大本営の資料室   作:114

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はい

お待たせしました。海の鎮守府です


さて、今回は何人来ましたかね…


ではどうぞ



File96.星のフェルマータ

 

 

「…まぁた…どえれぇモンだったな…」

 

 

海の鎮守府 スクリーンの大部屋

 

 

映像を写し終えた映写機からカラカラと空回しの音が聞こえ、落とされた大部屋の照明がつく、座席に座っていた摩耶がため息混じりに呟くと、座席後方でガツン、と鈍い音が聞こえた

 

 

音を聞いた面々が後方を見ると、天龍が大部屋の入り口横の壁に自身の拳を打ちつけていた

 

 

「……くそがっ…!!」

 

 

そう強く吐き捨てる天龍の表情は怒りに満ち溢れている

 

それもそのはず、まさか播磨の艦娘達を殺したのが自分を追い詰めたあの憎き敵、レ級達だったからだ

 

 

天龍は揺れる自分の心を押さえつけ、大きく息を吸い、細くゆっくりと吐くと、天龍の近くの座席に座っていた響に視線を向け

 

 

 

「…悪い…もう…大丈夫だ」

 

「…うん」

 

 

対して響も天龍には何も聞き返さない

 

これも彼女を想ってのことである

 

 

天龍と響のやり取りを見ていた電が座席から立ち上がる

 

 

「…皆さん。恐らくまた今回も誰かが来ているはずなのです!」

 

 

金剛もふふん、と笑い

 

「…不知火も、デスね」

 

 

スクリーンでいつかの、どこかの記憶の映像が流れた後は決まってその映像に登場した者達がこの海の鎮守府に現れる。

 

そして何故かその事を電は察知することが多い

 

 

神通も座席から立ち上がり

 

 

「…では、捜索開始としましょうか」

 

 

神通の合図で大部屋から出ていく少女達

 

 

 

 

だが一人だけ

 

長波だけは鬼気迫る表情で真っ白なスクリーンを見つめていた

 

 

 

 

 

 

 

「…嘘…だよな……ゲスカビアン……あの女提督が…描いたモンだった…のか……?」

 

 

 

かつて長波の妹、高波がドハマリした同人誌を思い出し、胃の奥から酸っぱいものが込み上げそうになった長波だった

 

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

「…はぁ…」

 

 

 

不知火ことデコポンは大きくため息を吐く

 

海の鎮守府にくるのももう何度目か…

 

 

初めて来たときに比べれば色々と慣れてきた

 

大体どの部屋がどこにあるかも理解してきたし、資料に登場する者の一部がここに飛ばされてきていることも知っている

 

 

「…最悪ね…」

 

しかしながらデコポンは一つだけ…

 

一つだけ切に願う

 

 

 

「…移動先くらい定位置にしてほしいわ…」

 

 

そう呟き、しゃがみこむと、足元にある鉄のバー部分をきゅっとつかむ

 

 

デコポンがいる位置

 

 

それは海の鎮守府、ドック内の天井付近まで上がったクレーンの先端だった

 

 

「…うう…高い…」

 

 

艤装を展開していない今のデコポンにとって地面から10メートル以上の高さは恐怖でしかなく、クレーンの先端部分に小さく丸まり、掴まるだけで精一杯だった

 

 

 

「…くっ…こんなことをしていても時間だけが過ぎてしまう…でも…どうしようかしら…」

 

 

デコポンはどう降りようか悩んでいた

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

捜索チーム電

 

 

電、金剛、ビスマルク、ふくよかなプリンツ・オイゲンことローズのチーム電は鎮守府内食堂内を捜索中

 

 

「…もう…全然見つからないデース…」

 

「…ローズ…本当に食堂で良かったの?」

 

 

テーブルが並ぶ食堂を捜索する金剛とビスマルクがぼやくと、厨房内の冷蔵庫の前にいるローズがふふん、と笑う

 

 

「甘いですよビスマルク秘書艦…食べ物のあるところに人あり…私ならまず食堂へ向かいますからね」

 

 

ドヤ顔のローズに苦笑いする電

 

 

「…それはローズさんだけだと思うのですが…」

 

 

「なぁによ…捜索する前にちょっと腹ごしらえでもって思って

 

 

ローズが大型冷蔵庫の扉を開けた時だった

 

 

「きゃあっ!」

「ぎゅむっ」

 

 

冷蔵庫から突然黒く長い髪の女性が現れ、ローズに覆い被さってきた

 

 

「ローズさん!」

「ローズ!」

 

 

心配して電とビスマルクがローズの元へと駆け寄る

 

 

「いたた…ここは…?」

「…むぎゅ…」

 

 

ローズをクッション代わりにした黒髪の女性は厨房内を見回し、電達に気がつく

 

 

「…あ…ええと…貴女方は…?」

 

きょとんとする黒髪の女性

 

ビスマルクは目を大きくさせながら驚く

 

 

「…まさか冷蔵庫から現れるとは思わなかったわ…」

 

電もこほん、と咳払いし、黒髪の女性の目の前に立つと、右手を差し出す

 

 

 

「…ようこそ海の鎮守府へ、なのです…赤城さん」

 

 

現れたのはかつては播磨鎮守府の中立派

 

航空母艦赤城だった

 

 

 

 

 

 

 

「…なーにかあったデース?電ちゃーん?」

 

 

物音に気づかなかった金剛は、呑気に遅れて厨房へとやってきた

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

捜索チーム響

 

 

響、天龍、白雪、嵐の4人は寮舎の方を捜索していた

 

 

 

「…うん。やっぱり増えてるね…」

 

 

そう呟くのは響

 

前回同様、寮舎の廊下が伸び、部屋数も増えていることに気づく

 

 

「…前は寮の部屋でネっきゅんを見つけたんだろう?部屋数がかなり増えてる…だから今回も誰かいるかもしれない」

 

響が探偵のように推理すると、天龍はへぇ、と溢し

 

 

「…響…お前なんか……言い回しが変わったな…」

 

寮の部屋のドアノブに手を掛けようとしていた響は天龍のその一言でぴたりと止まる

 

 

「…え?」

 

「…ああ、いや……オレの中のお前って…もっとこう…大人びた風のチビっ子ってイメージだったからさ…なんか……うん…変わった…」

 

 

少し照れくさそうに説明する天龍

 

響も目を大きくさせてほんのりと頬を赤くし、目を細めふふふ、と笑う

 

 

「…色々…あったからね…そういうなら天龍さんだって昔に比べて凄く落ち着いたと思うよ?」

 

 

へっ、と天龍は鼻で笑う

 

 

「…オレも"色々"と大変だったんだよ」

 

「知ってるよ。ふふふ」

 

 

お互いを深く理解している響と天龍は笑い合う

 

そんな2人のやり取りを間近で見ていた嵐と白雪も天龍達の空気にあてられたのか、目を合わせて笑う

 

 

「…なーんか…2人の関係って羨ましいな…」

 

「ええ…本当に…」

 

 

天龍が一つ咳払いし、響の開けようとした扉の前へ立つ

 

 

「…よし、んじゃあ確認していくか」

 

 

何かあってもいように響、嵐、白雪を自分の背後より少し遠ざけさせて、ドアノブを掴んでひねる

 

 

「…」

 

ゆっくりと警戒するように扉を開ける天龍

 

 

「…ど、どうなんだよ…天龍さん…」

 

緊張する嵐は思わず天龍に声をかけるも、天龍は人差し指を自分の口元に近づけ、シッ、とジェスチャー

 

 

 

「……」

 

 

