既に削除しましたが、活動報告をご覧になった方々…投稿が遅れて申し訳ありません…残ぎょ…どうも色々と忙しくてですね…
と、まぁ謝罪はこの辺にして…
捕虜案件最後のお話となります
遂に例の噂のあの彼が登場します
※注意
少しだけ性的表現に近いものがあるので、ご注意ください(R-18レベルではありません)
それではどうぞ
司令室より上の階
「…さあ、ココガ私の研究室ダよ」
レ級に連れてこられた部屋を見て眉を寄せる龍田
「…」
龍田は違和感を感じる
先程の司令室よりも間違いなく広い…
「(…本当にここ…海底1000mなのかしら…)」
司令室や拘束されていた部屋よりも整った…ちゃんとした作りのコンクリートの壁や天井、蛍光灯の使われた明るい照明
とても大戦時の戦艦の中とは思えなかった
そして部屋内にある様々な装置
漫画で見たことあるような近未来チックな人ひとり入れそうな浴槽のようなカプセル
電子音を出すいくつものいくつものパソコン
何かの数字を示す大きなスクリーン
「…」
龍田は大きな機械が取り付けられた椅子のような機械をじっと見る
「…クキキキ…あまりその辺の機械には触らない方がイイヨ…それは座れば髪の毛を溶かすスライムに襲われるヨ」
龍田の視線を察したレ級は笑いながら説明
「…髪の毛?…何故髪の毛を?」
「研究の一環サ…私は君たち艦娘に興味ガアル…私達深海棲艦となにが違うのか…何が君タチを強くさせるのカヲネ…だから髪の毛だけじゃない…君たちの身体、頭、内蔵に皮膚、尿や血液など色々と調べるために用意したのサ」
レ級の説明を聞いて龍田は唇を噛む
「…狂ってるわね…」
くくく、とレ級は笑う
「人間モ医学のために非人道的な人体実験をした歴史がある…ソンナ人間側のきみが私を咎められるのカナ?」
言い返された龍田は別の機械を見る
「…あなたは興味本位…ただの遊びでやっているんでしょう?…なら、尚更悪趣味ね」
「イイヤ。これは必要なことダよ…近い未来、ソレヲ実感することにナルカモね…ああ、ソウダ。面白いモノ見せてあげるヨ」
そう言うと、レ級はパソコンの操作をしだす。しかしまだ文明機器に慣れていないのか、キーボードを打つ指は遅い
レ級の入力が終わると、壁の一部の隠し扉が天井方面へスライドする
「…!?」
隠し扉が開かれると、その奥の部屋の両壁にはモニターとキーボードが設置された人ひとり分の大きさの円筒の水槽が並び、槽の中には不透明な青色の水が溜められているものもある
「…?……なっ!?」
並ぶ槽を順に見ていくと、誰かが水槽の中に入れられていることに気づく
「…深海…棲艦?」
水槽の中に入れられている者の姿は確かに深海棲艦だ…艦種でいえば軽巡級…
水槽の中にいる彼女達は寝ているように眼を瞑っている
「…イイヤ?…この娘達は艦娘ダよ…ああ、元ね」
レ級の言葉に背筋をゾッとさせる龍田
食い入るようによくよく彼女達の表情を見る
「…夕立…ちゃん…?」
頭の左側には仮面の様なものをつけ、眼を瞑り、肌の色も青白くはあるが間違いない
この娘は尾張の…第一艦隊の夕立だ、と…
「…なんで…こんな……」
思わず縛られた両手で口元をおさえる龍田
対してレ級は肩を震わせる
「く、くくく…クヒャハハハハ!!ああ!いい顔ダヨ!タツタ!アーッハッハッハッ!!」
レ級の笑い声にきっ、と顔を強ばらせる龍田はレ級を蹴り飛ばそうと勢いをつける
「…っこのぉ!」
「ぉおっと…」
しかし身体が弱体化している今の環境ではその蹴りも威力半減、レ級にひらりと避けられてしまう
「…がっ!」
蹴りの反動を利用されて、龍田はレ級の尻尾に床に組み伏されてしまう
「…キヒヒヒ…その駆逐艦だけじゃない…尾張ノ艦娘ももう何人カここにイルヨ…クヒヒヒヒ」
「…人でなし!この狂人!」
組み伏されたまま怒鳴る龍田
「…ヒトデナシ?…ああ、私ハ人じゃあないカラネ…さて、サテサテ…自分からカプセルに入ってもらえると思ってたンダケド…まぁ、仕方ナイカ…」
レ級は尻尾の蛇を使い、龍田を再拘束、そのまま持ち上げて水槽だらけの部屋を進む
「…ゆ、夕立ちゃん!……っ!…朧ちゃん…曙ちゃん!?」
レ級に持ち上げられた龍田は更に水槽の奥に入れられた朧、曙に気付き名を呼ぶも、水槽に入れられた彼女達が反応することはなかった
「…なんで…!あの娘達が何をしたというの!」
「…アア?…別に何かシテナクテモ、何かシテテもああなる運命ダッタんだよ。残念ダケドネ」
「…くっ!」
持ち上げられたまま龍田は、なにも出来ない、誰も助けられない自分の無力を感じ、苦渋の表情で歯を食いしばる
「…さぁ、お姫様…ベッドへ着いタ…ヨっ!」
どかっ、と龍田を空いている水槽へ投げ入れるレ級
水槽に龍田が入ると透明なガラス扉がスライドして閉まる
「…くっ!…出しなさい!まだ話は終わっていないわ!…このぉ!」
がんがん、と頭突きで水槽内からガラスを割ろうとするが、当然割れなく、レ級はけらけらと笑う
「…安心シナッて…約束通り私カラお前の仲間ニハ手を出すことはしない…"私から"ハネ」
「…くっ…!」
ここにきてレ級の態度に表情を歪ませる龍田
「…今日はいい日ダヨ…軽巡最強クラスのタツタと……ウン、面白い駆逐艦も手に入ったカラネ」
駆逐艦、と聞いて眼を大きく広げる龍田
レ級は龍田の入った水槽からも見えるように部屋の奥へ手を伸ばす
「ほラ、あそこにイルヨ」
レ級の指す先…部屋の奥には椅子が1つ置かれており、その椅子に少女が1人座っていた
「…う、潮ちゃん!!」
尾張の捜索部隊の1人。駆逐艦潮だった
潮は龍田の声に反応することなく天井を向いている
どうやら頭に何かを被せられているようだった
「…クヒヒ…あの駆逐艦には"最新"の装置を使わせてあげているンダヨ…まだ彼女が初めてノ被験者ダカラね…どんな効果がアルカわからないケド…作った奴が言うニハ元の記憶が吹っ飛ぶラシイよ?…ワクワクするよネェ」
「…っ!…」
レ級の言葉を聞いた龍田は涙眼になりながら水槽のガラスを何度も蹴る
「…おまぇぇえええー!!…このっ!…開けなさい!開けろぉお!!」
「アハハハハー!ヒャアッハハハハハハ!!」
高笑いのレ級は眼を細め、水槽の横にある装置を操作する
「…ククク…次に眼が覚めた時ニハきっと素敵な世界が広がッテルヨ…おやすみ。タツタ」
どぶどぶどぶ、と水槽には他の水槽にも入っているオイルの様な粘り気のある水色の液が注水されていく
「…許さない!…絶対に許さない!!」
液は龍田の足元、足元から膝、膝から腰まで注がれていく
「…アア、その怒りスラモ消えてなくナルヨ…ククク」
「…がっ…ガボッ…ボゴボゴ…」
ついには水槽が水色の液で満タンになり、龍田の意識が薄くなっていく
「(…殺してやる…殺して…やる……殺…て……)」
ごぼごぼと口から泡を吐き、龍田の意識は途切れた
「…クヒヒヒヒ…アア…タツタはどんな風にいじってやろうかな…」
嬉しそうに小躍りするレ級はふぅ、と息を吐く
「…せーっかく戦艦ヤ空母を捕まえテモアイツラが壊したがるカラナぁ…デモ、とびきり強い軽巡ナンテそうそう手に入らないからナァ…上物の"繭"だ…念入りにいじらないとねぇ…」
レ級はそのまま水槽横の装置、そのキーボードを操作し始める
「…"審判の日"まで時間がナイカらねぇ…トラックの時ノデータを参考に…強くて凶暴で…残忍で…キヒヒヒ…やりたいこと沢山アリスぎて迷っちゃウナァー…キヒヒヒ!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
…ああ…
ここ…どこだっけ…
…そっか…
あいつらに…
くそっ…
くそっ!くそっ!
