大本営の資料室   作:114

47 / 111

ご覧の通り、ここまで結構シリアス調かつ、救いの無い話ばかりだったので、少し気分を切り替えて本編から外れた小話集として試しに投稿します


いや、俺は私は早く本編読みたいんだ

…という方はまぁアレですね


このお話は飛ばして頂いて結構です
(本当は読んでほしいです)



各ストーリーに出てきた方々の12月下旬から1月中…要は年末年始の日常を短編、または台本形式でお送りいたします。

多分最初から読んでないと、部分部分でこいつ誰だよ、となりますので、そちらはご注意を…

基本本編とは関係ありませんが、本編で表現出来なかった各ストーリーの登場人物の性格等も見えるかもしれないので、そちらも楽しんで頂ければと思います

…時間軸?
いえ、知らない子ですね




ではどうぞ






FileBreak.小話詰め合わせ

〜クリスマスin大隅〜

 

 

 

 

「うむ、今年もこの日がやってきのだな」

 

 

 

大隅警備府、執務室

 

 

各任務を終え、夕食をも終えた提督、鴛渕(おしぶち)提督は執務椅子に座り、腕を組んで唸る

 

 

 

「司令官…今年もやるのね?」

 

 

秘書艦、雷はわくわくした表情で、執務机の向こうにあるソファーの上で座りながらぽんぽんと跳ねる

 

 

「…ああ…そうだ…それが私のやるべきことだ!」

 

 

鴛渕はそう言うと、真面目な表情で執務机をどん、と叩く

 

 

 

「題して!いつも頑張っている良い子達へのクリスマスプレゼント作戦!」

 

 

わぁっ、と雷は笑顔でパチパチと拍手するが、そんな鴛渕と雷を、冷めた目で見る少女が1人

 

 

「…また今年もやるんですか?提督…」

 

 

秘書艦補佐、軽巡大井だった

 

 

「勿論だ!…この日の為に準備も抜かりは無い!」

 

 

 

 

〜数日前〜

 

 

 

「仮面ライダー?」

 

 

基地廊下にて、メモを片手に駆逐艦深雪と話す鴛渕は眉をひそめる

 

 

 

「そうそう、あたし結構好きなんだよね…リバイス!」

 

「り、りばいす?」

 

 

深雪は顎に指をあて、うーんと唸る

 

 

「セイバーでもゼロワンでも良いけど…やっぱ今はリバイスかな?」

 

 

「…ぜ、ぜろ?…ワイパー?」

 

 

深雪の言っていることが理解できてない鴛渕は震える手でメモすると、深雪がジト目で鴛渕を見つめる

 

 

「…司令官…わかってないだろ…?」

 

 

むむ、と鴛渕は唸り   

 

 

「わかるとも!仮面ライダーの…人形だな!?」

 

 

「…フィギュアって言ってくれよ…」

 

「私に任せろ!!」

 

 

 

〜回想終わり〜

 

 

 

 

「うむ、深雪をはじめ、艦娘達の要望は大方理解した!プレゼントも用意済みだ!」

 

 

うんうんと頷く鴛渕を見て笑顔の雷

 

 

「後は雷達がサンタさんすればいいのね!?任せて!」

 

 

 

大井は若干退きながら

 

 

「…私……達?」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇ 

 

 

 

 

クリスマス当日の深夜

 

 

 

「よし!準備完了!プレゼントを皆に配送する!」

 

 

 

赤いサンタ服、付け髭と、準備万端の鴛渕はプレゼント用の大きな袋を肩で背負う

 

 

「了解よ!皆の喜ぶ姿が目に見えるわ!」

 

 

トナカイパジャマに見を包んだ雷も意気込むが…

 

 

「さ、ささささ…寒っ!ちょっと!なんで私だけこんな格好なんですか!」

 

 

 

大井だけ1人へそ出しミニスカサンタの格好だった

 

大井はガタガタと震えながらお腹を擦る

 

 

「…仕方ないわよ…だってこのパジャマじゃ大井さん小さいだろうし…」

 

