迷宮には喰種が潜む   作:たーなひ

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原作開始前って時間軸を想定してるんでよろです。


二話

(さて、どこへ行こうか………)

 

ヘスティア達の本拠から出た俺は、人の多い方へと歩を進めていた。

 

まず現状最優先すべきなのは食事。

つまり人を狩る必要があるのだが、少し困っていた。

まず、この世界の事を知らなさすぎる為に狩場を選べない。

東京であれば狩りに向いている場所は把握しているが、何せ初めての場所の為、どこであれば容易に、バレずに狩ることができるかが分からなかった。

 

 

 

どこで狩りを行うか考えながらしばらく歩き、人通りの多い大通りまで出たところで、改めてここが異世界であることを実感する。

まず、街並みがファンタジーにありがちな中世の欧米のような雰囲気であること。

そして何より多種多様な人種だ。獣人、エルフ、小人など、現実には有り得なかった景色が広がっていた。

 

その中で最も気になった事と言えば、やはり彼らの味だろう。“神”とされる存在と違い食べられる気がするから、おそらく食べることはできるのだろうが、味の方はどうなのだろう。いずれ確かめてみたいところだ。

 

 

話を戻そう。

大通りに出た俺は、改めてどこで狩りを行うか考える。

 

辺りを見回していると、嫌でも目立つ一つの建物を見つけた。

それは天を突くほどの巨大な白亜の塔『バベル』。

大昔に建てられた塔で、ダンジョンの蓋のような役割をしているらしい。つまり、あのバベルの下にはダンジョンがあるのだ。

そして、そのダンジョンには昼夜問わず冒険者達が命を懸けて潜っている。

 

(……とりあえず行ってみるか)

 

 

 

 

バベルの下、ダンジョンの入り口の前には冒険者と思われる武装した人で溢れて賑わっていた。

 

(なんというか……殆どがチンピラみたいな感じだな……)

 

中には誠実そうな人間もいるのだが、どちらかと言えばチンピラ染みた人間の方が多いように思える。

まぁ腕っ節が重要視される世界であれば、無法者が多いのも仕方の無いことかもしれない。

 

それに……と、自分の体を見回す。

ボロボロの布切れを見に纏ったようなみすぼらしい格好。

若く、瑞々しい魅力的な身体つき。

それに贔屓目に見ても可愛い顔。

 

(好都合だ)

 

チンピラのような人間は御し易く、行動を操りやすい。

加えて今の俺の体であれば俺の望む方向へコントロールすることも容易かろう。

 

 

 

 

「あの…………」

 

「んぁ?なんだ、嬢ちゃん」

 

目をつけたのは、いかにもチンピラそうなオッサン三人組。

恐る恐るお伺いを立てるように声を掛けると、談笑を中断してこちらを振り向く。

 

「これからダンジョンに潜られるんですよね?」

 

「そうだが……」

 

「私を連れて行って貰えませんか?」

 

そう言うと、三人ともが目を丸くする。

 

「……オイオイ。今のは聞き間違いか?なんて言った?」

 

「私をダンジョンに連れて行っては貰えませんか?」

 

もう一度言うと、一人が大きく溜息を吐いて口を開いた。

 

「あのなぁ、嬢ちゃん。どういうつもりなのか知らねぇがーー」

 

「ーーお願いします!どうしてもお金が必要なんです!!」

 

「ぉぉ……」

 

必死そうな声音で言うと、気圧されたように声を漏らす。

 

「い、いや、そうは言われても……なぁ?」

 

残り二人にも問うが反応は芳しく無い。やはりもう一押しは必要か。

 

「お願いします!なんでもしますから!」

 

涙声でそう言うと、チンピラ三人の視線が下衆な種類の視線へと変わる。

全身を上から下へ舐め回すような視線が体を走り、これまでにない種類の不快感を味わうがここは我慢だ。

 

一頻り視姦し終えたのか、何やら3人で相談し始めた。

所々下品な言葉が聞こえた来るが、聞こえないフリを貫き通した。

 

 

「あー、まあ、そこまで言うんなら連れてってやってもいいぜ?」

 

しばらく相談した後、ぬけぬけと言い放つ男。

 

「ありがとうございます!!」

 

精一杯の感謝を込めて礼を言う。

 

(………チョロ)

 

なるほど。これが女の武器というやつか。確かにこれは強力だ。

こればっかりは女の体になって良かったと思わざるを得ない。

 

 

 

 

