マグル学教室へようこそ   作:BellE

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ホグワーツの謎(ホグミス)の内容に触れる部分があります。


第3話 一年の始まり

馬車よ、移動せよ(ロコモーター・コーチ)!」

 

 マーガレットが呪文をかけると、馬車が列をなして動き始めた。移動呪文自体はそこまで難しいわけでもないのだが、いかんせん台数が多いために集中力が必要となる。彼女の肩にとまるネモも飼い主の緊張を察し、鳴き声一つ上げずにその様子を見守っている。

 やっとの思いでハグリッドたちの待つ場所まで馬車を運ぶ。頬を伝う汗をタオルで拭い、水筒に入れてきた冷たいレモネードで一息いれる。

 

「いや、マーガレットもうまいな。おまえさん、この仕事は何回目だ? クィレル教授の手伝いをしていたから、もうかなりの回数になるだろう」

「まだ二回目ですよ。先生の手伝いをすることも多かったとはいえ、9月1日のこの時間にホグワーツにいることは去年までありませんでしたから」

 

 今日は9月1日。二年生から七年生までがこの魔法の城に帰って来る日であり、初々しい一年生たちがこれからの七年間をどの寮で過ごすのかを組分け帽子によって決められる日である。

 そのような特別な日だからこそ、こうして朝からホグワーツの教職員が式に向けて準備をしているのである。例えば、変身術と呪文学の教授には大広間の飾り付けを、魔法生物飼育学教授と森番は馬車を引くセストラルの世話を。そして、マグル学教授には()()()()非魔法族にも馴染みが深かった馬車の手入れが任せられていたのであった。

 

「俺も魔法で手伝えりゃいいんだが、こればっかりはな」

「でも、それはわたしもです。わたしにはセストラルが見えない。だから、ハグリッドやケトルバーン教授のことは手伝えないですから」

「おまえさんはセストラルが見えないのか!」

 

 マーガレットが頷くと、ハグリッドは少々驚いた様子だった。

 

「父親を亡くしていると聞いていたから、マーガレットにも見えるもんだと」

「あれはわたしがまだ小さい頃のことで、事故の瞬間のことも憶えていないですから……」

「すまねえ。つらいことを聞いちまったな」

 

 ハグリッドは眉尻を下げ、申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「いえ、わたしは大丈夫です。こういう話をするのも、もう慣れてますから」

「セストラルは一生見えないままの者もおれば、ミス・マノックよりもうんと若いのに見えている者もおるからな。人それぞれというわけじゃから、彼女はたまたまセストラルが見えなかっただけじゃな。だから、二人とも気にすることはないということじゃ」

 

 少し二人からは離れた場所で作業をしていたはずのケトルバーン教授が、いつの間にかすぐ近くまで来ていた。魔法生物のいるところ、そして魔法生物の話題があるところなら、ケトルバーンはどこにでも現れるという噂をマーガレットは聞いたことがあったがそれは真実のようだ。

 

「まあ、人間は誰しも死というのは避けられぬものじゃ。ゆえに、そのうちミス・マノックも見えるようになるじゃろうから、楽しみにしておくのじゃな」

 

 ケトルバーンはマーガレットに対し、慰めになっていない慰めの言葉をかけた。「そう、ですね」とマーガレットも苦笑いを浮かべるしかない。

 

「大きな翼、黒いたてがみ、鋭く光る目。よくセストラルは気味悪がられるものじゃが、その姿はとても美しい。ミス・マノックは大鴉(レイブン)を可愛がっておるじゃろう。ならば、君も気に入ると思うのじゃ」

 

 シルバヌス・ケトルバーン魔法生物飼育学教授——彼を一言で表すと「変人」といった言葉がぴったりだ。62回以上もの停職処分、アッシュワインダーに呪文をかけて大広間を火事にするなど、彼の奇人変人っぷりを表すエピソードは数多くある。

 しかし、この高齢の教授の魔法生物に関する知識と扱い、そして彼らに向ける愛情は確かなものだ。だからこそ、教師という魔法生物のことを人に教え、彼らのことを面白いと、愛おしいと、守りたいと思ってもらうための仕事があっているのだろう。

