年末からフォールアウト4にハマってしまってなかなかお話が進みませんでした。長期の休みに入っちゃうと…はい…
げーむはいちにちいじかん!
今年は…いや、今年こそは話を終わらせられるよう精進します
ではどうぞ
あ、いつも通りですが、[ ]内の言語は深海棲艦語と思ってください
オレ達が尾張警備基地より捜索部隊が出撃して3日…
場所はフィリピン、ルソン島より南東の沖
「…ふぅ…みんな、大丈夫か?」
「…ええ」
「…はい…」
「はぁ…はぁ…」
…自分も辛いくせに、みんなに問う
…見れば皆疲れが顔に出始めていた
あの加賀さんでさえ汗を流している
…そりゃそうだ
ほぼフルで航行しっぱなしだからな…
それに既に敵海域に入ってるし、いつ攻撃されるかわからねえ…
緊張しながらの航行だ…
「…龍田…」
「…そうね…そろそろちゃんと休みましょうか…」
隣の龍田を見れば、笑顔だが息が切れている
…どっか岩場かなんかあればな…
…お?
ここから少し南に小島が見える…
オレは龍田と目を合わせ頷く
「…加賀さん」
「…ええ。わかった」
索敵の為に艦載機を飛ばしてもらおうと名前を呼んだだけで加賀さんは理解してくれた…助かるな
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
加賀さんが索敵機を飛ばして数十分…
オレは捜索部隊の面々を見る
…川内、瑞鶴さんが小破…潮が中破ってとこか…
「…敵影なし…問題なさそうね。行きましょう」
索敵機からの通信を聞き、ため息を吐く加賀さん…その顔は無表情ながらもどことなく安心したかのように見えた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
南の小島 ビーチ 1700
「…ぐぁあ~…」
艤装を解除した川内は浜辺に倒れこむ
「…はぁ…はぁ…」
「…ほら、潮ちゃん…しっかり」
川内に続いて瑞鶴さんと潮も浜辺に座り込む
「…ふぅ…」
「…お疲れ様、天龍ちゃん」
疲れきったオレ達は浜辺に座り、沈んでいく夕陽を見つめる
皆とはもう会話はない…
する元気がない…
「…はい、潮ちゃん…傷口みせて…入渠施設はないけど…一応応急処置しよ?」
「ご、ごめんなさい…龍田さん」
…そんな中でも龍田…よく頑張るな……よし
「…今夜はこの浜辺で野宿だな…」
オレがそう切り出すと、加賀さんが頷く
「…賢明ね…流石に今の状態で夜の航行は危険ね」
仰向けに寝転がる川内がふと気づく
「…この島って無人島なのかな?…加賀さーん、ここ大丈夫なの?」
「…空から見た限り人も動物もいなかったわ…けれども用心するに越したことはないわね」
うん、と龍田も頷く
「…なら、もう少し森の方で休みましょう…浜辺じゃあ目立ちすぎますから」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
浜辺よりも数百メートルほど島の内陸側に移ったオレ達は、以前誰か住んでいたのか、廃墟となった藁作りの家に入った
「…ここからなら海が見えるわね…」
窓から見える海を見て、加賀さんが呟く
オレと川内は潮の両肩を支えながら彼女をベッド…と、呼んでいいのかわからないが、木箱の上に座らせる
「…よっ…と…大丈夫か?潮」
「ご、ごめんなさい…私役立たずで…」
「はいはい、そんな顔しないでよー。潮ちゃん」
…川内がいてくれて助かったな…こういったフォローはこいつの方が向いてるんだろうな…
「…で?何時に出発するの?」
ここに来る途中の戦闘で受けた腕の傷の手当てをしながら瑞鶴さんが龍田に問う
「そうですねぇ~…みんなお疲れでしょうから、少し長めに休んで…明朝0400を目安に出発としましょ「シッ!静かにっ」
龍田を遮って川内が皆を静かにさせる
耳をすますと、海の方から波を裂く音が聞こえる…
「…よく見えねぇな…」
「…誰か海を滑ってるね…一人じゃない…」
…夜戦馬鹿は夜の方が目がきくのか?
窓から海を見るが……うん、真っ暗だ…
「……くっ…」
加賀さんが苦虫を潰したような顔をする…
そりゃそうだ…今回夜の捜索の予定はなかったから…それに加賀さんはまだ第二改装しか終えてない…
夜間索敵の為の艦載機は積んでないって話だ…
「…う……ど…こ、このまま身を潜めてた方が…」
瑞鶴さんも少し怯えながらそう提案する
「……はぁ…んじゃあ私が確認するよ」
そう言うのは川内だった…
そうだった…こいつは夜間索敵の水上機があったんだった
「…いける?…川内ちゃん」
「ノーマンタイ。まぁ様子見るだけだしね」
龍田の問いにもけらけらと笑顔で返す川内は、廃墟の家から出ていき、夜空に向けてカタパルトを伸ばす
「…海の上じゃないけど……まぁ、いけるでしょっ…と」
ガシュッ、とカタパルトのスライド音を鳴らせて、川内は九八式水上偵察機を飛ばす
そして目を瞑って集中
「……うー……ん……これは…」
「…見えるか?…川内」
オレは思わず声をかける…
潮も心配そうに川内を見ている
「………うん。深海棲艦じゃない…と、思う…いや、深海棲艦も私達と似た見た目のやつもいるからはっきりとは言いきれないけど……あ…」
あ、という川内の言葉に加賀さんと瑞鶴さんが反応する
「…艦娘の艦隊だね……なんか、でも…進撃中っていうよりも…哨戒してるみたいに見えるけど…」
川内の説明に龍田が首をかしげる
「…この辺で海軍基地はないはずだけれど…ルソン、ポリロ…あとは…パト…ええと…「パトナノンガン…」…そう。その3つの島が近いけど…加賀さん、教えてくれてありがとうございます」
龍田の言葉に、川内は目を瞑って集中したまま
「…艦娘は日本艦娘仕様だね…多分球磨型…あとは小さいのもいるから駆逐艦達かな…」
「に、日本国軍の艦娘ですかね…」
潮の言葉に加賀がむう、と唸る
「…他国の海軍でも日本の艦娘を編成に入れているところもあると聞くわ…日本国海軍の艦隊ではないのかもしれないわね…」
確かに不確定要素が多い…
なら…
「…むやみやたらに接触するのは良くないな…このまま隠れてやり過ごそう…」
オレの意見に龍田が頷く
「…そうね……川内ちゃん」
「…了解。水上機は明日の出撃時にビーチで回収するよ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