いつもは3人でダンジョンに入り、適当に9階層辺りまでのモンスターを狩って日銭を稼いでいるらしいのだが、今日は俺という足手まといが居るので6階層辺りまでのモンスターを狩るらしい。

 

“階層”ということから分かるように、、下に行けば行くほどモンスターの強さと出現頻度は上昇していくそうだ。

 

そして不思議な事に、ダンジョンのモンスターは壁から生まれてくる。さらにそのモンスターは『魔石』なる核を持っているらしく、その核を破壊したり取り除いたりすることで灰になって消えるそうな。最速で絶命させるだけならそれで良いのだが、冒険者が稼ぎを得るには魔石を換金せねばならないので、魔石を砕く以外の方法で絶命させなければならない。

どういう仕組みでダンジョンからモンスターが湧いて出てくるのかは誰も知らないらしい。

 

どうしてそんな事を知っているのかと聞かれるとそれは単純、彼らに聞いたのだ。

ヘスティアやベルには聞けなかった事は多くある。特にこれからも狩場として使う可能性の高いダンジョンについてや、冒険者については知っておかなければならない。

 

一先ず冒険者について聞けたのは、この都市最高であるレベル7、レベル6、有力派閥のレベル5の冒険者辺りだ。

……何やら冒険者には二つ名なるものがついているらしく、なんだか少し……こう……可哀想だ。

 

因みに、彼らは冒険者の半分を占めているレベル1だそうだ。

まぁそうだろうなという気持ちと、安堵の気持ちが丁度半分ぐらい……というのも、戦闘の様子を見る限り、それほど強いようには見えなかったのが前半分。

後半分は、最初に出会った彼らがレベル1で良かったということ。聞けば、レベル一つあがるだけでもかなり次元が違ってくるらしい。恩恵が刻まれていないレベル0の俺が、レベル2以上の冒険者と戦って勝てるかと言われると、少なくとも空腹で殆どエネルギーが無い現状では勝てるかどうか不安だ。しかし運の良いことに、レベル1を引き当てられたということの安堵であった。

 

 

それらの情報が聞けた辺りで、俺達は6階層でモンスター狩りを始めて一時間程が経過していた。

 

「随分人が少なくなりましたね」

 

入り口近くではちらほらと見かけた冒険者も、今では殆ど見なくなった。

 

「大体この時間はこんなもんだ」

 

「そうなんですか……」

 

「人に会わないなんてのもザラにあるもんな」

 

「確かに!」

 

ワイワイと談笑を始めた3人。

 

(ヤるなら……ここか?)

 

「ここを人が通る事ってあんまり無いんですか?」

 

「あ?あぁ。正規ルートからはかなり外れてるからな。この辺には滅多に来ねえだろうよ」

 

それは良かった。

んじゃ、やりますか。

 

 

「あっ!」

 

ドサリと音を立てて俺が躓くフリをすると、前を歩く3人が歩みを止める。

 

「オイオイ、何やってんだよ……」

 

そのうちの一人が態々俺の所まで来て手を差し出してくれる。

ふーん、紳士じゃん。

 

「す、すいません」

 

その手を取って微笑み掛けると、後の二人も釣られるように俺に近寄り手を出し始めた。

 

そんなに触って欲しいのか……。変態かな?

 

(まあ、好都合か)

 

 

 

 

 

 

「……へ?」

 

惚けた声を出すのは、3人組の冒険者のうちの一人。…まあ、既に3人組では無くなったのだが。

 

「え?は?ちょ、は??」

 

赫子によって刈り取られた二人の首の断面から血が噴き上がる。

その血飛沫を全身に浴びながら残した一人に体の向きを変える。

その目は赫眼*1になっており、興奮状態であることを隠しもしない。

 

「……っっ!!!!な、なんだよ!!なんなんだよぉ!!」

 

顔に驚愕と恐怖を前面に押し出しながらも、彼は獲物であるショートソードを構える。

 

「そら、行くぞ」

 

気楽そうに声をかけて近づくと、相手はショートソードで切り掛かってくる。大振りの攻撃はフェイントでもなんでもなく、首筋を狙った渾身の一撃と言った所だろう。

 

だが敢えて反応せず、それを首筋で受ける。

 

 

ガキン!

