幕間1 絶命日パーティーへようこそ
——マーガレット・マノックがまだホグワーツの学生であった頃の話である。
「先生、絶命日パーティーってご存知ですか?」
「絶命日パーティー? あぁ、聞いたことはあります。ゴーストが自分の死んだ日を祝うパーティーのことでしょうか」
クィレルが答えると、マーガレットは大きく頷いた。
「あっていましたか。ですが、どうしてまた?」
「いえ、先生なら行ったこともあるのかなと思いまして。あの、実はほとんど首なしニックの絶命日パーティーが近々あるそうで。それで、マートルに行ってみないかと誘われたんです」
——思い出すのは昨夜のこと。
「あなた、絶命日パーティーって知ってる?」
いつものように他の生徒がめったに寄り付かない三階の女子トイレでネモに水浴びをさせていたところ、「嘆きのマートル」が声をかけてきた。
「絶命日パーティー、ですか? えっと、わからないです。初めて聞きました。マートル、ホグワーツにはそんなパーティーがあるんですか?」
マーガレットの反応を見て、マートルはふふんと鼻を鳴らした。
「わからないの? わたしは知っているのに? へえ、あなたでも知らないものがあるのね」
「はあ、気分がいいわ。だから、特別に教えてあげる。絶命日パーティーっていうのは死んだ日を祝うパーティーのことよ。まあ、ゴーストの誕生日みたいなものね」
「なるほど。ゴーストならではの、そんな面白い文化があるんですね! ありがとう。マートルのおかげで、また新しいことが知れました」
ゴーストによる、ゴーストのためのパーティーと聞き、マーガレットは興味を示さずにはいられなかった。
「絶命日パーティーのこと、想像しただけでもわくわくしちゃいます。いつか、わたしも行ってみたいです。もしかして、マートルも今度その絶命日パーティーをするんですか?」
「え? わたしの死んだ日はもっと先よ。それに、わたしが絶命日パーティーをしたってどうせ誰もこないわ……。みんながわたしをどう思ってるか、あなただってそんなことわかってるでしょう!」
先ほどまでの上機嫌なマートルはどこへやら。不貞腐れて便器にぶくぶくと沈んでいく彼女をなだめ、マーガレットはようやく絶命日パーティーの話題が出たわけを聞き出した。
「……今度、ほとんど首なしニックの絶命日パーティーがあるのよ。それで、わたしにも招待状がきたの。絶命日パーティーって楽しいのよね! ……って、誰かが言ってるのを聞いたわ。でも、実際にパーティーに行ったことはないの」
今度はマートルがおいおいと泣き始めたものだから、マーガレットの足元に水溜りが広がる。
「わたしにパーティーに来てほしいと思っているゴーストなんていないってわかってるし。誰も嘆きにマートルの相手なんかしたくないって思ってるのよ!」
「マートル。なら、わたしがマートルの相手になります。それなら、マートルもパーティーに行けるんじゃないですか?」
マートルは急に泣き止み、マーガレットに対して分厚いレンズ越しに疑いの目を向けていた。
「……あなた、なにを企んでいるの?」
「なにも企んでいませんよ。話を聞いていたら、本当はマートルも絶命日パーティーに行ってみたいのではないかと思って」
「嘘よ。あなたもわたしをからかって遊んでるんでしょ」
マートルはまだマーガレットのことを信じきれていないのか、「嘘でしょう」という目つきで彼女のことを見ている。
「それはありえないですよ。マートルに嫌われて、そのせいでこのトイレが使えなくなったらわたしもネモも困るんですから。それでも信じてもらえないなら……。そうだ。わたし、実は一つ企んでいることがあるんです」
「やっぱり企んでいるんじゃない!」
「はい。わたしは絶命日パーティーのことがもっと知りたい。だから、そのためにマートルにはわたしを誘ってもらいたいのです。マートルはパーティーに行ける、わたしは知識が増やせる。これでお互いさま」
マーガレットが語った動機にマートルは妙に納得したようすだった。
「あなたのその自分の知識欲のためなら、手段を選ばないところは実にレイブンクローらしいわね」
「レイブンクローらしい?」
「えぇ。レイブンクロー生のそういう嫌な部分をたくさん見てきたわたしが言うんだから。……わかったわ。招待状には一人なら友人を連れてきてもいいとあったし、あなたを連れて行ってあげる」
