大本営の資料室   作:114

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はい

播磨編4話目になります。

ちょっとエッチなシーンがございますが、御容赦を…


それではどうぞ


※追記
大本営の資料室の合計文字数、遂に100万文字越えました☆
ぱちぱちぱち


File79.少女達のプレリュード④

 

 

1900

 

 

執務室

 

 

「…いやー…ごっそさんっと…」

 

「ごちそうさまでした」

 

 

赤城が持ってきた夕食を食べ終わった田中と坂本はソファーに深く座る

 

 

「…なんか、やっと執務室らしくなったな…」

 

「ええ…日中頑張ったかいがありましたね」

 

 

坂本はそう言ってあくびをかみ殺す

 

田中は執務机の上の書類を見る

 

自分が寝ている間に拾い集めた書類を坂本がある程度まとめてくれていたのだ 

 

 

「…なぁ、あとは俺の方でやるからさ…あんたも少し休んでこいよ」 

 

「…ええ?…いえ…そんな申し訳ないですよ…」

 

「いやいや、俺の方こそ休ませてもらったしさ…俺だって書類まとめるくらい出来るさ」

 

 

うーん、と坂本は少し考える

 

疲れで眠くなっているのは確か…ここは田中を信じるか、と頷く

 

 

「…では少しだけ休ませてもらいますね」

 

「ああ」

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇ 

 

 

 

 

執務室 2000

 

 

 

「…いって…」

 

 

執務椅子に座り、坂本が途中まで進めていた書類のまとめ作業を一人で行う田中は、昨晩殴られた顔の傷の痛みに襲われる

 

 

「…ったく…良いパンチだったぜ…まだ痛むし…」

 

 

鼻血はもう出ないが、その顔は青アザと腫れでまるで試合後のボクサーの様だった

 

 

「……しかし…」

 

 

傷を気にすることなくある程度まとめられた書類を見て田中は頷く

 

 

「…流石坂本…見やすいようにまとめてあんな…見習わなきゃだな…」

 

 

そう呟いていると、執務室の扉がノックされる

 

 

「…!」

 

執務椅子に座ったまま、身構える田中

 

「(赤城か?…いや、食器類はさっき持ってってもらったし……金剛達か!?…まさかお礼参り?…やべ…どうすっか…)」

 

 

再びノックされる扉

 

 

「(いや、いやいや…金剛達ならノックなんかしないでメキシコのマフィアみてぇにどかどか入ってくんだろ…!…じゃあ誰だ?…は、初月か?…俺あんなメンヘラみてぇなの相手にできねぇぞ!?)」

 

 

『…失礼致します』

 

 

田中が返事をしなかったせいか、しびれを切らしたと思われる扉の向こうの女性の声が聞こえる 

 

 

「…また聞いたことない声だな…」

 

 

警戒しながら扉を見つめ、息を吐く

 

 

 

「…どうぞ」

 

 

覚悟を決めた田中は扉に向かって返答する

 

 

すると、扉がゆっくりと開かれ執務室に入って来る一人の少女

 

 

三隈だった

 

 

「……えっと……誰…ですか?」

 

初めて見る少女

 

ツインテール、童顔、身長から察するに駆逐艦かな?と田中は推測

 

三隈は執務室の扉を閉め、執務机の向こうにいる田中に深くお辞儀をする

 

 

「…初めまして、三隈と申します」

 

「あ…ああ…初めまして…田中…です」

 

 

三隈は頭を上げ、制服のスカーフをしゅるりとほどく

 

「…え?…なにしてんの…?」

 

「…昨晩は…大変無礼な行いをして申し訳ありません…」

 

 

ほどいたスカーフを床へ落とすと、三隈はゆっくりと田中に向かって歩き出す

 

田中は少したじろぐも、椅子からは立ち上がれない

 

 

若干腰が抜けつつあったのだ

 

 

 

「…ぶれい?…いや…なんの事かわからねぇな…っていうかなんでスカーフ取ったの?」

 

 

「…これは昨晩のお詫びだと思って…どうか…」

 

 

スカーフをほどくと、三隈はセーラー服袖下のファスナーに指を掛ける

 

その表情はまるで全てを諦めたかのようなそれだ

 

 

「…お詫びってなんの話だよ…っていうかなんでファスナー下ろしてるの?何してるの?」

 

冷や汗をかきながら椅子に座ったまま後ずさる田中

 

タイヤつきの執務椅子でよかったと僅かながら安堵する

 

 

しかし三隈は続けて上着のセーラー服を脱ぐ

 

彼女のお淑やかな2つの丘は、フリルのついた白いシルクが包み込んでいた

 

 

「…は?…ちょっ…待っ…!」

 

顔を赤くして両手をつき出そうとする田中だが、万が一彼女彼女のそれに触ってしまったら事だ

 

 

田中はすぐに真上に両手を上げる

 