更に扉を開け、中を確認

 

 

 

「……ビンゴ」

 

 

天龍のその一言で3人は緊張を解く

 

まさかの1発目でのアタリである

 

 

 

寮室の扉を開けると、白露型の制服を着たツインテールの少女がベッドに横になっていた

 

 

 

表情を曇らせる響

 

 

「…この人…佐世保の…」

 

白雪も再び緊張する

 

「…村雨さん…ですね」

 

嵐も緊張し、口を真横に結ぶ

 

「…」

 

 

天龍も村雨を見てため息

 

 

 

「…マジか…」

 

 

そう呟くと同時に天龍の心は曇り空となる

 

 

播磨の映像を視ていた時から佐世保の面々が映しだされる度に天龍の眉はぴくりぴくりと反応していた

 

 

尾張の件…

 

 

 

深海棲艦化しつつあったとはいえ、かつての天龍の仲間達は彼らの手によって…正確には柴山の手によって殺された

 

 

今目の前で寝息をたてる彼女はあの憎き柴山の右腕…ではなくとも幹部か、それに近い存在だろう

 

 

 

あの時の怨みが消えたとは言わない

 

だがここで"それ"を自分勝手に解放するのは違うとも理解し、納得している

 

 

天龍は自分を心配そうに見つめる駆逐艦の少女達の視線に気づくと、はぁ、と再びわざとらしくため息をはく

 

 

「……仕方ねぇな…」

 

 

 

未だ夢の中にいる村雨を、起こさないように天龍は静かに抱き抱える

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

探索チーム朝潮

 

 

 

 

鎮守府 グラウンド

 

 

太陽の光に照らされ、土の地面が白く光るグラウンド

 

 

こちらは朝潮、千歳、利根、神通、時雨での捜索チーム

 

 

 

「…うぁあ…日差しがつよいのじゃあ…これも身体が戻ってきている証拠なのかぁ…?」

 

 

ツインテールを揺らしながら気だるそうにぼやく利根

 

千歳は苦笑いし

 

 

「…そうね…今まで気にしなかったけれど…確かに響ちゃんの言っていた通り、元の身体に近づいていってるのかもしれないわね…」

 

千歳と利根が話しているなか、朝潮は足早に前へ進むと、時雨が焦る

 

 

「…あ、朝潮…ちょっ…は、速いよ…」

 

「…あ、ご、ごめんなさい…」

 

 

時雨に言われてはっとした朝潮は4人に謝る

 

 

「…朝潮さんの気持ちはわかります…恐らく…彼女が来ているんでしょう?」

 

 

優しく笑顔を向ける神通にそう言われ、朝潮は唇をきゅっと結び、頷く

 

 

 

「…はい…多分…恐らく…ですが…来ている筈です…不知火さんから教えていただいた条件から考えれば…あの娘の行いが印象に残らない筈ありませんから…」

 

 

 

そう返す朝潮

 

 

そう。

朝潮には確信があった

 

何が、何故かとは説明できないが、ある一人の少女が間違いなくここにやってくる、と…

 

 

そして恐らく、来るとしたらここだろう、と…

 

 

 

朝潮達はグラウンドの端に広がる雑木林の方へと進むと、一人の少女が木を背にちょこんと座り込んでいる

 

 

「…!」

 

 

彼女の姿を確認した朝潮は、少女に向かって駆け出した

 

 

「…お?…朝し「利根さん。待って下さい」

 

 

駆け出した朝潮を呼び止めようとした利根を制止する神通

 

 

 

 

「…はっ…はっ…はっ…はっ…」

 

 

 

息が切れるほどの全力で朝潮は駆けた

 

 

目の先にいる少女

 

煙突形の帽子を被った同じ朝潮型の妹

 

 

 

 

「…霰!!」

 

「…え…?」

 

 

走ってきた勢いそのままに、座り込むように朝潮は霰に抱きつく

 

抱き締められた霰は、一瞬驚いたように目を大きくさせるも、強く、しかし優しく自分を抱き締めてくれる少女の震える肩を見て、ふ、と微笑む

 

 

 

「…朝潮…姉…さん…?」

 

「…霰!…貴女はっ……貴女こそ朝潮型の誇りよ!…貴女のしたことは間違ってなんかいない…!」

 

 

肩だけでなく声まで震える朝潮の言葉を聞いて、霰はうん、と答える

 

 

「…霰は…最後に…大切な人を守れましたか…?」

 

「…うんっ…勿論よ…よく頑張ったわ…霰」

 

 

霰は仲間を守るために戦おうとした

 

朧を助け、鈴谷達をも助けようと尽力を尽くした

 

そして最後は田中を守るために吉津根の手により…

 

 

 

朝潮に抱き締められ、肯定させた霰は安心するようにふにゃ、と笑う

 

 

「……よかった…」

 

 

 

 

朝潮にとって霰とは同型艦の妹…

 

故に播磨の映像を見ていた時、霰が映った時には驚いたものだった

 

 

友を想い、恋をし、青春をし、そして仲間を助けるために、愛する人のために自らの命を懸けて行動する

 

 

かつての自分がやりたくても出来なかった事をこの小さな妹はやり遂げ、成し得たのだ

 

 

例え産まれの違う鎮守府であろうとも、朝潮はこの霰を誰よりも尊敬していた

 

 

そしてここに来るのなら、きっと霰が来るだろう、と予想し、それが見事実現したのだった

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

「…うう…どうしよう…」

 

 

再びドック

 

まるで高いところにいる子猫のようにデコポンはクレーンの上から降りられないでいる

 

そんなデコポン若干涙眼

 

 

 

ちょこちょこと片足を遠くはなれた地面へと伸ばすが、すぐに引っ込める

 

 

 

「…ちっ…なんて高度な罠…ここから落ちれば……落ちたらどうなるのかしら…」

 

 

むう、とデコポンは考える

 

 

ここ、海の鎮守府は現実ではない、ような気がしなくもない…

 

たが肌を伝う恐怖感…この感覚は間違いなく現実

 

クレーンの鉄さびの臭い、天井付近のための暑さ、足を伸ばしたときの感覚

 

 

ちらりと地面を見下ろすデコポンは頬をぶるる、と震えさせる

 

 

 

 

「………これは怪我ではすまないわね…」

 

 

 

 

「ちょっと貴女、そこでなにをしているの?」

 

 

 

「ん?」

 

 

下からかけられた女性からの声

 

見れば真下には赤を基調とした袴を着込んだ濃い桃色髪の少女がデコポンを見上げていた

 

 

 

「…貴女は播磨の…神風さん?」

 

「…??…ええ。私を知っているの?」

 

 

逆に自分の事を知っていた風なデコポンの返しに驚く神風

 

デコポンは咳払い

 

 

「…とりあえず…このクレーンを下ろしてはくれないかしら?」

 

「それは無理よ。私操作方法なんて知らないもの」

 

 

そりゃそうか、とデコポンは自分の頬をぽりぽりとかく

 

 

「…他に誰か…っていうかここどこ?貴女はここの艦娘?」

 

 

下から続く神風からの質問

 

 

「…とりあえず私がどうすればここから降りれるか一緒に考えてもらえないかしら?」

 

「…艤装展開が出来るなら展開して飛び下りればいいんじゃないかしら?」

 

 

"ああ、なるほど"と、デコポンは納得して自分の中の感覚を確認

 

 

「(…うん。展開……可能ね)」

 

艤装展開が可能とわかり、クレーンの上から飛び下りようとするが、そこで踏み止まる

 

 