「うむ。私がミニスカサンタになるわけにもいかないだろう…事案になってしまう」

 

 

「…くっ…!…さっさと終わらせますよ!」

 

 

これ以上話してもこの提督は解ってくれないと判断した大井は鴛渕達を急がせる  

 

 

「まぁ、待て。今日のために良いものを用意したのだ!」

 

「したのだー!」  

 

「寒い寒い!何をですか!早くしてください!」

 

 

「ほれ」

 

 

鴛渕が指さしたのは艦娘寮の屋根だった

 

両肩を擦りながら大井は屋根の上においてあるものをよく見ると、何故か屋根の上に木製のソリが置かれていた

 

 

 

「……寒くて…ツッコムの辛い…!」

 

 

鴛渕は腕を組みながら唸る

 

「…なんとか煙突から侵入してプレゼントを、と考えていたのだが…艦娘寮の屋根には煙突が無いことを忘れていてな…それに釘かなんかにひっかかったのか、ソリが下ろせなくなってしまったのだ」

 

「ええ。参ったわね」

 

 

「…お、おバカ…」

 

 

鴛渕は肩をぶんぶんと回し

 

 

 

「縄は既に繋いである!さぁ、雷、大井!共に下ろそう!」

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇    

 

 

 

 

「ん…なんの音…ぴょん?」

 

 

 

艦娘寮、駆逐艦部屋

 

ゴリ、ゴリ、という何かを引きずるような音に目を覚ました駆逐艦卯月は、カーテンの閉められた窓の方を、目を擦りながら見る

 

 

「…ぴゃ!」

 

 

驚く卯月

 

そこには影越しだが、ロープを伝って誰かがこの艦娘寮に登ろうとしている様な光景が見えた

 

 

「ど、どどど…泥棒ぴょん!」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「おーえす!おーえす!」

 

 

艦娘寮の外では相変わらず鴛渕、雷、大井で屋根の上に引っかかったソリを下から引いていた

 

 

「ちょ…!みんな起きるからその大きな掛け声やめてくださいよ!」

 

 

 

ミニスカサンタは、元気いっぱいに掛け声を出すサンタとトナカイに震える声で訴えると、サンタははっとして

 

 

 

「うむ!そうだな!声を出せば体が温まると思ったが、確かに大井の言うとおりだな!」

 

 

「いや、だから…!」

 

 

縄を引きながら突っ込もうとする大井だが、そんな時に艦娘寮内では部屋の明かりがつく

 

 

「むっ!いかん!」

 

 

艦娘寮の扉が開き、パジャマ姿の艦娘達が外へと出てきた

 

 

「警備府に泥棒だなんていい度胸ね!……って…」

 

 

枕を構えて外に出てきた衣笠は屋根から垂れる縄を持ったサンタ姿の鴛渕達を見て思考が停止する 

 

 

「…なんだなんだ?」

 

「…提督?」

 

「大井さん…なんて格好を…」

 

 

ぞろぞろと外に出てくる艦娘達も状況が飲み込めないでいると、古株の伊勢が屋根と鴛渕達を見て、ため息し、冷静な表情で…

 

 

 

「…あー………下ろすの、手伝おうか…?」

 

 

 

「…う、うむ…」

 

 

 

服だけでなく、顔をも赤くした鴛渕は恥ずかしそうに頷く

 

 

 

 

その後、数十分かけて大隅の艦娘達と鴛渕達で屋根の上のソリを無事下ろすことに成功

 

 

鴛渕は艦娘達を一列に並ばせ、一人一人に手渡しでプレゼントを渡した

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

翌日

 

 

 

大隅警備府、執務室

 

 

各任務を終え、夕食をも終えた提督、鴛渕提督は執務椅子に座り、腕を組んで唸る

 

 

 

「うむ。来年こそは成功させようではないか!」

 

 

「そうね!今度は屋根から下ろしやすいようにソリにつける縄の本数を増やすわ!」

 

 

わぁっ、と雷は笑顔でパチパチと拍手する

 

 

 

