マグル学教室へようこそ   作:BellE

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第2話 魔法界へようこそ【前編】

 そして一週間が過ぎ、マーガレットはクィレルとともにダイアゴン横丁へと向かうこととなった。待ちに待った魔法界への第一歩を踏み出す日である。

 約束の時間——の十分前に店先に現れた青年は初めて出会った際のいかにも魔法使いらしい姿とは打って変わり、白いシャツに茶色のズボンといったってシンプルな恰好をしていた。シャツの袖をまくっているところが実に夏らしい。

 一方、マーガレットはドット柄の青いワンピースをまとい、ピクニックに使うような大きなバスケットを提げていた。

 

「今日の先生の恰好、あんまり魔法使いっぽくないですね」

 

 駅へと向かう道すがら、頭の中に浮かんでいた素朴な感想をマーガレットは口にした。

 

「ま、ま、魔法使いっぽくない、ですか?」

 

 クィレルは困ったように笑う。

 

「この前着ていらっしゃったあの暑そうなローブ、あれがいかにも魔法使いっぽかったです」

 

 「暑そうでしたか」と呟くクィレルの笑みは先ほどよりも自然で、いくらか緊張が解けた様子だった。

 

「み、ミス・マノック、魔法使いはマグル——ああ、マグルというのは魔法を使えない人々のことですが、彼らにま、魔法のことを知られてはいけないという決まりがあります。だ、だから、人前でむやみやたらに魔法を使えないし、その存在を隠さなければならない。ゆえに、目立たないようにしなければならないのですよ。と、特に今日のような町中を歩く日には」

 

 少女はなるほど、と思いながら話を聞いていた。一週間前にこの魔法使いがわざわざ人目につきにくい路地まで移動してから魔法を使っていたのは、この魔法界の決まりごとが原因だったらしい。

 マーガレットは自分が今まで生きてきた社会と同じように、魔法界にも様々なルールがあるということを頭に入れた。

 

「そういえば、ま、魔法使いらしさでいえばミス・マノック、き、君もなかなかですよ」

「わたしも、もう魔法使いらしいですか?」

 

 マーガレットはきょとんと首を傾げている。クィレルが自分のどこに魔法使いらしさを感じたのかよくわかっていない様子だった。今日のコーディネートを確認するが、別におかしなところはないはずだ。

 

「ふ、服装のことではなく、君の飼っている大鴉(レイブン)のことですよ。ま、魔法界には使い魔として生き物を飼う習慣があります。か、鴉も人気がありますが、彼らは賢いからこそ仕える相手を選ぶ。だ、だから、鴉の飼い主は優秀な魔法使いだと考えられています」

「なるほど。魔女と鴉の組み合わせは物語の中だけではないのですね」

 

 二人が歩きながら話していると、マーガレットのバスケットに被せてあった布が突然もごもごと動き出した。クィレルが不思議に思って眺めていると、徐々に赤いチェック地の布がめくれていく。そして、めくれた布の隙間から青い目の鴉が顔をのぞかせた。

 マーガレットは「あっ!」と声を上げた。バスケットを持つ手と反対の手で口を押えている。ネモはクィレルと目が合うと「こんにちは(Hello)」とも聞こえる鳴き声を発した。

 

「つ、連れて来たのですか……」

「ごめんなさい、驚きましたよね。その、お出かけをするときは、いつもこうやって連れて行くんです。あの、今日はお留守番させるつもりだったんですが、朝からずっとこのバスケットに入ったままで……。えっと、どうしてもついて来たかったみたいだったから、一緒に連れて来てしまいました」

 

 マーガレットが頭を撫でると、ネモは気持ちよさそうに瞼を閉じた。

 

「ネモ、お願いだからいい子にしていてね。先生にご迷惑をおかけしちゃだめだからね」

「その子はネモというのですか」

「はい。小説のキャラクターから取りました。ネモ、先生にご挨拶して」

 