「(…けど落ちている最中、万が一艤装出なかったら…)」

 

 

デコポン、飛び下りるまえに艤装を展開

 

展開された艤装を確認するデコポン

 

デコポンの乗ったクレーンはギギギ、と渋い音を鳴らす

 

 

 

「(…魚雷も砲弾も残弾なし…こんなところまで現実と同じなのね…)」

 

 

第四資料室では元々デコポンが侵入者だったこともあり、特に砲弾等の補充はされていない

 

…そして信用を得た今でさえも田中と松井が補充していないことを忘れてそのままだったのだ

 

 

 

「(…ま、これからも特別、出撃も無さそうだから気にもしていなかったけれど)」

 

 

邪な考えを払拭し、艤装展開したデコポンはクレーンから飛び下りる

 

大きな鉄の塊を展開した少女がドックの地面に着地

 

 

大きな音と共に着地した地面が若干凹む

 

 

「…よし」

 

クールに決めるデコポン

 

そこには先ほどまでの震える子犬のような彼女はいない

 

 

デコポンに一歩歩み寄る神風はデコポンに右手を差し出す

 

「…改めて、播磨鎮守府の神風よ。貴女は?」

 

「…元駿河鎮守府、不知火よ…今は東海支部に籍を置いているわ」

 

 

迷うことなく神風の手をとるデコポン

 

逆に神風は苦笑い

 

 

「…じゃあここが東海…?…って、謎の場所で初めての相手なんだし…少しは警戒したら?」

 

対するデコポンはふ、と笑う

 

「…貴女に敵意が無いのはわかっていますから……では、行きましょうか…ここのこと、私にわかる範囲でご説明します」

 

「…???」

 

 

デコポンの意味深な説明の仕方に首をかしげながらも、彼女に付いていく神風

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

談話室

 

 

 

一通り捜索チームを終えた面々がいつもの談話室に集結

 

 

電達は厨房で赤城を発見し、朝潮達もグラウンドで霰を発見

 

赤城と霰の他にも、阿武隈とゴーヤが鎮守府本館内で宗谷と初月と遭遇し、摩耶とネっきゅんで鈴谷、三隈と邂逅

 

 

そして何故か狭霧が待機組の暁や綾波達と、今回の捜索拠点としていた談話室にて優雅に紅茶を飲んでいる

 

 

ポットを片手に捜索待機組の一人、比叡が集まった少女達を見て頷く

 

「…7人…今回は多かったですね」

 

「いいえ、8人よ」

 

 

そう言って談話室に入ってきたのはデコポンと神風

 

 

神風の姿を見た霰と鈴谷が駆け寄る

 

 

「…リーダー!」

 

「神風ちゃん!」

 

 

2人の姿を見た神風も驚きつつも2人に手を広げる

 

 

「霰ちゃん!…鈴谷さん!…い、生きててくれたのね!」

 

 

抱き合う3人

 

そんな3人を見て宗谷はむむ、と眉を歪める

 

 

「…本当に…ここはなんなのでしょう…もしかしてさっきまでのことはすべて夢だった、ということでしょうか…」

 

真剣に考える宗谷

 

赤城も電達を警戒するような眼で睨む

 

 

「…全くもってわかりません…一体何が起きているのか…」

 

 

抱き合う鈴谷達を除き、赤城、宗谷、初月の3人は緊張の姿勢を崩す事なく身体を寄せ合う

 

 

…さりげなく暁もデコポンの腕に引っ付いていた

 

 

 

再び談話室の扉が開く

 

ドアノブを捻ったのは嵐だった

 

 

 

「戻ったぜ~…って、げ!」

 

 

嵐は先に談話室にいた狭霧を見て顔を強ばらせる

 

次いで入ってきた白雪、響も狭霧の存在に驚く

 

 

「…さ、狭霧…さん?」

 

「……」

 

 

 

まさか村雨以外で播磨鎮守府以外の艦娘が来るとは、と響は口をきゅっと締める

 

 

紀伊海軍航空基地の秘書艦狭霧

 

 

佐世保鎮守府提督、柴山の攻撃によって殺害された艦娘

 

 

 

「…おう、戻ったぜ……なんだ…狭霧も来たのか…」

 

 

最後に入ってきた天龍も狭霧を見て眼を大きくはするが、特別驚いているようではなかった

 

 

「…天龍さん。誰か見つかりましたか?」

 

よっこらしょ、といった具合に談話室にある椅子に座る天龍に神通が問うと、天龍は綾波と紅茶を飲む狭霧を一目見てから再び神通と目を合わせ

 

 

「佐世保鎮守府の村雨を見つけたよ…なんか寝てる…気を失ってる?…風だったから医務室で寝かせてる…一応時雨も一緒だ」

 

『村雨』と聞き談話室はざわつく

 

狭霧の顔つきも変わり、ローズがむむ、と唸る

 

 

「…そぉれって不味くないの?…サセボってあれ…なんか悪い奴らの鎮守府でしょう?時雨ちゃん大丈夫なのぉ?」

 

「…ローズさん…その言い方は失礼じゃ?」

 

 

千歳のジト目&突っ込みでローズは自分の口をポンポン、と叩く

 

「…あら…エンツュジクーン…」

 

 

まわりがざわつく中、天龍はへっ、と鼻で笑う

 

 

「…どうだかな。まぁ時雨なら大丈夫だろ」

 

天龍の返答に朝潮と神通が頷く

 

 

「…朝潮も、時雨…さんは大丈夫だと思います」

 

「そうですね。今の彼女ならローズさんが考えているような事態には陥らないと思います」

 

 

朝潮と神通の太鼓判に対し、壁に背を預けていたビスマルクも興味ありげ

 

 

「…随分と信用厚いのね。時雨…」

 

ビスマルクの呟きに、嵐が頷く

 

 

「…ああ。時雨は……まぁ、なんつーかさ…ここに来てから色々頑張ってるしな」

 

 

電も嵐に続く

 

 

「…それに、多分今の村雨ちゃんには時雨ちゃんが一緒にいた方がいいと思うのです」

 

「???」

 

電の意味ありげな台詞に首をかしげるビスマルク

 

 

 

そんな中、談話室のソファーに座る摩耶はゴーヤに太ももを触られながら天龍に問う

 

 

「…お前はいいのか?天龍…って、ゴーヤ…今大事な話してるから…」

 

 

そう話しかけられ、天龍は天井を見上げる

 

 

正直に言えば、先ほど村雨を一目見たときから様々な感情が天龍の脳裏を駆け巡っていたのは事実

 

思いきってあの時の怨みを晴らすことも出来た

 

 

だが今の天龍は感情のままに行動はもうしない

 

摩耶の問いかけに顔を下げ、ふと笑う

 

 

 

「…まぁな…摩耶さんや…みんながいるお陰でくだらねぇこと考える暇もねぇよ」 

 

 

さも当たり前に、といった風に台詞を吐くと、摩耶の頬がほんのりと赤くなり、恥ずかしそうに片手で顔を覆う

 

 

「…お前っ……よくんなこっ恥ずかしい台詞簡単に吐けんな…聞いてるこっちがハズイっての…」

 

「…はぁ?…別に恥ずかしくなんかねえだろ」

 

 

 

「…っつかさ…狭霧は大丈夫なのか?」

 

談話室の窓の縁に腰掛けた長波が狭霧に問う

 

狭霧も飲んでいた紅茶をソーサーに置き

 

 

「…大丈夫、とは…?」

 

