大本営の資料室   作:114

79 / 111
はい

松井准将に次いで田中中尉の過去のお話となります。

ではどうぞ


File76.少女達のプレリュード

 

 

『…じゃあ、健二と春菜を頼むよ…』

 

『…ええ。あなたも……お元気で…』

 

 

 

 

それが最後に聞いた親父の声だった…

 

俺の両親は、俺がガキの頃に離婚した

 

 

いや、別に親父が浮気したとかじゃない…

 

 

 

…うん、もう親父の事は全然覚えてねぇんだけど…

 

…あー…映画好きだったのはうっすら覚えてんな…

 

ゴーストバスターズとか、レイダース、ターミネーターにグーニーズとか…

 

星の王子さまニューヨークへ行くもそうだな

 

まぁ所謂80~90年代の洋画だな

 

 

…親父の影響だったのか、俺もよく視てた…

 

 

は?…なんで覚えてないのに映画好きなのがわかるのかって?

 

 

 

…あるんだよ

 

家にVHSが…腐る程

 

 

 

…と、まぁ結局、親父のことを母親に聞いても全然教えてくれなかったな…

 

別にどうでもいいけど…

 

 

で、だ…親父は海軍の人間らしくてな…離婚した後でもなんか…助成金?みたいなのが軍からうちへ送金された

 

だから母子家庭となった俺達は…まぁ、そこまで不自由のない…所謂普通の生活ができたわけだ

 

 

何年かしてから、中学を卒業した姉ちゃんが海軍へ入った

 

 

入ったっつーか…あれだ、海軍士官学校っつーとこへ行った

 

 

それから姉ちゃんからはたまーに連絡が来るくらいだったな…

 

親父からは勿論連絡なんてなかった

 

 

…んで、俺も中学を卒業と同時に、姉ちゃんと同じ道に進んだ…

 

 

…まぁ、別に行きたい高校もやりたい仕事もなかったからな…

 

 

母さ…いや、お袋からは"やっぱりお父さんの子だね"とかって泣かれたけど…

 

 

 

士官学校では…

 

あー……うん、あんまりいい成績は残せなかったな…

 

 

並……よりもちょっとだけ…僅かに…そう、僅かに低かったくらいだ

 

本当だ

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

昭和93年 春

 

 

東海支部、会議室の1つに二人の若い士官が並び、敬礼する

 

 

「…田中健二少尉。参りました!」

「同じく坂本淳少尉、参りました」

 

 

田中健二少尉23歳

 

士官学校卒業後、東海支部着任となった青年尉官。明るく、わりとポジティブな友人想いの青年。今から約6年後、第四資料室に就くことになる

 

 

坂本淳少尉23歳

 

田中と同じく、士官学校卒業後は東海支部に着任。細身で若干ミステリアスな雰囲気の眼鏡青年

 

 

 

「…うむ、直りなさい」

 

 

若い二人の前に立つは、つり上がった細目の中年将校だった

 

 

 

吉津根(きつね)中将

 

日本国軍海軍、東海支部勤務

 

他の将校達よりも若く、40台前半のインテリ将校で、なかなかのやり手。自分がのしあがるためには手段を選ばない野心家と噂される。

 

 

 

吉津根は眼鏡をくいっ、と上げる

 

「…君達、東海支部に就いてどれくらいかな?」

 

 

静かに問うてくる吉津根に敬礼するは田中

 

「は!3年目です!」

 

「…君は?坂本少尉」

 

 

次いで坂本も敬礼

 

「は!私も3年目となります!」

 

 

ふむ、と吉津根は執務椅子に深く座る

 

 

「…実はね…君達二人に担当してもらいたい案件があるんだ」

 

 

朗らかにそう話す吉津根の言葉を、気を付けの姿勢で聞く二人

 

 

「…ふふふ。なに、そんな緊張しなくてもいいよ…二人には、とある海軍基地をお願いしたいんだ」

 

 

「…か、艦隊…」

「…運用…ですか…?」

 

 

緊張して顔を強ばらせる二人はそれだけ返すと、吉津根はうん、と小さく頷く

 

 