 マーガレットが声をかけるとネモはぺこりと頭を下げる。このような芸もできるとは、ずいぶんと躾けられた鴉なのだなとクィレルは思った。

 

「一緒について来たがるとは……。き、君によく懐いているのですね」

「ネモとはずっと、ずっと一緒にいるんです。それこそ、この子が卵から生まれた時から。いつもわたしのそばにはネモがいて、家族からは姉妹みたいだって言われています」

 

 マーガレットがもう一度頭を撫でてやると、ネモは首をバスケットの中に引っ込めた。マーガレットは中が見えないように布を被せ直す。

 

「いい子いい子。……そうだ、先生。お聞きしたいことが」

 

 マーガレットはバスケットを抱きかかえると、先ほどまでよりも声を落としてクィレルに話しかける。

 

「ホグワーツにネモを連れて行くことはできませんか? 必要なもののリストには、ふくろう、猫、ヒキガエルのことしか書いていなくて……。大鴉(レイブン)はやはり連れて行けないんでしょうか?」

「い、いえ、推奨されるのがその三種類でして、申告さえすれば他の動物を連れて行くこともできます。それに、ネモはよく躾もされているようですし、な、なにより人になれている。だから、ミス・マノックとともにホグワーツでも生活できるかと思います」

「本当ですか! よかった……」

 

 マーガレットはゆっくりと微笑む。

 

「ネモ、これからもずっと一緒にいようね」

 

 マーガレットは抱きしめていたバスケットに向かって優しく語りかけた。ネモは姿こそ見せなかったものの、飼い主の言葉に答えようとしたのか、大きな声で「カア! カア!」と鳴いた。

 ちょうどすれ違うところだった歩行者がぎょっとした様子でマーガレットたちの方を見た。しかし、肝心の鴉の姿が見えなかったためか、首を捻ったまま去っていってしまった。

 

「すみません、先生。魔法使いは目立たないように、ですよね」

「た、たしかにその通りですが、これくらいはだ、大丈夫ですよ。ま、魔法を使えることが知られなければいいので。それに……」

 

 クィレルは周りに人がいないことをよく確認し、再び口を開いた。

 

「いざという時はき、記憶を消せばいいので」

 

 クィレルはてっきり「そんな魔法もあるんですか!」とマーガレットが驚くものだとばかり思っていた。しかし——

 

「そんな魔法があるんですか……」

 

 マーガレットの声は微かに震えていた。心なしか、顔色も悪く見える。

 

「み、ミス・マノック、大丈夫ですか?」

 

 クィレルの声が聞こえなかったのか、マーガレットはなにも答えない。

 

「ミス・マノック? ま、マーガレット?」

「はい! あぁ、あの……。ごめんなさい、先生。少しぼうっとしてました」

 

 そう言って、マーガレットはニッと笑った。声の調子も元に戻っているし、顔の血色も良い。先ほど具合が悪そうに見えたのは気のせいだったのだろうか、とクィレルは思った。

 

「その、先生に教えていただきたいことがあるんです」

「は、はい、なんでしょうか?」

「えっとですね、まずは……」

 

 それから目的地に着くまでの間、マーガレットは質問をし続け、クィレルはそれに答え続けた。魔法界のこと、ホグワーツのこと、それからクィレルの教えるマグル学のことなど質問は多岐に渡り、ちょっとした授業のようであった。

 勉強熱心な生徒の相手をするのに集中していたものだから、先ほど覚えた違和感のことなどクィレルはすっかり忘れていた。

 

 

▼ ▲ ▼

 

 

 地下鉄を降り、二人と一羽はチャリング・クロス通りまでやって来た。この日が週末だったからか、通りはかなりの賑わいだ。

 ネモが表の様子を見たがっているのか、バスケットにかけている布がもぞもぞと動いている。マーガレットも早くネモを外に出してやりたかったが、鴉を連れているとそれだけで目立ってしまう。今はまだバスケットの中で“いい子”にしていてもらうため、布の隙間からネモの体を優しく撫でていた。