「…だってあの村雨が死んだ原因ってあんたの提督の銃撃だろ?…なら土佐…えっと、紀伊だっけ?…とにかく、殺された村雨はあんたらをそーとー恨んでんじゃないのか?」

 

 

長波の疑問に対して壁側のソファーに腰掛けた嵐が手を上げる

 

 

「…その心配は多分ないぜ?…長波は気が付いてないかもしれないけどさ。なんかここに来るとこう、心がリセットされるっつーか…負の感情?みたいなのがなくなっちまうんだよ」

 

 

嵐の説明を聞き、片眉を歪ませてジト目を返す長波

 

 

「…それ、お前だけじゃないのか?…私はここに来て特段自分のなにかが変わった気はしないけどな…」

 

 

長波と嵐とのやり取りを聞き、狭霧はふと目を瞑り深呼吸

 

 

「…心がリセット、ですか…なるほど…確かにあの時とは比べ物にならないぐらい今の私は穏やかな気持ちだと思います…あの時は穏やかな気持ちとは程遠い状況だったので…」

 

 

そしてゆっくりと目を開けて少女達を見回し

 

「村雨さんに関しては…私の事情はさておき、確かに恨まれても仕方ありませんからね…私としては出来れば対話で済ませられればいいですけど、もしもの時のことも考えねばなりませんね」

 

 

にこりと微笑む狭霧の台詞を聞いて、何人かの少女達に緊張がはしる

 

 

そんななか、デコポンに引っ付いていた暁が恐る恐る狭霧の方を向く

 

 

「…た、戦うの…?」

 

ここで"殺し合うの?"と聞かないあたりが暁らしい

 

単にその単語が思い付かないだけなのだろうか

 

心配そうに自分を見つめる子犬のような暁の雰囲気に圧されたのか、狭霧は困ったように笑う

 

 

「…あー…えっと…いえ…あの……どちらにし…いえ、話し合いで済めばいいかな…って…」

 

 

 

狭霧と暁のやりとりを見た白雪はむむ、と眉を強ばらせる

 

 

「("可愛いは正義"…と、いう言葉を聞いたことがあります…暁ちゃんの涙眼+上目使いというクリティカル確実の攻撃に耐えられる者はそういないでしょう…そしてそんな行為を狙うことなく行える暁ちゃんの秘められた才能…もしかしたら、時代や場所が違えば暁ちゃんの可愛さを以て暁ちゃん帝国を築けることが出来るかもしれない…)」

 

 

そこまで考え白雪はぶんぶんと頭を振る

 

まるで邪な考えを振り払うように…

 

彼女のチャームポイントともいえる両おさげが揺れる

 

 

「(何を馬鹿な考えを…!…でも…けど…私も松井司令官に暁ちゃんみたいに出来れば………くっ…駄目ですね…!全く想像出来ない…!…多分…恐らく松井司令官は私が上目使いをしてもただ退く可能性が…!ゔっ……そもそももう一度会えるかどうかもわからないのに…!)」

 

 

白雪、両手で頭を抱えてしまった

 

その様子を見ていた白雪の向かいの椅子に座るネっきゅんが眼を渋らせ

 

 

「…白雪…大丈夫か?」

 

「…え、あ…はっ!?…だ、大丈夫です!なんでもないです!」

 

 

顔を赤くさせ、慌てふためいた白雪は手をバタバタとさせる

 

 

「…そ、そうか…」

 

ネッきゅんはそう一言返し、椅子から立ち上がる

 

彼女が談話室から出ていこうとすると、朝潮が呼び止める

 

 

「ネッきゅんさん?どちらへ?」

 

 

するとネッきゅんは扉を開け、ちらりと朝潮の方を見る

 

 

「小便だ…私にだって便意はある」

 

 

ネッきゅんのハッキリとした言い方に少女達は苦笑い

 

 

利根も眉を歪ませ

 

「もう少し濁した言い方もあるだろう…仕方がない奴じゃネッきゅんは…」

 

 

やれやれといった風に手を上げて首を横に振る利根

 

ネッきゅんはそんな彼女を気にすることなく談話室から出ていった

 

 

 

 

ネッきゅんが出ていくと、警戒する播磨の面々の一人、初月が金剛に声をかける

 

 

「…何故ここに深海棲艦がいるんだ?…全く訳がわからないな…」

 

「Oh、ネッきゅんデス。確かに深海棲艦ではありマスが、私達の敵ではありまセンよー?」

 

頭を左右に揺らしながら笑顔で返す金剛に、初月はむむむ、と眉間にシワを寄せる

 

 

「…ネっきゅんて……うん…ますます訳がわからないな……まぁ、あんた達とのやり取りを見た感じ、悪い人ではなさそうだけど…」

 

 

 

そう言いながら初月は警戒する赤城達にちらりと視線を向け

 

 

「…ねぇ?赤城さん」

 

 

突然同意を求められた赤城はたじろぎながらも

 

「…え、ええ…そうですね…悪い人達では…無さそうです…」

 

 

ネッきゅん個人に対して呟いた初月だったが、赤城はこの談話室にいる播磨以外の少女達の事だと勘違い

 

しかしこれを言質と取った金剛はにこりと赤城に微笑む

 

 

「…少しは信用されたみたいでよかったデス!」

 

 

そう言い、金剛は赤城に右手を差し出すと、にこりと微笑む

 

 

「…改めてようこそ。海の鎮守府へ」

 

 

 

 

 

金剛と赤城が握手をする場面を見て、デコポンはほっと一安心

 

 

同時に宗谷達の様子を見て、とある現象を再認識する

 

 

「(…元々のあの状況…すぐ隣に死が迫っている状況で、艦娘とはいえ丸腰の者が心折れないわけがない…発狂して敵に突っ込んだりその場でうずくまったり……けれどもここに来たことでその荒れた、歪んだ心がリセットされたとしたら…嵐のさっき言ったことはあながち間違えでは「なぁ、不知火」…ぇ…あ…」

 

 

不意に名を呼ばれたデコポン

 

左手首に違和感を感じ、そちらを見るとデコポンの手首を掴んでいたのは天龍だった

 

 

たらりと冷や汗をかくデコポン

 

 

「…あ、はい…」

 

 

正直なところ、デコポンは今この瞬間で1番話したくないのが天龍だった

 

嫌いでも苦手でもない

 

寧ろ仲間のために涙を流して抵抗しようとした彼女には尊敬の念さえある

 

 

天龍は少し気恥ずかしそうに頬をぽりぽりとかく

 

 

眼帯のない彼女の顔はとても整っており、更に心まで見透かされそうな透き通った金色の眼を見て素直に綺麗だなとさえ感じてしまうデコポン

 

 

「…なぁ…ま…なんだ……浜田少尉のこと…何かわかったか?」

 

 

「…」

 

 

そう、今天龍を苦手とする理由がこれだ

 

また会えば必ず聞かれると思っていた質問…

 

そしてその答えは既に松井より聞いている

 

 

浜田の死を天龍に伝えるか否か…

 

冷や汗をかきながらデコポンは悩む

 

 

「…そ…その…」

 

僅か数秒の沈黙の後、デコポンは話を切り出そうとするも、天龍からは眼をそらし、若干声が上ずっている

 

 

「…ん…ゔゔん…ええ…ごめんなさい…まだ確認していないの…次までには確認…しておくわ…」

 

 

咳払いで仕切り直し、きりっとした表情で天龍に返答するデコポン

 

しかし対する天龍はデコポンの上ずった声、言い淀んだ台詞、目を合わせなかったこと、そのリアクションの流れを見て小さくため息し、苦笑い

 

 

 