しかし1人おでこに冷却シートを貼った風邪気味の秘書艦補佐がきっと鴛渕達を睨み

 

 

 

「来年は中止です!」

 

 

 

…ツっこんだ

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

艦娘寮

 

 

ワクワクしながらプレゼントの包装紙を開ける深雪

 

 

「リバイスかな?ゼロワンかな?」

 

 

しかしプレゼントの箱から出てきたのは、道着を着た厳格な顔つきの中年男性のフィギュアだった

 

箱には大きく"藤岡弘フィギュア"と書いてあった

 

 

「…誰これ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜クリスマスin第四資料室〜

 

 

 

 

 

山田「田中先輩」

 

田中「あん?なんだよ」

 

山田「明日クリスマスですけど、田中先輩はどうするんですか?」

 

田中「いや、仕事だろ」

 

山田「クリスマスパーティーとかしないんですか?」

 

田中「…お前なぁ…俺らは日本国軍海軍の人間だぞ?そんな世間のイベントなんかにうつつを抜かしてねぇで人類を守るためにだな…」

 

松井「おつやでー」扉ガチャ  

 

山田「あ、お疲れ様です。まっつん先輩」

 

松井「ヤマちゃんメリクリや。タナちゃん、僕出掛けてくるで!」

 

田中「は?どこに?」

 

松井「ラブライブのクリスマスコンサートイベントイン名古屋や」

 

田中「はぁ?」

 

松井「前日入りするからもう僕あがるで」 

 

田中「はぁあ?」

 

松井「ほな」扉バタン

 

 

山田「…」

 

田中「…」

 

 

 

山田「…人類を「黙れ山田」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜年末in遠江〜

 

 

 

 

 

遠江海上防衛基地、執務室

 

 

「…お?今年もやってるな?」

 

 

戦艦長門が執務室の扉を開け、中を覗くと毎年恒例行事、水野提督の同人誌追い込み作業が行われていた

 

 

「…あん?…んだコラ長門…なんの用よ」

 

 

眼の下に隈をつくった水野はペンを止め、煙草を咥えたまま長門を睨む

 

…実際、睨んでいるつもりはない。単純にあまり寝てないから目が据わっているだけである

 

「こ、怖いって…差し入れだよ…」

 

 

ビビった長門は一歩退くが、水野達の為に持ってきたお茶を見せると、水野は再び原稿と睨み合う

 

 

「…おう、サンキュ…そこ置いといて」

 

 

「あ、ああ…」

 

 

長門はそう返事をし、水野の執務机に湯気の立つ湯呑みを置く

 

 

「最上もお疲れ様」

 

次いで最上の作業する秘書艦机にも、"くまりんこ"と書かれた湯呑みを1つ置く

 

 

「お?…ありがとう、長門さん…助かるよ…」

 

少し疲れの見える笑顔で長門に礼を言う最上

 

 

「いや…私には絵心が無いからな…これぐらいしか手伝えん…すまない…」 

 

 

「ノン!ナガートは絵心以前の問題デース」

 

 

最上の反対側に座る眼鏡をかけた金剛がペンを立てて長門からのお茶を受け取りながらこれまでの過去を振り返る

 

 

 

 

〜回想〜

 

 

 

3年前

 

『長門ー…ベタ塗りしといてー』

 

『この長門に任せろ!』

 

『ちょ…全部黒に塗らないでって!』

 

 

一昨年

 

『長門ー…切っといた台詞の紙貼っといてー』

 

『この長門に任せろ!…とりあえず、全部の台詞の紙にのり塗って、と……』

 

 

ちまちま…ちまちま…

 

 

『…ぶぁっくしょん!』

 

『ちょ…台詞の紙が紙吹雪に!』

 

 

 

去年

 

『間ぁにあった!あと40分以内に印刷所に行けば…!……長門ー…出来上がった原稿印刷所持ってってー』

 

『この長門に任せろ!住所もバッチリだ!高速で行ってくる!』

 

 

 

『…』

 

 

『あれ?長門は?』

 

『…原稿持ってかないで印刷所行っちゃった…』

 