 

「(ま、満員電車で痴漢に間違われないようにするには両手をつり革よりも上にあげる!そうすることによって冤罪の可能性を少しでも俺は何を考えてんだ!ここ電車じゃねーし!坂本!現実世界から夢の世界へ向けてお前にコールバックをかけるぜ!)」

 

 

顔を真っ赤にして両手を上げる田中を見て、若干首をかしげつつもトップとスカートのみというアダルトな格好になった三隈は執務机に乗り上げる

 

 

「…この三隈の身体1つで…昨晩の出来事を御容赦願えませんか…?…どうか…」

 

 

「いや、いやいやいや!だから…昨日はなにもなかったってんだよ!ほら!手ぇ上げてんだから!俺はなにもしないぞ!だからお前も…その…それ止めろ!」

 

 

田中は目を泳がしながら、椅子の上であたふたとするも、執務机を乗り越えた三隈はそんなことおかまいなしと田中の膝の上に向かい合うように座る

 

 

「…三隈…私では…駄目でしょうか?」

 

両手を上げる田中と向かい合わせになった三隈は困り顔で、上目使いに近い見方で田中を見つめる

 

 

「…ゃ…ち、近っ…やめろ…って…」

 

 

ここで田中に緊急事態発生

 

 

シャワー上がりの三隈から発せられた石鹸の香り…そして少し高めの体温

 

 

艦娘とはいえ少女。

 

そしてまだまだ元気な20代の…女性とはそこまで縁のなかった田中青年には、少女とのあまりにも近い距離感のせいでとある生理現象が起きてしまった   

 

 

 

 

 

「(鎮まれ!静まれ!!沈まれ!!!こんな時に何を考えてんだよ!…ナニも考えるな!そうだ!…あれだ……そうだ!ビキニ姿の鈴木先生を思い浮かべれば少しは「…どうかお願いします…」

 

 

腰を引きながら煩悩と闘う田中の耳元で囁かれる、妖精のような透き通る綺麗な声

 

 

「(や、こりゃ反則だわ据え膳食わぬは……いや!駄目だ俺!「失礼しまーす」

 

 

新たにもう一人の少女の声が聞こえ、執務室の扉が開かれる

 

男、田中のピンチを救ったのは…

 

 

 

 

「…な、なにしてるんですか?」

 

 

朧だった

 

顔の真っ赤な田中は、執務室入り口に立つ朧へ上げられた両手をぶんぶんと振る 

 

 

「お…おぼっ!…朧っ…さん!へぅ、ヘルプミー!!助けてくれ!」

 

 

朧に背を向けた状態の三隈は、彼女を睨む

 

 

「…邪魔をしないで頂けますか?…これは私と彼の事なので」

 

 

「………えっと…」

 

 

まるで男女の修羅場での彼氏側を追い詰めるような言い方をする三隈

 

 

 

朧はこの状況を考える

 

床に落ちているは三隈のスカーフ、そして上着

 

田中に向かい合うように座るほぼ半裸になった三隈

 

両手を必死に上げて泣きそうな顔の田中

 

田中に対して焦りの表情すらない三隈

 

 

 

うん、と朧は何かを理解、納得

 

 

「…三隈さん…その人から離れてください。赤城さんを呼びますよ?」

 

「…これは私なりのケジメのつけ方よ…貴女こそ何故ここにいるの?…執務室付近は近づくことは禁止されているでしょう「三隈さん」

 

 

三隈の言葉を遮り名を再び呼び、彼女を見つめる朧

 

一触即発かと思われた空気だったが…

 

 

「…いや、あの…まずちゃんと…話を…話し合わないか?…な?…頼むぜみくまさん」

 

 

田中の情けない声でその空気は打ち砕かれた

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

「…私は…昨夜貴方を殴った者の処分の取り消しをお願いしたくて来ました」

 

 

上着を着直し、執務机を挟んで田中と向き合う三隈

 

田中は顔に貼られたガーゼを朧に交換してもらっている

 

どことなく朧はご機嫌そうだ

 

 

「…いちち…処分もなにも…いや…だから昨日はなにもなかったんだよ…「ならそのお顔の怪我はどうされたんですか?」転んだんだよ…盛大に」

 

 

うん、と田中は頷いて視線をそらす

 

 

「…あれだ…あの…すげぇ……フィーバーに…」

「嘘おっしゃい…」

 

 

そう返す三隈の表情は真面目だ

 

ああ、これは下手な嘘は逆効果だな、と観念した田中はため息

 

 

「…昨日は俺らもずかずかとここに入ってきちまったからな…お前らの事をなんも考えてなかった…だからまぁ…殴られたのは仕方ねぇなって思っただけだよ…洗礼みたいなもんだ…だから殴ったやつをどうのこうのするつもりはねぇよ」

 

 

「…そんな嘘…誰が信じると?」

 