 

「み、ミス・マノック、あの建物が見えますか?」

 

 通りを歩いていたところ、ふいにクィレルが一軒のパブを指さした。

 

「はい。あれは……パブですか?」

「そのとおり。あ、あそこは『漏れ鍋』といい、ダイアゴン横丁の入り口、つ、つまりは、魔法界の入り口になっています」

「こんなところ、そのマグルの人たちが大勢いるところに入口があって大丈夫なんですか!」

「そ、それが大丈夫なのです。ま、マグルたちが入ってこないよう細工が施してあるので」

 

 たしかに、薄汚れたパブの両隣にある書店とレコード店には絶えず人が出入りしている。しかし、件の漏れ鍋には誰も寄りつかないようだった。マーガレットは魔法使い以外にはあの店が見えていないのではないかと考えていた。

 

「で、では、行きましょう」

「はい、先生!」

 

 マーガレットはクィレルの後を追って店に入った。薄暗い店内では、とんがり帽子をかぶった二、三人の老女がグラスを傾けていた。また、先日のクィレルのようにローブを身にまとった男性もいる。

 いつの間にかネモもバスケットから顔を出し、表の様子を眺めている。頭を絶えず動かしていることから、ネモも魔法使いたちの様子に興味津々のようだ。

 

 二人と一羽は彼らの脇を通り過ぎ、パブの裏手にある小さな中庭まで来た。

 

「こ、ここから魔法界に入ります」

 

 ここが入口だと言われても、マーガレットにはピンとこなかった。なにせここは四方がレンガの壁に囲まれているのだ。先ほど通ったパブへの出入り口を除けば扉らしいものはなにもないし、その先に広がっているはずの魔法界の景色さえ見えない。

 マーガレットが首を傾げている間、クィレルは壁のレンガを慎重に数えていた。ネモはそんな彼の様子を熱心に見つめている。

 

「じゅ、準備は、いいですか?」

 

 いつの間にかクィレルは杖を構えていた。彼はマーガレットが首を縦に振ったことを確認すると、杖の先で壁を三回叩いた。すると、突如としてレンガが動き出し、次の瞬間にはアーチ形の入り口が出来上がっていた。マーガレットがのぞき込むと、その先には石畳の道が曲がりくねって先が見えなくなるまで続いている。

 感動、驚嘆、好奇心——。様々な感情が溢れてきて、マーガレットはそれらを頭の中で上手く整理することができなくなっていた。ゆえに、まるで時間が止まったかのように動きを止め、アーチの先を見つめる。同じように、ネモも向こう側に広がる魔法界のことをじっと見ていた。

 

 クィレルが咳払いをしたことで、マーガレットはハッとした様子で彼の方に顔を向けた。クィレルはマーガレットと目が合うと、ふっと笑ってこう言った。

 

「ミス・マノック、魔法界へようこそ」

 

 マーガレットはクィレルに手を引かれ、魔法界への第一歩を踏み出した。

 

 

▼ ▲ ▼

 

 

 グリンゴッツ魔法銀行をあとにしたクィレルの手には大量の金銀銅貨が入った麻袋が握られていた。マーガレットが保護者たちから預かっていたマグルの貨幣を魔法界の貨幣に両替したのだが、どうもかなりの大金を持たされていたらしい。一週間前に目安として伝えた金額よりも遥かに多いのは明らかだ。さすがにこの大金を11歳の少女に持たせるわけにはいかないと思い、自身の鞄の中にしまった。

 

「先生、次はどこに行きますか?」

 

 歪んだ外観の銀行やそこで働く小鬼たちを見て、すっかり魔法界に魅了されたマーガレットは目を輝かせながらクィレルに聞いた。

 

「り、リストに書いてあるものを順に揃えていきます。まずは、教科書を見に行きましょう」

「はい!」

 

 

 