ゴースト主催のパーティーなど、今後誘われる機会があるかもわからない。だから、マーガレットがマートルの誘いを喜ばないわけはなかった。
「——ということで、ニコラス卿の絶命日パーティーに参加させてもらえることになったんです!」
「それは楽しみですね。そのパーティーはいつあるのですか?」
「10月31日の夜だそうです」
マートルはハロウィーンの日の夜に地下牢で待っていると、ついでにもし来なかったらただじゃおかないとも言っていた。
「10月31日……。それなら、ハロウィーンのパーティーに君は出ないということですか?」
「はい。残念ですけど、今年はそのつもりです。マートルとの約束ですから」
「ミス・マノック、君は今年もあの料理の数々を楽しみにしているものだと」
ホグワーツでは毎年、ハロウィーンの夜に大広間でパーティーが行われる。そして、そのパーティーではホグワーツの屋敷しもべ妖精たちが腕によりをかけた絶品の数々が提供される。
かぼちゃのプリン、かぼちゃのアイス、パンプキンタルトにかぼちゃジュース。母や祖母が作るケーキのおいしさにも決して劣ることのない味。
「ハロウィーン・パーティーなら、また来年も参加できますから。それに、マートルが教えてくれました。絶命日パーティーにもご馳走が用意されているそうなんです」
今年はかぼちゃ尽くしのメニューが食べられないのが残念だが、絶命日パーティーではゴーストのための食事が待っているそうだ。
いったいどんなお菓子が用意されているのか。ゴーストのようにふわふわと宙を漂うコットンキャンディだろうか、身の毛もよだつほど冷たいアイスクリームだろうか。
まだ考えていただけだというのに、マーガレットのお腹がグーと鳴った。
「ミス・マノック、君はやはりお菓子のことばかり考えていますね」
「あはは、バレちゃいましたか」
恥ずかしそうに笑うマーガレットを見て、クィレルは目を細める。しかし、彼は不意に険しい表情をした。
「そういえば……。ミス・マノック、『嘆きのマートル』は他になにか言っていませんでしたか? 例えば、どんなご馳走が待っているとか」
「いえ、とくには。わたしも行ってからのお楽しみだと思って、詳しくは聞かなかったんです
マーガレットの答えを聞き、クィレルはなにやら大きなため息をつく。彼はなにか考え込んでいるいようだった。
「先生?」
「ミス・マノック。そのパーティー、私も一緒に行きましょう。ゴーストたちのパーティーに生徒が一人だけというのも心配ですから」
マーガレットは青い瞳をぱっと輝かせた。
「本当ですか! クィレル先生とご一緒できるなんてとっても嬉しいです! きっと素敵な夜になります!」
マーガレットは白い歯を見せて笑う。一方、彼女の笑顔を奪わないですむ方法はないかとクィレルは頭を悩ませていた。
そして迎えた10月31日。朝から城内はかぼちゃの甘い香りで満たされている。
今日は待ちに待ったハロウィーンの日だ。マーガレットは絶命日パーティーが楽しみで、朝から胸を高鳴らせていた。
だから、その日の授業はどれもこれもがどこか上の空だった。
占い学の授業でティーカップ占いの復習をしているときも、カップの底に残ったおりがジャック・オ・ランタン——トレローニー教授は髑髏だと言っていた——にしか見えなかった。
魔法生物飼育学ではレタス食い虫が餌を食べる様子をスケッチしながら、今夜の自分の食事のことばかり考えていた。
そして、今日一日の最後の授業であるマグル学が終わると誰よりも早く寮へと帰っていった。
クィレルとの待ち合わせの時間になり、マーガレットはいつものようにマグル学教室の扉を叩く。
「クィレル先生、マノックです」
「マノック嬢じゃないか。どうしたんだい?」
だが、姿を現したのは現マグル学教授のシカンダー氏だった。
「シカンダー教授。その、クィレル先生はいらっしゃいますか?」
「おや? 彼ならパーティーに行ったのではないか?」
クィレルとは教室で待ち合わせをすることにしていたのだが、どうやら先に会場へと向かってしまったらしい。
シカンダー教授に礼を言い、マーガレットは地下牢へと向かう。途中、大広間へと向かう生徒たちと何組もすれ違った。二つのパーティーがもうすぐ始まろうとしている。
「あれ? クィレル先生は?」
一段下がるたびに温度まで下がるような階段を下り、ようやく地下牢にたどり着いた。だが、そこにもクィレルの姿はない。いったい彼はどこに行ってしまったのか?