 

ぶへ、と田中は不貞腐れた表情になる

 

 

「…ならなんて言いやぁ信じんだよ…あれこれ言ったって全部嘘扱いじゃねぇか「…ほら、動いちゃ駄目ですよ」…はい」

 

 

朧に止められ、額に絆創膏を貼られる田中 

 

三隈は田中の返しに「む…」と一瞬怯むも、ばし、と執務机を叩く

 

 

「…って、逆ギレしないでください!」   

 

 

朧、田中の包帯替え完了

 

 

「…いや、逆ギレじゃねぇって…とにかく、昨日の件は俺も坂本も不問…っていうとちょっと違うけど…無かったことにするからさ…お前もそんな……変なことしようとするなよ…」

 

 

「…」

 

 

ふぅ、と田中は執務椅子に深く座る

 

先ほどまで抜けていた腰の調子も良いようだ

 

 

「……あとからあーだこーだ言わねぇよ…約束する」

 

 

田中はそう言って、少し恥ずかしそうに身体を窓の方へ向ける

 

そんな田中を見てくすりと笑う朧

 

三隈の表情はまだ暗いが、根負けしたのか、三隈もため息を吐く

 

 

「…わかりました…とりあえず…今日はそういうこと、と言うことにしておきます」

 

「え、なに…明日には変わるの?」

 

 

田中の申し訳程度の突っ込みを無視し、三隈は扉の方へ向かう

 

 

「…用件は済みましたから、私はこれで失礼します」

 

「ああ、お休み。三隈……さん」

 

「…"さん"はいりませんわ」

 

 

田中の方を向くことなく三隈は返す

 

そんな三隈の意外な返事に目を丸くしてふ、と笑う田中

 

 

 

「……ああ…お休み、三隈」

 

 

田中がそう挨拶すると、心なしかほんの少しだけ三隈は微笑んだように見えた

 

 

 

「お休みなさい」

 

 

 

そう返して三隈は執務室を出ていった

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

三隈が執務室から去って数分後

 

朧は使用済みの包帯やガーゼをまとめてゴミ箱に捨てていた

 

 

「…あー……ありがとな…朧」 

 

 

田中の一言を聞いて、朧は手を止めて首をかしげる

 

 

「え?包帯のことですか?」

 

「いや…それもそうだけど……さっきも助かった」

 

 

ああ、と朧は頷く

 

 

「…播磨は思い込みの強い人多いですから…気をつけた方がいいですよ」

 

「…ん」

 

ぱ、ぱ、とスカートのほこりを払った朧は扉の方へ歩く   

 

 

「…じゃああたしも行きますね」

 

「…ん?…あ、もしかして坂本の所行ってくれるのか?」

 

「…あの人の包帯は先に替えておきましたよ」

 

  

そっか、と返してじっと朧を見つめる田中

 

「…なんですか?」

 

「…いやさ…2日連続で世話してもらって…まじで悪いな…なんもお礼出来ねぇや…」

 

 

そう言って田中は窓の外に視線を変える

 

夏という季節もあって水平線の向こう側は夕刻を過ぎた時間にも関わらず、ほんのりとオレンジの線が見える

 

「…良いんです。お詫びもそうですけど、あたしが勝手にやってるだけなんで」

 

 

朧は窓の方を向く田中の背中を見る

 

 

 

「…ああ、それでもだ…ありがとう」

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

執務室 2030

 

 

お風呂上がりなのか、ほんのりと肌がピンク色の赤城が執務室へやってきた

 

 

「…何かあったんですか?」

 

 

 

なにも知らない赤城の鋭い質問に、いつも通りといった雰囲気の田中と坂本

 

 

「…うん?…なんにも?」

 

「…?…ええ。なにもありませんでしたよ」

 

 

田中が執務机で、坂本がもう1つの机で書類をまとめている

 

なにか違和感を感じる赤城は田中をじっと見つめる。田中は目を合わせんとさりげなく視線を避ける

 

 

「…制服…まだ着ていないんですか?」

 

 

田中へ問うと、書類の方に目を向けたまま田中は頷く

 

 

「ん…着るのは明日からだな…書類まとめんのもあとちょっとで終わりそうだし」

 

 

特に変わった雰囲気もなくそう返す田中

 

三隈の事や朧がまた来てくれたことを言えば必ず面倒なことになる 

 

 

そうなることをわかっている田中は"今夜はなにもなかった"ことを演じているのだ

 

 

「…そうですか」

 

 

 

その後、無事書類をまとめ終えた田中達はまる1日かけて執務室の掃除、整理を終えることが出来た

 

 

 

「…赤城さんも手伝ってくれてもよかったんだぜ?」

 

 

という田中の質問を、赤城は明らかな作り笑いで返す

 

 

赤城の笑顔を最後に、着任2日目は幕を閉じた

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

同時刻 艦娘寮 

 

