藤に問うも、加藤はにこりと笑い

 

 

「…いえ。今日は私一人で大丈夫だよ」

 

 

ああ、と加藤は足を止めて窓の方へ顔を向ける

 

 

「…護衛も大丈夫だよ」

 

 

 

そう言って加藤は上着掛けから上着を取ると、執務室を出ていってしまった

 

 

 

 

「……はぁ…だ、そうだ?」

 

 

ヴェネッカがそう呟くと、窓のカーテンがふわりと揺れてカーテンの隙間から軽巡川内が不貞腐れながら現れる   

 

 

 

「…あーあ…つまんないの…」

 

 

ヴェネッカはうーん、と悩みながら川内に問う

 

 

「…クロクマ…とは何の事だ?」

 

 

「うん、なんかおでんの屋台らしいよ?少将と大将はたまに二人でそこ行くんだって」

 

 

「…オデン?…オデン……そう、か…」

 

 

未だ日本食に慣れていないヴェネッカは恐らく食べ物と思われる未知なる食事を想像しながら短く答える

 

 

 

(…おでん…食べたことないのかな?)

 

 

うーん、と唸るヴェネッカを少し面白そうに観察する川内だった

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

第4資料室 

 

 

夕焼けが沈み、東海支部正面の水平線の彼方に月が上がりはじめた頃

 

山田は松井、犬飼、デコポンに佐渡の報告書内容を報告した

 

 

 

「…反乱に加担したんは三原派…やったんか…うわー…やってもうたな…北陸…」

 

 

「…ッスね。三原にだけ聞き取りして…まぁ、他の士官にも話は聞いたんでしょうけど…生き残った艦娘の話は聞かなかったんすね…」

 

 

松井と犬飼はため息混じりにそう答える

 

 

 

「…しかも即解体って…井ノ上もそうやけど、北陸にはアホな将校しかおらんやん…」

 

 

「あっちは中国、ロシアと近いのが影響してるんすかね…どうも実力無いくせに偉そうな人が多いイメージッス」 

 

 

 

「…なんか…反乱を止めようとしたのに巻き込まれた艦娘達が可愛そうです…」

 

 

山田はそう言って犬飼から差し入れされたカフェオレをちゅうちゅうとストローで吸う

 

 

 

「…そう言ってもらえるだけで佐渡の艦娘は幸せですよ。山田少尉」

 

 

松井と犬飼がいるため再度言葉遣いを変え、口元をほんの少しだけ吊り上げ、呟くデコポンだった

 

 

 

「今、佐渡は新しい提督が?」

 

「うん、みたいやね…僕はそこまでは詳しくは知らへんけど、三原の後釜には若手の士官が就いたらしいで」

 

 

「…へぇー…」

 

 

山田の問いに松井はまだ見ぬ佐渡の新提督のことを考えながら答える

 

 

その後、様々話を終えると資料室内に少しだけ沈黙が流れる

 

しかしその空気を変えたのは駆逐艦よろしくな見た目の新人士官だった

 

 

 

「…あ…で…えーと…そういえば、田中先輩と…漣ちゃんって…」

 

 

 

山田は佐渡の報告書を読む前…朝の事を思い出しながら松井に問う

 

 

 

「うん、元播磨の提督とその艦娘やね」

 

 

松井の返しにですよねー、と山田は笑う

 

松井は足を組んでため息を一つ

 

 

「…残念やけど…播磨の資料はここには無いんや…多分第1資料室やろな…」

 

 

「え…じゃあまた盗みに?」

 

「行かへんて」

 

松井はビシッと山田にエアツッコミ

 

 

 

「…流石に鴇田大佐からストップかかりましたッス…第1から眼鏡とか資料とかパクりすぎっス」

 

 

 

ソファーの肘当てに項垂れて犬飼をジト目で見る松井

 

 

 

「…聞こえへんな」

 

 

「あ…うーん…それは残念ですね…あ、でもでも、優先は出雲の資料ですし!ね!デコちゃん!」

 

 

仕切り直すかの様に山田は隣に座るデコポンのほっぺたをむにむにと触る

 

 

「んにゃにゅも…んもにゅも…」

 

 

「…ま、今日は山ちゃんとポンちゃんはあがってええで。後は僕らが整理しとくわ」

 

 

「え…自分もッスか…」

 

 

 

口元を尖らせてジト目で松井を睨み返す犬飼に松井は知らんぷり

 

 