まだ身体の違和感を感じながら起き上がる
そこはさっきまで…川内や青葉と捕らえられていた部屋だった
「…さっきまで?」
…いや、オレはどれくらい気を失ってたんだ?
服…は、ない……んだよ、この布っ切れは…
…ちっ…眼帯もとられちまった…
「…くそったれが…」
ふらつきながら立ち上がり、部屋の扉の方へと進む
ドアノブを回そうとするが、当然鍵は掛けられて…
「…お?」
…施錠されていたと思っていたのに扉はなんてことなく開いちまった
「…」
扉を少しだけ開け、部屋の外を見る
薄暗い通路だ…
でも思ってたよりも広いな…
大戦時の戦艦の中ってこんな広かったのか?
「…う…」
…股からヌルついた液体が太ももを伝って床に落ちる
…いや、考えないようにしよう…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
部屋から抜け出したオレは壁に手を当てながら通路を進む
遠くで誰かの叫び声が聞こえる…
「…龍田…川内…みんな…」
この部屋を出たところでなにが出来るか…
…だめだわ。なんも思いつかねぇ…
とりあえずあの黒フード…レ級をぶっ殺して…みんなを助け出す!
「…あれは…」
よたよたと通路を進んでいると、どこからか聞こえていた声が大きくなってくる
「…物資保管庫…?」
鉄扉の上に貼り付けられた文字を確認する
ゆっくりとドアノブを捻る
「…ぅ…」
途端に中から漏れてくる悪臭
生ゴミみたいな…ゲロみたいな腐った臭いだ…
思わず吐きそうになるもオレは耐える
「…この…部屋は……!!!」
よく眼を凝らして部屋の中を見ると、通路で聞こえていた声がここから発せられていたことがわかった
「…川…内…?」
中では川内と、捜索していた尾張の足柄…それと知らない誰かがグール達に代わる代わる襲われていた
「やっ…がぁあっ…やめでっ!…やめてぇっ!」
「…ぐぅ…あっ…ああっ!…ぁぁああ!」
…グールは何人もいる…10人以上だ…
オレの心音が速くなるのを感じる…
助けなきゃ…助けなきゃ…でも…あいつらに敵うのか?今のオレは何も武器を持ってない…
でも川内達を助けなきゃ…
「…ふっ…ふぅぅ…ふぅ…」
手が震える…呼吸のやり方がわからない…
…先にレ級を殺した方がいいのか?…
いや、今助けなくていつ助けんだ!
もう仲間は失いたくねぇんだろうが!
動け!
オレの身体!
「…ぁ…ぁぁああ!!!」
ばん、とオレは物資保管庫の扉を開ける
「てめぇえらぁぁあああ!!!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
…あん?
どうなったかって?
…わかんだろ?
…結局オレはなんの役にも立てなかった…
化け物からすりゃあ餌が1つ増えて嬉しかったろうな…
気がつきゃあ何日たってたのか…
きたねぇ餌場で川内と泣きながら抱き合ってたよ…
足柄の方は……もう狂ったように…
…そんな感じだ…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
それから3日間は地獄だった…
本当に地獄だった…
化け物どもの慰み物になって…
きたねぇ体液を浴びせられて…
糞や小便も食わされたこともあった
そんでもって軽巡棲鬼のその日の気分で電気椅子みてぇなモンに座らされて気を失うまで遊ばれたこともあったな…はは
…そういえばいつの間にか青葉の姿も消えてた…
どうせ殺されてたんだろうな…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…」
ここにきて5日目…かな?…もう時間の感覚はよくはわからない
…基本、オレと川内はこの…最初にぶちこまれた部屋で食事と睡眠をとらされる…
…つっても飯なんてどろどろのまずい粥みてぇなやつだし、当然ふわふわのベッドなんてありゃしねぇ…冷たい床に敷かれたゴザを使っている…
着替えはこの薄っぺらい布切れだけでシャワーは無し…
なによりもキツいのはあれだ…便所だな…
昨日も川内がオレに謝りながら使ってたっけ…
まぁまだマシなのは日に一度、化け物が来て部屋の…便器代わりに使ってる桶を交換してもらえることだな
その日も化け物が桶を持ってった後に起きた…
部屋で震えるオレと川内の前にいるのはあのデカ女…港湾棲姫だった
奴がオレ達の足元に落としたのは長い紐…いや、これは…
「…こ、これって…この色…瑞鶴さんの…」
川内は更に震える
港湾棲姫が落としたのは瑞鶴さんの…何本かにまとめられ、握りつぶされた髪の毛だった
毛の先には赤い肉片が付いている
「…うっ…うぶぉろろっ!」
「天龍…!」
肉片の付いた髪を見て思わず嘔吐…
このクソ女…頭皮ごと引きちぎったってのかよ…
だがそんなオレ達の表情を見ても奴は態度を変えない。
相変わらず人を見下したような眼でオレ達を見ると、港湾棲姫はなにも言わずに部屋から出ていった
「ねぇ、天龍…私達…どうなるのかな…」
弱々しく問いかけてくる川内…
オレはなにも返せなかった…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
…認識が合っていれば今日で1週間…
一昨日辺りからどうも外が騒がしかった…
いや、深海1000メートルにいて耳がおかしくなったんかな…
「ヨォ…遊ボウヨォ~?」
部屋の扉を開けて、入ってきたのは軽巡棲鬼だった…
どことなく機嫌が良さそうだ…
化け物…グール達も入ってきてオレと川内の腕をとって立たせてくる
「今日ハドッチト遊ボウカナァ~」
軽巡棲鬼は楽しそうにオレと川内を指で選ぶ
「…」
オレは顔を反らす
だが軽巡棲鬼はそんなオレの態度が気に入らなかったんだろう…
「…ヤッパオ前ダナ…オイ、連レテイケ」
この日も再びご指名はオレだった…
またコイツのオモチャで遊ばれるんだろうな…
オレはちらりと川内を見る…
なんとなくではあるが、川内の表情はどこか安堵したように見える
…でもオレも同じだよ。川内…
化け物どもにまわされるくらいなら…
軽巡棲鬼1人にいじめられた方がオレからすればマシだ…
どうせ意識がなくなるまでやられるのは同じだが…うん。
こっちの方が断然マシだ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…はぁ…はぁ…」
火薬保管庫に連れてこられて…いや、時間の感覚なんてわからねぇ…
何度も意識が飛んで…
オレは息絶え絶えに軽巡棲鬼を睨む
「ヒャハハハハ!イイネェ!可愛イヨ天龍ー!」
軽巡棲鬼は椅子に座らされて、涎と小便を垂らすオレを見て嬉しそうに、楽しそうに笑う
「…う…あ……ぅぁ…」
…ああ、意識朦朧として言葉もでねぇな…情けねえ姿だ
そんな時に火薬保管庫の扉が空き、レ級が入ってくる
レ級はオレの情けない姿を見て顔をしかめる
[…相変わらずだな、私はそろそろ出るぞ]
レ級はオレにはわからない言葉で軽巡棲鬼に話しかける
[…ああ?…あー…そうだったな…次の飼育場の視察、だろ?]