 

 

 

「…えと…あの…三隈姉?」

 

 

鈴谷と三隈の重巡洋艦部屋、星が輝く夜空を窓からぼうっと眺める三隈に恐る恐る声をかける鈴谷

 

 

「…」

 

「…なにか…あったの?」

 

「………はぁ」

 

 

鈴谷が心配そうに声をかけるも、三隈は鈴谷の方を振り返ることなく外を見つめため息を吐いている

 

 

「…三隈姉!」

 

「…あ、え?…は、はい!?」

 

 

何度目か

 

鈴谷の呼び掛けにようやく反応した三隈はほんのりと頬が紅く見える

 

 

「…その…どうだったの?」

 

「あ、そ、そうね…ええと…」

 

 

"昨日のことは無かったことにするからさ"

 

 

田中の言葉が三隈の脳裏をよぎる

 

 

「…あの人は…あの人達は…鈴谷達の行いを咎めるつもりはない、と言ってたわ…だから解体されることもない…って…」

 

「…ほ、本当に!?」

 

 

鈴谷は緊張していたのか、肩のちからが抜ける

しかし当然の疑問が浮かぶ

 

 

「…でも…なんで……あんなに酷いことしたのに…」

 

「…俺達も勝手にここに入ったからだ、ってみんなの気持ちを考えなかったって謝っていたわ…」

 

「…」

 

 

鈴谷はなにかを考え込む

 

「…鈴谷」

 

「…え?」

 

「今日はもう遅いから…明日、私と一緒に改めて謝りにいきましょう?…許してくれるとは言ってくれはしたけど…やっぱりきちんと面と向かって謝罪するべきよ」

 

 

三隈は至極当たり前のことを言う

鈴谷も少しだけ迷いはしたが、うん、と頷く

 

 

「…うん、わかった……そう、そうだよね…悪いことしたら…謝らなきゃ…」

 

鈴谷は自身を奮い立たせるように拳を握る

その目元は少しだけ濡れている

 

 

 

「…色々とありがとう…三隈姉…」

 

「…鈴谷」

 

 

三隈は鈴谷の元へ立ち、それ以上なにも言うことなくただ優しく彼女を抱き寄せる

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

艦娘寮 駆逐艦のある部屋

 

 

深夜

 

 

 

明かりの消えた駆逐艦部屋の一室

 

ここ初月、吹雪、満潮3人の部屋である

 

 

ベッドは二段ベッドが2つ

吹雪、満潮が各ベッドの下段を使い、初月が吹雪の使うベッドの上段を使っている

 

 

「…」

 

真っ暗な部屋、駆逐艦吹雪は口を尖らせてぱちっと目を覚ます

 

 

「……またか……」

 

 

心なしかベッドが小刻みに揺れている

上から荒い息づかいも聞こえる

 

 

吹雪は内心ため息

 

 

「…ったく…」

 

 

一人夜戦…つまりは自慰だ

 

初月はほぼ毎晩深夜になると自慰に耽っている

 

 

これまでは本人の気持ちを考え、吹雪も見なかったこと、聞かなかったことにしてなにも言わずに黙ってはいたが、今日のは酷い。激しすぎる

 

 

被っていたシーツをめくり、よっこらせ、と起き上がろうとする吹雪

 

ベッド備えつきの梯子を登って一言言ってやろう、と梯子に手を掛けようとすると、向かいのベッドで横になっている少女と目が合う

 

 

「…」

 

ルームメイト、満潮だった

満潮は吹雪と目が合うと、恥ずかしそうに首を小さく横に振る

 

 

「…やめときなさいよ…吹雪」

 

 

満潮はひそひそと小声で吹雪に訴える

 

 

「…いや、だって…毎晩真下で聞かされる身になってよ…」

 

 

対して吹雪もひそひそと小声で返す

 

 

「…なら今日ベッド変えてあげるから…」

 

「…え?ほんと?ならいいよ」

 

 

小声交渉が成立すると、こそこそと場所を交換する吹雪と満潮

 

「…ふぅ…あ、気持ち声小さくなったかも」

 

 

満潮の寝ていたベッドに寝転がった吹雪は笑顔で安堵する

 

 

「(…満潮ちゃんのベッド…私のところよりもいい匂いがする…)」

 

 

邪な考えを払拭し、壁の方を向いて目を瞑る吹雪

 

 

『…はぁ…はぁ…んっ…く…ぅう…』

 

「………真下は…凄いわね…」

 

 

このまま初月の声を聞いていたら変な気になりそうだったので、薄い毛布を頭まで被って目を瞑る満潮

 

 

 

 

当の初月だが、吹雪達の移動が終わってしばらくしてからようやく鎮めることができた

 

 

「…はぁ…はぁ……」

 

 

赤く、惚けた表情で思い出すは執務室でのやりとり

 

坂本のことだった

 