「…ああ…ワンちゃんと一緒に資料整理出来たら最高なんやけ「さあ、准将…!二人で整理しましょう!二人で!」

 

 

 

変わり身の速さに苦笑いの山田

 

山田がソファーから立ち上がると、デコポンもソファーを立つ

 

 

「…ではお先に失礼します。まっつん先輩、犬飼少佐」

 

 

 

「乙やで」

 

 

山田とデコポンが松井と犬飼に敬礼すると、松井はひらひらと笑顔で手を振り、少し半笑いの嬉しそうな犬飼は敬礼で返す

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

東海支部 士官寮

 

 

「なんか…私全然資料室の仕事してないよね…」

 

「…何故この姿勢でそんな事を?」

 

 

 

士官寮、山田(とデコポン)の部屋にて上下ジャージの山田は、ベッドの上で座って本を読む柴犬をモチーフとしたわんこパジャマを着たデコポンの膝枕に頭を乗せてくつろぎながらぼやく

 

 

「…資料整理もしてないし…掃除だってちりとりの役ばっかだし…」

 

 

「…でも中尉にも准将にも見れない事実を視ているじゃない…貴女にしかできないわ。少尉」

 

 

デコポンは表情を変えることなく淡々と答える

 

すると山田はにやりと笑い、下からデコポンの顔を見つめる

 

 

「…ん…何よ…」

 

 

「ぬっひひー…デコちゃんに褒められちゃったなぁ…って」

 

 

「……」

 

 

しまった…と、恥ずかしさもあって本を使い顔を隠すデコポン

 

直後、膝枕…もといデコポンの太ももの上にある山田のにやけた顔を本で蓋する

 

 

「むあっ…ちょっ…デコちゃんっ」

 

 

 

「…忘れなさい!」

 

 

「んむー…」

 

 

 

ぎゅうぎゅうと山田の顔に本を押し付ける陽炎型の2番艦だった

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

「…あ」

 

 

 

同時刻 第4資料室

 

 

犬飼と資料整理を行う松井は何かを思い出したかのように一言発する

 

 

 

「どうかしましたか?准将」

 

 

「ん…いやー…そういえば山ちゃんに言うん忘れとった…」

 

 

松井は本棚にファイルを入れながら犬飼の問いに答える

 

 

 

「…言うこと?」

 

 

「いや、佐渡で捕まった三原の…基地本館にある私室の事なんやけど…」

 

 

「…私室?…はい…」

 

 

ファイルを仕分けながら会話をする松井と犬飼

 

 

「…誰やったっけな…佐渡の事件の事で話聞いてたんやけど、三原の私室のベッド側の壁に貼ってあったらしいんや…」

 

 

「…貼ってあった…ッスか?」

 

 

 

犬飼の手が止まり、松井を見つめると、松井は唸りながら

 

 

 

「山ちゃんが横須賀鎮守府で見たっちゅー…紫の旭日旗が…」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「…ねぇデコちゃん?」

 

 

「…何?」

 

 

 

士官寮

 

 

時刻を指す時計の針はてっぺんを回り、今日だったものは昨日に…明日だったことは今日になる

 

 

山田とデコポンは二人ベッドに並び寝ていたが、山田の方からデコポンに声をかけた

 

 

 

「…艦娘の娘達って…解体されたらどうなっちゃうのかな…」

 

 

 

壁側を向いて寝るデコポンは一瞬考えたが

 

 

 

「…その言葉のままよ…解体されたらその娘の命はそこまでよ…身体は無くなり…その娘がいた思い出だけが残るわ」

 

 

「…魂はどこに行くんだろう?」

 

 

 

二人は顔を合わせることなく小声で会話する

 

 

 

「…さぁ…解体されたこと無いからわからないわ」

 

 

でも、とデコポンは壁の方を向いたまま続ける

 

 

 

「…何処かで誰かが言っていた事だけれども…死んだ…もしくは解体された艦娘の魂は英霊に戻って"海"に帰るらしいわ」

 

 

「…うみ?」

 

 

聞き慣れない単語にデコポンの方を向く山田

 

 

 

「…なんてね。私も詳しくはわからないけど…ただの噂よ…お休みなさい」

 

 

 

「…おやすみ…」

 

 

 

海…

 

 

何故かこの単語が山田の記憶に強く残った

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

同時刻 東海支部より離れた繁華街の裏通りにある赤ちょうちんの灯りが灯った屋台の席には、二人の初老男性の姿があった

 