「…実はその海軍基地はしばらく提督不在のままでね…現地の艦娘に任せっきりではあったんだ…でも、いつまでも責任者のいない基地なんてあってはならないからね…そこで今回、若く力もある君達二人でその基地を管理してほしくてね」

 

 

「…は、はぁ…」

 

「…管理…ですか…」

 

 

吉津根は笑顔を崩さない

 

「…そこは東海支部直下ではないけれども…うん、その若さで海軍基地提督…君達にはいい経験、勉強だと思うんだけれども…どうかな?」

 

 

田中と坂本は内心冷や汗を流す

 

"どうかな"とはなんとも嫌味な言い方だ…

相手は中将…「いや、お断りします」だなんて口が裂けても言えない

 

観念した田中が口を開こうとした時だった

 

 

「…き、吉津根中将…私と田中少尉は現在鈴木中将より教えを賜っています…今回の件を鈴木中将はご存知なのでしょうか…」

 

 

「(おお!よく言った坂本ー!って、あんまお前と話したことなかったけどー!)」

 

内心ガッツポーズの田中

 

うん、と吉津根は笑顔で頷く

 

 

「…勿論問題はないよ。これは僕や鈴木中将よりと上…勅令…程ではないけれども、上からの命令だからさ。鈴木中将もわかってくれるよ」

 

「…」

「…」

 

一瞬の沈黙、坂本は吉津根に敬礼し、田中も倣い敬礼

 

 

「坂本少尉、了解致しました」

「…田中少尉、了解。ご命令ありがとうございます!」

 

 

坂本と田中の返事を聞いた吉津根は細かった目を更に細め、執務椅子から立ち上がり、二人に敬礼

 

 

「うむ、では後を追って詳細を伝える。以上」

 

 

「は!失礼します」

「は、失礼致します」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

田中と坂本が出ていって2時間後、吉津根の執務室の扉が勢いよく開く

 

 

「吉津根!…てめぇどう言うことだ!」

 

 

扉を開け、部屋に入ってきたのは鈴木中将と、その秘書艦、駆逐艦若葉だった

 

 

荒ぶる鈴木に対して、吉津根は驚く素振りを見せることなく執務椅子に座って悠々と資料を見ている

 

 

「…騒々しいですな。鈴木中将…なにか御用ですか?」

 

「御用だぁ!?このやろうが!戻ってきてから聞きゃあ、てめぇ俺がいねぇ間にうちの若い奴らを勝手に異動させようとしてるみてぇじゃねぇか!どういう了見だ!」

 

「…落ち着くんだ。提督」

 

 

荒ぶる髭将校を止める若葉

 

小さな相棒のお陰で息を整える鈴木

 

 

「…させようと、ではありません。もう手続きは終わりましたよ」

 

 

吉津根はにこりと笑い、執務椅子から立ち上がると、眼鏡をくいっと指で上げる

 

 

「…いやはや…ですがまさか鈴木中将抱えの者とは気づきませんでしたなぁ…いやー失敬失敬…」

 

 

吉津根はわざとらしく振る舞い、わざとらしく、嫌味っぽく謝罪する

 

 

「…播磨の件はてめぇが命令されたことだろうが!…てめぇの部下を使え吉津根!」

 

 

「…いやいや…"あんな"場所に僕の大切な部下を送るつもりは基から無くてですね…適当な若い士官を選んだつもりでしたが……申し訳ありません」  

 

ぴくぴくと血管を浮き上がらせる鈴木

 

申し訳ないと言いつつも人をバカにしたような態度の吉津根にイラつきのゲージは真っ赤だった

 

 

「…まぁそうですね…彼等があなたの教え子であるならば、今回の播磨の件は貴方にお譲りしますよ…うまく行けば貴方も大将だ。ははは」

 

 

吉津根はそう言って笑い、執務室扉の方へと向かう

 

 

「…そんな簡単に上からの命令を他の人に譲って良いの…ですか?」

 

 

拳を震わせる鈴木の背に手を当てながら、吉津根にそう問う若葉

 

彼女に問われた吉津根は、ふははと笑う   

 