 マーガレットはそこに教授として目指すべき一つの姿を見たような気がした。

 

「そうじゃ、ハグリッド。()()はどこにいる? ダンブルドアがあのような魔法生物を欲しがるとは意外じゃが、貸したのじゃろ?」

「フラッフィーなら四階の右側の廊下におりますだ。なんでも()()()()に必要だそうで」

「それは初耳じゃな」

「守るため、ですか?」

 

 ハグリッドはあからさまにしまったという顔をした。恐らく、マーガレットたちが知らない、知るべきではないことを話してしまったのだろう。

 

「マーガレット、ケトルバーン教授。今のことは聞かなかったことにしてくれ。ダンブルドアから秘密にするように言われていたんだ」

「わしは()()()がどこにいるのかがわかれば充分じゃ。自分で見つけたことにしておこうかのう」

「えっと……。わたしはなにも聞かなかったです」

 

 その犬がどのような魔法生物なのか、それに一体なにをなにから守るのか、もちろん本当のことを知りたかったが、これ以上の深入りはハグリッドを困らせることにしかならないようだった。マーガレットは知りたがりとしての気持ちをぐっと抑える。

 マーガレットとケトルバーンの言葉を聞き、ハグリッドは安堵のため息を漏らした。

 

「マーガレットも教授だったから、つい気が緩んじまった。すまねえ、このことは内緒で頼む」

 

 マーガレットは無言で頷く。ネモも首を上下に動かし、飼い主の真似をして頷いていた。

 

「しかし……。フラッフィーじゃったか、あれがいるなら生徒たちはあの廊下に近寄れないのう。『呪われた部屋』の騒動が終わったと思ったら、今度は『禁じられた廊下』か。今年もまたずいぶんと面白いことになりそうじゃ」

 

 ケトルバーンは声を上げて笑った。マーガレットも彼がなにを思い出して笑っているのかはすぐにわかった。

 

「あの『呪い破り』たちですね」

「そうか、今年はもうあいつらがおらんのか」

 

 呪い破り、七変化、動物もどき(アニメ―ガス)に自称「ホグワーツ最強の魔女」。まだまだ印象深い後輩たちはいるが、マーガレットの一つ下の学年には優秀で個性的な学生が多かった。彼らがホグワーツで成し遂げたこと、ホグワーツに残したものというのは数えきれないほどある。

 

「そうだ。ハグリッド、今年のペットパーティーはどうしますか?」

「おお、そうか。あれもあいつらが始めたのか」

 

 ホグワーツのペットパーティーはマーガレットが三年生だった時に始まった。変身術の授業の帰り際にマクゴナガル教授から声をかけられ、ネモの友達を探せるならと参加したのがマーガレットと例の「呪い破り」たちとの交流のきっかけだった。

 元々はハグリッドの飼っている犬のファングの猫嫌いを克服するために始まったそうだが、ホグワーツ中のペットが集まることと、ペットにも飼い主にもおいしいお菓子がたくさんあったことが好評を博し、毎年開催することになった。

 

「去年まではあいつらが全部準備してくれたが、今年はどうするか?」

「それなら、わたしがやりますよ。あのパーティーは寮も学年も越えて集まれます。それなのに、なくしてしまうのはもったいないですから」

 

 マーガレットがペットパーティーをなくしたくない理由は他にもあるのだが、ここでは黙っておくことにした。

 

「それはいいことじゃ。それなら、わしはパプスケインを連れてこようかのう。あれは毎年人気じゃったからな」

「マーガレットが引き継いでくれるんなら安心だ。実はな、ハリーの誕生日プレゼントに白ふくろうを買ったんだ。ペットパーティーなら、きっとハリーも来てくれるぞ」

「それは楽しみです。今年はどれくらいの人が来てくれますかね」

 

 ホグワーツを去った者もいれば、これからホグワーツにやって来る者もいる。今年の組分けはどうなるのだろうか、とマーガレットは数時間後の歓迎会に思いを馳せていた。

 

 

▼ ▲ ▼

 

 

 日も傾き出した頃、マーガレットは研究室の中を何度も行ったり来たりしていた。時折、姿見の前で立ち止まっては髪を結わえ直したり、ローブの襟を正したりしている。

 