「…ああ……わかった…次までにとは言わない…お前が……お前の話しやすいタイミングでそのうち教えてくれればいいさ……ありがとな」

 

 

苦笑いから優しい微笑みに変わり、デコポンに礼を言う天龍

 

最後のありがとうという単語にデコポンはほんのりと胸を痛める

 

 

それを払拭するように、赤城達の方へ視線を向けるデコポン

 

 

 

「…それよりぴょっ

 

 

 

 

…時間切れ…

 

例のごとくデコポンの姿がぱっ、と一瞬で消えてしまった

 

その不可思議な出来事に驚きを隠せない播磨の少女達

 

 

 

「…消えた!?」

 

「うそ…なんで…」

 

 

たじろぐ少播磨の少女達に対して、海の鎮守府の少女達はいつも通りといった雰囲気

 

 

「…行っちまったか」

 

「時間切れだねー」

 

 

ソファーに並んで座る摩耶とゴーヤはそう呟き、笑っていた

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

同時刻 医務室

 

 

 

 

医務室のベッドで仰向けに寝かされた少女、村雨の目がうっすらと開く

 

 

 

 

「……ぁ……ん……?」

 

 

知らない天井だ

 

 

そんな知らない天井を見つめたまま村雨は小さくため息をもらす

 

 

「…はぁ……ぁー…」

 

 

見つめていた天井、その視界の横からゆっくりと誰かの頭が見えてくる

 

 

 

「…やぁ、眼が覚めたかい?」

 

 

時雨だった

 

村雨の視界に入ってきた時雨はにこりと微笑むも、村雨は表情を変えることなく天井から時雨視線を変え、彼女をじっと見つめる

 

 

「…時雨…じゃないわね……いや…時雨は時雨だけれど…」

 

 

村雨の言う時雨とは僚艦、佐世保の時雨のことだろう

 

 

「……ふふ…うちの時雨とは大違いね…」

 

「…?……初めまして……僕は時雨。よろしくね」

 

 

あえて佐渡の、とは言わない

 

 

 

「……あー…ここってどこ?…あの世?地獄?」

 

 

ベッドから上半身だけ起き上がった村雨は医務室の中をきょろきょろと見渡しながらベッド横の椅子に座る時雨に問う

 

 

「…ん…あの世か地獄かと聞かれたら答えられないかな…ここは海の鎮守府、って僕達は呼んでいるよ」

 

「…海?…達ってことは他にも誰かいるってこと?」

 

 

うん、と時雨が頷くと、村雨はふーん、と鼻をならし、ベッドに座ったまま俯くと、大きくため息を吐く

 

 

「…村雨…大丈夫かい?」

 

「…全然…最悪の気分だわ…うまく説明できないけど…最悪の気分」

 

 

問うた時雨にそう返す村雨

 

だらりと力が抜けた村雨の右手に時雨は静かに自分の手を重ねる

 

 

「…うん。色々な感情が一気に押し寄せてくるよね…よくわかるよ」

 

 

時雨の返答に思わず彼女の顔を見上げる村雨

 

 

「…え…」

 

 

時雨は村雨の手に自分の手を重ねたまま眼を瞑り、かつて自分がここに来たばかりの頃を思い出す

 

 

 

「…ここに来る前に…生きていた時に自分が何をしたか…何人に迷惑をかけたか…どんな罪を犯したか……それら全てが全部自分の心にのし掛かってきて…」

 

 

ごくりと唾を飲む村雨

 

「…のし掛かってきて…?」

 

 

村雨の催促が聞こえると、時雨は困ったように笑う

 

 

「…耐えきれなくて…大声だして思わず泣き叫んだよ…ここの皆にも随分と迷惑かけたよ」

 

「…」

 

 

村雨は再び表情が暗くなる

 

そう、彼女も罪の意識が全て心にのし掛かってきている

 

眼が覚めたとき彼女が…時雨が隣にいてくれたお陰で心が決壊せずに踏みとどまってはいるが、これが誰もいなかったら自分も時雨と同じ様に泣き叫び、壁に頭を打ち付けていただろう、と想像し、ゾッとする

 

 

 

「……私…私の方こそ最低だわ…最悪の糞女よ…クィーンオブビッチよ…もう誰に謝ればいいかなんてわからない…どう償えばいいのかわからない…暴走する提督を止められなかった…壊れていく仲間を止められなかった…」

 

 

そうぽつりぽつりと話し始め、自嘲

 

 

「…一体何人殺したのかしらね…私のせいで何人が不幸になったのかしら…もう嫌…もう何も考えたくない…叶うのならば、もう一度…死にたいわ…」

 

目元を濡らしながら呪術のように呟く村雨は顔を伏せる

 

しかし言葉とは裏腹に、自分の手に添えられていた時雨の手を無意識のうちに握り返していたことに気づく村雨

 

 

「…あ…ご、ごめんなさい…」

 

 

手を離そうとした村雨だったが、時雨は霧雨のように優しく微笑み、両手で村雨の手を握る

 

 

「ううん…死ぬなんて言っちゃ…駄目だよ。生きて…生きてちゃんと罪を償うべきだ…うん。僕は…そう教えられたよ」

 

「…生き…て…」

 

 

うん、と時雨が頷くと、村雨の眼からは止めどなくぼろぼろと涙がこぼれ落ちる

 

突然の彼女の涙に時雨はわたわたと焦る

 

 

「…えっ…あ、む、村雨?」

 

「ぐすっ…ご、ごめんなさい……そう、そうね…死ぬなんて…ただの逃げよね…諦めよね…生きて罪を償う……こんな簡単なことにすら気づけなかったのね…本当に馬鹿ね…私ったら…」

 

 

村雨は垂れた鼻水をずずっ、と啜り、時雨に笑顔を返す

 

 

「…気づかせてくれてありがとう…時雨」

 

「どういたしまして。村雨」

 

 

生きて罪を償う

 

どうやって、どうすれば、だなんてこれから考えればいい

 

まずは生きることから、やり直すことからを選んだ村雨

 

 

その両手で時雨の手をしっかりと握る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まずは、精神的に、体力的に鍛えようか」

 

「え?」

 

「大丈夫!とても素敵な僕の師匠がいるんだ。きっと村雨の事もしっかり指導してくれるよ!」

 

「…えぇ?」

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

医務室の外の廊下

 

 

 

 

時雨と村雨が話し終える頃、壁に背を預けて部屋の中の会話を聞いていたのはネッきゅんだった

 

 

彼女達の会話が終わったのを悟ったネッきゅんはふ、と笑い、白い髪を揺らして壁から背を離す

 

 

 

「……ん?…お前…」

 

 

自分一人だと思っていたネッきゅんは自分よりも少しはなれた場所に立つ少女に気づく

 

 

鈴谷だった

 

 

「…あ、えっと…ご、ごめんなさい…」

 

 

眼を泳がせながらネッきゅんに謝る鈴谷

 

ネッきゅんはふん、と鼻で笑い

 

 

「…なぜ謝る……というか談話室にいた頃からずっと私の方を見ていたな……ベ…深海棲艦がソファーに座って紅茶を飲む姿が珍しかったか?」

 

「…や…そ、そうじゃないけれど…その…えっと…な、何て言えばいいかよくわからないんだけど…」

 

 

両手をもじもじとさせながらどう言えば、と言葉をつまらせる鈴谷

 

だがそんなもどかしい彼女の姿を前にネッきゅんは呆れることもイラつくこともしない

 

 

「…まずは落ち着け…別に怒りはしない。言いたいことを…思ったことをそのまま言えば良いだろう?」

 