私服姿の加藤と鈴木だった

 

 

「へい、どうぞ」

 

 

ツルツルの頭のお爺ちゃん店主が2人の前の台におでんの具が盛られた皿を置く

 

 

「おお、これだこれ…」

 

 

酒が回っているのか、顔を赤くした鈴木が味の染みた大根にかぶりつく

 

 

加藤は日本酒の入ったグラスを傾け、一口含む

 

 

「…んむ…む…ああ…相変わらずクロクマのじじいの味付けは最高だな。なぁ、加藤」

 

 

「…ええ。昔から変わらない…良い店ですね」

 

 

 

この裏通りの屋台。

クロクマおでんは加藤と鈴木がまだ駆け出しの士官…今よりも若い頃から営業していた屋台である

 

同期の二人はなにかある度にここで話をし、酒を求む喉を潤し、腹を満たし、夢を語り合っていた

 

 

将校になって忙しくなってからはなかなか来ることはなかったが…

 

 

「…うぃー…んで?…4資のガキどもはちゃんとやってんのか?」

 

 

鈴木がグラスの中身を飲み干すと、店主が何も言わずにおかわりの日本酒を注ぐ

 

 

 

「…ええ。"新造艦"の艦娘を資料室担当艦娘に加えて頑張ってますよ」

 

 

 

「…そうか…田中のガキも…元気なのか?」

 

 

鈴木は視線を落とし、加藤に問う

 

まるで他人に押し付けた我が子を想うように

 

 

しかし加藤は軽く笑い

 

 

「…もちろん。先日もじじいじじいと罵られましたよ…ははは」

 

 

「…ふん。そうか…」

 

 

そう一言返すとグラスを一気に傾ける

 

 

 

「…まだ気にしてるんですか?鈴木君…」

 

 

今は支部の外。

 

桜の階級章の無い二人はかつての若かりし頃のように加藤、そして鈴木君と呼び合う

 

 

「当たり前だ…アイツの艦隊を壊滅させたのは俺みたいなものだ…アイツは俺を恨んでるだろうよ…」

 

 

厳格な雰囲気を漂わせていた鈴木の表情は、田中への申し訳なさのせいなのか、年相応の初老のそれへと変わる

 

 

「…あの作戦は上からの任務でしたから、鈴木君が悩むことでは無いかと…それに田中君も鈴木君の事を恨んではいませんよ………多分」

 

 

 

「…最後の一言が余計だぜ。加藤…」

 

 

 

加藤はふふ、と小さく笑いかつて田中と鈴木が関係した"任務"を思い出す

 

 

 

「…播磨水上特攻作戦…本当に馬鹿な作戦よ…武闘派と呼ばれた俺が指揮させられた最初で最後のクソ作戦だ…」

 

 

 

鈴木はそうぼやいて店主の注いだ日本酒を一気に飲み干す

 

しかし一気飲みをするその姿を見て、流石に店主は渋い顔をすると、鈴木のグラスへはおかわりは注がなかった

 

 

 

「…今度一緒に第4へ行ってみますか?許可証なら用意しましょう」

 

 

「いや…いい…今更話す事もねぇからな…」

 

 

加藤の提案にそう返す鈴木の眼の前の台には店主が水の入ったグラスを置く

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

翌朝 早朝

 

 

「ぐぐ…すぴー…ん、んふふ…デコちゃん…それは投票箱だよぉ…ふひひ…」

 

 

「…」

 

 

資料室へ向かうには随分と早い時間

 

ベッドの上、未だ夢の中でデコポンの夢を見る山田をなんとなくジト目で睨むデコポンは、数日前に田中が補修、染み抜きをし、犬飼が洗濯をして、山田が干し、松井が匂いを嗅いだ出雲時代から着ていた制服に着替えると、髪留めともうワンセット…山田から借りた制服を手に持ってベッドの前に立っていた

 

 

 

「…先に…行くわね…」

 

 

 

デコポンは寮の扉を開け出ていった

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

0700

 

 

第4資料室

 

 

昨夜購入したサンドイッチと野菜ジュースを頬張りながら、ソファーで新聞を読む田中

 

 

「……むぐむぐ…」  

 

 

そこへ資料室の扉が開き、一人の少女が入ってきた

 

田中はちらりと少女の姿を確認すると、新聞に目を向ける

 

 

 

「…なんだよ…随分出勤時間が早いな。チビ女は一緒じゃねぇのか?」

 

 