『…え、コミケ間に合わないじゃん…』

 

 

 

 

〜回想終わり〜

 

 

 

 

 

「…デース」

 

 

金剛が昨年までの長門の行為を話すと、長門は涙目で口を一文字に結ぶ

 

 

「…わ、悪かったって思ってるからこうしてお手伝いをしてるんじゃないかぁ…」

 

 

はぁ、と水野はため息

 

 

「…わかったわかったっつの…んじゃ、お茶おかわり頂戴っての…ったく…」

 

 

水野は飲み終えた湯呑みを長門に差し出すと、長門はみるみる元気になり

 

 

「…!…こ、この長門に任せろ!!」

 

 

水野の湯呑みを掴むと、嬉しそうに勢い良く執務室を出ていく長門

 

 

 

「…提督は長門に甘いデース」

 

 

「ああ…自覚してる…」

 

 

そこまで言って休憩がてら執務椅子から立ち上がり、煙草に火を点ける

 

 

「…まぁ、不器用だけど…あいつも頑張ってんだ…しっかり見てやろうじゃねぇのよ…」

 

 

煙草の煙を吹きながら窓を開け、外の景色を眺める水野

 

 

 

風は冷たく、どこからか若者達の騒ぐ声がうっすらと聞こえる

 

年末特有の雰囲気に水野はふっ、と笑う

 

 

今年も轟沈する者もいなく、艦娘同士も切磋琢磨し合いながらも皆和気あいあいと過ごす事が出来た。

 

秘書艦の最上も、金剛も長門も傷つくことなく、まるで家族のように仲がよく、関係ないが、お茶のおかわりを持ってきた長門がつまずいて原稿にぶっかけるまであと数秒…

 

 

 

 

 

 

 

「提督!お茶のおかわ…わっおっおわぁあっ!!」

 

 

そして水野は悟ったように呟く   

 

 

 

「……今年も新刊…落ちました…ってか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜年末in磯之家〜

 

 

 

 

古き良き時代から続く駄菓子屋。

 

"駄菓子屋いその"

 

 

 

「ただいまーっと…うーさみいさみい…」

 

 

勝手口を開けて入ってくるのは磯之真司

 

 

「おかえり〜」

 

 

パタパタとスリッパの音を立てて小走りで真司を迎えるはトレードマークだった髪を下ろした元軽空母龍驤こと真司の嫁、唯だった

 

 

ジャケットを脱ぎ、マフラーを取りながらおう、と返事をする坊主頭の旦那

 

 

「やっぱ年末やべぇな…ガソリンスタンド車パンパンだったわ」

 

 

そう言いながら灯油の入ったポリタンクを勝手口扉の前に置く

 

 

「なんや…うちそれ持ってくで?」

 

「ん?いいよいいよ…もうすぐ予定日近いんだから…買い物袋置いたら俺置くわ」 

 

 

真司はそう言って勝手口で靴を脱ぎ、買い物をしてきたと思われる買物袋をキッチンのテーブルに置く

 

 

「パパー!おかえりやー!」

 

 

「おう、ちびっ!」

 

 

ととと、と帰宅した父に駆け寄る幼女。

 

真司と唯の娘だった

 

真司は娘を抱っこしてちゅっちゅと愛娘の頬にキスをする

 

 

「やー!パパほっぺ冷たーい!」

 

「げぁー…ひっでぇ…おちびが温めろぉ〜」

 

 

うりうりと無精髭を娘に当てる真司

エプロンで手を拭きながら唯は呆れた様に息を吐き

 

 

「うりうりするんはええけど…とっとと風呂入って身体キレイにしてきーや?沸いとるから」

 

 

「はいはいっと…」

 

真司は娘を下ろすと、シャツを脱ぎながら何かを思い出す

 

 

 

「そーいや近くの神社、人凄かったぜ?…ちらっと見たら自治会の工藤さんもいたわ」

 

 

「…へー…なんやあれやな、年内に済ますんは幸先詣言うらしいで?」

 

 

唯は真司が脱いだシャツを受け取り、そう説明する

 

 