同時刻 ルソン島東の沖
「…?…今夜偵飛んでたよね?」
ルソン島沖、陣形を組んで航行しているとある艦隊…
その艦娘の一人、旗艦北上は隣にいる姉妹艦の大井にそう問う
「…ええ。けれども、あのシルエットなら深海棲艦のものではないかと…おそらく島の反対側を哨戒する班のものかと思いますけど…」
「んー…まぁ、警戒するに越したことはないよねぇ…一応柴山提督に報告しとくよー」
そう言いながら、北上は舌打ちする
「…っつーかうちら佐世保だけであいつら追い詰められるわけないじゃん…提督はあの空母もどきの深海棲艦に御執着だし、クソ時雨はあたし達にクソみたいな命令しかしないしさー」
「…北上さん」
「…あー、はいはい。時雨秘書艦様ねー…別にここにいないんだからいいじゃん…っていうかどうせ西海支部もそろそろ動くんじゃん?…こんなんただのいたちごっこだし」
北上の愚痴を聞いていた後列の駆逐艦も渋い顔をする
「…今日はルソン…明日はビリラン奪って、明後日にはビリラン奪われて翌日にはルソン奪われるかもですからね…佐世保だけじゃ攻略進めないですよね…」
駆逐艦のぼやきに北上はうだる
「…あーあ!…昔の…西野提督の時代の佐世保は優秀だったって話なのにさぁ~…マジで柴山提督はだめだめじゃーん」
「…き、北上さん!」
「あーはいはい。怒らないでよー大井っちー」
北上達の艦隊は、愚痴を言いながら南の方へと航行する
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
翌朝
0400
「…捜索部隊…抜錨」
島で一夜を過ごしたオレ達は龍田の合図でビーチを出撃用意をする
「…大廻りではあるけども、南東を進み、サン・ベルナルディノ海峡方面を越え、通信が切れたと思われるシブヤン海へと進みます。総員、警戒を厳へ!」
「「了解」」
…潮も瑞鶴さんも大丈夫そうだ…
特に潮には無理をさせないようにしなきゃな…
…気持ち少しダルいな…
固い床で寝たからか?
…まあいい…気を取り直して…
「よし!いくぜ!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「敵艦見ゆ!!クロックポジション!11時の方向!!」
「うそ!…なんで!?」
…ビーチを出発して1時間…
うっすらと空と海が赤くなったと思ったらこれだ…
「…索敵した時には何もなかったのに!」
驚愕する瑞鶴さんだが、加賀さんが敵の方角を見ながら苦い顔をする
「…私が索敵で見落とすなんて…」
加賀さんの呟きに川内が苦笑い
「…大方、島の森の中で身を隠してたりしたんじゃないのかな?」
「…そんな…深海棲艦がそんな行動取るなんて聞いたことないわよ!」
「じょ、冗談だよ…はは」
川内の言葉に瑞鶴さんが食いつく
んなことよりも…
「龍田!指示を!」
ええ、と龍田は頷き
「先手必勝!加賀さん!瑞鶴さん!お願いします!」
龍田の指示に加賀さんと瑞鶴さんが弓を構え…
「…了解。加賀航空隊…発艦!」
「…アウトレンジで決めたかったの…にっ!」
二人の航空母艦から発艦された艦載機は敵の艦隊がいる方角へと飛んでいく
「…!?…なに…あれ…」
敵に近づいた艦載機からの通信が入ったのか、航行しながら加賀さんは言葉がつまる
「…なによ……なによあれ…」
次いで瑞鶴さんも驚く
オレと龍田は目を合わせ考えるが、何に驚いているのかよくわからなかった
「…お、おい…ふたりとも…何を驚いて「攻撃!早く攻撃して!」
二人に聞こうとした時、瑞鶴さんが顔を青くしながら叫ぶ
対して加賀さんも顔色を悪くしながらみんなに通信を入れる
「…報告…て、敵艦隊…数は7隻…艦種は………不明…」
「ふ、不明ってなんすか!?」
オレは加賀さんのはっきりとしない報告に思わず言葉が出てしまう…
「…わからない…軽巡級…いえ、駆逐艦…?とにかく見たことのない深海棲艦群よ…それに…何故かしら…視界が…少し狭いわね…」
加賀さんの様子がおかしい…
いつもはこんな…よく見ると手が震えているように見える…
「…!?…新たな敵艦隊発見!9時の方角!」
瑞鶴さんも慌てながらそう叫ぶ
…2艦隊…これは…まずい…
「龍田!」
「ええ!すぐにこの海域から脱出します!全艦北東へ!」
龍田も叫び指示をみんなに送る
ふと空を見れば、先程よりも空が更に赤く染まっていく
「…あ、ああ…」
「…く…」
潮が震え、川内も顔が強ばる
…正直オレもこの状況はヤバイと思う…
すぐに航路を変えようと艦隊の動きを変えようとした時だった
『…おいおい…せっかくここまで来たのにどこに行こうってんダ?』
突然入ってきた謎の女の声の通信…
それは日本語だった
驚いたが、聞き覚えのある言語を聞いて、オレ達は一瞬だけ警戒を緩める…
「…なっ!「がぁあっ!!」
なにが、とオレが言おうとした瞬間、加賀さんの足元が吹き飛んだ
「こ、後方!潜水艦隊です!」
潮が叫ぶ
そうか…
潜水艦がいたのか…
だめだ…オレ達は全然冷静じゃなかった
「加賀さん!」
瑞鶴さんが加賀さんの名を呼ぶ
見れば加賀さんの右足…ふくらはぎから先は無く、傷口からは血を吐いていた
「…ぐっ…ば、馬鹿!瑞鶴!敵に集中なさい!」
そう言って加賀さんは弓を引く
次いで瑞鶴さんも…
「…くそっ!」
川内が呟く
前方、左舷から謎の艦隊
後方からは潜水艦隊…
「…まるで私達が来るのを知っていたかのような動きね…」
龍田が悔しそうにぼやく
もうここまで来たらやるしかない…
訳のわからない通信も気にはなるが…
前方、左舷より謎の艦隊が近づいてくる
「…全艦、砲撃用……!?」
指示を出そうとした龍田が目を見開き、言い淀む
そりゃあそうだ…
前から近づいてくる奴ら…
ありゃなんだよ…
パッと見た感じ…ああ…確かに遠目からなら軽巡級や…軽空母級に見えなくはない…
だが近くなるにつれて見えてくる…
確かに人の形をしてはいるが、なんつーか…
ゾンビっぽいな…
いや、ゾンビっつーか…
あれだ、昔なんかの映画で見たな…
ええと…
ああ…グール…
艤装っていう艤装の形はしてねぇ…
適当な機械を背中にくっつけただけだ
それに手足は細いし、けど腹っつーか、下っ腹だけ異様に腫れてる…膨れてる?