ぶっきらぼうにそう問う田中

 

 

 

「…」

 

 

田中の問いに何も返すことなく、ピンク色の髪をポニーテールにし、陽炎型の制服を着た少女は田中の方へと足を進める

 

 

「…まぁアイツにはいつも胸糞悪いモン見せちまってるからな…たまにゃあ休んだって「先生」

 

 

 

この時田中は感じた

 

デコポンの声じゃない、と

 

そう思った田中はゆっくりと新聞から少女へと視線を上げる

 

 

 

「…お前…」

 

 

そこにいたのは陽炎型駆逐艦のデコポンではなく、涙目で口を一文字にむすんだ綾波型駆逐艦の少女

 

昨日の朝、本館のロビーで田中と再会した播磨の艦娘、漣だった

 

 

 

「…まだいたのかよ…」

 

 

田中は頭を片手で抑えてぼやく

 

 

「…先生と…お話がしたくて…」

 

 

漣は両手で持った茶封筒を大事そうに抱き締め

 

 

 

「…俺はお前と話すことは無い…お前らと会話する資格なんて「あの娘に…会ってあげてください」

 

 

田中の言葉を遮って陽炎型の制服を着た漣は田中に頭を下げる

 

あの娘、と言われて田中はある少女を直ぐに想像する

 

 

 

播磨時代、自分にとっての"ほぼ"初期艦の少女

 

 

 

「…誰の事かさっぱりわかんねぇな…」

 

 

「嘘…わかってるくせに…」

 

 

漣がそう言うと、田中は手に持っていた新聞紙をくしゃりと握る

 

 

「俺はお前を…お前等を沈めようとした男だ…もうお前等と関わりなんて持てない……アイツにも会う資格なんてない」

 

 

「資格なんて関係ありません…あの娘は先生に会いたがってるんです」

 

 

「…」

 

 

涙目でも真っ直ぐに田中の目を見つめる漣

 

そんな漣の眼から逃げる様に視線を下げる田中

 

 

漣はここ数日間抱えていた茶封筒を田中に差し出す

 

田中は漣を見ながら封筒を受け取り、中身を取り出す

 

 

「…"月への12秒"…お前…これ…」

 

 

それは吹奏楽のスコア譜面だった

 

 

「…先生の創ってくれた播磨音楽隊…みんな先生の事が大好きですから…私も……誰も…誰も先生を恨んでなんかいませんから!」

 

 

「…漣…」

 

 

 

 

 

『はぁ?誰よあんた』

 

 

 

『…お前ら、俺と音楽やらないか?』

 

 

 

 

 

 

『こんなのわかるわけないじゃない!音符なんて読めない!』

 

 

『はいはい…この音符はな…』

 

 

 

 

 

『もう一度!オープニングから合わせだ!』

 

 

『『ええー!』』

 

 

『ぼやくなぼやくな!やればやるだけそれが音楽に表れる!よしっ!やるぞ!』

 

 

 

 

 

 

 

かつての播磨を思い出す田中

懐かしく感じ、笑みが零れそうになるが、一つ息を吐く

 

 

 

「…だが…俺は…「うじうじうじうじしとってまぁ〜…」

 

 

「!?」

 

 

突然資料室の入口の方から男性の声が聞こえた

 

扉を開けて入ってきたのは松井だった

 

 

 

「…いい加減、過去と決着つけたらどうなんや?…タナちゃん…」

 

 

「…まっつん…」

 

 

資料室に入ってきた松井は缶コーヒーを冷蔵庫から取り出すと、ソファーに腰掛ける

 

 

 

「数年前、ゴミ溜めと呼ばれた鎮守府があった…艤装が出せない、戦う意志がない、海に浮かべない…そんな欠陥艦娘を寄せ集めた鎮守府や…」

 

 

「…」

 

 

田中は松井を睨み、漣は両手を悔しそうに握る

 

まるで松井から漣達が欠陥艦娘だということをつきつけられているかのような気分になる

 

 

 

「…建物はボロボロ、食事も質素なものばかり…そりゃそうや…戦果も挙げられん鎮守府を立て直す必要なんてあらへんからな」

 

 

缶コーヒーをぐいっと飲む松井

 

 

「…せやけどそんな鎮守府に二人の士官が着任した…士官達へ命じられた任務は"播磨をなんとかしろ"…と」

 

 

松井に次いで犬飼、山田、デコポンが資料室に入ってくる

 

 