 

 

「…あいつ…ふ、ふふ…言い返してくるなんて…ふふ…面白い…面白いなぁ…それに…」

 

 

坂本の、少しだけ破れた服の隙間から見た彼の身体を思い出す初月

 

 

「…ああ…僕にはわかるよ…あんなに線の細い身体のくせに…ふ、ふふふ…あの硬そうな腕で抱かれたら…きっとすぐにイッてしまうだろうね…」

 

 

 

 

『ふふ…ふふふふ…』

 

 

「…」

 

 

上から聞こえる不穏な声に、真下で薄い毛布でくるまる満潮は顔をひきつらせていた

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

翌朝 0800

 

 

田中達が播磨鎮守府に着任して実質3日目

 

 

この日、田中と坂本は朝からまとめた書類をファイリングして本棚に入れる作業をしていたが、思わぬ来客があり、その手を止めていた    

 

 

 

「…えーと…」

 

数札のファイルを持った田中は彼女を見つつどうしようかと唸る

 

 

重巡、鈴谷と三隈だった

 

 

鈴谷は既に泣きそうな顔で目を泳がせている

 

そんなふたりをソファーに座ってじっと見つめる赤城

 

 

「…三隈さん?…貴女まで勝手にここに来るとはどういうことですか?」

 

赤城が三隈に強めにそう言うも、三隈が焦る様子はない

 

 

「…あら、おはようございます赤城さん…特に赤城さんに用があるわけではないので、お気になさらなくても構いません」

 

「…ちょ、三隈姉…」

 

よく状況がわからない坂本はファイルを手に持ったままあたふたとする

 

 

「…え、ええと…これは…」

 

「…あ、そっか…昨日言うの忘れてた…まぁ、あれだ…色々あったんだ」

 

田中の雑な説明に坂本は更に首をかしげる

 

 

「…で?なんか用か?三隈」

 

 

田中が三隈の名を呼ぶと、こほん、と三隈はひとつ咳払い

 

「…私の用よりも先に…」

 

三隈の右手を鈴谷に向けると、彼女はおどおどしながら一歩前へ出る

 

田中は臆することなく、ファイルを持ったまま鈴谷と向き合う

 

 

「…あ…えと…あ、あの……その…」

 

「…」

 

 

冷や汗をかきはじめる鈴谷を田中は焦らせない

 

なにも言うことなくじっと待っている

 

 

「そ、その…わ、わたし…あの…その…」

 

鈴谷は目元に涙を浮かべはじめる

思わず赤城がソファーから立ち上がるも、坂本がさりげなく赤城の前へと立ち、背を向ける

 

まるで邪魔をするなというかのように

 

 

 

「…え、ええと…ひっ…ぐすっ…の…あの…」

 

遂に泣きはじめてしまった鈴谷を見て、田中はふぅ、と小さく息を吐く

 

 

 

 

「…こうして面と向かって話すのは初めてだな…俺は田中健二…一応少佐やってるよ…お前は?」

 

「…え?…ぐすっ…あ……鈴谷……です」

 

 

きょとんとしながらと名前を田中に伝えると、うん、と田中は頷く

 

 

「…よし、鈴谷。まず落ち着いてくれ…なにも怒ったりしたりしない。話したいことがあるなら、お前の…鈴谷の言いやすいタイミングで言ってくれりゃあいい。オーケー?」

 

ずずず、と鼻を啜った鈴谷はうん、うんと大きく頷く

 

 

「…坂も…坂本少佐~」

 

田中はくいっくいっ、と坂本に向けて右側のお尻を一回横に振る

 

 

「……?…」

 

 

坂本は田中の背後に立つと、田中のお尻を右手で撫でる

 

 

「いやなにケツ撫でてんの!…ポケットだよ!ポケット!」

 

「…え、あ、はい」

 

 

改めて坂本が田中のお尻のポケットを触る

 

あ、と何かに気づく坂本

 

 

「…ちゃんと持ち歩いてるなんて…偉いんですね。田中少佐」

 

「…エチケットだろ…」 

 

 

田中と坂本のやりとりを見ててもよく理解できない鈴谷

 

 

はい、と坂本は鈴谷に何かを渡す

 

「…あ」

 

 

それは両手がふさがった田中のポケットから取り出したハンカチだった

 

 

「…これで鼻をかむといいですよ」

 

「…後で洗って返せよ?」

 

 

坂本から渡されたハンカチをもらい、それを見つめる鈴谷は更にぼろぼろと涙を流しはじめる

 

 

「…お、おいおい…」

 

「…う、ううう…」

 

ぐじゅるるるる、と鈴谷はハンカチを使って盛大に鼻をかむ

 

赤城は少しだけ顔をしかめる

 

 

「…ふぅ………」

 

鼻水でたぷたぷとなったハンカチを見つめ、うん、と何かを決意するかのように頷く鈴谷

 