「緊張してきた……」

 

 被り慣れない三角帽をいじりながら、マーガレットは独り言を呟いた。この数年、毎年ホグワーツの入学式に参加していたが、今年はその立場も心構えも違う。二年前までは生徒として、昨年は教師になっていたとはいえまだ助手だった。でも、今は教授である。当然、生徒たちから向けられる視線というのも変わるだろう。だからこそ、せめて形だけはちゃんとしようと考えていた。

 長いこと鏡の中の自分とにらめっこをしていると、背後から「カーカー」と鴉の鳴き声が聞こえてきた。マーガレットが我に返って振り向くと、水を張った桶の中で退屈そうにしているネモと目があった。

 

「あぁ、ごめんね。ネモも仕度しないとだね」

 

 式に向けて身だしなみを整えなければならないのは、なにもマーガレットだけではない。きれい好きなネモも水浴びをしていたのだが、飼い主が鏡にばかり気を取られているせいで桶から出られずにいた。

 マーガレットは消失呪文でたっぷりと水の入った桶を片づけると、続けて熱風呪文でネモの体を乾かし始めた。まだこれらの呪文が使えなった頃は、わざわざ空いているトイレの洗面所まで行かなければならなかったり、勝手に中庭の噴水まで水浴びをしに行ったネモのことを探しに行ったりしなければならかった。

 それはそれで楽しかったとは思うものの、魔法が使えるのはやはり便利である。それに、暖かい風を浴びて気持ちよさそうにしているネモのことを見ると、やはり魔法が使えて良かったと思うマーガレットであった。

 

「いい子いい子」

 

 艶のある黒い羽を乾かしながら、ネモの頭を撫でる。ネモはマーガレットの手のひらに頭を寄せ、とても嬉しそうにしていた。

 

「ネモ、もう大丈夫だよ。さて、今の時間は……」

 

 マーガレットはローブの内ポケットから金の懐中時計を取り出して時間を確認した。もう間もなく新入生の歓迎会が始まる時間だ。

 マーガレットはもう一度姿見の前で服装を整え、大きく深呼吸をした。そして、鏡の中のネモと目線を合わせ、指で招くような動作をする。すると、ネモは大きく飛び上がり、宙を旋回してから彼女の左肩につかまった。

 

「よし、行こう!」

 

 

 

 マーガレットが大広間に着くと、すでに多くの生徒たちが席に着いていた。今朝までの静寂に包まれた空間とは打って変わり、今は子供たちの楽しげな話し声で城内が満たされている。

 そして、大広間で入学式の開始を待つのは生徒だけではない。すでに多くの教授たちが——珍しく占い学のトレローニー教授も含めて——席に着いている。今いないのは新入生を迎えにいったハグリッドとマクゴナガル教授、それから校長と他数名の教授くらいだろうか。

 昨年はまだ助手だからと教職員テーブルの一番端に座っていたマーガレットであったが、今年は魔法史のビンズ教授がすでにその席に座っていた。ならば別の席を探さなければと考えていると、ちょうど恩師の隣が空いていることに気がついた。

 

「先生、お隣いいですか?」

「は、はい。ど、ど、どうぞ」

 

 マーガレットはクィレルの右隣の椅子に腰を下ろした。その時、どこからかニンニクの臭いがした。ハロウィーンの時のかぼちゃの甘い匂いのように厨房からだろうかと思ったが、隣にいる人物のことを思い出してそうではないことに気づく。

 クィレルが黒い森で吸血鬼に会ったという噂はどうやら本当だったらしく、いつからか彼は吸血鬼除けのためにニンニクの臭いをまとうようになっていた。初めはマーガレットも驚いたものの、次第にニンニクの臭いで以前母から教わった少し古くなったフランスパンでつくる自家製ガーリックラスクの味を思い出すようになり、今では臭いよりも急にお腹が鳴ってしまわないかの方が気になるようになってしまっていた。

 

「み、ミス・マノック、す、少し遅かったですね」

「正装する機会もあまりなかったので、準備に時間がかかってしまいました……。でも、どうですか? いつもに比べたらより魔女らしくなっていますかね?」

 