マーガレットが頭を捻っているとマートルがやって来た。
「ちゃんと来たのね。あら? あなた、いつも連れてるペットはどうしたの?」
「ネモですか? え、いない!」
クィレルもだが、ネモの姿がないことにもマーガレットはやっと気がついた。
「いったいどこに? わたし、探してきます!」
「待ちなさいよ。あなたがいなくなったらパーティーに遅れるわ。そしたら、周りになんと言われるか……」
くるりと踵を返したマーガレットの前にマートルが立ち塞がる。
「でも……」
「あなたのペット、また水浴びでもしてるんじゃない? だって、あの鴉はわたしのいるトイレに勝手に入って来るのよ。器用に蛇口を開けて、小綺麗になって帰ってくんだから」
たしかにネモがどこかに行ってしまうことはままある。そして、マーガレットがわざわざ探しに行かずとも帰ってくるのだ。
ネモのことは心配といえば心配だが、約束がある以上マートルを待たせるわけにもいかない。だから、今夜もそのうちに姿を見せるだろうと結論づけた。
「そうですね。きっとネモは大丈夫です。マートル、絶命日パーティーに行きましょう」
ネモもいつの間にか帰ってくるかもしれない。それに、先にパーティーに行ったというクィレルも遅れてやってくるかもしれない。
この時のマーガレットはそう思っていた。
「これは、これは……。このたびは、よくぞおいでくださいました……」
悲しげな挨拶とともに、ほとんど首なしニックは二人を招き入れるようにお辞儀をした。
「ニコラス卿、今日はお招きいただきありがとうございます。この日を、とても楽しみにしていました」
マーガレットも制服のスカートを軽く持ち、カーテシーをする。その所作はずいぶんと板についていた。
「親愛なるミス・ワレン、ミス・マノック。どうぞ楽しんで。ダンスにオーケストラ。それから、ご馳走もご用意いたしました」
ビロードの黒幕の向こうには信じられないような光景が広がっていた。
何百という数のゴーストたちがフロアをふわふわと漂い、ワルツを踊っている。そして、黒い幕で飾られた壇上ではオーケストラが鋸を使って恐ろしい音楽を演奏していた。
「これが絶命日パーティー……」
マーガレットは感嘆のため息とともに、白い息を吐いた。地下牢はひどく冷えていたが、マーガレットは寒さが気にならないほど興奮していた。
「踊り続けるゴースト、荘厳で不気味なシャンデリア。あっちにはケーキまで! すごい。まるで“幽霊屋敷”……。あとは、伸びる絵画や歌う彫像もあれば完璧ですね」
いつかは行ってみたいアメリカの遊園地は思い浮かべながら、マーガレットは早口で捲し立てる。
「ちょっと。わたしを置いて一人で勝手に楽しくならないで」
「あぁ、ごめんなさい。それなら、わたしたちもまずは踊りましょうか。マートル、お手をどうぞ」
マーガレットが手を差し出すとマートルはなぜか慌てていた。
「どうかしましたか?」
「あなた、わたしがダンスなんて踊れると思ってるの? わたしが今まで人とダンスなんて踊ったことがあると思ってるの! わたしに失敗させて、笑うつもりなのね!」
マートルがまだ生きていた頃の事情はよくわからないが、ホグワーツではときおりダンスパーティーが開催される。だが、生徒全員が参加できるわけではなく、上級生でないと招待されない。
だから、マートルがワルツを踊ったことがないというのも——彼女の性格も考えれば——理解できる。
「そんなことないですよ。マートル、わたしに任せてください。これでもおばあさまからダンスの基礎はみっちり教え込まれているんです」
「……絶対に、わたしに恥をかかせないで」
「もちろん。楽しい夜にしましょう」
一曲踊り終えた二人の前に鮮やかなオレンジ色のパーティー帽をかぶったポルターガイストが現れた。
「ピーブズ……」
「マートル、
「えぇ、おかげさまで。それと、わたしはマーガレットです」
マーガレットが答えるとピーブズはケタケタと笑った。
「お菓子が大好きな
ピーブズはマーガレットをからかって面白がっているようだ。マーガレットは少しムッとするが、ここで反応してはピーブズの思うつぼ。
「
そう言って、ピーブズは皿を差し出してきた。その皿の中身を見て、マーガレットは思わず顔をしかめる。
「ピーブズ、からかうのもいい加減にしてください。これ、黴だらけじゃないですか」
「おやおや?