鈴谷は息を吸い…

 

 

 

 

 

 

「…おっ…一昨日は…ご、ごめんなさい!」

 

鈴谷ははっきりと声を張って田中に勢いよく頭を下げる

 

 

「…」

 

 

「…私…貴方に…貴方達に酷いことをしてしまいました!…本当に…本当にごめんなさい!!」

 

 

田中はちらりと三隈の方を見る

 

「…鈴谷は…この娘は…この2日間ずっと後悔して、反省していたんです…貴方達に対して行ったことを…」

 

 

三隈のそれを聞いて赤城もあの日の夜の事を思い出す

 

田中を殴った右手を抑え、自身のトラウマを呼び覚ました鈴谷の泣きそうな…辛そうな顔を…

 

 

あの時は自業自得だ、と思いはしたが、こうして泣きながら謝る鈴谷の姿を見て、少しばかり鈴谷を不憫だと思ってしまった赤城  

 

 

「…ああ、まぁ…なんだ…」

 

田中は手に待っていたファイルを本棚に入れる

 

 

 

「…っていうか怒ってないし…むしろ俺達も勝手に入ってきて…っつーかこれ毎回言うのか?」

 

「…うーん…執務室の前に貼っておきますか?…一昨日のことは謝罪禁止って」

 

「…アホか…アホだと思われるわ」

 

 

 

田中と坂本のなんの意味のないやりとりをきょとんとした顔で聞いている赤城、三隈、鈴谷

 

田中は咳払い

 

 

「…とにかく…俺もお前らも反省した。はい、これでおしまい。俺らまだ片付けあるからとっとと出ていってくれよ」

 

ぶっきらぼうにそう返す田中

 

坂本はふふ、と笑う

 

 

「…照れているんですよ。田中少佐は…ああ、失礼…坂本少佐です。改めて初めまして、鈴谷さん。三隈さん」  

 

 

礼儀正しく、姿勢正しく坂本は鈴谷と三隈にお辞儀をする

 

 

つられて頭を下げる鈴谷と、涼しげな表情で小さく頭を下げる三隈

   

 

「す、鈴谷です!」  

 

「三隈です。どうぞよろしくお願いします」

 

 

ここまでのやりとりが終わると、赤城が一歩三隈に近づく

 

 

「…もう用件はありませんね?…なら「いいえ。鈴谷の用は終わりましたけど、私の用件はまだです」

 

田中が反応

 

 

「…まだなんかあんのか?…なんだよ」

 

 

昨夜のことがあったお陰か、田中は三隈の目を見ることが出来ない

 

そんな田中の心境を知ってか知らずか、三隈はにこっと田中に笑顔を向ける

 

 

 

 

 

 

「…お二人とも。臭いですよ」

 

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

「…あの女…くっそ…」

 

「…まぁまぁ…お風呂入れてよかったじゃないですか」

 

 

0900

 

 

播磨鎮守府 職員用浴場脱衣場

 

 

三隈の悪意のある一言を切っ掛けに、田中と坂本は約3日ぶりに風呂に入ることが許された

 

なお、脱衣場の外には赤い一航戦が待っているはずだ

 

 

 

「『お二人とも、臭いですよ』…とか言われなくてもわかってんだっつの!」

 

「…まぁ、身体はタオルで拭けても臭いはとれませんからね…」

 

 

 

田中は坂本の裸体をちらりと見て、眉をひそめる

 

 

「…何か?」

 

「…いや……なんでもない」

 

 

浴室に入る

 

田中は股間をフェイスタオルで隠すが坂本は手にタオルを持ったまま股間を隠さないでいる

 

 

「(…まぁ、坂本は細身の割には筋肉ついてるからな…自分の身体に自身があるやつは違うなぁ…でも股間隠すくらいはしてもいいんじゃねぇか…?)」

 

 

そんなことを思いながら浴場の扉を開ける

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

男性職員用の浴場は一般的な銭湯の約半分といった程度の大きさだった

 

 

浴槽の大きさ、設置されたシャワーの数…

同時に使えるのは7.8人といったところか

 

 

 

「…ああ…この湿度…3日ぶりの風呂だぁ…」

 

「ですね」

 

 

浴槽横のシャワーの前にイスを置いて座る田中

 

熱いシャワーを頭からうける

 

 

「…くぅうー!気持ちいいわっ!」

 

 

バシャバシャと顔を洗う田中

 

 

「…あー……えーと…」

 

頭と顔を泡だらけにした田中はなんとなく気になる真横を見る

 

 

田中のすぐとなりには坂本がイスに座って髪を洗っていた

 

 

「…近くね?…坂本くん?」

 

「…そうですか?」

 

「そうですよ。いや、他にも空いてるじゃん!寂しがりか!」

 

「あはは。面白いですね、田中君」

 

「???…??」

 

 