……ん?
頭…っつーか、顔ん所にぼろ切れが被せられてる…
ありゃ艦娘とも深海棲艦とも言えねぇな…
ありゃまるで…
「ば、化け物…!」
…ああ…瑞鶴さんが言った通りだ…
バケモンなら容赦しねぇ!
「…龍田!シャキッとしろ!」
「…て、天龍ちゃん!…ええ!全艦、砲撃!!」
旗艦の命令を聞き、オレ、龍田、川内、潮が前方のバケモンに主砲を向け、砲撃
…そして砲撃と同時に奴からまたも通信が入ってきた
『…ひどいことするなぁ…守るはずの人間を攻撃するなんてサ』
「え?」
砲撃した砲弾が前方の敵艦隊を襲う
そのうち2発が敵中枢に直撃、深海棲艦を一人沈めた
しかしオレ達は動けないでいた
人間?
何を言ってんだ…
ありゃただの化け物じゃねぇか…
「…て…」
この空気を切ったのは潮だった
「敵の…敵の言うことを聞いちゃだめです!きっと私達を撹乱させるつもりです!」
「「「!」」」
…いつものオレ達ならあんな戯言で惑わされたりしない…
…言い訳になるが、きっとこの3日間の航行の疲れ、そして謎の通信のせいだ…
そう考えながらも敵は近づいてくる…
「…なんであいつら…撃ってこないんだ…」
川内は呟く
確かに奴ら…潜水艦隊は別として、水上艦隊からは一発も砲撃をされてない
「…敵艦!さらに増援!右舷からです!」
潮の声に加賀さんが苦い顔をする
「…まずいわね……」
オレはすぐに意識を変え、叫ぶ
「…正面!撃て!撃て撃て!」
せめて突破口だけでも、と思い、前方へ攻撃する
遠目に数隻沈むのが見える
よし、やれる…
行ける!
「…このぉ……ぐぁあっ!!」
今度は弓を構えた瑞鶴さんに敵魚雷が直撃
艤装から煙を吐いている
「…くそっ!…後方からか!」
『…なぁ…なぁなぁナァ…無駄な事しない方が良いと思うヨ?』
またも謎の通信…
うるっせぇんだよ。くそった
「がぁっ!ぁああっ!!」
ひどい衝撃だ…
頭を金づちで思い切り叩かれたように…
あ…龍田…
潮も瑞鶴さんも吹き飛んで…
ああ…そうか…
砲撃されたんだ…
どこから…
いや…みんなの吹き飛びかたを見た感じ…"右側"からだな…
んだよ…こっちが主…力……なの…か…
……でも…
オレら…なんか弱くねぇか…?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
…ここは…
どこだ…
暗い…湿ってる……
床が…ゴツゴツしてて…鉄…か…?
まるで…
「…龍…」
「…天龍!」
「…はっ!?」
目が覚めると、オレは薄暗い…天井も壁も鉄板の部屋にいた…
「…川内…か?…なんだ…ここ…」
横には顔に煤をつけた川内がオレの事を心配そうに見ていた
「…わからない…私も気がついたらここで目が覚めて…」
「…ここは地獄ですよ」
「うわっ!」
突然ももう一人の声に流石のオレも驚く
見れば川内の他に、もう一人この部屋にいた…
こいつは…
「…青葉型…か?」
「…はい。青葉です」
やたら髪がボサボサの全裸…いや、胸と腰回りだけにぼろ布を巻いた顔色の悪い重巡、青葉が壁に背をあずけ、座っていた
「…私も青葉…さんに起こしてもらって…ねぇ青葉さん…ここが地獄ってどういう意味なのさ」
「…そのままの意味ですよ。貴女達も突然襲われてここに連れてこられたんですよね?」
「…ああ。謎の深海棲艦どもにな」
く、と青葉は唇を噛みしめる
「…あれは…あんなのは深海棲艦なんかじゃあありません…あれは…未知の化け物です!!」
「…んなことわかってる…で、ここは何処なんだ?」
オレが再び問うと、青葉は暗い表情のまま息を吐き、自分の両肩を抱える
「…ここはフィリピン沖…シブヤン海の凡そ海底1000メートル…らしいです」
「「!?」」
オレと川内は顔を合わせて驚く…
シブヤン海?