意地の悪い笑みを浮かべながらピーブズは長テーブルを指さす。遠目からだと墓石を模した灰色のケーキくらいしか見えない。
マーガレットは恐る恐るご馳走の山に近づいた。
「嘘……」
そして、言葉を失った。どうして、今までこの腐った食べ物の臭いに気づかなかったのか。
肉料理には虫が湧き、チーズは緑色の黴に覆われ、ケーキは真っ黒に焼け焦げていた。そして、マーガレットが愛するような甘いお菓子はどこにもない。
「あなた、もしかして知らなかったの? って、絶命日パーティーも知らなかったんだから、当然よね」
マーガレットの背後でマートルは笑いをこらえている。
「可哀そうな
ゴーストのご馳走を前に崩れ落ちたマーガレットのことを、ピーブズはゲラゲラと笑い続けていた。
「あの時のあなたの顔、思い出しても笑えてくるわ」
パーティーが終わり、三階の女子トイレに戻ってきてからもマートルはときおり思い出し笑いをしていた。
「でも、おかげで楽しい夜にはなったわ。……その、ありがとう」
「こちらこそ。誘ってくれて、ありがとうございました。ご馳走は食べられなかったけど、わたしも楽しかったです」
それは別に強がっているわけでもなかった。たしかにマートルと踊ったダンスは楽しかったし、ほとんど首なしニックや太った修道士のような他の寮のゴーストたちの話を聞くのも興味深かった。
それに、あのご馳走は食事をすることができないゴーストでも味がわかるよう、強い風味をつけるために腐らせたと知れたことはとても勉強になった。
だが、ハロウィーンの甘いお菓子をお腹いっぱい食べられなかったことだけが、マーガレットの心残りになっていた。
「お腹空いたな……」
「嘆きのマートル」のトイレをあとにし、マーガレットはぽつりと呟く。そういえば、ネモもクィレルも絶命日パーティーには姿を現さなかった。
今からでも大広間に行ってみようか。しかし、懐中時計の針はもうすぐ消灯時間を指し示そうとしている。
ハロウィーン・パーティーはとっくに終わっていた。
絶命日パーティーもそれなりに楽しかった。だからこそ、誘ってくれたマートルのことを恨むつもりはない。
しかし、ハロウィーンの夜のかぼちゃ尽くしのメニューを楽しめなかったことだけは来年まで引きずってしまいそうだった。
そう、一年も待たなければならない。
「……そうだ」
マーガレットはローブの下に隠していたあるものを取り出す。それは砂時計がついた金のネックレスのようなものだった。
「『逆転時計』……。これを使えば……」
三年生になった日、これをマクゴナガル副校長から直々に手渡されたときのことを思い出す。
——いいですか。逆転時計の使用には危険がともないます。だから、あなたは細心の注意を払う必要があります。まず、過去の自分、ないしは未来の自分に出会ってはいけません。
これは12科目すべての授業を履修するために常々気をつけていることだ。過去の自分がいつどこにいたか、どのルートで校内を移動していたかをマーガレットは憶えるようにしている。
——それから、これは貴重なものですから大切に扱いなさい。
それも重々承知している。だから、こうして首にかけて肌身離さず持っているのだ。
——当然のことですが、「逆転時計」を授業以外では決して使わないように。
それはわかっている。ミス・マノックなら大丈夫だと信頼されているから、こうして「逆転時計」を借りることができたのだ。
だがしかし、今夜もしマーガレットが逆転時計を使ったとして、それに気づける人はいるのだろうか。だって、彼女はずっとゴーストたちしかいない絶命日パーティーにいたのだから。
「マクゴナガル教授、ごめんなさい。一回だけ、今夜一回だけですから」
マーガレットは息を吸い込み、一思いに砂時計を回転させた。周囲の風景が歪み、体が後ろ向きに飛んでいくように感じる。この感覚にもずいぶんと慣れてきた。
やがて、周りの物がまたはっきりと見えるようになる。
マーガレットはローブのポケットから懐中時計を取り出した。時計の針が今度は一日の授業が終わった直後の時間を指している。
これなら誰にもバレることなく、ハロウィーン・パーティーにも参加することができる。マーガレットはそう思った。
だが、そんな彼女のことをじっと見つめているものがいた。
「ネモ! ここにいたんだ!」
青い目の鴉はここが自分の定位置である飼い主の肩に飛び乗った。マーガレットが頭を撫でてやると、ネモは嬉しそうに目を閉じる。
「なんだ、ネモはずっとわたしと一緒にいたんだ。……あ! もしかして」
マーガレットは考えた。ネモはこうして自分のそばにいた。ならば、クィレルも自分と一緒にいたのでは?