田中の突っ込みに対して涼やかに笑う坂本

 

二人並んで頭を洗う姿はまるで兄弟のようだった

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

「…うぃー…あー…腕いてぇ…」   

 

 

頭と身体の汚れを落とし、浴槽に浸かる二人

 

夏とはいえ、やはり疲れきった身体には湯船だろう

 

 

「…でも、良かったですね…三隈さん達が手伝ってくれて」 

 

「…ん?…ああ、そうだな…助かった…」  

 

 

 

二人を臭いと言った三隈は赤城を説得し、二人が浴場に行けるよううまく図ってくれた

 

 

"あまりにも臭くて播磨鎮守府に臭いが移る"、とまで言ってくれて…

 

そして代わりに二人が浴場に行ってる間は三隈と鈴谷で執務室の後片付けの手伝いをする、と…

 

 

 

 

「…三隈さんと…何があったんですか?」

 

湯船で田中と並ぶ坂本はそう問う

 

「…それは言えないな…あいつの面子に関わるかもしれないからな…けど、まぁ……うん、あいつが妹の事を大事に思ってるってことはわかったよ」

 

「…ああ、なるほど」  

 

 

田中の説明とも言えない説明を聞いて、なんとなく理解する坂本

 

 

「…しかしまぁ…なんだ…これからどうすっか…」

 

「…とりあえず…ここの艦娘達と仲良くなることが第一かと…嫌われたまま、四面楚歌ではやれることは限られますから…」  

 

「…海軍嫌いの奴らに海軍の俺らが仲良くしましょうつったって聞いてもらえねぇだろ…」

 

「…そうですね…なら、まずは三隈さん達に彼女達の事を聞いてみませんか?…何故作戦海域へ出撃しないのか、遠征や他鎮守府との演習はどうしているのか、など…」

 

 

「………うーん…三隈…か…」

 

 

なんとなく、なにかを納得しずらそうな田中は唸りながら湯船に沈んでいった  

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇  

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

◇  ◇  ◇

 

 

 

 

2日ぶりの風呂に入り終わり、鎮守府の廊下を歩く田中、坂本、赤城

 

 

「…なぁ、あんたいつまで俺らにくっついてんだ?」

 

田中は先頭を進む赤城に声をかける

 

「…田中少佐…くっついて歩いているのは僕たちですよ?」

 

「…そういう意味じゃねぇよ」

 

 

田中と坂本の漫才に反応することなく前を進む赤城は息を吐く

 

 

「…私がついていなかったら貴方達が何をするのかわかりませんから…それに…私がいなければもっと酷い目にあっているのでは?」

 

 

「…あー…確かに…」

 

田中は納得

 

確かに否定派にとってのある意味抑止力な存在

 

 

赤城がいなければこうして廊下を歩くことも出来なかったかもしれない

 

 

「…確かにって言っちまったけどさ…もっと自由に……ん?」

 

 

廊下の窓から見える鎮守府正門の内側

歩く速度を緩めた田中はその正門の近くにいる人影を指差す

 

 

「…なぁ、ありゃなにやってんだ?」

 

 

田中に問われ、坂本と赤城も窓の外、階下を見る

 

 

遠目に見える警備員用の扉で、青い制服を着た女性2人が、運送業者が使うようなタイヤつきの大きなダンボールなどが積まれた鉄製のカゴ台車を、狭い扉を通じて中へと入れていた

 

 

「…ああ、あれは播磨で使われる日用品や皆の食料ですよ」

 

「…食料?…って、あれどう見ても女二人で運ぶ量じゃねぇだろ…あっ!」

 

 

がしゃん、と大きな音が鳴る

 

警備員用の扉の縁にぶつかり、バランスを崩したカゴ台車が倒れるところを見た田中は、すぐに走り出す

 

 

「…あっ!どこへ行くつもりですか!」

 

赤城が叫ぶも、田中は歩いてきた廊下の反対側へと走っていってしまった

 

坂本もよくよく窓の外の倒れたカゴ台車を見ると、ああ、と呟き

 

 

「…緊急事態です。失礼しますね」

 

 

そう言って田中の後を着いていくように坂本も走り出してしまった

 

 

「ま、待ちなさい!」

 

 

田中、坂本を追うために赤城もまた走り出す

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

播磨鎮守府正門裏側 

 

 

1000

 

 

 

太陽の光が強く降り注ぐ正門裏側、一人の女性が倒れたカゴ台車の下敷きとなっていた

 

 

「…だ、大丈夫!?…すぐにどけるから!」

 

「…う…うう…」

 

 

青い制服を着た女性、高雄があたふたとしながら倒れたカゴ台車をどかそうとするも、艦娘としての力がない彼女では転がすことは出来てもカゴ台車をどかすことは出来なかった

 

 

「…ど、どうしよう…」

 

 