「…年内も何も今日大晦日だけどな…まぁいいや、風呂行ってくるわ」

 

 

「あいよ」

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

風呂を出た真司は着替え、頭にタオルを巻きながら鍋を温める

 

唯はキッチンのテーブルに座って頬杖をつき

 

 

「なぁー…料理くらい出来るで?過保護すぎやろ…」

 

「ん?…ああ、良いんだよ…俺ももう休み入ってっし、年末年始くらい家事は俺に任せてろって」 

 

 

真司は振り返ることなく唯にそう返す

すると唯は椅子から立ち、冷蔵庫から食材を取り出す

 

 

「…ホンマに……なら二人で家事やったらええやん…パパやって疲れとるんやから…」

 

 

「…ん?…あー…まぁ…いや、だけどよ…」

 

唯は冷蔵庫から取り出したネギで、真司の腰をツンツンとつつく

 

 

「…辛くなったらちゃんと言うて…ね?」

 

 

真司は思う

 

こういう時の唯の笑顔はずるいな、と

 

 

「…へいへい…んじゃ俺ぁ蕎麦湯でっから具材切っといてくれ」  

 

 

「うちに任せてや」

 

 

唯はにひっと笑い、まな板をシンクに置く

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

   

 

「うっし、パバ特製手打ちじゃない蕎麦だ!」

 

「手打ちちゃうんかーい」

 

 

数分後、年越し用蕎麦を作った真司は、唯のツッコミをスルーしながら居間のこたつで待つ愛娘の前に湯気の立つ天ぷら蕎麦を置く

 

 

「わーい!おそばやー!」

 

 

無邪気に笑う愛娘を見てほっこりする真司と唯

 

 

「…ほんならうちらも食べよっか?」

 

「おう、そうだな」

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

大晦日、磯之家は一家揃ってこたつで蕎麦を食べてテレビを見る

 

家族になってからずっと続けてきた事だった

 

 

『田中、タイキックー』

 

 

「あははは」

 

「…ふふ、こんなん回避不可能やん…」

 

「馬鹿だなー…田中…」

 

 

 

年末に放送されるお笑いの特番を見て笑う磯之一家

 

 

真司はこたつから立ち上がる

 

 

「んー?どないしたん?」

 

「しょんべんしょんべん…」

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「…あー……ふぅー…」

 

 

疲れと共に、膀胱に溜まった尿を放水する真司はトイレの壁についた小窓に視線を向ける

 

 

あと数時間もすれば今年が終わる時間、曇ガラスの小窓の外は紺色一色だった

 

 

 

「…今年も家族揃って年を越せそうでよかったなぁ…」

 

 

 

「……行くか…神社…」

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

「ちび!ちょっとだけパパと神社行くか!神…あ…」

 

「しー…やで」

 

 

排水を終えた真司の声は嫁の人差し指によって止められる

 

見れば唯の足を枕にして愛娘がこたつで寝息をたてていたからだ

 

 

その光景を見ると、真司はやれやれといったふうに笑う

 

 

「…ま、そりゃあそうか…」

 

 

消音にされたテレビのお笑い番組も、後半戦へと突入していた…

 

 

年が変わるまであと少しの時間帯… 

 

この時間に起きているには磯之家の長女にはまだ辛かったらしく、カウントダウンには届かなかったようだ

 

 

「…大丈夫や。明日なれば連れてけ騒ぐで?」

 

「…そうだな」

 

 

真司も唯と対面になるようにこたつに入る

 

 

 

「…ふふ…」

 

唯は娘の頭を撫でながら小さく笑う 

 

 

「…ん?…どうした?」

 

 

真司が問うも、唯は小さく首を横に振り

 

 

「…なんでもあらへんて」  

 

 

 

今年最後にいい笑顔見たな、と心で呟く真司だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜年末in第四資料室〜

 

 

 

 

 

山田「田中先輩…明々後日は大晦日ですけど、田中先輩どうするんですか?」

 

田中「あ?…んなもん決まってんだろ。仕事だ仕事」

 