「…着任したばかりの二人の士官は大変やったみたいやな…海軍関係者を恨んで、嫌っとる艦娘達からの暴言、暴力、嫌がらせ…せやけど二人の士官は諦めんかった」

 

 

最後にメガネを掛けた男性士官が一人、資料室に入ってくる

 

 

 

「…悩んだ士官二人は戦えない艦娘を戦場に立たせず、違う舞台に立たせたんや…戦う艦娘としてではなく……音楽を奏でる演奏者として…」

 

 

田中は資料室の扉の前に立つメガネの男性士官に視線を向ける

 

 

 

「"播磨音楽隊"…戦えない艦娘達に二人の士官が与えたんは音楽や」

 

 

 

「…坂本…」

 

「お久しぶりです。田中提督…」

 

 

 

坂本と呼ばれた眼鏡の士官は田中へ敬礼する

 

 

そんな二人を見て松井は続ける

 

 

 

「…士官の名は田中少尉…そして坂本少尉……ゴミ溜めと呼ばれた鎮守府を立て直すために…捨てられた艦娘達を再び輝かせようと我武者羅に前へ進んだ二人の士官や…」

 

 

 

「…どういうつもりだ?松井…」

 

 

「どーもこーもないちゅうねん…タナちゃん…いや、田中特務中尉」

 

 

それまでへらへらしていた松井の目つきが変わる

 

 

 

 

 

 

「これより数日間、坂本少佐に付き、播磨鎮守府へ任務の手伝いに行く事を命ずる。後は彼の指示に従いなさい」

 

 

 

「…はぁ!?なんで俺が…っつか手伝いって「命令やで?おみやは神戸牛でよろしくやで」

 

 

「…っ!!!」

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

ところ変わり佐渡防衛基地

 

 

 

1000

 

 

「あ、いたいた…おーい!」

 

 

 

海に面した堤防に座り、水平線の彼方を見つめる二人の白露型の少女に声をかけるのは駆逐艦、江風だった

 

 

「姉貴たち朝からここにいたのかよ…サボりならあたしにも声かけてくれりゃあ良かったのに…」

 

 

 

江風は姉二人の横にしゃがみ込む

 

 

「…ぽーい…」

 

「あ、うん…ごめんね…って、サボりじゃないけど…」

 

 

姉の一人、駆逐艦夕立は視線を変えることなく小さく呟き、もうひとりの姉、春雨は困った様な笑顔で謝る

 

 

江風も水平線を眺め

 

 

「なーんか…今日千代田さんすっげー張り切っててさ…防衛訓練やりまくるからっ!…てさ…マジあの人きっちーわ…あいたっ!」

 

江風がぼやくと夕立が素早く江風のつるつるなおでこにデコピンを炸裂させる

 

 

「…なにすんだよぉ…いちち…」

 

 

江風、おでこを擦りながら涙目になる

 

 

 

「…千代田さんのことそんな風に言ったら駄目っぽい」

 

夕立がつり眉で江風をそう注意すると、春雨はまあまあと夕立に両手を向け

 

 

「…でも夕立姉さんの言うとおり…大事な事だから…輸送も護衛も大切だけど…」

 

 

春雨はそう言って佐渡の基地本館に視線を向ける

 

 

つられて江風も視線を向ける

 

 

 

「…ここは佐渡海上防衛基地…日本の護りの要となる場所だから…」

 

 

 

春雨たちが本館を見ると、空をカモメたちが飛んでいるのが見える

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

同時刻

 

北陸支部 海軍特別治療院

 

 

 

慌てる様に院内を走る看護師

 

 

ばん、と勢いよく院長室の扉を開ける

 

 

「い、院長!大変です!」

 

 

息を切らした看護師が声を張ると、薄毛の髭面院長小林は飲んでいたコーヒーを吹く

 

 

「ぶっ…げほっげほっ!…ど、どうしたんですか!?」

 

「あらあらぁ…」

 

 

 

椅子に座る小林は目を丸くし、ソファーに座る患者の一人、荒潮はおっとりとした雰囲気で笑っている

 

 

「すすす、す、ステージ3の患者さんがっ…!」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

特別治療院 ステージ3通路

 

 

ある個室病室の前に数人の看護師がざわつく

 

「あ、院長!こっちこっち!」

 

 

「一体何があったんですか!」

 

 

「こ、こちらを…」

 

 

看護師に促され、扉についた小窓を覗く様に促す看護師

 

 

「…ふむ…ん?」

 