「…あ、うん…はい…」

 

 

鈴谷は大きく深呼吸

 

 

「…えっと…なんとなく…なんとなく私と近いものを貴女から感じたっていうか…うん…上手く説明は出来ないんだけど…それで気になっちゃって…」

 

「成る程…確かお前は最上型の重巡洋艦だったな…私も艦種としては重巡洋艦だ…どこか通じるところがあるのかもしれないな…」

 

 

ネッきゅんはその白く綺麗な髪をかきあげる

 

「…もしかしたら…かつての私はお前と同型艦だったのかもしれないな」

 

「…あ、えっと…か、かもしれない…うん…へ、変なこと言って…ごめんなさい…」

 

 

ぎこちなく笑い、謝罪する鈴谷

 

ネッきゅんは少しだけ眉が下がる

 

 

「…だからなぜ謝る…別に疑問に思ったことを私に問うただけだろう…ここではお前を蔑ろにするものはいない…へつらわずにお前はお前らしくしていればいい」

 

 

そう言って鈴谷の横を通り抜けるネッきゅん

 

ああ、そうだ、と付け加える

 

 

「…ここにいる重巡洋艦は少なくてな…摩耶はゴーヤと嵐に取られたまま…ローズもいつも食べてばかりだ…同型艦かもしれないお前や三隈を…私は歓迎するぞ」

 

 

ネッきゅんに言われた言葉を聞いて鈴谷は驚き、きょとんとする

 

「…え、あ……えっと…」

 

 

再び微笑むネッきゅん

 

 

「…さぁ、談話室に戻ろうか。鈴谷」

 

「…うん!」

 

 

 

 

 

 

「…あの…利根さんも重巡…」

 

「…そうだったのか?…あのウザ…いや、元気っぷりを見ても軽巡にしか見えんな…」

 

 

 

鈴谷とネッきゅん

 

2人ならんで廊下を歩く後ろ姿はまるで姉妹のようだった

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

談話室

 

 

ネッきゅんと鈴谷が談話室に戻ると、皆ソファーや椅子に座るなか、1人響が皆の前に立っている

 

 

 

「…ネッきゅんも鈴谷さんも戻ったね…時雨と村雨はまぁいいとして…一つ、播磨の皆に共有すべき情報があるんだ」

 

 

赤城や三隈達は緊張した表情で響を見つめる

 

 

「…さっき赤城さん達が話していた君達の先生に関してだけれど、田中先生も坂本先生もちゃんと生きてるよ…そこは心配しなくていい」

 

 

響の言葉を聞き、播磨の少女達は驚く

 

思わずがたりと音を立てて立ち上がる宗谷は響の両肩を掴む

 

 

「たっ…!せっ…!ほ、本当ですか!?」

 

「落ち着いてもらえないかな、宗谷さん…君たち以外は映像で確認しているよ…坂本大佐は播磨に残り、田中大佐は東海支部に異動となった…それ以降のことは知らないけどね」

 

 

やれやれといった風に両手を上げ説明する響、宗谷は響の肩から手を離し、彼女に謝ると再び席に着く

 

そこでゴーヤがあ、と何かを思い出す

 

 

「…そういえばあの不知火ちゃん…前に来た時に、今は東海支部の資料室にいるって言ってたよね?田中先生の事知らないかな?」

 

ゴーヤの考えに天龍は苦笑い

 

 

「……また次に不知火がこっち来た時に聞きゃあいいだろ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…けれど…よかった…」

 

 

響から田中と坂本の安否を教えられた赤城はついそう呟く

 

安堵する赤城の背を、初月が何も言わずに優しく擦る

 

赤城は続けて問う

 

 

「…市川先生と…夢崎先生もご無事なんですか?」

 

 

赤城の問いに響は首を横に振る

 

 

「…残念だけれど…2人の安否はわからない…私達が確認したのは2人が執務室の窓から飛び下りた所までだからね…けれど遺体も確認はしてないから…どうだろうね」

 

 

響返しに狭霧がきゅっと唇を結ぶ

 

 

そこまで言い、響は赤城達から視線をはずすと申し訳なさそうに続ける

 

「…それと…千草という軍医の事だけれど…残念ながら亡くなった…吉津根の部下に殺害されてね」

 

 

瞬間播磨の少女達の表情が固まる

 

 

「…ちょ…ひ、響…」

 

はっきりとした物言いに流石の暁も響の名を呼ぶが、響は掌を暁に向け制止

 

 

「…遅かれ早かれ知ることになる…なら先に教えてあげる方がいいと思う」

 

 

 

田中と坂本が来る前、赤城達は随分と千草に世話になった

 

色々と相談したり、逆に話し相手になったり、と…

 

彼女達の親のような存在であり友人とも言える存在

 

 

そんな人間の死を知った彼女達は眼を、顔を伏せ、手を震わせる

 

 

赤城の背を擦っていた初月が頷く

 

 

「…変に取り繕って嘘をつかれるよりも…今はっきりと真実を言ってもらった方がマシだね…」

 

「…そう…ですね…教えてくださってありがとうごさいます。響さん…皆さんも気を使わせてしまってごめんなさい」

 

 

赤城も椅子から立ち上がり、少女達へ頭を下げる

 

そんな彼女の姿を見て、響は被っていた帽子を更に深く被り直す

 

 

「…その人を忘れないことが…弔いとなることもあるはずだよ…赤城さん達と千草さんとの思い出は…貴女達が覚えている限り消えることはないよ…」

 

 

 

これも響なりの励ましなのだろう

 

外の世界で人として10年生きていても、やはり誰かに対して面と向かって素直に励ますことに慣れていない、そんな彼女なりの心遣いだった

 

 

それに気づいたのか、赤城も少しだけ笑顔を作り、響へ頭を下げる

 

 

「…思い出は…消えない…確かにそうかもしれませんね……ありがとうごさいます。響さん」

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

日が沈み、月明かりが照らされた屋上

 

その手すりを掴み真っ暗な水平線を見つめる少女が1人

 

 

狭霧だった

 

 

 

「…はぁ…」

 

 

赤城達が亡き後、播磨の提督達がどうなったかを響が説明…

 

それを終えると電と金剛がこの鎮守府の施設や設備を説明してくれた

 

 

そして最後に時雨と村雨が登場し、涙ながらに謝罪しながら自己紹介をしてきた村雨、それにつられてか、何故かぼろ泣きだった時雨

 

 

 

…一応村雨とは挨拶を交わした

 

 

実にお互いぎこちないそれだったが、暁や綾波が間に入ってくれて大きなトラブルなく終えた

 

 

 

そんなことを思い出しながら狭霧は手すりに両肘を乗せる

 

 

鎮守府の屋上の手すりに手をやりながら水平線を眺めたのは武としたのが最後

 

敬愛する提督はもういない

 

あの時の流れからいえば十中八九既に殺されたのだろう

 

 

だが不思議なことに強い憤りという感情は薄い

 

 

 

「…これもこの世界の力…なのかしら…」

 

「…げ」

 

 

背後から聞こえた誰かの声

 

狭霧が振り返ると、屋上の扉を開けたまま固まる阿武隈と目が合う

 

 

「…ああ、阿武隈さん。こんばんわ」

 

「……あー…こんばんわ…」

 

 

扉を開けた以上、退けないと思ったのか、阿武隈は気まずそうに眼をそらしながら挨拶を返す

 

 

 

「(…随分と嫌われたものね…)」

 

 

暁や綾波…金剛達とはそれなりに仲良くできた狭霧

 