 

「…上からすれば誰がやっても同じ、ということですよ…別に命令を断る訳じゃあない…命令違反ではないでしょう…それに…僕は僕で他にやることがあるので…ああ、上には僕から上手く話しておきますよ。…じゃあ頼みましたよ?鈴木中将」

 

 

それだけ言うと、吉津根はコート掛けに掛けられたコートを手に、執務室から出ていってしまった

 

 

「…くそったれが!!」

 

 

吉津根がいなくなると、鈴木は執務室の壁を拳で殴り付ける

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

東海支部 食堂  1900

 

 

遅めの夕食、ほとんど人のいなくなった食堂…

 

4人掛けのテーブル席で、しょうが焼き定食をもそもそと食べる田中

 

 

 

「…失礼、お隣よろしいですか?」

 

「…うん?」

 

 

咀嚼しながら声がかかってきた方を見ると、先ほど吉津根の執務室に田中と共に呼ばれた眼鏡の青年が、定食のトレーを持って立っていた

 

 

「………坂本…少尉か…ああ、どうぞ」

 

「ありがとうございます。田中少尉」

 

 

礼を言って、田中の向かいの席に座る坂本

 

 

「…あー…あれっすね…こうやって話すのは初めてですね」

 

「…そう、ですね…けれど、僕の方はあなたのことは存じてますよ。田中少尉」

 

 

「…へー…え?なんで…っすか?」

 

田中の箸が止まり、顔を上げる

 

はて…例え顔は知ってても話すことなんてなかったのに、と…

 

疑問顔の田中に対して、坂本はにこりと笑う

 

 

「…ええ、鈴木先生よりお聞きしていたんです…お父様もお姉さまも…揃って海軍だと…それで印象に残ってしまいましてね…」

 

 

「…あー…そっすか…まぁ、あんまり父親のこと覚えてないんですけどね…はは」

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「…はぁ!?……同い年…だったんすか…」

 

 

 

食べ終えたトレーを返却口に置いた田中が驚愕

 

坂本はあはは、と苦笑い

 

 

「…てっきり分かっているものだと…」

 

「…あ、いやー…あはは…」

 

 

田中も苦笑いを返しながら坂本を見る

 

同世代とは思えない落ち着き方、知的な見た目…

 

 

「(…真面目そうな奴だよな…俺やってけんのかな…こいつと…)」

 

「…ええと、何か?」

 

 

坂本がそう一言返し、なんでもないと言おうとした時だった

 

 

 

「なぁぁあんでさー!!頼むよぉー!おばちゃーん!」

 

 

食堂に女性の悲痛な声が響く

 

 

「…ん?」

 

 

注文口のカウンターを見れば、髪の長い女性士官が食堂のおばちゃんの腰にしがみついていた

 

 

「ダメなもんはダメだよ!…もう無くなったんだから」

 

「…そこをなんとかぁー!」

 

 

 

返却口から女性を見ていた田中が呟く

 

「…なん…誰だ?…あれ…」

 

「…?…さぁ…」

 

 

 

「…ん!?」

 

 

おばちゃんにしがみついていた女性は何かの匂いを察知したのか、しゅばっ、と勢いよく田中の方へと顔を向ける

 

 

「…うわ…」

 

「…こっち…見てますね…」

 

 

女性がおばちゃんから離れ、田中と坂本の方へと高速で近づいてきた

 

 

「…うわぁっ!…な、な…なんすか!?なんですか!?」

 

 

坂本は尽かさず女性の襟章を見る

 

 

「(……少尉?…けどなんか…デザインが…)」

 

 

女性は田中の肩に腕を回す

彼女からはほんのりと甘い香りがした

 

 

「…ちょ、ちょっ…なんですかなんですか!?」

 

「…おだまりよボクちゃん…文月じゃないんだからさ…」

 

 

女性は田中の耳元で囁くように、少し艶のある声を出す

 

 

「(なんだよこの人!…なんかエロい!)」

 

 

漢、田中

 

…23歳の男子。

大人の女性の色気に手も足もでなかった

 

 

「…ボクちゃんさ…もしかして…しょうが焼き定食…食べた?」

 