「…海底1000メートルに…こんな施設が?」
「…施設ではありません…ここは沈んだ戦艦の中です」
…シブヤン海…沈んだ戦艦…
オレと川内は一人の…いや、一隻の船を思い浮かべる
「…んな馬鹿な…じゃあオレ達はなんで息してんだよ…水圧だって…」
そう返すと、青葉は膝を抱え縮みこむ
「…しりませんよそんなこと…とにかく…ここは海底…逃げ場のない監獄です…地獄です」
青葉がそう言い終わると同時に、部屋の扉から鍵が開く音が聞こえる
「!?」
重い、錆びた音を鳴らしながら、ゆっくりと開く鉄扉…
「…ナンダヨ…仲間割レデモシテンノカァ?」
扉を開けたのは肌色の悪い、黒髪の女だった
…ん?…艦娘か…?
「…お前は誰「ひいっ!ひぃぃいいい!!!」
女が入ってくると同時に甲高い声で部屋の隅に後ずさる青葉
「…あ、青葉?」
心配した川内が青葉の名を呼ぶも、頭を抱え、青葉は震えながら泣き叫ぶ
「…やっ…いやぁあっ!もうやべでぇぇええっ!!」
おいおいおい…何がどうなってん…
「…ヴっ!」
オレの意識は一瞬揺らぐ
何が起きたか…瞬時にはわからなかったが…
どうやら黒髪の女がオレの顔を蹴りあげたようだった
「天龍!」
「…ぐっ…」
倒れこむオレの顔を足で踏みつける黒髪の女
「…オイ…テメェ生意気ナ目ェダナ…エエ?オイ…」
「くっ…やめろ!」
川内が黒髪の女に飛び掛かろうとするも、黒髪の女の片腕が、川内の首もとを強く掴む
「…ぐぇっ…がっ…!」
「オマエモ…生意気ダナァ…オマエラ二人トモ食ッテヤロウカァ?アハハハハハ!!」
がつっ、と黒髪の女はオレを蹴飛ばし、川内を壁に投げつける
「がはっ…がはっ!けほっげほっ!」
「…て、テメェ…一体何なんだよ…」
オレは川内を介抱しながら黒髪の女を睨み付けるも、女は余裕の笑みでオレ達を見下ろす
「…立場ヲワキマエロ…ジャネェトソノ重巡ミテェナ目ニアウゾ?」
そう言われ、オレと川内は部屋の隅で踞っている青葉を見る
「…ナァンダヨ…テメェマダ言ッテナカッタノカ?」
「ひ、ひぃぃいっ!!」
黒髪の女は青葉に近づき、ボサボサの髪を掴む
「やだ!やめてっ!やめでぇえっ!!」
「オラァアッ!」
黒髪の女が何か布のようなものを青葉から剥ぎ取…
いや…あれって…
「いやぁぁああ!見ないで…見ないでぇっ!」
「アッハハハハハ!!」
思わず顔をしかめちまう…川内もぎょっとする
黒髪の女が青葉から剥ぎ取ったのは…ありゃあ、髪の毛か…?
「ホォラァ…見テミロヨォ!コイツ髪ノ毛ネェンダゼェ!アハハハハハ!!」
「う、ううう…」
頭を押さえて踞る青葉
…こんな胸糞悪くなることなんてねぇよ…
「…やめろ!クソッタレが!」
オレは思わず叫び、立ち上がる
「…アア?…ヤッパ生意気ナヤツダナァ、オマエ…」
ばさっ、と青葉の髪を投げ捨てる黒髪の…
いや、コイツ…見たことあるぞ…
たしか…トラック泊地の作戦資料で見た…
「…軽巡…棲鬼……」
オレがそう呟くと、黒髪の女…軽巡棲鬼が更に眉間にシワを寄せ…
「ぐあっ!」
…軽巡棲鬼は俺の髪を掴んだまま後頭部を壁に押し当ててきやがった
「…軽巡棲鬼?…テメェラノソノクソミテェナ呼ビ方ヤメロォオッ!!ムッカツクンダヨォ!」
がん、がん、と俺の後頭部を壁に打ち付ける軽巡棲鬼…っつかやめろよ…クソッタレ
「…決メタ…テメェハタダジャオカネェカラナ…ソコノ重巡ヨリモ酷イ目ニ合ワセテヤルカラナァ…!覚悟シテオケヨ!」
「…ぐ…んだよ…殺るならとっとと…今殺れよクソッタレが…!」
オレ…情けないな…
まるで負け犬の遠吠えだ…
「…ハッ…今ハ生カシトイテヤルヨ…今ノ私ハテメェラヲ連レテ来ルヨウ頼マレタダケダカラナ…オイッ!」
軽巡棲鬼がそう呼ぶと、部屋の外から2人の化け物が入ってくる
そうだ
ここに来るまでに海で戦った化け物どもだ
化け物はオレと川内を抱え上げ、無理矢理立たせる
…ああ、近くだとやっぱりひでぇ面だな…
あと臭いもくせぇ…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
通路を歩く
声の感じからして先頭に軽巡棲鬼…
その後ろにオレと川内…を抱えた化け物どもってとこか…
オレと川内は頭から袋を被せられて基地の中がわからないようにされている…
『いやぁぁああ!やめでぇええ!!』
『…ぐっ…ぐひぃいぃいあああ!!』
『いだいっ!いだいっ!痛いぃぃいい!!』
『ぎぃぃいいひひひひー!ぅヴぁぁあああ!!』
途中の…恐らく部屋部屋から聞こえてくるは女達の叫び声だ…
何をやられているのか…
オレには想像もつかない…
「…サァ、着イタゾ。ゴミドモ…ココガ司令室ダ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
司令室と呼ばれた部屋に入り、頭の袋を取られる
薄暗い照明でもわかる豪華な内装の司令室…その奥には高そうな椅子に一人の子供…か?…うん、黒いフード…パーカーか…それを着た子供がむかつく笑顔で肘をついて座っている