山田「…意外と真面目ですよねー…田中先輩って」

 

田中「意外は余計だ」

 

山田「やっぱりアレですか?日本国軍海軍たるものってやつですか?」

 

田中「そりゃそうだろ…一応給料もらってるし…」

 

山田「いや…給料とかじゃ…」

 

松井「おつやでー」扉ガチャ

 

田中山田「…」

 

田中「…おい、なんだその完全防寒は…港の見回りでも行くのか?」

 

松井「まさか…なんでそんなことせなあかんねん」

 

山田「なんて言い方…」

 

松井「明日からコミケや」

 

田中「お前…」

 

山田「じゃあ明後日はこっち来れるんですよね?」

 

松井「明後日もコミケや」

 

山田「…え…大晦日「コミケや」

 

松井「今夜は徹夜や」

 

松井「今夜が山田や」

 

山田「???」

 

田中「…」無線用意 

 

松井「もう開場5分でなのは完売は聞きたないんや」

 

山田「えー…そんな…」

 

松井「ほな!僕は聖戦行ってくるわ!」扉バタン

 

山田「…」

 

山田「え!…た、た、田中先輩!良いんですか!?」

 

田中「…後は奴に任せた」

 

山田「…や、奴…?」

 

 

 

『おー、ワンちゃんも一緒に行…ぐぇえっ』ゴキッ

 

 

 

山田「…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜正月in若狭〜

 

 

 

若狭基地執務室

 

 

「あけましておめでとうございまーす!」

 

 

駆逐艦達に元気よくそう挨拶される山下提督

 

 

「ああ、あけましておめでとう…これはお年玉だ。大事に使うんだぞ?」

 

そう言って駆逐艦一人一人にポチ袋を渡す山下

 

 

「ありがとうございまーす!」

 

「やったー!遊ぶよー!」

 

「ありがとう司令官ー!」

 

 

駆逐艦達は喜んで執務室から出ていく

 

ふぅ、とため息を吐く山下の執務机に秘書艦長門がお茶を置く

 

 

「…ふふ…毎年大変だな。提督」

 

 

「…いや…基地提督として当然さ。長門も毎年年末から色々とありがとうな…」

 

 

傷だらけの口元で長門にそう笑いかける山下

 

 

「…なに…私如きの手伝いで貴方の負担が少しでも和らぐ様なら…私は嬉しいよ」

 

 

長門も山下に優しい笑顔でそう返す

 

思わずどきりとする山下

 

 

「…そ、そういう不意打ちは良くないぞ……長門…」

 

 

頬を赤くした山下は官帽のつばを掴み深くかぶる

 

どうも山下にとって、ここ最近の長門は魅力的に見えて仕方がない

 

それにさり気ない長門の仕草や、たち振る舞いもまるで狙ったかの様に山下のツボに入る率が高い

 

 

…それらは山下と長門を結ばせようと能代が長門にさり気なくすり込ませたものだったが、本人達が気がつくことはない

 

 

 

騒がしかった執務室が山下と長門だけの空間になる

 

 

「…あー…長門」

 

「…ん?…なんだ?提督」

 

 

 

トントン、と執務机を指で叩いて、うん、と頷く山下

 

 

「…もしよかったら…午後からは予定がない…はずだ…少し外へ…一緒に初詣なんてどうだ?」

 

 

「…あ、ああ……いい…ぞ…うん、いいな…初詣…」

 

 

少し悩みながらも承諾する長門 

 

 

「…もしかして予定あったか?」

 

少しだけがっかりした山下が恐る恐る問う  

流石に節操がなかったか?と半分反省するが、長門本人としては恥ずかしそうにもじもじとしていた 

 

 

「…や、いや…実は…その…能代が晴れ着を借りたそうなんだが…その…うん。サイズを間違えたらしくてな…交換出来ないから私に来てほしいと持ってきたんだ…」

 

 

策士、能代 

 

 

「あ、ああ…」   

 

 

普段見ることのない乙女なリアクションの長門を見て唾を飲み込む山下

 

 

「せっかくだ…着ても良いだろうか…?」

 