 

そこは防空駆逐艦の患者、照月の病室

 

通路側の小窓から中を覗くと少女が一人ベッドで眠っていた

 

 

 

「…なんだ…ただ寝てるだけじゃ………ん?」

 

 

照月…彼女の症状としては精神不安定による不眠症

 

 

そう、不眠症である

 

 

起きていても常に小窓に顔を押し付けて通路を歩く看護師を血走った眼で警戒するように見つめている少女

 

 

少なくともこのフロアにいる看護師が知る限り彼女が寝ている姿を見たものは院長の小林を含め誰一人としていなかった

 

 

そんな少女が静かにベッドで寝息を立てている

 

 

「…一体何が…どうして…」

 

 

小林は呟きながらポケットからカードキーを取り出す

 

 

「い、院長…何を…!」

 

 

「…」

 

 

何を思ったか小林は照月の病室に入ろうとしているのだ

 

 

「や、やめてください!安全のためスピーカーを使って声掛けして…院長!」

 

「誰か警備呼んで!」

 

 

 

看護師の警告を無視し、病室の鍵を開けて中へ入る小林

 

 

 

「…」

 

 

照月の病室に入った小林は恐る恐るベッドに眠る少女に近づく

 

 

近づけば近づくほどに照月の顔色が見える

 

確かに目の下に隈はあるが、年相応の少女がおかしなところなく寝ている様に見える

 

 

「…照月さん…?…照月さん?」

 

 

 

小林は小さく声をかける

 

小林の声で突然発狂するかもしれない…

 

 

小林は注意して近づき声をかける

 

 

 

「……照月さん」

 

 

「…ん…んん…」

 

 

 

小林の声に反応する様にゆっくりと眼を開ける照月

 

 

「…あ、えと…どちら様…ですか?…あれ?…ここは…?」

 

 

「…」

 

 

 

この約2年間…様々な精神治療を施したが、照月の症状が良くなることはなく、ほぼ神頼みで良くなるのを待っているしかなかった

 

 

それがたった一日でこんなにも…いつもの照月とは表情が全く違っていた…

 

 

故に小林は驚愕した

 

 

 

(…なんて穏やかな顔つきだろう…)

 

 

 

まぶたを擦りながら起き上がる照月はまさに少女のそれであった

 

 

 

様々な考えを自身の脳内で巡らせる小林だが、その考えを全て払拭してうん、と頷き照月に微笑む

 

 

 

「…ここは特別……いえ、ただの病院ですよ。私は院長の小林と申します…貴女のお名前…それと今までどこにいたかを言えますか?」

 

 

小林に問われ、照月は少しの間思案すると、その可愛らしい小さな口を開く

 

 

「…防空…駆逐艦…秋月型の照月です…えぇと…新潟県の…佐渡海上防衛基地で防衛任務に就いてたはずなんですが…あれ…えーと…その後のことはちょっと…」

 

 

色々と思い出しながらぽつぽつと答える照月に笑顔でうんうんと相槌をうつ小林

 

 

「ええ、ええ…ゆっくりで大丈夫ですよ…そこまで覚えているなら大丈夫ですね。よかった…本当によかった…」

 

 

小林は後ろに立つ看護師を呼ぶと、小林の後ろに立った看護師に小声で指示を出す

 

 

 

「…まずは検査をしましょう。この様子なら一般病棟でも大丈夫かと思いますが…念の為に…ああ、もう少し落ち着いてからで構いませんから…いや、それよりも点滴か…」

 

 

「は、はい…わかりました。すぐに!」

 

 

小林と看護師が話す姿を見てきょとんとした顔で首を傾げる照月

 

話を終えると小林は笑顔で照月に目線を合わせ

 

 

 

「大丈夫ですよ。もう心配ありませんから…私達に任せてください」

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

東海支部 

 

田中のいなくなった第4資料室

 

 

 

「かぁー…ようやく行ったわ…タナちゃん…」

 

 

「…最後まで抵抗してましたね。田中先輩…」

 

 

資料室の窓から海を見る松井と山田はそうぼやき合う

 

 

「…にしてもよう考えたわ…ポンちゃん」

 

 

 

松井はソファーに座るデコポンの方を向いてにやりと笑う

 

 

「…自分の制服を漣ちゃんに貸して、変装させて陽炎型として資料室に通すなんてねぇ…」

 

 

「…人間と違ってどうせ艦娘は大して確認されませんから…警備の人がおじいさんなら尚更ですよ…」

 