[…ああ。今実験中のサンプルは持っていく…いつ戻るかは未定だから…私のいない間は君にここの管理を任せるよ]
レ級が何かを話し、その内容が途切れると軽巡棲鬼は口の端をより吊り上げる
[クククク…ああ、ようやくか…任せておくれよ。あんたが戻ってくる頃には最高の飼育場にしておくよ]
ふ、とレ級は鼻で笑い、オレに再び視線を送り…
[…お前の最後を見れないで残念だ…お前の妹は私が最高の兵器につくりかえてやるからな]
…オレにはレ級の言っていることが…
わからなかった…
「サァテ…邪魔者モ消エタコトダシ…」
レ級がいなくなると、軽巡棲鬼は作業台からクリップのついたコードを手に取る
「…っ!」
そのクリップをオレの…
オレの身体の一部…乳房に2つつけ、コードの先を訳のわからない機械に取り付ける
「…や……ゃめ…」
「クキキキ…オ前ノ乳首…真ッ黒ニナルカモナァ…ポチットォォオオ!!」
軽巡棲鬼がコードの取り付けられた機械の電源を入れる
…身体中に電流が走る…
ああ、眼から火花が出るかと思ったよ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
薄暗いドックのような場所…
そのドッグ中央には小型の船が停泊し、船にはグール達が様々な機械や四角いハードケースなどを積み込んでいる
そんな作業をするグール達を見て、レ級はつぶやく
[…ああ。いいところだったんだけどなぁ…だけど今佐世保とぶつかるのはまずいからね…]
レ級は船に運ばれる人間の大人サイズの棺桶のようなものをじっと見る
[…アレ1つだけでいいか…他の繭共はアレ以上の効果は見れないだろう…勿体ないけど…]
ぽつぽつと呟いていると、レ級に1人のグールが近づいてくる
「…白木屋…かん…ぱち…」
[…ん?…ああ。準備が終わったんだね]
レ級がそう返すと、グールの1人は肯定するかのように頭を下げる
レ級はにっ、と笑い
「じゃアさようナラ。皆元気デね」
レ級の乗る船はドックを出港する
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…ふごっ!」
軽巡棲鬼は、仰向けに寝かされたオレの顔面に体重をかけるように突然座り込んできた
手足を拘束されたオレは当然振り払うことは出来ない
「…クククク…オ前…サッキワザト自分ガ選バレルヨウナ態度トッタナ?」
「…むっ…んぐんぐ!」
軽巡棲鬼はオレの画面に自分の股間をぐりぐりと押しつけてくる…これ…なんの素材だ?
皮なのかわからないけど、ぎどぎとしていてぇよ…
「…ダケド、イイ判断ダヨォ?…ククク…アイツラノ体液ハチョットシタ副作用ガアッテネェ…」
軽巡棲鬼はそう言って立ち上がる
「ぷはっ…ふ、副作用…?」
「…アア…マァ簡単ニ言ウトネェ…アンマリ奴ラノ体液ヲ浴ビスギルト、奴ラト"同ジ"ニナッチャウンダヨネェ…」
グールと同じになる…
そう聞いたオレはぞっとする
腐り、剥がれかけた皮膚…腐敗臭…垂れ流しの便、臓物…
自分が自分でなくなる状態
生きていて死んでいる状態…
「…い、いやら…ひやらぁ…」
オレは涙し、情けない…声にもならない声で乞うと、軽巡棲鬼は再びオレの顔面に腰を下ろす
「…キヒヒヒヒ…フゥ…イイ…イイ顔ダヨ天龍…ソコデ私カラ提案ガアル…最初コソムカツキハシタガ、私ハオ前ヲ気ニイッテイル…ドウダ?私ノ奴隷ニナレ。ソウスレバコレ以上奴ラニ抱カレル事ハナイ」
…ふざけるな…
そんなの…オレだけ助かったってしようがねえじゃねぇか!
「…ソレト1ツイイコトヲ教エテヤル…」
軽巡棲鬼はバカにしたような笑顔で
「…オ前等ハ自分ノ提督ニ売ラレタンダヨ」
「…え…」
この女が何を言ってるのかわからなかった…
「キ…キヒ…キヒャハハハハハ!オ前等ハ捨テラレタ!見捨テラレタンダヨォー!アハハハハハハ!」
…正直、こいつの話は信じられる…
何故なら…オレは…オレ達は…
松平提督を何一つ信用していなかったから…
オレの中で最後の線が切れた音がした…
「…サァ、ドウスル?…ドォウスル?」
ああ…
最後にな…
…その憎たらしい顔…ぶっ潰してやるよ…!
…ああ
答えてやるよくそったれが!
「…な…」
「…ナ?」
「…なります…あなたの…あなたの奴隷になりますから……もう、いじめないで…ください…」
…は?
は?
は?は?