だから、絶命日パーティーにいたマーガレットの元には来れなかったのではないか、と。
「ネモ、急ごう。きっと、まだクィレル先生はマグル学教室にいらっしゃる!」
こうして授業終わりの生徒たちの流れに逆らい、マーガレットはマグル学教室に再びたどり着いた。幸い、今日の自分は誰よりも早く寮に帰ったのだからマグル学教室で鉢合わせてしまう心配もない。
「クィレル先生、マノックです!」
マーガレットがまたいつものように扉を叩くと、今度はクィレルが顔を見せた。
「ミス・マノック、どうかしましたか? もしかして、忘れ物ですか?」
「いえ、その……。先生、わたしと一緒にパーティーに行ってくださいませんか」
「それはもちろんですが……。ミス・マノック、いくらなんでも来るのが早すぎます。まだなにも準備ができていない」
クィレルはマーガレットの早すぎる来訪に驚いている様子だ。
「ミス・マノック、少し待っていてください。かぼちゃパイが焼きあがるまで、まだ時間がかかりますから」
「パイですか?」
どうして恩師がパイの焼き上がりを待っているのだろうと首を傾げる。
「厨房の屋敷しもべ妖精に頼んで、今夜の食事を用意してもらっています。……なにせ、絶命日パーティーで出てくるようなご馳走は人間には食べられませんから」
クィレルの言うとおり、ゴーストのご馳走がとても自分が食べられるようなものではないことをマーガレットは先ほど知った。
そして、そのことに早くから気づいたクィレルは、マーガレットが絶命日パーティーを選んだマーガレットが腹を空かせることがないようにと食事の手配をしてくれていたらしい。
「あの、わたしのためにですか? 先生、ありがとうございます!」
「いえ、これくらいは。ですので、絶命日パーティーに行くのは少し待ってください」
「そのことなのですが、わたしもハロウィーン・パーティーに行くことにしました。」
クィレルはあれほど絶命日パーティーを楽しみにしていたマーガレットにいったいどのような心境の変化があったのかが気になった。
だが、食べ物のこと、とくに甘いお菓子のこととなると目の色が変わる彼女のことだ。知識欲よりも食欲の方が勝ったのだろうと分析する。
「わたし、もうお腹ぺこぺこなんです! そうだ、先生。せっかくですから、焼きたてのパイを食べさせてもらいましょう! みんなよりも一足早くパーティーを始めるんです」
「君は本当に……。わかりました、さっそくパーティーに向かいましょう」
こうしてマーガレットにとって、今夜二度目のパーティーが始まった。
「嘆きのマートル」と絶命日パーティーに行くのはホグミスの「絶命日パーティーでの決闘」クエストが元ネタ。
pixivでも本作の連載を始めました。再編集版ということで書き直しはしていますが、ストーリー自体は変わりません。とはいえ、こちらも読んでくださる方がいらっしゃると嬉しいです。
文章力向上のためと、こちらに上げる新しい話が書けない時の息抜きがてら更新していきたい……。