 

ツンとした態度で松井に返すデコポンを見て苦笑いの山田

 

 

「あはは…バレてなければ良いですけどね…」

 

 

 

 

実はデコポンこと不知火は、早朝寮の部屋を出て本館ロビーにいる漣に声をかけていた

 

 

そこには坂本もいたが、資料室フロアへの許可の降りてない二人が資料室に入る事は当然不可能

 

 

そこで、せめて漣だけでも田中に会わせてやりたいと思っていたデコポンは山田から借りた制服を漣に又貸しし、彼女をポニーテールにした後に自身の持っていた許可証を漣に渡した

 

 

その後デコポンと坂本はロビーにて松井、犬飼と合流 

 

松井の特権(当日入室券)を使って坂本と共に資料室に入ったという訳である

 

 

 

 

「…それに…お世話になった司令…いえ、提督と会えない辛い気持ちは…よくわかるので…」  

 

 

 

そう答えるデコポンの表情は暗い

 

そう、そもそも彼女も出雲の提督情報を得る為に、この資料室に忍び込んだ

 

 

播磨の漣の気持ちはよくわかるのだ

 

 

 

 

「…後は…タナちゃんがお姫様とキッスすればハッピーエンドっちゅうわけやな?」

 

 

「え!?キッチュ!?そんな関係なんですか!?田中先輩とその……艦娘の娘は!?」

   

 

 

松井の冗談を聞いて勢いよくソファーから立ち上がる山田

 

驚いたデコポンは足がビクンと跳ねる

 

 

 

「あ、いや…知らんけど」

 

 

山田の勢いにちょっと退く松井

 

そんな時、犬飼が山田に一冊のファイルを渡す

 

 

「…お…ありがとうございま…す?」

 

 

犬飼からファイルを受け取った山田はあれ?と首を傾げる

 

 

「…出雲の報告書はまだ見つからず、播磨の報告書もここには無い…せやけど山ちゃんは山ちゃんで学ばなあかんねん…そいつは僕とワンちゃんとで昨日考えた今日の教科書や」

 

 

そう言って松井は缶コーヒーを一口飲む

 

 

「…今でこそどの鎮守府でも当たり前に使っている"艤装制御装置"…その装置を考えたある士官に関係する報告書ッス」

 

 

 

「…制御装置…」

 

 

制御装置と聞いて佐渡の事件を思い出す山田

 

 

「…ん?…こっちは…」

 

 

ファイルに止められた紙の報告書と別に、警察…もとい憲兵察が事件の証拠品として扱う様にA4サイズの真っ赤な板のような物がビニール袋に入れられてファイルの最後のページの裏に挟まれていた

 

 

「…それなー…信じられへんかもしれんけど、多分日記帳や」

 

 

山田がビニール袋から赤い板を取り出すと、確かに表紙は大学ノートの様に見えるが、そのページは赤いペンキで固まっているように全く開けなかった

 

 

「…って、これもしかして血ですか!?ペンキじゃなくて!」

 

 

赤いノートを手にしたまま顔を青ざめさせて松井を見る山田

 

 

「…せやで…よく素手で持てるなぁ…」

 

 

「…少尉なら開かずとも"視れる"のでないかと准将と話してたっス」

 

 

 

「…うーん…」

 

 

乾いた血のせいで赤い板切れと化したノートを両手で持ち、じっと見つめ意識を集中させる

 

 

 

『ー…の……から…』

 

 

 

すぅ、と山田の頭の中に誰かの声がかすかに流れる

 

山田はうん、と頷き

 

 

「…はい、多分これ視れます…」

 

 

「…やっぱりやな…そのノート…実はファイルに閉じられた案件の鎮守府とは全く別の所で見つかったんや…」

 

 

松井は飲み干した缶コーヒーの空き缶をテーブルに置く

 

 

「え?そうなんですか?…ならなんで一緒に挟まれて…」

 

 

山田の問いに犬飼も飲んでいたカフェオレをテーブルに置き、ひとつ息を吐く

 

 

 

「…艤装制御装置の発明者は、三重県にあった志摩鎮守府元提督…八木秀次少佐と言います。その報告書では志摩鎮守府で深海棲艦からの襲撃により亡くなったと書いてありますが…深海棲艦からの攻撃後に何らかの方法で生き残り、当時どの国の海軍も泊地展開していなかったトラック島近辺で生活をしていたと噂されていましたッス」