 一行はフローリシュ・アンド・ブロッツ書店に足を運んだ。本を愛し、読書を趣味とするマーガレットは初めて訪れる魔法界の書店に胸を高鳴らせていた。彼女は本棚一杯に並べられた色や高さもバラバラな背表紙を眺めるのに必死で、リストアップされている教科書を探すのは自然とクィレルの役目となった。

 

「み、ミス・マノック、あまり私から離れないでくださいね」

「はい、先生。魔法界って本当に面白いですね。どれもこれも初めて見る本ばかりです!」

 

 本の背に書かれたタイトルはどれも初めて見る名前で、マーガレットが今まで読んできたような有名な文学作品ですら、一冊も見つけることができなかった。

 そんな未知の世界を巡るなかで、彼女はある一冊に本に興味を持った。棚の高い位置に置かれたその本を取ろうとして手を伸ばす。しかし、まだ成長途中のマーガレットの身長ではうまく手が届かない。つま先立ちになり、腕を指先までまっすぐ伸ばしたことで、なんとか背表紙に指が届いた。後は本を棚から抜けば——と思った瞬間のことだった。

 

「きゃあ!」

 

 マーガレットはバランスを崩し、そのまま後ろ向きに倒れていく。彼女の背後には本棚があり、このまま倒れれば頭をぶつけてしまう。死ぬかもしれないという最悪の考えが彼女の頭をよぎった。

 

「危ない!」

 

 マーガレットの悲鳴に聞き、彼女が今にも倒れて頭をぶつけそうなことに気がついたクィレルはすぐさま杖を抜いた。彼がマーガレットに向かって杖を振ると、彼女の体はぴたりと動きを止める。

 マーガレットはなにが起きたのかよくわからず、自分に対して杖を向けているクィレルの方を向いて目をパチパチとさせていた。

 

「み、ミス・マノック、け、怪我はないですか?」

「はい。あの、ありがとうございます。えっと、先生が魔法で助けてくれたんですよね?」

「そ、そうです」

 

 クィレルはマーガレットを助け起こし、彼女が怪我をしていないことを確認する。一応、バスケットの中にいるネモのことも見るが、そちらも大丈夫なようだった。

 マーガレットの顔は気恥ずかしさからか、それとも別の理由からかほんのりと赤くなっていた。

 

「先生が助けてくれなかったら、危ないところでした……。本当にありがとうございます。あの、魔法ってすごいですね。人を守ることもできるだなんて……」

「そ、そんなに大した魔法ではありませんよ。と、ところで、ミス・マノック、どの本を取りたかったのですか?」

「あそこにある『ホグワーツの歴史』という本です」

 

 クィレルはマーガレットが指差した本をいとも簡単に本棚から取ってみせた。

 

「こ、これですか?」

「はい、ありがとうございます! あの、先生。この本も買っていっていいですか?」

「ええ、もちろん」

 

 幸い、マーガレットが持たされていた資金は潤沢にある。もしや彼女の保護者たちはこれを見越して多めに持たしていたのかもしれないとクィレルは考えた。

 

「よかった。わたし、ホグワーツのことをもっと知りたくて……。この本でもう少しでもお勉強できたらなと思って」

「いい心掛けです。そ、そうだ、恐らくその本にも書いてあるでしょうが、ホグワーツには四つの寮があるのですよ。勇気ある者が集うグリフィンドール、忍耐強く忠実なハッフルパフ、目的を遂げるための狡猾さを持つスリザリン、そして賢く、意欲ある者を受け入れるレイブンクロー。わ、私はレイブンクロー寮生でしたが、そこには君のように本が好きで知識に貪欲な学生が多くいました」

 

 クィレルは知的好奇心の強いマーガレットのことだから、彼女も自分と同じ寮に組分けされるのではないかと考えていた。マーガレットも彼の説明を聞き、レイブンクロー寮に対して強い興味を持った。

 