その右横には…
ああ、あいつも深海棲艦か…あの額の角…確かなんかの資料で見た気がするけど…
忘れちまった…
…んで…軽巡棲鬼…お前が左横か…なるほど、お前ら二人はあの黒フードの取り巻きってところか…
「…やぁ、よく来てくレタネ」
黒フードの奴が嬉しそうにそう喋り始める
オレと川内は唾を飲み込む
「…てめぇらなんのつもりだ!オレらを捕まえてどうするつもりだ!」
後ろで縛られたままのオレは思わず怒鳴る
だが黒フードは驚くどころか笑っている
「…威勢がいいネエ…おい」
黒フードがそう呼ぶ、するとオレ達の後ろから何人かの足音が聞こえてきた
「…みんな」
オレと共に捕まったとみられる龍田、潮、加賀さん、瑞鶴さんだった
みんな後ろで縛られたままのようだ
「クヒヒ…飼育場へようこそ。尾張の皆々様…」
「「!?」」
なんでこいつオレらを知ってんだ…
「…悪いケドサ…もう君たち帰れないカラ…ここで残りの人生、いや、艦生を過ごすようニネ」
「…そんなことよりと早く加賀さんを手当てしてあげてよ!」
瑞鶴さんが叫ぶ
ここでオレはようやく気がついた…
瑞鶴さんと並ぶ加賀さんの顔色が悪…いや、青白くなっている
見ればあの時負傷した足の傷がそのままだ…
「…テアテ?ナンデ?」
軽巡棲鬼が小馬鹿にしたように笑う
「…ほ、捕虜なんでしょ!、私達は!…捕虜が死んじゃってもいいわけ!?」
必死に訴える瑞鶴さん
確かにここで加賀さんに死なれるわけにはいかない
「…オレからも頼む…」
「わ、私からも!加賀さんを治療してやってよ!」
「た、助けてあげてください!」
オレ、川内、潮も訴えるが、奴らはクスクスと笑う
そして黒フードの奴が椅子から立ち上がる
「…ああ、こりゃあ酷いナ…ほっといたら足が腐っちまう…大変だなア…」
「…はぁ…はぁ…」
辛そうに片足立ちする加賀さんに近づく黒フード
傷を放置されてどれくらいたったのか…加賀さんの視線の焦点があっていない
「…ころ…しな…さい…」
ふらつく加賀さんの前髪を掴んだ黒フードは、息絶え絶えにそう呟く加賀さんの顔を見て嬉しそうに笑う
「…クヒヒヒヒ…いやぁ?殺すなんてそんな勿体無いことしないよォ?だってサ…」
黒フードの背後に蛇のような生き物が蠢いている…ありゃあ、尻尾か?
蛇はよだれを滴しながら大きな口を開き、加賀さんの前で息を荒くする
「…使えない奴は…養分になるからサア!!」
蛇は勢いよく、ガバァッと加賀さんの頭から丸飲みを始めた
「…っ!…ーーっ!!」
「きゃぁあっ!!」
「や、やめろぉおっ!」
目の前の光景に潮は叫び、オレも吠える
しかし後ろ手を縛られ、更に後ろにいた化け物もオレを…いや、暴れようとするオレ達を羽交締めにする
「キヒャハハハハハッ!叫べ叫べェエ!」
混乱するオレ達を見て軽巡棲鬼が笑う
暴れようとしたオレを、背後にいた化け…いや、グールが更に抑えてくる
「…はなせっ!くそっ!」
「…天龍!…このぉっ!」
川内も暴れようとしたのか、オレと同じ様にグールに抑えつけられる
「…うそ…いや…加賀…さん…」
目の前の光景を理解できないのか、瑞鶴さんは呆けた表情のまま膝から崩れる
黒フードの尻尾の蛇は天井に向かって頭を向ける
既に加賀さんは身体半分が飲み込まれ、太股から先がびくびくと痙攣していた
「…キヒヒヒ…私の改修素材としておいしく頂くヨ……アア…空母を改修素材にすると気持ち対空能力が上がる気がするから…素材としては好きだなァ」
ついに蛇は加賀さんの足のつま先をも飲み込む…
蛇の腹部分は異常に膨らんでいた
黒フードは瑞鶴さんに顔を近づける
「…ああ…お前らもやるだろ?…改修…おんなじことしただけジャナイカ…」
黒フードは怪しく笑う
「…お前らは捕虜なんかジャナイヨ…ただの実験台…家畜…モノなんだからサ」
「…や、いや…いやぁぁあああ!!」
「てめぇぇええああっ!!」
瑞鶴さんが叫び、オレも抑えつけてきたグールを殴ってやろうとした時だった
「天龍ちゃん!駄目よ!!」
その一言でしん、と静まり返る司令室…
…龍田だった
「…龍田…お前…」
それまで一言も喋らなかった龍田…
こいつも我慢していたんだ…
噛んでいたのか、龍田の唇から血が出ている…
「……ホォ?」
そんな龍田を興味ありそうに見つめる黒フード
「…みんな…今は……耐えて!」
後ろで手を縛られたまま、龍田は頭を下げてそう願う
そんなたつの姿を見てオレと川内は大人しくなる…
潮も泣きながら俯いている
「…ハハハ…今は耐えて、カ…面白いね…キミ」
黒フードは嬉しそうに龍田に近づき、髪の毛を掴む
「…仕分けは任せルヨ」
黒フードは軽巡棲鬼にそう言うと、軽巡棲鬼は嬉しそうに笑い、龍田の背後にいるグールに顎を向け、何かを指示する素振りを見せる
「…アア…お前達…そいつらに無茶なことするなよ?…その見た目でも人間だからナ」
…その台詞を聞いてようやく理解する