 ローブも帽子もきちんと採寸して仕立ててもらったものではあるが、それでも自分が服に着られてしまっているように感じる。おろしたてのローブの裾が床についてしまわないよう、マーガレットは椅子に座りなおした。

 

「え、ええ。か、肩にのせたネモはも、もちろんですが、その()()()()()()()がず、ずいぶんと魔女らしいですよ」

「そうですか! よかったです」

 

 マーガレットはほっとした様子だった。ついに自分も魔法使いらしいローブが似合うようになったのかと白い歯をのぞかせて笑う。

 

「少しでも形から入れればと思っていたんです。わたしは実力も経験もまだまだですから……」

「で、ですが、き、君はあのマクゴナガル教授よりも若く教授の座に就いたでしょう? それだけの実力とこ、今後への期待があるからこその、し、史上最年少教授ではないですか」

「とは言っても、一年早いだけですよ。それに、先生とも二年しか違わないです。でも、最年少教授ですか……」

 

 マーガレットはなにかを懐かしむかのように呟いた。

 

「そういえば、わたしの一つ下の学年にホグワーツの——それも史上最年少の先生を目指している子がいました」

「き、君以外にも教師を目指している生徒がいたのですか」

「はい。あの『呪い破り』のお友達に。彼ら、マグル学はとっていなかったはずですから、先生とは面識がなかったかもしれませんが」

 

 「呪い破り」と聞き、クィレルもピンときた様子だった。

 

「あぁ、か、彼らでしたか。じ、授業を教えたことはありませんが、会ったことはあります。謝恩行事の時にはい、インタビューを受けました」

「そういえば、あの子はマクゴナガル教授のプレゼンをしていましたよね! 多くの教授にインタビューをして回った聞いていましたが、先生のところにも行っていたんですね」

 

 マーガレットがまだ学生だった頃、ホグワーツで働く人々を労うための謝恩行事があった。そして、その時に行われたのが教授たちの功績や人柄をたたえるプレゼン大会である。例の「呪い破り」はマクゴナガル教授のプレゼンを担当していたが、どうやら同僚へのインタビューということでクィレルのもとにも足を運んでいたようだ。

 

「そういえば、わたしのところにもインタビューが来たんでした。先生のプレゼンを担当したメルーラ・スナイド、彼女がなにか先生のことで知っていることを教えてくれないか、と。だから、先生がなんでも知っていらっしゃることとか、無言呪文を使いこなしてらっしゃることとか、色々と話したんです」

「み、ミス・スナイドも面白い生徒でした。ま、マグル学には興味がま、ま、全くないようでしたが、わ、私が無言呪文が得意なことは知っていて……。い、インタビューそっちのけで、呪文の練習ばかりしていましたがき、君が情報源でしたか」

 

 クィレルは「なぜメルーラ・スナイドが自分が無言呪文に長けていることを知っていたのか」という長年の疑問が解け、どこかすっきりとした様子だった。

 

「ということは、み、ミス・マノックはミス・スナイドとも面識があったのですか」

「はい。ペットパーティーがきっかけで、私が三年生の時に知り合ったんです。あのパーティーのおかげで、わたしの交流関係もずいぶんと広がりました。そういえば、昼間にハグリッドと今年もペットパーティーをやらないかと話していたのですよ。あのパーティーを最初に始めた彼らはもういませんが、寮も学年も超えて交流できる貴重な機会ですからなくしてしまうのはもったいない、と」

「そ、それはいいですね。ですが、き、君の場合、あのパーティーで出されるお菓子が目当てではないのですか?」

「あはは、バレちゃいましたか」

 

 図星をつかれ、マーガレットは気恥ずかしそうに笑う。クィレルもほんの少し表情を緩めたようであった。

 

「ずいぶんと盛り上がっているようですな」

「せ、セブルス……」

 

 いつの間にか二人の背後にはねっとりと黒髪、鉤鼻、土気色の顔をした男が立っていた。セブルス・スネイプ教授はクィレルの隣に座ると、その暗い瞳をマーガレットに対して向けた。

 