 

 

「…やぎ…提督…」

 

 

「そしてある日トラック島近辺で大爆発が起き、日本海軍の調査隊が近くの海面に流れていたそのノートを拾ったそうです。拾った当時は中を見ることができ、筆跡から八木提督のものと判断されたそうッス」

 

 

犬飼の説明に納得した山田は頷き

 

 

「…それでこの報告書と一緒にファイルに挟まれていたんですね…」

 

 

デコポンが松井に缶コーヒーを渡す

 

 

「サンキュやで、ポンちゃん…どや?…見てみるか?山ちゃん」

 

 

松井にそう言われて山田はファイティングポーズをとる

 

 

 

「もちろん!山田!視ます!」

 

 

山田が意気込むと、その隣にデコポンが座る

 

 

「…ん?…どないしたんや?ポンちゃん」

 

 

「…あ、いえ……少しの間…少尉の隣にいても良いですか?」

 

 

デコポンが松井にそう問うとうんうんと頷く松井

 

 

「ええで。どーせ図書委員長もおらへんし…今日は無礼講や!」

 

 

「無礼講の使い方間違ってますッス。准将」

 

 

 

仕切り直し

 

 

 

 

「ほなその本の記憶…山ちゃんの目と心で閲覧しーや」

 

 

山田は松井の言葉に頷くと、赤い日記を持ち、目を瞑り意識を集中させる

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

同時刻

 

東海支部から出発した黒塗りの車は首都高を進む

 

 

「…おい…いい加減くっつくな…」

 

 

後部座席に座る田中の腕にしがみつく駆逐艦漣

 

 

「嫌ですっ!うーっ!先生ェっ!!」

 

 

嬉し泣きなのか、漣は涙と鼻水を垂らしてぎゅっと田中の腕に頬ずりをする

 

 

「…ったく…きったねぇな…」

 

 

困った風の田中に向かいの座席に座る坂本はふふ、と笑う

 

 

 

「…ずっと会いたい会いたいと言ってたんですよ…漣さんは」

 

 

「…」

 

 

鼻水を垂らした漣は顔を赤くしてこくりと頷く

 

 

「…朧だけじゃないもん…私だって先生の事大好きだもん…」

 

 

漣の言葉を聞いた田中は抵抗することを諦めて、ため息を吐き、窓の外に視線を向ける

 

 

「…はぁ……もう勝手にしろよ…あと鼻水拭けよ…」

 

 

 

「…きっと朧さんも喜びますよ…田中提督」

 

 

坂本が提督、と呼ぶと田中ははんっ、と鼻で笑い

 

 

「…俺は准将からの命令でお前らの手伝いの為に播磨へ行くだけだ…それに…呼ぶなら特務中尉だ…もう提督でも大佐でもねぇんだ…」

 

 

昔から変わらない田中のツンデレセリフを聞いた漣は田中の腕に抱きつきながらにやにやし、坂本も懐かしい気持ちになると笑顔で返す

 

 

 

 

「…わかりました。田中中尉」

 

 

 

 

田中達を乗せた黒塗りの車はかつて田中が提督として就いた播磨へ向かう為に港へと進む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

結果 報 告

 

 

 

場所 

繝医Λ繝?け蟲 カ霑題セコ

 

日時

20 12 蟷エ6譛?5譌・

 

 

標題

豺ア豬 キ譽イ濶ヲ蛹悶@縺滄ァ?? 占襖縺ォ繧医k蜈ォ譛ィ遘?谺。荳?豢  セ陌先ョコ譯井サカ

 

 

 

 

結 果

 

繧ス繝ュ繝「繝ウ蟲カ霑 題セコ縺ョ蜈ォ譛ィ縺ョ諡? 轤ケ縺ォ縺ヲ縲∝?縺ヲ縺ョ濶ヲ螽倥′豐 域イ。縲∝?譛ィ譛ャ莠コ繧よュサ莠。縲∵キア豬キ譽イ濶ヲ蛹悶@縺滄ァ??占襖縺ョ蟋ソ縺ッ遒 コ隱阪&繧後★

 

 

 

ーーーーー

 




はい

佐渡の後日談をほんの少しだけ、そして田中君の過去にもちょっとだけ触れました。


次から長編のお話になります

巡洋艦メインのお話予定となっていますが、少しばかりグラップラーな話になると思うので…まぁ、あれです

多分球磨型姉妹活躍します


…はい。どうぞよろしくお願いします

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