「そんな面白そうな寮があるんですね。わたしもレイブンクローに行きたいです!」

「レイブンクローは君のような学生をき、きっと受け入れるでしょう。さ、さてミス・マノック、残りの教科書も探しに行きましょうか」

「はい! あ、先生。あの本も買いたいのですが、いいですか?」

 

 結局、クィレルは教科書八冊とマーガレットが希望した書籍五冊を購入した。それなりの金額を会計では支払ったが、彼女の保護者たちが持たせた資金はまだ十分に残っている。これなら他の学用品も無事に買い揃えられるだろう。

 

 

▼ ▲ ▼

 

 

 書店を出た一行はその足で鍋屋や望遠鏡の店を回った。それから、リストには載っていないが、マグル育ちのマーガレットが持っていなかった羽根ペンや羊皮紙も文具店で買い揃えた。

 

 こうして、いくつかの買い物をすませたマーガレットたちはマダム・マルキンの洋装店を訪れた。時節柄か、店内にはマーガレットと同い年くらいの子供たちが多くいて、店員たちも忙しそうに動き回っている。

 自分がいると彼らの仕事の邪魔になるかもしれないと考え、クィレルはマーガレットに代金を預けると、自身は店の外で待つことにした。

 

 マーガレットを待つ間、他の店でも見ていようかとクィレルは考えた。店に入るときには気がつかなかったが、洋装店の向かいは時計屋のようだ。彼はなんとなくショーウィンドウに飾られた金や銀の時計を眺めていた。

 そういえば、とクィレルは自分がホグワーツに入学する際に父親から時計を贈られたことを思い出した。

 

 入学おめでとう、と書かれたメッセージカードとともに離れて暮らす父から送られてきた腕時計。魔法界において時計といえば成人祝いの品であり、当時のクィレルはなぜ父が時計を選んだのだろうと思った。しかし、マグル学を学び、マグルの文化や社会について詳しくなった今となっては、あの時計には「頑張れ」という父からのエールが込められていたことがわかる。

 そして、クィレルは思い出した。マグルの父から時計を受け取った際に抱いた「なぜ」という疑問、あれがマグル学に興味を持ったきっかけだったことを。魔法界だけでなく、父が生まれ育った世界のことも知りたいと思ったからこそ、こうしてマグル学の研究の道にクィレルは進んだのだ。

 

 ショーウィンドウを眺めながら、自身の過去を思い出していたクィレルだったが、ふと例の新入生のことを思い浮かべた。そういえば、あのマーガレット・マノックという少女も「お父さんのことがもっと知りたい」と言っていたことを彼は思い出す。

 父のことを、父が生まれた魔法界のことを、父が育ったホグワーツのことを知りたい。それは、まるでかつての自分自身の姿のようでもあった。

 

 クィレルは考えた。ならば、自分が少しでも魔法界のことを、それからホグワーツのことをマーガレットに教えてあげればいいのではないかと。その手始めとして、新たな世界に飛び込んでいく彼女に入学祝いの時計(エール)()ってもいいのではないかと。

 あの少女をこうして魔法界に連れて来た以上、その責任が自分にあるようにクィレルは感じていた。それは思い上がった考えだったかもしれないが、この時の彼は自分のことを「先生」と呼ぶ()()()()()()の存在に気を良くしていたのだった。

 

 こうして、クィレルは時計店の重厚な扉に手をかけた。

 

 

▼ ▲ ▼

 

 

 時計店を出ると、ちょうどマーガレットも制服の採寸と購入を終えたところだった。こちらに向かって歩いてくるクィレルの姿を見つけると、彼女はにこにこと笑いながら彼の元へと駆け寄った。

 

「先生、次はどこにいきますか!」

「そ、そうですね。揃えなければならないものも、残るはあと一つです。だから、それを買いに行きましょうか」

 

 マーガレットの顔がぱっと輝いた。

 

「もしかして——」

「その、もしかしてです。恐らく、み、ミス・マノックが今日一番楽しみにしていた買い物ではないでしょうか。で、では、オリバンダーの店に向かいましょう」

 


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