なんだよ…オレ…なに言って…
「キャハハハハハ!アーッハハハハハ!」
…軽巡棲鬼はオレの顔の上で嬉しそうに…声高々と笑う…
違う…オレは…こんなこと…
…軽巡棲鬼は再びオレの顔の前にしゃがみこみ、オレの両頬に手を触れる
…冷たい…深海のような体温…
「…モウ一度…ナ?」
「なるます!…なります!…あなたの奴隷にしてください!お願いします!」
…オレの思ってる事…言おうとした事を無視して勝手に口が開く…
鼻水、涙、よだれを垂らしながら…
オレは何を言ってんだ…
「…んぶっ!」
軽巡棲鬼が履いていた黒いラバー調のパンツを脱ぎ、オレの口元にどしりと座り込む
「…アーア…ナンカモヨオシチャッタナァ…アア、天龍…オ前ハモウ私ノ奴隷…オモチャ…便器ダ…」
…頭がおかしい…
狂ってる…
「…んごんごっ!…はっ…はい!私はあなたの奴隷で…オモチャで…便器です!」
軽巡棲鬼はその口元を吊り上げて笑う
気味の悪い笑い声をあげる
「…イイコ…ゴ褒美ダ…!」
「あっ…ありがっ…がぼっ!」
狂ってる
コイツも…オレも…
この世界全てが…
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
めがさめる
…もうどれだけここにいるかわからない…
「…ねぇ、天龍…… ?」
となりからこえがする…
「…え…ぁ……ぅん…」
となりにいるせんだいのせなかがすこしあおかった…
それにくさい…
んたも私のこ 馬鹿に でしょ?」
…?…よくきこえない
「 つらに跨がっ でるって しょ!?」
…せんだいになぐられた…
なんで…
わたしがなんで…
「 ー! ねー!くそった ー!!」
やめて…けらないで…
…あ…
ごしゅじんさま…
「 !ざっけ ー!」
ごしゅじんさまといっしょにいるおおきなひとが…ええと…
…となりにいただれかのあたまをつぶした
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昭和91年 冬
火薬保管庫
天龍達が捕らえられ、数ヶ月の日にちが過ぎる
この日も例のごとく裸で四つん這いになった天龍の背に、乗る軽巡棲鬼
「サァ、天龍?今日ハナニシテ遊ボウカ?」
「…」
ここ二ヶ月ほど、天龍は言葉を理解できづらくなってきた
虚ろな眼をした天龍はゆっくりと、小さく頷く
「…キヒヒ…ソウカソウカ…ジャア今度ハコレ…入レテミヨウカ…ン?…外ガ騒ガシイナ…」
軽巡棲鬼はお気に入りのオモチャ箱と称した金属ケースから鉄の棒のようなものを取り出すも、壁の向こう側のざわめきを聞き、手を止める
「…ナン「ヴァァアアアアニィンッ!!!」ンォオワッ!?」
軽巡棲鬼が異音のする壁に近づいた瞬間、男の声が聞こえ、その壁が反対側からハンマーで叩かれたように大きく崩れる
同時にその振動で床にも穴が空き、そのまま穴に落ちる軽巡棲鬼
「……」
しかし天龍は驚くことなく崩れた壁を見つめる
壁があった場所は大穴が空き、向こう側からは眩しい光が差し込む
「っしゃあっ!一番乗りだぜ!ここが深海棲艦の基地か!?おい!」
大穴を通って来たのは全身鋼鉄の鎧…所謂パワードスーツを着た者だった
頭全部を覆い隠せるヘルメットを被っているため顔は見えないが、声からするに男性だろう
パワードスーツを着た男の右手にはバチバチと電気が走っている
「…んー?…なんだ、お前人間の捕虜か!?」
「…え、あ…「大丈夫!安心しろ!この俺が来たからにはもう安全だ!」
男はヘルメットを外す
「この日本国軍海軍佐世保鎮守府提督…正義のヒーロー、柴山がな!!」
少しだけ背の低い赤髪短髪のまさに熱血漢といった雰囲気の男がポーズを決めて笑う
「…よし!白露!村雨!お前たちはこの人を保護しろ!」
「「了解!」」
柴山がそう命令すると、彼の後ろにいた二人の駆逐艦が天龍の背中に毛布をかける
「シバヤマ、コノ奥ダ」
「ああ!腕がなるぜぇ!」
聞きなれない声質が聞こえ、顔を上げて柴山の方を見ると、彼と一緒にいたのは深海棲艦、空母級の少女
少女の案内のもと、柴山は通路へと出ていく
「…う、あ…なんれ……ここ、深海…なのに…」
村雨に抱き抱えられた天龍は、弱々しい声で白露に問うと、白露は眉を寄せ
「…深海?なに言ってるの?…ここはフィリピン…サマール島のジャングルだよ?」
「…じゃん…ぐる…?」
そう、ここは深海1000メートルの沈没船の中ではなかった
サマール島内、内装を戦艦内部のように作っただけの、陸にある深海棲艦の基地だったのだ
「…きっとこの人…洗脳を受けてここが海底だと思いこんでいるのよ…可哀想に…」
村雨も顔をしかめて天龍を優しく抱き締めるも、天龍は納得がいかない風だった
「バァァアーーニィン!!!」
「!?」
柴山の声が聞こえ、天龍は振り返る
通路の奥ではパワードスーツを着た柴山がグール達をなぐり殺していた
「……あ、ああ…」
そこで天龍は気づく
もしかしたらまだ仲間がいるかもしれない…このままじゃ間違えられて殺されるかもしれない、と
「ったくよぉ!なんて気味の悪い連中だ!…だが、このヒーロー柴山様の敵じゃねぇな!」
『…順調そうですね、提督』
柴山の無線に女性の声が入る
「おお!明石か!…ああ、順調も順調だ!とっととこの基地のごみ掃除を始めるぜ!」
『この数ヶ月、ずっと一進一退の攻防でしたからねぇ…あ、スーツの火炎放射器、今回は壊さないでくださいよ?…ちゃんと燃料のメーターを見つつ…』
「わぁってるよ!せっかくここまで来たんだ!オシャカになんてさせねぇよ!」
明石との通信を終えた柴山は通路の別の部屋から出てくるグールを発見
グールの姿を見た天龍は村雨の腕の中からもがく
「(い、言わなきゃ…言わなきゃ…!)」
しかし天龍の動きに気がつかない柴山は左手の火炎放射器をグールに向ける
「…ああ、くそったれが…!黒こげになりやがれ!」
ごぅ、と左手から放たれた炎がグールを包む
「…あ…ぁー…」
叫ぶことなく燃え、身体が崩れ落ちるグール
ざん、と柴山は炭になったグールを足で踏む
「こいつらは悪だ!…悪は殺すべき存在!俺たちこそ…俺こそ正義だ!」
「提督かっこいいー!」
「さっすがー!ひゅー!」
天龍を抱える村雨と白露も、柴山に黄色い声援を送る
『…提督、奥の大部屋にて港湾棲姫と遭遇!…基地から逃げていったわ!』
「なんだと!?…くそったれが!」
荒れる柴山に近づく空母級の少女
「…追ワナクテイイ…ソレヨリモ…」
「ああ!わかってるさ!…こんな施設があるからいけねぇんだ…お前がいたくもねぇ施設なんて…全部俺がぶっ壊してやる!」
意気揚々とレ級の研究室がある部屋へと向かう柴山
「…ぐ…ぁ…やめ…やめへ…」
「あ、ちょっと…」
天龍は村雨の腕から逃げ、這いずりながら柴山の跡をついていこうとする
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…くせぇな…なんだぁここぁ…?」
レ級の研究室に入ると、柴山は顔をしかめる
いくつもある水槽の中には尾張をはじめ、様々な国の基地の艦娘達…もとい、元艦娘達が変わり果てた姿で眼を閉じていた