あの時の謎の通信の正体はやはりこいつだったか…
「…人間だぁ?…ざけんな。ただのグールかゾンビじゃねぇか」
オレは思わず返してしまう
「…ぐーる?…なんだ…マタ新しい単語か…日本語は複雑すぎるんダヨネ…」
黒フードは少し難しい顔をして首をかしげる
「…まぁイイヤ…後で聞いとくよ。ぐーる…ぐーるネ…ああ、そうだったね。彼らは人間ダヨ?…少なくとも元、ネ」
黒フードはグールと天龍が呼んだ化け物の方を見る
「…それと、三大欲求が少しバカリ強いけどネ」
うん、と頷く黒フードは自身の尻尾の蛇の腹をぽんぽんと叩く
「…とにかく、ダネ…改めて海底1000メートル…私の飼育場へようこそ。逆らったり反抗したりしたらこんな風になるからネ」
「…」
「…せ、1000メートル…?」
何も返すことなく俯く瑞鶴さん…そして驚愕の表情を見せる潮
二人の反応を見て軽巡棲鬼がくくく、と笑う
「…アア。ココハカツテノ大戦デ沈ンダオ前ラノ国ノ戦艦ノ中サ。ダカラモシ脱出デキテモ外ハ暗イ暗イ海ノ底…生キテ帰ルノハ不可能ダヨ」
軽巡棲鬼の言葉がオレ達の逃走意欲を剥ぐ
「…っさい…」
しかしそんなオレ達の中で一人だけ復讐に燃える人がいた
「うるさいっ!うるさい!うるさい!!」
瑞鶴さんだった
瑞鶴さんの背後にいたグールが瑞鶴さんを掴む
「…てめぇら…全員ぶっ殺してやる!よくも…よくも加賀さんをっ!!」
瑞鶴さんは涙を流しながら怒声を放つ
それもそうだ…
加賀さんと瑞鶴さんは普段口喧嘩ばかりしている…
端から見れば仲が悪いと言っても、お互いをきちんと評価している…要はお互いを高めあっている好敵手のような仲だ
そんな人を殺されれば…
「…てめぇも!てめぇもてめぇも!!みんなぶっ殺してやるからな!…これほどけよぉぉおおお!!!」
瑞鶴さんの様子を見ていた黒フードは呆れたように笑う
「キヒヒヒ…まるで獣だねぇ…こりゃあ躾が必要ダネ」
黒フードがそう言うと、軽巡棲鬼とは別の…
頭から角を生やした高身長の深海棲艦が瑞鶴さんに近づき、片手で瑞鶴さんの首を掴む
「……」
角の深海棲艦は何も言うことなく瑞鶴さんを締め上げる
「…ぐっ…ぎぇ…ご、ごろず…」
瑞鶴さんは顔を赤くしなが、口から泡を吹きながらも抵抗するが、このままではまずい…
「…やめて!…もうやめて!」
先に吠えたのは龍田だった
龍田は苦渋の表情で黒フード達に乞う
「…ふんっ…全員連れてイケ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
奴等との顔合わせが終わると、再び青葉のいる部屋へと戻されたオレと川内
「…くそっ…くそっ!!」
がんがんとオレは壁をたたく
川内も意気消沈し、壁を背に座り込む
「…なにか…あったんですか?」
オレ達の様子を見てなにかを感じたのか、青葉が恐る恐る話しかけてきた
「…別に……仲間が一人やられた…そんだけだよ」
「…」
答えなかったオレの代わりに川内が青葉に返す
「…そう…でしたか…」
…ああ、まあ…なんも言えないよな…
「…なぁ、青葉…あいつ…あいつらはなんなんだ?…なんでオレ達…艦娘を狙うんだ?」
「…わかりません…でも、あいつらのやっていることは異常です…私達を簡単には殺さず…まるでなぶるように楽しんで…」
「…」
青葉の言葉に川内が首をかしげる
オレは……ああ、まぁ…なんとなくわかったが…
「…あの黒フードは…何者なんだ?」
「…深海棲艦……戦艦レ級です」
レ級?
…レ級ってたしか…去年の…大規模討伐作戦の時の討伐目標の一人…だよな…
あれ?…でも…
「…確かレ級って…横須賀鎮守府の艦隊が倒したんじゃなかったか?」
青葉は視線を下げる
「…けれども、あいつはああやって生きています…それが事実です…」
…なんだよ…嘘の報告してたってことかよ…ま、今はどうでもいいか
「…あいつの横にいた…一人は軽巡棲鬼だろ?…もう一人、角の奴は?」
「…港湾棲姫…あの三人は元々横須賀鎮守府の追っていた討伐対象です…」
横須賀?
…
「…お前は…どこ所属でなんでここに?」
「…わた…青葉達は南海支部、淡路レーダー基地の艦娘です…哨戒任務中に奴等に強襲されてここに…」
「…淡路?…じゃあ…さっきの…その…その髪の毛はどうしたんだ?」
オレがそう問うと、青葉はさっと自分の髪を押える
「知りません!私が聞きたいですよ!…突然拐われて!変な機械に放り込まれて気づいたら……私なんてまだ良い方です…一緒にいた娘はお腹を…お腹をっ!……」
「…」
「…あいつらは私達を捕虜どころか人としても見ていません…!まるで簡単に壊せるおもちゃのように無茶苦茶なことばかりします」
「…無茶苦茶…?」
オレが更に青葉に問おうとした時だった
部屋のドアノブが開き、グールが二人入ってくる
…相変わらずくせぇな…ドブみてぇな酷い臭いだ
「…ざ…ん……ぎょう…」
「…いっ…ぷく…」
「…?」
今の今まで気づかなかった…こいつら…喋れるのか?