「…は、はぃ?」

 

 

「…た・べ・た?」

 

 

ああ、もう駄目だ。

このまま楽になろう…と、田中は意識が溶けるような感覚に陥り…

 

 

「…た、食べま「なにやってるのよまりんちゃん」

 

「あいでっ」

 

 

女性の頭頂部に誰かのチョップが炸裂

 

 

「…ふぇ?」

 

 

田中が見上げると、筋骨隆々の色黒の佐官が立っていた

 

なんとなく襟章を見た田中は緊張し、女性士官に肩を抱えられたままにすぐに敬礼

 

 

「ち、中佐どの!」

 

しかし項垂れた女性士官は舌打ちをする

 

 

「…ってーな…なにす……るんですかー…松本中佐…」

 

 

にらみ返そうとした女性士官は田中と坂本の姿を見て、思い出すように言い直す

 

 

松本と呼ばれた佐官は咳払いし、田中と坂本に敬礼を返すと、女性士官をじっと睨む

 

 

「…浜田少尉、無意味に絡まないように…それに、しょうが焼き定食は売り切れみたいなので、別の定食を頼みなさい」

 

「…はーい」

 

浜田と呼ばれた佐官はチョップされた部分を擦りながら、田中に向き直り、ぽんぽんと肩を叩く

 

 

「…いやー…ごめんごめん…腹減っててさ…うん、ちょっとやりすぎたわ」

 

 

「…え、あ、いえ…」

 

しどろもどろな田中は、ある意味ラッキースケベを感じながら、敬礼をする

 

 

「…なんかすいません…先にたべちゃって…」

 

 

田中の謎の謝罪に、浜田はけらけらと笑う

 

 

「あっははは!…なんだよそれ…ああ、うん。そうだね~…今度会ったら私がなんか奢るよ」

 

「…は!ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

士官寮 2100

 

 

 

「…はぁ…」

 

 

食事を終えた田中は、士官寮の自分の部屋のベッドに寝転がり、天井をぼうっと眺める

 

 

「変な人達だったな…」

 

 

思い出すは食堂で出会った謎の佐官と尉官の二人

 

強面中佐と…

おばちゃんにしがみつく女性士官の姿だった

 

 

 

「…はは…あんなのが担当上官になったらなんて…想像もできないな…」

 

 

頭を横に振って、余計な思考を消す

 

田中と坂本の東海支部出発は三日後だ

それまでに基地運用や艦隊戦術の見直し等、様々なことをやらなければならない

 

 

「…よしっ…やるか!」

 

 

ベッドから起き上がった田中は手引き書とノートを取り出し、勉強を始める

 

 

「…どんな場所なのかはわからないけど…鎮守府の提督になるんだ…恥ずかしくないようにしなきゃだな!」

 

 

その日の夜

 

田中の寮の部屋の灯りは、深夜まで点いていた

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

東海支部より離れた繁華街の裏道

 

薄暗い路地に赤い提灯の光が灯っている

 

 

おでんの屋台、通称クロクマである

 

 

そんな屋台のカウンターでやけ酒を飲む中年男性が一人

 

 

 

「…っぐぁあー…親父ィ…もう一杯だ」

 

 

鈴木中将だった

 

顔を真っ赤にした髭将校は、空になったグラスを店主に差し出すと、店主は顔をしかめる

 

 

「…あんたもう何杯目だぃ?…いい加減身体壊しますよ?」

 

「…うるせぇ…とっとと酌みやがれ!」

 

 

店主は呆れ、首を横に振りながら日本酒の瓶を取り出す

 

 

「…あらあら…随分荒れてるわね」

 

 

掛けられた女性の声

 

鈴木がめんどくさそうに後ろを振り返ると、東海支部将校、山本大将だった

 

 

「…山本さんか…いつもの服装じゃねぇとただの品の良い婆さんだな…」

 

 

鈴木の冗談をふふ、と笑い、山本もカウンターの前の椅子に座る

 

 

「…親父さん。私にも一献頂戴」

 

「へぇ」

 

 