「…シバヤマ…コノ人達ヲ…解放シテアゲテホシイ…」
空母級の少女は祈るように柴山にそう願うと、柴山は少女の頭をぽん、と撫でる
「…ああ。今俺が楽にしてやるよ…」
柴山はやさしく笑い、左手の火炎放射器を水槽に向けて構える
柴山の背後の床に這いつくばっていた天龍は水槽の中を見て驚愕する
そして驚愕と同時にこれまでの記憶が鮮明に呼び覚まされる
遠目にではあるが、間違いない…尾張の艦娘達だ…と
ずいぶんと姿形は変わったが、足柄や七駆の艦娘達…青葉さえも水槽に入れられている
「…あ…ぁ…が……」
天龍は床に這いつくばったまま、手だけを柴山に伸ばす
「(やめて…やめて!…そいつらは私の仲間だ!…)」
しかし天龍の想い空しく、研究室は業火のごとく炎に包まれる
「や……っ!…っ!」
天龍は必死に声をあげようとするも、ここ数ヶ月はまともに声を出していなかったせいで叫び声は出なかった
「(やめて!やめて!やめてやめてやめて!)」
「(なんでそんなことするの!?…仲間がいるのに…)」
炎の熱に耐えきれなくなった水槽は歪み、ガラスが割れ、中の艦娘達は抵抗することなく消し炭となっていく
その中には川内と思われる少女もいた
「……ー!!っ!…かひゅっ…ー!!」
「(皆……ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!)」
全てを燃やす柴山
それを真顔で見つめる空母級の少女
涙を流し、白目を向く天龍
「…おっと…」
気を失った天龍を尽かさず抱き上げる白露
「…あれって…深海棲艦…なのかな?」
白露は柴山にそう問うかけるも、柴山の放射は止まらない
「さぁな!…だが例え艦娘だったとしてもあの姿だ!もう元には戻れねぇだろ!」
がしゅっ、と放射を止める柴山
レ級の研究室にあった水槽、機器は全て焼かれ、床には黒こげの死体が何体も転がる
「…可哀想だが…こいつぁ正義のための犠牲だ!…深海棲艦に屈した奴らは…悪だ!悪は正義のために死ななきゃいけないんだ!」
「…提督…」
キメ顔の柴山の言葉にうっとりする白露
「…正義である俺がやることに間違いはない!さぁ!まだ奥にも部屋がある!正義の炎で焼き尽くすぞ!」
そう叫び、勢いよく走り出す柴山と白露
「お待ちを!柴山大佐!」
「!?」
声がして振り返る柴山と白露
振り向けばテーザーライフルやガスマスクなどを装備した重装備の男達…日本国軍海軍の特殊部隊が警戒しながら柴山の開けた穴から入ってきていた
「…なんだよ…誰かと思ったら筑後のホモ共か…ずいぶん遅かったな…」
「…我々はあなたのような強力なロボットに乗っていないのでね…それよりも、今回のあなた方の任務は海上での戦闘だ…勝手なことをされたら困ります」
筑後特殊部隊
日本国海軍で数少ない艦娘のいない基地のひとつである、筑後基地の人間の兵隊だけで構成された特殊部隊
主な任務は敵基地への潜入、諜報活動や他の海軍施設へのサポート等…
なお、他の海軍施設の人間からは、男性の兵隊だけで構成される彼ら特殊部隊を陰でホモと部隊呼ぶ者達も多い
「はっ…俺達がいなけりゃあ潜入も出来なかった雑魚どもがなーに言ってんだよ!」
柴山は右こぶしを握る
一瞬特殊部隊の隊長は怯むが、凛とした態度で柴山と向き合う
「…それに、姫級の深海棲艦が外へ逃げたと聞きました…ここよりもそちらの対処をするのがあなた方の役目では?」
隊長の言葉を鼻で笑う柴山
「…俺はな…愛のために…真実の愛と正義のためにここにいるんだよ!逃げた深海棲艦だぁ?しったことじゃねーな!」
ぐ、と隊長は持っているライフルを強く握る
「…話になりませんな…それに…潜入出来たのがあなた方のおかげ?…それは違います。潜入出来たのは今回の追撃作戦に協力をしてくれた潜水艦隊の皆さんの物資輸送があったからこそです!」
隊長の言葉に首をかしげる柴山
「…今回の作戦で届けてもらった物資弾薬、食料に水…どこの潜水艦隊が本土から運んでくれたか知っていますか!?」
隊長にそう言われ、柴山は昨晩のことを思い出す
佐世保の艦娘達と食べ、飲んで騒いだ宴のような夕食を…
だがその食料を誰が持ってきたかは…
「…お、お前らが用意した…んじゃねぇのか?…あ!筑前か!…あ、いや、薩摩…じゃなくて…大隅だっけか?」
「…」
柴山の態度にガスマスク越しでも隊長が呆れ、ため息を吐くのがわかる
首を小さく横に振った隊長は、部下達に指示を出し
「…こちらの少女は我々が保護します。それにこの先も我々が調査しますので、あなた方は佐世保に戻って乱痴気騒ぎでもすれば良いでしょう」
「…あんだと?」
ぴくぴくと眉を震えさせる柴山
「…て、提督…」
ぞろぞろと柴山達の横を通りすぎる隊員達
柴山と話していた隊長が彼とすれ違いざま、ぼそりと溢す
「…出撃してくれたのは福島の…磐城海軍基地の潜水艦隊ですよ…わざわざフィリピンまで遠かっただろうに…彼女達のあの疲れきった表情を見ましたか?…よくあんな彼女達の隣で騒げましたね…信じられない……とにかく、あなた方もきちんと彼女ら磐城海軍基地に礼を言っておくべきだ…それに…」
「…」
「…いい歳していつまで正義ごっこなんかやって…馬鹿馬鹿しいですな…」
そう言って奥の部屋へと入っていく隊員達
柴山は歯をむき出しにしながら隊長の背をにらむ
「…くっ…そ…がぁ…っ!…おれ…が…」
ぎりぎりと歯軋りをしながら火炎放射器を隊長の背中に向ける柴山
さすがに白露も慌て、小声で柴山を止めようとする
「…ちょっ…!提督!そればまずいって…!」
「…俺が…俺が正義だ!…こいつらは…こいつらが……悪だぁっ…ぁあ!」
鬼の形相で隊長の背に火炎放射器を向け…
『提督!緊急入電!提督!』
「ふぅー…ふぅー…ふぅー!…ふぅーっ!」
息を荒くし、青筋をたてる柴山
『…提督!』
通信の呼び掛けに柴山は大きく息を吐き…
「……っつあーっ!!…くそっ…どうした大淀」
火炎放射器を下ろす柴山
それを見て、同時にほっとする白露
『…その…それが…西海支部より提督へ入電が…』
「…ああ?…支部?…俺に?…支部の誰だ?」
『…武藤中佐からです』
「……ちっ…」
柴山は上官からの通信を直通に切り替える
「…はい。柴山です………はい……はい…」
苛立ちながら通信を取る柴山を心配そうに見つめる白露と村雨
「……いえっ…これは正義のための……はい……ですが!…………はい…はい……」
「…了解…佐世保艦隊はこれより逃亡した深海棲艦の捜索、その追撃任務につきます…」
納得のいかない表情の柴山はそう言って通信を切る
「……はぁあ~……」
肩を落とす柴山の背をぽんぽんと撫でる空母級の少女
ふ、と柴山は笑う
「…んまっ…お前との約束は…ある程度果たせたからよしとするか……おっと、いけねぇ…」
そう言って柴山はパワードスーツの肩に取り付けられた無線に手を伸ばし、とある周波数に合わせる
「…」
「…ああ、どうもどうも!佐世保の柴山です!…いやー!本当にありがとうございます!嘉島提督!」
さっきまでの怒りの表情はどこへやら、笑顔の柴山は、今回物資輸送の協力をしてくれた磐城へと通信を繋いでいた