だが阿武隈や一部の少女達とはまだ話すら出来ていない

 

狭霧が思うに、生前武と行っていた怪しい行動のせいだろう

 

 

「(…警戒されているのは当然よね…)」

 

 

 

そんなことを考えているうちに、阿武隈が狭霧の隣に立ち、手すりに腕を乗せると、下の方を見つめている

 

 

「…何か見えるんですか?」

 

狭霧が問うと、阿武隈は何も言わずに見ればわかる、といった具合に顎でくいっ、と合図

 

 

 

 

「…」

 

狭霧もそれに倣い、屋上から阿武隈の見ていると思われる鎮守府の階下に、となりに立つ阿武隈を警戒しながら視線を向ける

 

 

「…あれは…」

 

 

見れば建物に囲まれた中庭のような場所で時雨、嵐、朝潮…そして何故か鈴谷が腕立て伏せを行っている

 

4人の前には教官のように神通が立っている

 

 

「…筋トレ…ですか?」

 

 

 

「…ほぉーんと…よくやるわよねぇ…」

 

狭霧の問いに返答したのは阿武隈のいる方向とは違う場所から聞こえた声だった

 

 

阿武隈のいる方向と逆の方を見れば、ふくよかなプリンツ・オイゲンことローズがドーナツを片手に時雨達を見下ろしていた

 

 

「…ええと…プリンツ「ローズでいいわよ?ニンジャガール」…に、忍者…?」

 

 

意外な単語で返答してきたローズに対し、狭霧は眉をひそめる

 

ローズはドーナツを一口かじる

 

 

「…?…貴女…なんとかって提督を助ける時に突然姿を現したじゃない…えーと…ニンジュツでしょう?」

 

 

どうやらローズは播磨鎮守府、その執務室での出来事の事を言っているようだった

 

確かにあれは見方によっては突然姿を現したように見えなくもない…が

 

 

「…あはは…あれは下の階にいた武提督を助けるために上の階の床を崩したんです…別に忍術を使ったわけでは…」

 

 

狭霧の説明にふぅん、とローズは唸り、阿武隈はつまらなさそうに手すりに乗せた腕に自分の顎を乗せ

 

「…に、してもいいあんた身体さばきだったけどね…駆逐艦にしては、だけど」

 

 

「…」

 

 

最初に談話室へ入ってきたときから感じていたが、阿武隈の視線がなんとなく怖い

 

 

自分を警戒してるのとは違う

 

まるで品定めするような阿武隈の視線

 

 

「…そう言っていただけて嬉し「で?…あんた本当は何者なの?」

 

 

言葉を遮られ、再びローズからの質問

 

気づけば狭霧はローズと阿武隈に挟まれた状態となっている

 

 

「…何故そんなことを?」

 

少しだけ思案した狭霧はローズへ返すも、その返答に答えたのは阿武隈だった

 

 

「明らかに色々と動きがおかしかったし、狭霧…あんた…ううん。あんただけじゃない。あの武って佐官も、もしかして海軍じゃないんじゃない?」

 

「そうねぇ…確かにおかしなムーヴ取っていたわね…他の人達は沖に現れた深海棲艦に夢中になっていたのにあんたとあんたの提督だけスパイみたいな事してたし」

 

 

やはりバレているか、と狭霧はため息し、下で筋トレをしている…特に動きのきれがいい朝潮をぼうっと見つめる

 

 

 

 

 

 

 

 

「…確かに私と武提督は海軍の者ではありません…あ、いえ…一応籍はちゃんとありますよ?」

 

 

阿武隈とローズも狭霧と同じく階下の筋トレシスターズに視線を向ける

 

 

「…私と武提督は…日本国軍海軍に所属しつつ…もう一つある組織に属しています」

 

 

ローズ、ドーナツを食べ終わり、2個目のドーナツをポケットから取り出す

 

 

「ある組織?」

 

 

 

阿武隈に問われ、狭霧はええ、と頷く

 

 

 

 

 

「…八咫烏…私と武提督は八咫烏に属しています」

 

「やたがらす?なにそれ」

 

 

ローズ、聞きなれない単語に首をかしげる

 

どうやら阿武隈も知らない様子

 

 

 

 

「…八咫烏は「ムスビ」

 

 

狭霧が説明しようとした時、更に別の少女の声で遮られる

 

 

阿武隈、ローズ、狭霧が屋上の入り口の方を見ると、村雨が立っていた

 

 

 

 

「…八咫烏…知ってるわ…といっても柴山提督に言われて色々と調べている時にたまたま1つの情報として出てきたくらいだから知っているのは名前だけだけど…」

 

 

やれやれといった風に話しながら狭霧達の方へ近づいてくる村雨

 

 

「…さっきはどうも…もしかして私余計なこと言ってる?」

 

「…いえ」

 

 

やはりまだ狭霧と村雨の間はぎこちない

 

先程は暁と綾波がいたから大きな問題はなかったが、今その2人はいない

 

 

最悪、喧嘩など起これば阿武隈とローズの2人で止めるしかない

 

 

そんなことを考えながらローズは2つ目のドーナツをかじる

 

 

 

「…"青少年育成支援団体ムスビ"…表向きはそう名乗ってるわね…立ち上げてから最初の3年間だけ海軍士官学校への支援金を提供しているけど、その翌年からの支援金はなし。というかその後の活動も音沙汰なしとなった謎の組織。裏では八咫烏と呼ばれている」

 

 

村雨の説明を聞き、ローズはドーナツを更に一口

 

「最初はどこかの金持ちの気まぐれで作られ、興味がなくなったから活動しなくなった、と考えたわ…けれどいつまでも組織として無くならなかったから気になって調べてみたの」

 

 

「…日本の海軍ってそんなことまで調べるの?」

 

 

二つ目のドーナツを食べ終えたローズが村雨に問うと、村雨は苦笑いし自分のお下げを片方いじる

 

 

「…や…多分うちだけだと思う…ほら、うちの提督ってアレな人じゃない…だから『正義の鉄槌のために怪しい組織は片っ端から調べとけ』って命令されてね…今思えば気の狂った命令だったわ…」

 

 

「んん~…」

 

理解したのか、唸りながらローズは三つ目のドーナツを取り出す

 

そのとき阿武隈は思った

 

ローズはその服のどこにドーナツをしまっていたのだろう。そしてあと何個出てくるのだろう、と…

 

 

 

「…で、調べても調べても八咫烏は謎ばかり…お陰で無駄に信憑性の低い噂ばかり聞いたわ…やれテロリストのダミー組織だとか陸軍の非公式組織だとか…ね」

 

 

ローズの450キロカロリー越えを確認した阿武隈はテロリストという単語に反応

 

 

「…?…天誅軍とは違うの?」

 

この日本で有名なテロリストの代表といえば天誅軍

 

国家転覆を狙い旧帝国海軍、帝国陸軍の復活を目論み、目的のためならば民間人でさえも虐殺を行う、と言われる犯罪組織

 

 

しかし村雨は首を横に振る

 

 

「…さぁ…だからそこにいる狭霧さんに教えてもらおうって思ってね」

 

 

ここで村雨は狭霧にバトンタッチ

 

狭霧は諦めたかのように眼を瞑り、再び大きなため息をはく

 

 

 

「…その秘密は墓まで持っていく」

 

 

 

狭霧の呟きに阿武隈とローズは視線を彼女へ向ける

 

3人に見つめられた狭霧は苦笑い

 

 