二人のグールは部屋の隅に縮みこむ青葉に近づき…
「ぎゃっ!」
青葉の腕と、ぼろぼろの布を掴むと無理矢理部屋から連れだそうとする
「…お、おい!お前ら…「たすけて!助けて助けて助けて!!嫌だ!嫌だ!いやぁぁあああ!!!」
泣きながらずるずると引っ張られ、部屋からいなくなった青葉
オレと川内はその青葉の必死さ…というか、青葉がされることを想像して、恐怖したんだ…
全く動けなかった
「…て、天龍…」
隣に座る川内が両肩を押えて震えている
「…こ、これからなにされるっていうのさ…私、怖いよ…」
「…」
本当に何をされるのか…
オレは何も言い返せなかった…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
がちゃん、と重く、錆びた音を鳴らし扉が開く
「…ヨォ。待タセタナ」
嬉しそうに入ってきたのは軽巡棲鬼だった
「…何の用だ…」
「…クヒヒヒ…家畜ノ様子ヲ見ニキテ何ガ悪イ」
軽巡棲鬼は腰に手を当て、やれやれと言った風に半笑いで天龍を睨む
「…シカシ、本当ニオ前ハ生意気ダ…ダカラ躾ヲ施スコトニシタ」
軽巡棲鬼がそう言うと、彼女の背後から3人のグールが入ってくる
「…くっ…!」
…本当にこの施設はわけがわからない…
艤装も出せないし、力も入りにくい…
『海底1000メートルへようこそ』
…黒フード…いや、レ級の言葉がオレの頭の中を過る
グールどもはオレの両腕を掴み、立たせる
「…やめろ!はなせっ!クソッタレが!」
「…オーオー…口モ悪イナンテドウシヨウモナイナ…オイ、連レテイケ」
「…天龍!天龍!!」
川内も必死に叫ぶ…
だがオレと同じ様に身体がうまく動かないようだ…
…無情にも扉は閉められた
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
…
…あの部屋から連れ出されたオレはまたもすぐに袋を頭に被せられた…
両腕を掴まれて歩かされるなか、左右の…多分部屋だろうな…最初に司令室に連れていかれた時と同じ様にその部屋部屋から女の叫び声が聞こえる
『ぁぁああああ!!』
『いやぁぁあああ!!』
『やめっ…ぎゃぁああ!!』
クソッタレ…
クソッタレクソッタレクソッタレ!!
…クソッタレが…!
「…安心シロヨ…オ前モスグニ気持ヨクシテヤルカラサ」
後ろから軽巡棲鬼の嬉しそうな声が聞こえる…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
がちゃん
…重そうな鉄扉の音がする
『ぁぁぁあああ!!』
相変わらずオレの手は…
いや…なんか……手足…か…?
『ぐっ…ぎぃぃいいい!!』
鎖かなんかに繋がれて身動きが…
っくせぇ!
んだ…この……むせ返るような…
『ぐぅっ…ぐぅぅぁああああ!!』
それになんかざわついててうる…
「ゲホッ!…ゲホッゲホッ!」
思わずむせて咳き込む…
「アーアー仕方ネェナ…ホラ」
軽巡棲鬼がそう言うと、頭に被せられた袋が取られる
「……!!!」
さっきの閉じ込められていた部屋ではない…
視界が開くと、そこにはオレ達のかつての仲間達がいた…
オレ達が探していた仲間達が…
「ぐぃぎゅぅぅううう!!」
「ぐっ…ぎぃぅっ!…ぐぅぅぅうう!」
…摩耶…加古…
あいつらとはよく夜のうちに馬鹿話しながら基地屋上で酒盛りしたもんだ…
摩耶はああ見えて結構ウブでな…基地の職員で気になる奴がいるだなんて笑ってたっけ…
加古とよく茶化して冗談を言い合ってた…
そんな2人が今オレの目の前でよだれを垂らしながら白目を向き、獣のような声をあげて悶えている…
裸でおかしな椅子に座らされて…よくわからない棒状のモンが二人の下半身を…
「…ま、摩耶ぁ……加古ぉ…」
いつの間にかオレは泣いて二人の名前を呼んでいた…
「キハハハハハッ!!名前ヲ呼ンダッテモウワカラネェヨ!!」
がっ、と軽巡棲鬼はオレの髪を掴む
「…アア…コレハ邪魔ダナ」
軽巡棲鬼はオレの着ていた制服を掴み、勢いよく破り捨てる
「…てめぇっ!」
「安心シロヨ!オ前モ後デコイツラト同ジ目ニ合ウンダカラナァアッ!」
…後で?
一体何を言ってんだよ…
そう考えていると、摩耶と加古を責めている装置とは別にグールが気味の悪いものを持ってきた
「…ククク…最初ダカラナ…マズハ一発キツイノ味ワセテヤルヨ」
「…かんぽう…にじょう…」
軽巡棲鬼の合図にグールがオレの身体に…"それ"を這わせる
触手だらけのスライムみたいなぐにゃぐにゃの生き物だ…生き物か?