「磐城の潜水艦隊の皆さんのお陰もあって無事追撃作戦も成功しましたよ!…ほんと、デッカイ借り作っちゃいましたね!あ!何かあったら何でも言ってください!佐世保鎮守府は全勢力で協力しちゃいますから!」
明るい声でそう言って、見えないはずの磐城の提督へキメ顔ポーズを送る
「それではっ!バァァアーニィンッ!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
「…そこで気を失ってから……気がつけばここに入院していました…これが…私の…私達の…お話です」
昭和95年11月
日本国海軍北陸支部管轄、海軍特別治療院
病衣を着てベッドに座る天龍は声を震わせながらそう話を締めくくる
黙って話を聞いていた浜田も、眼に涙を浮かべながら彼女の手を強く握り、松本も壁の方を向いて鼻をすすっている
「…結局私は誰も護れませんでした…それどころか、私自身の保身の為に仲間をも見捨てた…最低の女です…」
天龍は浜田から握られていた手をほどき、自身の両肘を掴み震える
「…ふ…ふふ…情けないことに…たまにあの時の感覚に襲われるんですよ…身体が熱くなり…感情が昂る…ふふふ…私はもう終わっています…身も心ももう既に艦娘のそれとは言えませ「ああ…ありがとう…話してくれて」
天龍の言葉を遮る浜田。天龍は浜田の顔を見上げる
「…辛い記憶だよね…本当にごめん…でも、ありがとう…話してくれて」
浜田は優しく笑顔を天龍に向ける
「…浜田…さん…」
「…あんたのお陰でようやく真実がわかったよ…」
その浜田の言葉を聞いて少し俯く天龍
「…でも、ここに来てからその話をしても…誰も信じてくれなくて…」
「…たしかカルテには妄想癖もある、って書いてあったわねぇ…」
宇崎のカルテを覗き見した時の内容を思い出した松本が呟く
天龍はあはは、と力なく笑う
「…ええ。私の言ったことは全て妄想…私の作り話と言う風に言われま「んな紙切れの書いてあることだけが真実じゃねぇだろ」…え?」
またもや天龍のネガティブを指で弾いたのは浜田だった
浜田は天龍の頭を優しく撫でる
「…この娘は嘘は言ってない…嘘なもんか…」
「…ふふ、そうね…失言だったわ「まじでな、次くだらねぇこと言ったらキンタマをチャッカマンであぶっからなクソハゲ」
うう、と松本は両ひざをきゅっとしぼめ、股関を守る
「…」
漫才のような二人のやり取りをみて天龍も驚く
「…信じて…くれるんですか?…こんな私の…話を…」
「ああ、勿論よ…その話が聞きたくてここにきたんだからね…」
よし、と浜田は椅子から立ち上がる
「…貴女…ほんといい娘ね…わたしが提督だったらソッコー鎮守府に呼んじゃうわ」
浜田が笑顔でそう言うと、天龍も恥ずかしそうに顔を赤く染めて、彼女から眼をそらす
「…わ、私も…貴女のような…ちゃんと話を聞いてくれる提督と…出逢いたかった…」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
様々な話を聞いた後
よし、と手荷物をまとめる浜田と松本
天龍は変わらずベッドに座っている
「…んじゃあ…また来るよ。わたしも貴女と仲良くしたいしね」
「…んもぅ…なら、それまでには免許の1つでも取っておいた方が「うっせ!お前はアッシーだアッシー!」
ばし、と松本の尻を蹴る浜田
「…ふふ…わかりました…またお会いしましよう…」
二人の不思議な関係を見て小さく笑った天龍がそう返す
「…」
そんな天龍の顔を見て、浜田はドアノブに手を振れたまま何かを考える…
「……貴女の仲間…生きてるよ」
「…え」
浜田は眼鏡をくいっと上げ、天龍の眼を見つめる
「…サマールで筑後の特殊部隊に保護されたのは二人…軽巡洋艦天龍…そして駆逐艦潮…」
「…うし…お…」
潮…
あの日共に出撃した捜索部隊の一人…
大切な姉妹艦達を助けるために声を上げた駆逐艦の一人…
「…潮……潮…」
当時の彼女の姿を思い出し、ポロポロと涙を流す天龍
「…生きて…た…生きてて…くれた…」
そんな天龍の姿を見て、浜田は続ける
「…流石に保護されて今どこにいるのかはわからないけど…間違いなくあんた…いや、貴女と共に救出されてるわ」
「…あ、あの…ありがとう…でも…どうしてその事を私に…?」
浜田は頭をポリポリとかきながら、「んー」と考え、そんな彼女を横目にふ、と笑う松本
「…わかんないけどさ…なんとなく…かな…」
はにかんだように笑う浜田の表情
天龍は何か意を決した様子で拳をぐ、と握る
「……浜田さん…いえ、浜田少尉…お尋ねしたいことがあります…」
「…なんだい?」
浜田は天龍と合った眼をそらさない
「……貴女にとって…艦娘とはどういった存在なんですか?」
浜田と松本は天龍の質問に眼を丸くする
しまった、とすぐに後悔する天龍
初対面の人間に返答しずらい質問をしてしまった、と
「…あ、いえ…その…浜田少尉達が…私のためにそのようなことをわざわざ教えてくれる…って…その…えぇと…「わたしにとって艦娘はね」
顔を赤くした天龍はまさか自分の質問に答えようとしてくれた浜田の目を再び見る
「ヒトと同じだよ」
「…え」
浜田は持っていたコートを持ち直して髪をぽりぽりとかく
「…兵器だ、物だなんて言うやつもいるけどさ…わたしにとっては艦娘は感情も記憶も魂もあるヒトだよ…わたしと同じように飯も食うし、糞もする…イラつくこともありゃ泣くこともある…誰かを想って想われて…人間と同じでしょ」
「…人…」
予想だにしていなかった浜田からの返事を聞いて肩の力が抜ける天龍
「…あー…まぁそりゃあ、海に浮けたり大砲や零戦はわたしも飛ばしたりは出来やしないけどさ…それを差し引いても貴女達艦娘は…人間とほぼ同じだと思うけどね?」
うん、と、頷く浜田
「…まぁ、ほぼ同じっていった意味に関しては…貴女達艦娘は良くも悪くも人間の影響を受けやすすぎるってとこかな?…ね?松本中佐」
突然振られたにも関わらず、松本もふふふ、と口元を手でかくしながら笑い
「…そうねぇ…それだけ感情が…心が透き通るほど綺麗ってことなのかしらね?…人間の方が真っ黒で汚いからねぇ…」
「…欲にまみれた人間と一緒とは思えないからさ…だから、わたしにとっては艦娘は人間一歩手前のヒト、って訳よ」
「……ひと…」
人、と言われ、天龍は不思議な感覚になる
はじめて言われた言葉…
いや、尾張の前にいた鎮守府ではそれなりに大切にされてはいたが、自分を人とほぼ同じ、と言われたことは流石になかった
故に浜田の言葉は今の天龍の心に深く印象に残った
「んじゃ、また来るからさ…今度はなんか最中とか持ってくるよ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
特別治療院前
天龍の話をまとめ終えた浜田と松本が特院を出たのは日が沈み始めた時刻、松本が車を取りに行き、浜田と宇崎二人でロータリーで待っていた
「…あ、ええと…もうご用件はよろしいのですか?」
宇崎が恐る恐る浜田に問うと、浜田は一瞬だけ宇崎に睨み、すぐに笑顔を作る
「…ええ。お陰で十分な情報を頂けましたから」
「…そ、そうですか…」
宇崎は内心ほっとしていた