屋台のカウンターに並ぶ鈴木と山本 

 

沈黙を破ったのは山本だった

 

 

「…聞いたわよ。吉津根君に無理矢理部下を飛ばされたんですって?」

 

「…無理矢理じゃあねぇ…知らねぇ間に、だ…不確かな情報に掴まされんじゃねぇよ…」

 

「あら、失礼」

 

 

 

「おまち」

 

店主がカウンター越しに山本の前に熱燗を置く

 

「…酌した方が良いのか?」

 

「あら?してくれるの?」

 

 

鈴木は渋々山本のグラスに熱燗を注ぐ

 

 

「…今日はあのガキは一緒じゃねぇんだな」

 

「…潮のこと?…あの娘は私の部屋で今勉強中よ」

 

 

へ、と鈴木は鼻で笑う

 

「…学ぶことが多くて大変だな…大将の秘書艦ってのはよ…」

 

 

鈴木がそう呟くと、山本も屋台の提灯を眺め、ため息

 

 

「…あの娘は"空っぽ"だから…私から教えてあげれることは全て教えるつもりよ」

 

「…空っぽ…ねぇ……あんたといい、加藤といい…お人好しばかりで海軍の未来は安泰だな」

 

 

鈴木の言葉に山本はふふ、と笑い

 

 

「…貴方もね。鈴木君」

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

三日後

 

 

播磨鎮守府…兵庫県への移動は公共交通機関を使っての移動だった

 

 

 

新幹線のぞみに乗った田中と坂本は、二人並んで席に座る

 

 

「(…大阪で乗り継ぎがあるとはいえ…これから行く場所が兵庫…播磨鎮守府か……まさか新幹線乗るとは思わなかったな…ま、移動賃は経費だからいいけど…)」

 

 

田中は窓の外の景色を眺めながらぼんやりと考える 

 

 

「(…確かに食堂で会話した後も…まぁ、何度か会話はした…けどさ…)」

 

 

田中はちらりと隣の席の優男を見る

 

 

「(…そんなに特別仲良くもない奴と二人並んでの3時間…なかなかきついぜ…寝るか…)」

 

 

そう思い、腕を組んで目を瞑る田中

坂本はそんな田中をちらりと見て頷く

 

 

「…播磨鎮守府、どんなところなんでしょうね」

「…えっ」

 

 

腕を組んだままきょとんとする田中

まさか坂本の方から声をかけられるとは思ってなかったのだ

 

 

「…あ、ええと…わりと大きい…敷地とか…って言ってましたね…」

 

「僕、関東から出たことなかったので…少し楽しみなんですよ」

 

「…はぁ」

 

 

田中は意外だと思った

 

こんな真面目そうな奴が…異動先が"楽しみ"って…

 

「…意外っすね…坂本少尉って真面目そうな雰囲気だから…楽しみ、とか言わないと思ってましたよ」

 

「あはは…全然真面目なんかじゃありませんよ…」

 

 

そう言って坂本が笑う

 

そんな彼を見て、田中は初めて右手を坂本へと差し出す

 

 

「…播磨鎮守府…これから頑張りましょうね!坂本少尉!」

 

「…はい、こちらこそどうぞよろしくお願いします。田中少尉」

 

 

 

田中の差し出された右手を、優しく両手で握る坂本

 

二人を乗せた新幹線は、西へと進む

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

「…はぁ?…これ…なによ…」

 

 

「え?なになに?」

 

 

「…通達…山陽支部…から?」

 

 

「…げっ…」

 

 

「…あ、新しい提督だって…」

 

 

「…どうでもいいし」

 

 

「…そうね…だって私達には…提督なんて…もう必要ないもの…」

 

 

 

 

山陽支部直下、播磨鎮守府の少女達は、山陽支部より送られてきた新たに着任する二人の士官の書類を一目見ると、その書類をくしゃくしゃに丸め、ゴミ箱へと投げつけた

 

 

 

 

 

 





はい、早速不穏な空気が流れてますね。

田中と坂本…この二人がどうなるのか…播磨鎮守府の艦娘達と仲良くできるのか…




次回をご期待ください

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。