カゴ台車を運んできてくれたトラックの運転手はもうとっくに車を出している

 

高雄は冷や汗をかきながら考える

 

 

「…あ、み、みんなを呼んで「馬鹿野郎どけっ!!」

 

 

高雄の肩を押したのは、基地本館から走ってやってきた田中だった

 

 

「…あ、貴方…!」

 

「うっせ!…ええとっ…お前!お前はとっとと古川さん達を呼んでこい!早く行け!…坂本ぉー!」  

 

名前のわからない高雄にそう指示し、田中は倒れたカゴ台車から積まれていたダンボールを続々とカゴから取り出して投げ捨てる

 

 

「田中君!「坂本おせぇ!早く手伝え!」了解!」

 

 

高雄は警備員用の扉から外へ出て、警備事務所の方へ走っていき、田中と坂本はカゴ台車を軽くするため、カゴ台車からダンボールを掻き出すように地面に捨てる

 

 

 

 

 

「ん?」

 

「なになに?」

 

「うわ、なにあれ」

 

 

そんな田中達の行いを基地本館の上の階の廊下から様子を見る播磨の少女達

 

その少女達の中には朧もおり、田中達の姿を確認するとすぐに下り階段の方へと走り出す

 

 

「え、ちょっ…お、朧ー!?どこいくのさー!」

 

漣が朧を止めようと手を向けるも時既に遅し

 

 

 

 

 

 

「…おっらぁあっ!!」

 

「…っだぁあっ!!」

 

いくつかダンボールを投げ捨てたものの、カゴ半分から下のダンボールは荷崩れ防止のラップが巻かれていて取れなかった

 

 

故にまだ下段部分が重いままのカゴ台車を田中と坂本で肩と腰を使い起き上がらせる

 

 

「…お、おお!なんて事だ!」

 

「今助けるぞ!」 

 

 

そこへ高雄と、彼女が呼んできた古川と揖保川も合流

 

赤城も田中達よりも遅れて合流し、田中、坂本、古川、揖保川、赤城の5人でカゴ台車の下敷きになった女性を救出する

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

基地本館 3階廊下

 

 

「ん?…どうかしましたカ?」

 

 

窓辺で外を見る少女達に気付き、声をかける金剛

 

「…なんか海軍と警備員達でやってるみたいですよ?」

 

窓から様子を見ていた少女が金剛にそう返すと、金剛もすっ、と窓の外を見る

 

 

 

 

「…ぁ……」

 

 

とある人物を見て、金剛は目を大きく開く

 

金剛の隣にいた鳥海が首をかしげる

 

 

「…金剛さん…?どうかしました?」

 

鳥海に問われると、一瞬だけたじろいだ金剛は首を横に振る

 

 

「…な、なんでも…ないデス」

 

 

そう言って金剛は足早に廊下を進む

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

「…だっしゃぁあっ!!」

 

 

鎮守府正門裏

 

 

5人で協力し、カゴ台車の下敷きとなった女性を田中が救出する

 

 

「おい!しっかりしろ!大丈夫か!?」

 

膝立ちお姫様抱っこで女性を抱える姿勢の田中は彼女に声をかける

 

「…い…たい…痛…い…う…うう…」

 

 

長い金髪の女性はふくらはぎを抑えて、泣きながらそう痛がっている

 

「…お前…名前は?」

 

 

田中が再度問うと、女性は目をぎゅっと閉じ、声を震わせながら

 

 

「…あ、あたご……愛宕…」

 

「よし、愛宕…これからお前を医務室に連れていくからな…キツイかもしれねぇがちっと我慢してろ」

 

 

田中がそう言うと愛宕は小さく頷く

 

彼女を改めて抱き上げ、立ち上がると、そのタイミングと同じく、朧が走って寄ってくる

 

 

「…!…朧!頼む、医務室に案内してくれ!」

 

「…!?…は、はい!こっちです!」

 

基地本館から走ったやってきた朧はまたも本館の方へ走り出す

 

 

「…坂本!古川さん達とあとを頼む!」

 

「了解!」

 

「ま、待ってください!田中少佐!」

 

 

赤城が田中に声をかけるも田中は振り返らない

 

 

「…わりぃな。説教なら後で聞いてやるからちっと黙ってろ」

 

 

この3日間で発したことのない低い声で赤城にそう言うと、愛宕を抱き上げた田中は朧の後を追って走っていく

 

 

さすがに赤城も一瞬だが緊張し、手を伸ばしたままそれ以上なにも言えなかった

 

 

 

 

 

 

 





はい、お疲れさまでした

坂本に狙いをつけ始めた初月、妹を許してもらうために物理的に一肌脱ごうとした三隈、ある意味一肌脱げた鈴谷、これからなにか進展の起きそうな愛宕に、混乱のなか誰かを気にする金剛でした


様々な想いで物語が動き始める播磨編、次回をお楽しみに


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