てっきり特院の不正を暴くために浜田達が来たと思っていたので、一人の艦娘と話すだけで用事が済むとは思っていなかったからだ
「…では次回はいつご「ああ、また来る時は前もって連絡させて頂きますからご心配なく」
張り付けたような笑顔を崩さない浜田
そうこうしていると、松本の運転する黒塗りの車がロータリーに入ってくる
後部座席の扉を空ける浜田
中佐が運転し、少尉が後部座席…
奇妙な関係だな、と宇崎は眉を寄せる
「それではご協力感謝します。寒川理事長によろしくお伝え下さい。失礼します」
「…はい…お疲れ様でした」
浜田が宇崎に敬礼すると、宇崎も敬礼を返す
敬礼を解くと、浜田はにこりと笑い、車に乗り込む
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
特院から出発し、正門を抜ける
相変わらず特院の壁は高いな、と松本は考えながら、左耳に手を当てる
「(…これは…くるわねぇ…)」
内心ため息の松本に対して後部座席に座る浜田は煙草を一本取り出し、口に咥える
そしてライターで咥えた煙草の先端をちりちりと燃やす
煙草に点火されると、浜田はすぅ、と煙を吸い、肺に入れ…
「…ふぅー…」
後部座席から運転席の方へと、煙草の煙を吹きかける
これぐらいでは松本は怒ることはしない
変わらず左手を自身の耳に当てたままその時を待つ
浜田は一口だけ吸った煙草の火を素手で握り潰し、大きく息を吸うと…
「っだぁぁああああ!!!くそっちくしょぅうがぁっぁあああああ!!!!」
怒り爆発
「なんだっつんだよ!くそったれが!!提督に売られただとぉ!?松平のクソビッチのアバズレゴミクソブス女がっ!くそっ!くそくそっ!!」
がんがんと助手席を蹴り上げる浜田
松本は左耳から手をはなし、煙草の煙をを追いやるため運転席側の窓を少しだけ開ける
「…落ち着きなさいなまりんちゃ「落ち着いてられるかぁぁぁああああ!!!」
しゅばっ、と浜田は運転する松本の肩を掴む
「クソハゲ!携帯電話貸せ!」
「…えー?…どこに掛け「いいから貸せってんだよ!」
はいはい、と松本は前を向きながらしぶしぶ自分の携帯電話を浜田に渡す
携帯電話を受け取った浜田は高速でボタン操作し、どこかへ電話をかける
「…おう!クソガキ!わたしだ!」
『…おいおい…開口一番なんすか?…喧嘩売ってんすか?』
電話相手は東海支部、第四資料室の新人青年だった
「うるっせぇ!酒買ってこい!ビール!焼酎…だぁー!もうなんでもいい!すぐ酔えるやつ!」
『いや…買ってこいって…意味わかんねーし…っつかあんたら朝から来てねーすけど、どこいんす「うるっせぇ!五秒で買ってこねぇとてめぇのちっせぇタマ引きちぎって#自主規制それから#自主規制したあと#自主規制すんぞごらぁぁあああ!!」
『…ざ、ざけんな!おまっ…なんちゅーこと言ってんだ!クソアマ!』
「うるせぇクソ童貞が!」
浜田と、青年の漏れてくる声を聴きながら松本はふぅ、とため息
「(…いやねぇ…お下品な会話…っていうか毎回毎回2人とも仲いいわねぇ)」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「…ふー…ちょっとスッキリしたわ…」
電話を終えた浜田は窓の外を眺めながら呟く
「…まりんちゃん…あんまり田中ちゃんいじめちゃダメよ?」
「……う、わ、わかってるわよ……ちゃんとお土産買ってってやるし…あ、別にあいつのためじゃないし!」
浜田のツンデレ養分を採った松本は再び真面目な顔つきで
「…で?…これからどうする気?」
バックミラー越しに浜田に問いかける松本
「…とりあえず加藤少将に報告はするわ…んでもってそのあと西海支部でアバズレ松平引き落とすために証拠集める…それとは別で赤松のアホ提督の事も調べてみる…昔からキナくせぇ野郎だとは思ってたけど、港湾棲姫とレ級が生きてるのに討伐完了とか嘘こいてるし、そいつらが人体実験やってるとか赤松のアホが関わってるに間違いないからねぇ」
「…赤松中将……そうね…最悪レ級…いえ、深海棲艦上層部と繋がってる可能性高いわねぇ…でもまさか…人体実験とは…」
「…そもそも松平のクソ女の報告書には『大事な主力艦隊が敵に誘拐されちゃいました、うふ』程度にしか書かれてないし、討伐、追撃作戦に参加した各艦隊の報告書はビリラン島、海上戦の事は書かれててもサマール島の件は全く書かれてなかった…筑後の報告書でようやくサマール島で艦娘への虐殺行為があったと書かれてたけど…」
うん、と松本は頷く
「…レイプや暴力に関しては知らなかったんでしょうね…筑後の部隊が入ってくる前に佐世保のボクちゃんが勝手に暴れたから…」
どん、と助手席のシートを蹴る浜田
「…余計なことばっかしやがって…!正義バカよりも先に筑後がサマール島調査してりゃあ…あの人等ならちゃんと…上手くやってくれるのによ!」
浜田は舌打ちをして再び窓の外へ視線を向ける
「…十字架に張り付けられた死体、大鍋の死体、バラバラになった手足…壁に打ち付けられた死体に血溜まりの槽…報告書を読んだ時はヒドイ拷問があったのね…と思ってはいたけど…」
「ああ、天龍の話を聞きゃあ拷問部屋に処刑部屋…陵辱部屋に強姦部屋もあるってんだから胸糞悪いわ…」
松本は眉間に眉を寄せる
「…そんな地獄にいた天龍ちゃん…よく耐えたわよね……今日嫌なこと思い出させちゃって…大丈夫かしら…」
松本の問いに眉をしかめる浜田
「…わからない…でもわたしはあの娘を信じるよ…あの娘は…弱くない」
ふふ、と松本は笑う
「…まりんちゃん安心して、報告が終わったあとは西海支部に行くから…そうすればまた特院に来れるわ…きっとすぐに天龍ちゃんと会える」
「……ああ。そうだね…あ、そうだ…加藤少将に言って天龍退院させてさ…うちら第四の担当艦やってもらおうよ?絶対楽しくなるって」
「あら、いいわね、それ…」
「よっしゃ決まり!んじゃすぐ帰ってちゃっちゃと手続き済ますよ!ほら!時速200キロで帰るよ!」
「…はいはい…ふふふ」
浜田は座席に腰深く座り、窓から空を見つめる
「…あー…天龍ともっと話したかったんだけどなぁ…」
浜田と松本の乗る車は関東へと向けて進む
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇ ◇
同日 夜
薄暗い特院の通路を懐中電灯片手に歩く茶髪のちゃらついた男性職員が一人
「…ふふ~ん…ふ~ん…」
鼻歌交じりで廊下を巡回する職員はとある部屋の前で足を止める
「…」
その部屋は天龍の病室である
男性職員は鼻息を荒くしてベルトにつけられたカードキーを手に取る
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『ピッ…ピピッ……カチャ…』
静かに開かれる天龍の病室の扉
「うひひ…おじゃしましゅよ~っと…」
ちゃらい職員は病室の中をこっそりと覗く
消された電気
静かに鳴っている空調
日中、浜田達と話していた少女はベッドで横になっている
「…へへ…」
ちゃらい職員は忍び足で寝ている天龍に近づく