「マノック教授、あなたはもうホグワーツの一生徒ではなく、教える側の人間ですぞ。いつまでも学生気分が抜けずにいるのはいかがかな」

「はい、気をつけます」

 

 マーガレットにとって、スネイプは嫌いではないが苦手な教授の代表格であった。かなり厳しく、彼から寮点をもらったこともほとんどないが、それでも七年間は魔法薬学の授業で世話になった教授である。それに、記憶魔法薬の作り方を個人的に教えてもらった恩もある。

 しかし、どちらかといえば彼女はスネイプのことが苦手であった。

 

「いつまでも()()が傍にいてくれるわけではありませんぞ」

「そうですね……」

 

 まったくの正論であり、マーガレットはなにも言い返せない。スネイプはその冷たい瞳を今度はクィレルに向けた。

 

「クィレル、あなたも自身の立場をよく考えるべきでは?」

「は、はは。き、君は厳しいな……」

「あなたがホグワーツの人間ならば、当然のことでしょう」

「なぜ……」

 

 スネイプは暗く冷たい黒い瞳をクィレルに向け続けていた。そこには敵意のようなものがにじんでいるように思える。それが自分に向けられているものではないとわかってはいたが、マーガレットは心臓をぎゅっと握られているような感覚を覚えた。

 マーガレットはスネイプがずっと闇の魔術に対する防衛術の教授になりたがっているという噂をふと思い出した。クィレルがマグル学教授だった頃のこの二人の仲というのは特別親しかったわけでもないが、険悪だったわけでもない。もしかして、クィレルが闇の魔術に対する防衛術の教授に選ばれたことに対して、スネイプは嫉妬しているのだろうか。

 スネイプと対峙する新任の闇の魔術に対する防衛術の教授に同情を寄せつつ、やはりこの魔法薬学の教授は苦手だなと思うマーガレットであった。

 

「セブルス、クィリナス。ここは祝いの場じゃ。二人とも、もうちょいと明るい顔をしてくれんかの」

 

 ダンブルドアはいつの間にかテーブルの真ん中にある大きな金色の椅子に座っていた。校長から直々に明るい顔をしてほしいと言われたものの、スネイプはより一層むっとした表情に、クィレルはより一層おどおどとした表情になった。対して、彼らに声をかけたダンブルドアは穏やかな笑みを浮かべ、明るいブルーの瞳を真正面——つまりは大広間の入口に向けている。

 大広間には生徒も、教職員たちも揃っていた。グリフィンドール側の席の端の方に一年生を迎えに行ったハグリッドがいることから、もう間もなく式が始まることがわかる。

 

 ホグワーツの一年は新入生の組分けと彼らの歓迎会から始まる。教授となって9月1日以前からこの城にいるようになったとしても、この日が一つに区切りであるということに変わりない。

 

「ネモ、また一緒に頑張ろうね」

 

 ネモの頭を撫でながら、マーガレットは小さな声で呟いた。ネモも飼い主の耳元で小さく「カア」と鳴く。事あるごとに最愛のペットと交わすやり取りではあるが、それはいつも彼女に元気と勇気を与えてくれる。自分は独りではない、と。

 

 二対の青い瞳が大広間の入り口に立つエメラルド色のローブの魔女とその後ろにいる襟の黒いローブを身にまとった小さな魔法使いたちの姿を捉えた。ネモは興奮したのか、それとも彼らのことを歓迎しようとしたのか、一度翼を大きく広げた。それを見て、マーガレットの頬も思わず緩んでしまう。

 

「さて、本当に始まるね」

 

 こうして、マーガレット・マノック教授の最初の一年が始まった。




最近、ホグミスを始めました。今回の話(ペットパーティーの件など)もそうなのですが、今後もホグミスの設定を取り入れられればなと思っています。
ちょうど三年になったところなのですが、どうしてクィレル先生のマグル学を受けることができないのでしょう? ルーピン先生(まだ先生じゃない)もロックハート氏もいるのになぜクィレル先生はいない? クィリナス・クィレル“マグル学”教授は何処に……

【追記】
ホグワーツの謎にクィレル教授が登場したので一部書き直しました。(2020/12/11)
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