「や、ややや…やめっ!…やめろ!」
触手のスライムはオレの脚に触手を絡めはじめる
…気持ち悪い
「…コイツハウチデ開発シタ尋問用ノ生物兵器ノヒトツデナ…女好キガ過ギテ困ッテタンダ…相手シテヤッテクレヨ?ハハハハハハ!」
…軽巡棲鬼の声なんてオレの耳には入ってこなかった
とにかくぬるついてて気持ち悪かった
「…ぎ…や…やめ……」
ぬるついた触手はやがてオレの股間部へその手を滑らせ…
「…ぅあ…」
…オレの中へと侵入してきた
…ああ
身動きが出来ない…
助けるはずの仲間が目の前でなぶられているというのに…
その仲間を拐った敵が目の前にいるというのに…
無力…
…無力…か…
ああ…そういえば、あの時も何も出来なかったんだよな…
ごめんな…
…響
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
司令室
真っ暗な外を窓越しに見つめるレ級
彼女は司令室に入ってくる女性の方に視線を向ける
「…ヤァ、よく来ル気になッタネ」
両腕を縛られ、港湾棲鬼に連れられた龍田だった
「…さっきの話…本当に信じて良いのね…?」
険しい表情でそう問う龍田
レ級はへらへらとしながら手を振る
「…モチロン!約束通リ君ガ私ノ研究ノ実験台になってくれるんならモウ私ハ君ノ仲間ニ手ヲ出すことはナイヨ。絶対ニネ」
「…嘘、じゃない…のね?」
「…」
レ級を睨む龍田
港湾棲鬼はつまらなさそうに窓の外を見る
レ級は更に嬉しそうに笑うがすぐにその笑みを消し、龍田の前に立ち直り、胸の前に拳をつくる
「…アア。私ハ人間トハ違ウ…相手ガ誰だろうとも約束ハ絶対ニ守ろう…"私は絶対にお前の仲間には攻撃しない"と誓オウ」
「…わかり…ました」
どこまで約束を守ってくれるか…
敵の言うことだ…1%守られることはないかもしれない…
暗い表情のまま龍田は頷き、港湾棲鬼に連れられて司令室を出ていく
「…」
[本当にあんな奴で良いのか?]
人の言葉とは違う言語で話しかけられたレ級は声のする方を向く
軽巡棲鬼だった
彼女はにやにやしながら司令室の机にどかりと座る
[…ああ。今回仕入れた艦娘達の中じゃあ…間違いなく今の軽巡が強い]
レ級の返しに「ほう?」と興味深そうな反応をする軽巡棲鬼
[こないだ捕まえたあの戦艦よりもかい?…そりゃあ盛り過ぎでしょ]
レ級は笑う
何を馬鹿な、といった風に
[いいや…間違いなくあの軽巡…龍田は今ここにいる艦娘達の誰よりも強い…いい"材料"だよ…くくく…どんな感じになるか楽しみだねぇ]
[…あんた…一体何を考えているんだい?…方々から人間拐って化け物に変える実験して…艦娘拐ってレイプしまくったと思ったら改造して…]
[…ふふふ…まぁそんなこといいじゃあないか…で?…尾張の艦娘はどうした?]
軽巡棲鬼の質問を濁したレ級は質問し返す
[…ああ。あの黒髪の軽巡は…今足柄とかいう重巡と食堂で元人間達と楽しんでいるさ…あとは、くそ生意気な空母は機関室だ。今頃デク女に殴られているだろうな…それと眼帯の反抗的な軽巡は火薬保管庫だ…一緒にいた駆逐艦はどうする?]
[…ああ。駆逐艦は私の研究室…いや、作戦室に連れてこい。また改造してやるさ]
嬉しそうにそう命令するレ級
軽巡棲鬼はそんなレ級を睨み…
[…そろそろここの管理を私に任せてもらえないか?ある程度要領はわかったし、なによりも…私ならもっと面白いことが出来る!もっと艦娘達を壊すことが出来る!…どうだ!?]
興奮気味の軽巡棲鬼を横目で見ながらレ級はふ、と笑い、ぼそりと呟く
「…愚かだナ」
[…え?…今何て言ったんだ?]
[…いや、なんでもないさ。そうだな…検討しておくよ…それよりも、例の…私達を裏切った空母は見つかったのか?]
[…ああ…捕まえた艦娘から聞いた。奴はあのあと、佐世保鎮守府に流れ着いたらしい…艦娘達からは空母ヲ級と呼ばれているようだな…]
[…その捕まえた艦娘は?]
レ級の問いかけに軽巡棲鬼は拳をつくり、親指を真下に向ける
[死んだ!テクノブレイクってやつだな。笑顔で糞と小便垂れ流しながらイキやがったよ…ありゃ凄かった!ははは!]
[…わかった。お前は引き続き捕まえた繭達を管理しておいてくれ…それと…この基地の防衛ライン強化。潜水艦達の哨戒回数を増やすんだ…あと念のため、基地内の艦娘用艤装制御装置の電磁波を強めろ]
[…?…ハンディの装置じゃなくて基地の制御装置か?]
レ級は頷く
[…ああ。ハンディの方はかなり至近距離でないと効果がない…それに揺れの強い海の上では艤装解除まではまだ出来ないな…精々艦娘の能力を弱める程度だ。龍田達の艦隊と対峙して実際効果を見れて良かったが……うん、お前の開発したハンディの方は失敗作だ]
レ級の物言いに軽巡棲鬼はむっとしながら、そのまま司令室を出ていった
彼女を見送ったレ級は、司令室の机の引き出しから小型通信機を取り出し、操作する
(…馬鹿な奴だ…余計なことをして…だが…佐世保と奴が接触したならここはもうダメだな…いずれ佐世保鎮守府の艦隊が攻めてくる…)
(…しかし…あの空母め…余計なことをしてくれた…我々に非協力的な奴だとは思ってはいたが…まさか人間側につくとはな…)
レ級はなにかを思い出したかのように顔を上げる
(…ああ、そういえば何年か前にもいたな…ベータにいた頃から戦いの嫌いな重巡が…まぁそんなことはどうでもいい…今はとにかく…)
「…やぁ、聞こえるかな……私だヨ…ああ…次ノ飼育場ガ欲しくてね…」
通信機の向こう側の誰かに話しかけるレ級
彼女の背後、司令室の窓の外には暗く、深い闇が広がっていた
「…ああ、ソレトさ……ぐーるって知ってる?…そうそう…ぞんびミタいな見た目って言ってたね……………………へぇー…そうナンダ」
…闇が広がっていた…
はい。
いかがでしたでしょうか
天龍達はこの後どうなるのか…
そしてレ級の言う研究室とは…
他の艦娘達はどんな目にあっているのか…
次回をお楽しみに
…それと、本編と関係ありませんが、年末のコミケ行って思いました…
絵がうまい人羨ましいな…と。
誰か大本営の資料室描いてくれないかな…と…