ベッド横まで来ると、鼻の下を伸ばしながら天龍の顔を覗き込む
「…さぁて…今日もよろしくお願いしますよっと…」
ちゃらい職員はカチャカチャとズボンのベルトを外し、ズボンを脱ぐ
「…おっと…忘れてた」
脱ぎ捨てたズボンのポケットからコンドームパックを取り出す
「…へへ、ガキなんか出来たら面倒くせぇからな…」
実はこのちゃらい職員は、夜な夜な巡回する片手間、天龍や発育のいい女性の入院患者の部屋に入ってはいたずら行為をしている職員である
ぎし、と天龍の寝ているベッドに乗り上げるちゃらい職員
「…んじゃあ、頂きまー…」
布団をゆっくりとめくり、彼女の病衣に手を掛けようとしたとき、ぱちりと目を開ける天龍
「…ぉ、あ?…ぐぇっ!」
ちゃらい職員の下半身に激痛が走る
天龍に馬乗りをしようとした、ちゃらい職員の下半身…主に睾丸部分を片手で強く握る
「…やっ…やめひぇっ…んぎゅぅぅううう!」
痛みに顔を歪ませて情けない声を出すちゃらい職員
天龍は更に握力を強くする
「ぎゃうっ…いっ…いだっ…ちゅ、ちゅぶれりゅっ!ぐゅゆっ!」
だんだんと怒りの表情になっていく天龍
彼の睾丸を握る手は更に強くなる
そして…
ぶちゅっ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
前のはだけたままの天龍は、気を失い床に倒れるちゃらい職員の脱ぎ捨てたズボンのベルトから、鍵、そしてカードキーを手に取る
「…行かな…きゃ…」
病室から通路へ出た天龍は、左右を確認し、裸足のまま出口を求めて歩き出すも、ばっ、と懐中電灯の光を当てられる
「…!」
「おい!そこで何をしている!」
どうやら別の職員に見つかったようだ
天龍は職員とは逆の方向へ走っていく
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ぱ、ぱ、ぱ、と特院ステージ2の通路に設置されたライトが赤く面滅しだす
どうやら天龍が病室から逃げ出したことが監視部屋の者達にばれたようだった
「…行かなきゃ…」
天龍は息を切らしながら通路を走り、前方に職員の姿を確認すると、階段を上る
「…行かなきゃ!」
階段を上がりながら思い出すは浜田の言葉
『駆逐艦潮は生きてる』
「…会いに行かなきゃ!…潮…ちゃんに!」
生きているなら会いたい…
会って謝りたい…
何があったのかを聞きたい…
龍田はどうなったのか知りたい…
様々な思いが天龍の中を駆け巡る
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
特院 ステージ2病棟 屋上
夜空を満天の星々が輝く
天龍は屋上の貯水槽の陰に隠れている
「…う…どうしよう…どうしよう…」
勢いのまま屋上へ来てしまった天龍
病室から出ることのない天龍には特院の通路はまさに迷路。さらに巡回の職員もいたため思った場所へと出れなかった故である
ぱ、と懐中電灯の光が再び天龍に当てられる
「見つけたぞ!こっちへくるんだ!」
「…う…」
屋上の出入口を固めていたのは6.7人の男性職員。じりじりと天龍に距離を縮めてくる
「…くっ…」
病室に戻されればヒドイことをされる…
そう思った天龍は貯水槽裏の金網フェンスをよじ登る
「…お、おい!待て!」
職員の声を無視し、天龍がフェンスを越え、屋上ギリギリまで進む
ここは4階だ。一本足を踏み外せば御陀仏である
真下に見える地面を見て、震える天龍
そこへフェンスを上ってきた一人の男性職員が近づいてくる
「だめだ!それ以上はあぶない!」
「…こ、こな…来るな!」
天龍は叫ぶ
「…ま、またわた…オレを嬲りものにする気でしょう!?…もうそんなの嫌だ!…嫌だ!」
天龍は震える声でそう訴えると、男性職員は首を横に振る
「そんなことしない!…大丈夫だ!…約束する!」
近づいてくる男性職員は優しく、諭すようにさらに近づく
「…う…うう…」
もう手の届く距離
男性職員の手がゆっくりと天龍の頬へと近づく
約束だ、と言った職員の言葉にほんの少しだけ気を許した天龍は職員の顔を見る
するとその時、夜空に浮かぶ月の光が天龍と男性職員を照らす
職員の顔を見た天龍は戦慄する
「…さぁ、戻ろう?」
優しい声で自分に触れようとしている男性職員…
それはあのちゃらい職員と同じく、いつかの夜に、寝ている自分をイタズラしに来ていた男の一人だった
「…いやぁっ!」
ぱしっ、と伸ばされた男の手を払いのける天龍
瞬間、優しかった男の表情が一瞬で鬼のような表情に代わり…
「…このクソ女がっ!」
かっとなった男は、はたかれた手で天龍の顔を平手打ちする
「…あっ…やべっ…」
平手打ちが強すぎたためか、叩かれた天龍はバランスを崩し、屋上の縁から足を踏み外す
いかに艦娘と言えど、その身一つで空を飛ぶことはできない
少女は地面に向かって落ちた
『バシンッ』
何かを打ち付ける音が夜空に、病棟の壁に響き、平手打ちした男の職員はいそいそとフェンスを登って仲間の元へと戻っていく
「お、お前!なにやってんだよ!」
「いや、つい…いらっとして…ど、どうしよう」
「いいか!オレらは何も見なかった!明日の朝までシラをきりとおすぞ!」
「ああ、それがいいって…」
「それよりも抜け出した病室でアイツ気ぃ失なってんだ!早く手を貸してくれ!」
少女の事など最初からいなかったように、何もなかったかのように、職員達は屋上を後にした
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
特院 中庭
ステージ1からステージ4の病棟で四方を囲われた中庭の花壇
4階の屋上から落ちた天龍は、右足が曲がり、左脇が破れ、臓物が花壇のレンガに飛び散り、後頭部からも脳が飛び散っている
辛うじて息はしているがその感覚は短く、眼は虚ろ
「…は…は…は…は……み…ん…な……」
「(…ごめんなさい…)」
ごほっ、と口から血を吐く
「(誰も守ることができなくて…)」
「…ご……なさ…ぃ……」
仲間への想いを抱き抱えたまま事切れる少女
彼女の亡骸を、月の光だけが優しく照らしている
はい
バーニング笑
リクエストを元に作りました、艦娘捕虜モノでございました。
なかなかに書き応えといいますか…色々考えながら書かせていただきました。ネタ提供、ありがとうございました
本当はもっと各部屋での色々なエピソードがあったんですが、私の力ではこれが限界かと…はい、精進します
レ級、軽巡棲鬼、港湾棲姫のトリオは書いていて面白かったですね。もちろん3人とも生きてます。次回の登場にご期待ください
天龍や、天龍達を売った松平提督がどうなったのか…後日談にて説明させていただきますので、そちらもお待ちください
さて、次のお話…
『短編4本やるよー』と公言してはいたんですが…
そろそろ本編進めないとアレだなと思いましてですね…
次の短編祭りで書かせていただきます
…と、いうことで次のお話から本編戻ります
一体例の鎮守府には何人の艦娘が集まりましたかね?笑
では次回もどうぞよろしくお願いします
あ、ついでに表紙描き直してみました、第四資料室の雰囲気を知ってもらえればと思います。