「……ですが私も既に死んだ身…ならば秘密もなにもありませんが…残念ながら私自身は末端の末端…上からの命令を受けた武提督と行動していただけで八咫烏の事はほとんど知りません…」

 

 

阿武隈はそう説明する狭霧の挙動や呼吸をさりげなく観察

 

嘘は言っていないように感じる

 

 

「…ただ、私と武提督で行っていた主な任務は海軍組織内の汚職や不正を行う将校の調査、捕獲等でしたね…今回の播磨は武提督の気まぐれで参加した作戦ではありましたが、そのついでということで吉津根中将の素行調査、ということとなりました」

 

 

「へぇ、lCPOみたいねぇ」

 

 

ローズ、遂に4つ目のドーナツを取り出す

 

「…」

 

 

ローズの持ったドーナツを見た阿武隈は、小さくため息をはく

 

 

 

 

 

 

「…んぁ?」

 

 

 

間抜けな声を出したローズは、何故かきょろきょろと自分の足元を見渡す

 

 

「…確かにそうですね…ですが八咫烏は直接海軍や憲兵察と関わっては…どうかしましたか?ローズさん」

 

 

ローズの挙動に疑問顔の狭霧は問う

 

「…んー…?ドーナツどっかいっちゃった…」

 

「…はぁ…そうですか…」

 

 

 

呆れる狭霧はなんとも力の抜ける気持ちになる

 

何故か口をもぐもぐさせた阿武隈は大きく腕を空へと伸ばす

 

 

 

「…ごくん……ま、いーや。大体わかったからもう説明いらないし」

 

 

なんともつまらなさそうにそう返す阿武隈

 

狭霧、村雨、ローズでさえも三者三様のリアクション

 

 

「…」

 

「…え…けっこう大事な話だと思うんだけど…」

 

「ねー…あたしのドーナツ知らない?」

 

 

階下で頑張る少女達から視線を変え、手すりにもたれ掛かる阿武隈

 

 

「…別に何者かって聞いただけであって、何やった人か、なんて興味ないし…つまりあんた…狭霧は海軍にいながらも海軍のクズを探しだしてぶち殺すための組織にいたってことでしょう?それだけわかれば十分だから」

 

 

淡々とそう話す阿武隈

 

ローズはそんな彼女をジト目で見る

 

 

「…なんて自分勝…自由な人ねぇ……っていうか言い方」

 

 

「…まぁ……あまり間違ってはいませんけど…」

 

狭霧もぽりぽりと自分の頬を指でかく

 

「…あはは…」

 

村雨は呆れたように苦笑い

 

 

 

3人のリアクションをよそに、阿武隈は腕を軽くストレッチしながら手すりから離れる

 

 

「…狭霧ちゃんさ…あたしと手合わせしない?」

 

「…え?」

 

 

突然の阿武隈からの手合わせ

 

 

「八咫烏?で相当修羅場くぐったんだよね?ならある程度接近戦もできるっしょ?…なーんか急に身体動かしたくなっちゃってさ…ひとつ付き合ってよ」

 

なんとなく先程よりも生き生きとし始めた阿武隈は屈伸

 

そんな阿武隈を前に狭霧はたじろぐ

 

 

「…えっと…あの…」

 

「じゃあそっちの…村雨…ちゃんと2人でいいよ。2対1で相手してあげる」

 

そう言われ、気を抜いていた村雨のツインテールがびん、と左右に伸びる

 

 

「…は、はぁ!?意味わかんない!…なんで私まで「村雨ちゃん神通さんのトレーニングサボったっしょ?」…ど、どうしてそれを…」

 

 

屋上に来るまで、村雨は時雨と共に神通トレーニングに参加していた

 

しかし元々体力的にも未熟だった村雨が最後まで鬼の神通トレーニングに参加できる筈もなく、情けなくも途中で抜けさせてもらい、こうして屋上までやってきたのだった

 

 

故に今下では村雨を覗いた時雨、朝潮、嵐、鈴谷だけでトレーニングを行っている

 

 

 

「…だからこれからやるのはトレーニング後半戦…って事かな?…村雨ちゃんはそれでいいや。んで狭霧ちゃんは……うん。完全にあたしの事情。八咫烏のメンバーの戦闘力、戦術ってのもちょっとだけ興味あるしね」

 

 

そういって屋上の空けた場所でアキレス腱を伸ばす阿武隈

 

 

「…八咫烏の元メンバーに…元正義の佐世保の幹部…そんな2人がまさか軽巡1人にビビってるわけないよね?」

 

珍しくテンションを上げた阿武隈はイタズラな笑顔を2人に向け煽る

 

 

阿武隈の笑顔を見た村雨と狭霧は、一瞬で顔つきが変わり、阿武隈のいる場所まで近づく

 

 

 

「…元とはいえ、八咫烏を馬鹿にされて黙っているわけにはいきません」

 

「…私も…これでも実力で秘書艦補佐にまで上り詰めたんだから…!」

 

 

 

月の光が3人を照らす

 

 

かつて敵同士だった2人の駆逐艦が対峙するは元トラック艦隊、第一親衛隊隊長…

 

 

 

笑顔の阿武隈はとん、とん、と軽快にジャンプ

 

 

 

「…上等…じゃあ、遊ぼっか」

 

 

 

 

 

 

 

この数分後、朝潮達に交ざって村雨と狭霧は再び神通トレーニングに参加することとなる

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 

 

「…八咫烏…」

 

「…なのですか…」

 

 

 

鎮守府食堂

 

少女達が眠る深夜帯

 

阿武隈に呼び出され、寝間着姿のまま食堂の椅子に座る響と電は狭霧のこと、そして八咫烏のことを報告された

 

 

「そ。一応共有は大事かなって思ってさ…ああ、寝てたところごめんね2人とも…金剛さんと天龍は大丈夫だった?」

 

 

阿武隈は響、そして電の各同室の少女達のことを問うと、電は苦笑い

 

「…金剛さんなら部屋で既に爆睡しているのです」

 

響は表情を変えず

 

 

「…天龍さんは今浜辺の方にいるはずだよ」

 

 

「ふぅん……脱線しかけたけど、とりあえず狭霧ちゃんはそんな感じ…あと、狭霧ちゃんは多分もう裏切ったりとかはないと思うよ?村雨ちゃん共々軽く手合わせしてイジメ……自分達の実力しっかりと思い知らせてあげたから、へんに反抗とかはしない筈だからね」

 

 

「…え…あ、ありがとうございますなのです阿武隈さん…」

 

「…あまりいじめちゃ駄目だよ?…ここにいるのは皆同志みたいなものなんだから」

 

 

 

しかし、と響は電が淹れてくれたお茶を一口啜ると、眉を寄せる

 

 

 

「…天誅軍…八咫烏…海軍の闇…暗い情報が多すぎてなんだか笑うしかないね…それらの記憶…記録を見ている第四資料室の……山田さんだっけ?…その人のことも気にはなるけども…」

 

 

「…そう…ですね。…電達にはなにも出来はしませんが…」

 

 

響と電はそう言い、謎と少女だけが集まるこの状況に頭を抱える

 

 

 

 




はい

お疲れ様でした

今回やって来たのは赤城、三隈、鈴谷、宗谷、霰、神風、初月、狭霧、村雨の9人ですね。はい、多いですね。台詞回すの辛くなってきました


続々とと増える海鎮艦娘…

新しい謎の組織、八咫烏…

近日中に投稿すると言って一週間以上投稿が遅れたこと…


なお、次のお話では今回のお話に関係したBreakを上げようと思います。

もしよろしければですね、どうぞよろしくお願いします


はい
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