 

「……はぁ……はぁ……」

 

手応えはあった。

躱されずに、確実に当たった。

当たったが…………。

 

「……思っていたよりも衝撃が強いな。あまり受けるのは体に悪いか」

 

「は!?な、なんで……!」

 

斬れてないんだ!!と言おうとしたのだろう。

言えなかったのは、俺が両頬を掴み上げているからだ。

 

「……余計な事は喋るなよ」

 

「っ!!……だ、誰かっーー」

 

頬を掴んだまま地面にそこらの壁に叩きつける。

 

「がっ……」

 

「喋るなと言っただろう。次に余計なことをすれば殺す」

 

そう言うと首を縦に振った。

 

「……よし。いくつか質問がある。正直に答えたら生かして返してやろう」

 

そう言って頬を掴んだ手を離し、喋りやすくしてやる。

 

「ゲホッゲホッ!」

 

「最初の質問だ。喰種(グール)を知ってるか?」

 

「し、知らない!」

 

「本当に?」

 

「本当だ!」

 

ふむ……他の喰種はいない……のか?

 

「最近人が死んだりとかしたか?」

 

「そんなの知らねぇよ。こんなとこに潜ってんだから、人が何人か死んだところで問題にもならねぇよ」

 

「……そりゃそうか」

 

(同族が居ないのは残念だがまぁ……良い事を聞いたな)

 

ダンジョンのなかであればどれだけ人を殺しても問題にならないということであれば、飢えることはまぁ無いだろう。

 

「じゃあ次はーーーー」

 

 

そこからは、かなり常識的な部分を聞いた。

物価や、冒険者のなりかた、地理、ファミリアや神についてや亜人間(デミ・ヒューマン)についてなど、常識で知っておかなければいけないことを知ることが出来た。

 

 

「な、なぁ…もう良いだろ?早く帰してくれよ!」

 

「ん?んー……まぁ、そうだな。あ、最期に一つだけ。汚れを洗い落としたいんだが、どこに行けば良い?」

 

「どこって……普通にバベルの施設を借りれば良いだろ」

 

「へぇ」

 

そんなことまで出来るのか。

中々太っ腹だな。

 

「も、もう良いか?」

 

「……そうだな。もう良いか。後は自分の目で確かめるよ。じゃあな」

 

「……………はぇ?」

 

赫子で頭を刈り取り、またも血飛沫が噴水のように溢れ出した。

 

(馬鹿なヤツだ。少し考えれば生かして返す気がないことぐらい分かっていただろうに)

 

まあ、逃すはずもないからどちらにしろ死んでいたことに変わりは無いのだが。

 

これで3人分の肉、装備、彼らの所持品、情報の4つが集まった。

一石二鳥どころか一石四鳥の大勝利だ。

 

 

 


 

 

 

サクヤが去った後のヘスティアファミリアの本拠。

 

「あの子は大丈夫でしょうか……」

 

「まだ言っているのかい?ベル君」

 

「やっぱりウチに置いてあげた方が良かったんじゃ……」

 

「……あのねぇ、ベル君。君も分かっているだろうけど、ウチは極貧ファミリアだ。毎日の生活だってギリギリだし、女の子一人を養う余裕なんて僕らには無いんだ」

 

「でもそんなの、僕がもっと頑張ればーー」

 

「ーーベル君」

 

続きを言わせまいと、ヘスティアがベルの言葉を遮る。

 

「君は優しい子だ。だから、ベル君は頑張って頑張って、僕も彼女も養うだけの稼ぎを持ってくるかもしれない。でも、君は駆け出しの冒険者だ。万が一君が無理をして死んでしまった時、残された僕達はどうすれば良いんだい?」

 

「…………」

 

真剣にそう言うと、ベルは黙りこくってしまった。

駆け出しであるベルには日銭を稼ぐのに精一杯。その稼ぎすら無くなるとなれば、露頭に迷うことは想像に難くない。

 

「……まぁ、彼女も本当に当てが無くなったんなら、僕らの所に来るかもしれないしね。だろ?ベル君」

 

「そう…ですね」

 

切り替えて明るい声音で言うと、ベルも言葉を返す。

 

「よし!それじゃあステイタスの更新をしようか!」

 

そうして、ベルは今日のステイタス更新を行ったのだった。

*1
興奮状態になると、喰種の白目は黒く、黒目は赫くなる




はい。
一応どんな感じの赫子にするかは決めてるんですけど、甲赫とか尾赫とか、そういう分類っていります?reに入ってからは特に赫子の相性とか種類とか殆ど死に設定やったし、どちらかと言えば赫子でコンセプトがある何かしらの形を取ってたりするんで、そう言う方向で良いかなって。どうでしょう?
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