 

「も、もも、勿論だっ!是非っ!…あ、いや…ぜ、是非…見てみたいな…うん」    

 

 

山下がそう返すと長門はぱぁ、と表情を明るくする

 

 

「そ、そうか!…うん!…良かった…午前の予定を終わらせたらすぐに着替えるよ…」

 

 

長門は嬉しそうに笑顔で山下にそう答える

 

そんな笑顔の長門に山下はつい…

 

 

 

「……長門…かわいいな…」

 

「…え?」

 

 

 

 

  

 

執務室外の廊下

 

 

「…こりぁ入っても良いのかねぇ…?」

 

 

山下と長門の会話が聞こえていた谷風は、執務室に入ろうか、わりと数分間悩んでいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜正月in第四資料室〜

 

 

 

 

 

 

山田「田中先輩!まっつん先輩!デコちゃん!あけましておめでとうございます!」

 

田中「ああ、今年もよろしくな」

 

松井「あけおめことよろやで」

 

デコポン「…さっき寮で挨拶したじゃないですか…」

 

松井「おチビちゃん達におとしだまやで!手ぇだしや!」

 

山田「…やったー!」

 

デコポン「…まぁ、せっかくですから…」

 

 

 

 

 

両手を差し出した山田とデコポンの手に、上から白い卓球玉をポン、と落とす笑顔の松井

 

 

 

松井「落とし、玉や」ドヤァ

 

 

山田「…」

 

デコポン「…」

 

 

 

田中「お前嫌われるぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜正月in鎮守府〜

 

 

 

 

ゴーヤ「摩耶さんの二の腕、お餅みたいだね!」

 

 

 

きっかけは潜水艦、ゴーヤの一言だった

 

 

 

朝潮「そういえばもう年越しましたね」 

 

摩耶「え?なんでそんなことわかるの?」

 

電「そういうものなのです」

 

摩耶「え?そういうものなの?どういうものなの?」

 

嵐「摩耶さん、そんなこと考えるとハゲるぜ?」

 

白雪「…何かお正月に因んだ事したいですね…」

 

 

 

そんな彼女達のいる大部屋に、いつもの彼女がやってくる   

 

金剛「ヘーイ皆ー!倉庫にこんなものがありマシター!」臼と杵

 

 

摩耶「用意がいい!」

 

 

千歳「私達も食堂でこんなものを見つけたわ」餅米

 

時雨「あんこやきなこもあったよ」

 

 

摩耶「用意がいいな!」

 

 

 

 

鎮守府外

 

 

ゴーヤ「お餅つきだー!久しぶりだなー!」

 

嵐「…これ、どうすんだ?」

 

白雪「確か…臼に蒸したもち米を入れて、片方がこの杵で叩き、もう片方が水をつけながら…ええと、こねる、と以前文献で見た気が…」 

 

嵐「…なるほど…お互いの信頼関係がなせる技か」

 

摩耶「技て」

 

金剛「そう言う事なら私達にお任せデース!」

 

電「なのです!」

  

 

摩耶「もうオチが見えてるけどな」

 

 

 

 

 

金剛「さぁ!行きますよー!電ちゃん!」臼側

 

電「行きますよー!」杵側

 

 

 

電は臼のくぼみに置かれたもち米目掛けて杵を振り下ろす

 

しかしここで余計な気を使った金剛が、先にちょっとこねといた方がいいネー、と臼のくぼみに置かれたもち米目掛けて手をのばす

 

電の杵、止まらず

 

 

金剛「ぎゃっ!」

 

摩耶「ほら見たことか」

 

 

 

 

その後、退場した金剛の代わりに朝潮と白雪が餅つきをすることに…

 

 

朝潮「はいっ!」杵側

 

白雪「はいっ」臼側

 

朝潮「はいっ!」

 

白雪「はいっ」 

 

 

 

利根「…うむ、流石のコンビネーションだな」  

 

千歳「…でも朝潮さん…そんなに力まなくても…」 

 

 

 

 

順番が代わり、時雨、嵐ペア

 

 

 

時雨「…ほ、本当に僕なんかが杵を良いのかい…?」

 

嵐「な、なんで泣きそうになってるんだよ…!」

 

時雨「ううん…僕なんかにつかせてくれるなんて…嬉しくて…」 

 

嵐「嬉し涙かよ!紛らわしいな!」

 

時雨「…そ、それじゃあ…行くよ…!」

 

嵐「よっし!来な!」

 

時雨「…」

 

嵐「…」

 

 

時雨「や、やっぱり僕なんかじゃ…」  

 

嵐「ああもう!めんどくせぇな!」

 

 

 

利根「…うむ……うーむ…」

 

千歳「…あはは…あれでも良くなった方だから…時雨ちゃん…」

 

 

 

 

 

無事餅つきが終わり、大部屋にてお餅パーティーが…宴が始まる

 

 

電「美味しいのです!とても美味しいのです!」

 

金剛「…電ちゃん…私にもあーんを「お餅喉に詰まらせてください」

 

 

摩耶「きなこも良いな…うん、旨い」 

 

ゴーヤ「お腹空かなくてもやっぱり皆と食べるって大事だよね!」   

 

摩耶「…なぁゴーヤ…良いこと言いながらアタシの腕揉むのやめてくれよ…」   

 

 

 

朝潮「…むぐむぐ…やっぱり白雪さんがこねてくれたおかげか…とても優しい味がしますね…甘いです」

 

白雪「…それはきっとあんこの味だと思いますよ。朝潮さん」

 

 

時雨「ううう…!…おい…しいっ!」

 

嵐「…お前ツッコむの面倒くさいな…」 

 

 

 

 

利根「…うむ。こういうのも悪くないな」モムモム

 

千歳「ふふふ、そうですね。悪くないですね」モムモム

 

 

 

 

 

響「…ハラショー」もぐもぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜おまけ予告〜   

 

 

 

 

 

とある一室

 

この部屋には次元を超えた4人の少女達が揃って1つの机を囲んでいた

 

 

 

秋月「…と、言うわけで…始まりました。謎の会議」

 

照月「…えーと…はい」

 

涼月「…あの……はい」

 

初月「…会議…なのか…?」

 

秋月「あ、私が着任したのは伊豆です」

 

照月「…佐渡です」

 

涼月「…」

 

初月「…僕はまだどこにも着任はしてないな…」

 

秋月「今日のテーマは…"秋月型は不幸枠"についてです」

 

初月「酷いテーマだな」

 

照月「…確かに秋月姉さんと私…待遇がアレでした」

 

初月「アレて…」

 

秋月「涼月はもう横須賀鎮守府で登場してましたね…一瞬でしたけど、まさかもうあれで終わりじゃないですよね?」

 

涼月「…ええと…あの…」

 

照月「なになに?もしかして横須賀鎮守府に関係するお話で再登場するの?」

 

涼月「……ぇーと…」

 

初月「ふ…羨ましいな…僕なんてまだ未登場だよ」 

 

 

 

 

涼月「私……横須賀鎮守府の涼月じゃありません…」

 

秋月「え」

 

照月「ふぇ?」

 

初月「ほぅ?」

 

涼月「…というよりも新登場の艦娘として次の短編のお話が来てて…」

 

初月「なん…だと!?」

 

秋月「ハッピーエンドなストーリーですね!?ハッピーストーリーですね!?」

 

照月「ラブ!ラブストーリーがいいよ!」

 

初月「いや、ここは秋月型が戦闘で活躍する殺陣のような話を…!」

 

 

 

 

涼月「ええと…名古屋の…カップル?事件と…コンクリート殺人事件?…のお話をモデルにするとかなんとかって…」

 

 

 

秋月「…」

 

照月「…」 

 

初月「…」

 

涼月「…あの……あとアウトレイジも混ぜる…と…」

 

 

 

秋月「はい、解散」

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか


次の詰め合わせ…もし、やるとするならば本年の3月末頃に投稿しようかと思います

…気が向けば、ですね


はい、次のお話から本編へ戻ります
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。