迷宮には喰種が潜む   作:たーなひ

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グロ注意……かなぁ?
これぐらいのグロは全然大丈夫なんかいな?



七話

「ふっ!」

 

『グギャァ!』

 

ベルの振るう漆黒のナイフによりゴブリンが引き裂かれ悲鳴を上げる。

 

これで本日の討伐数は27匹。まだダンジョンに潜って二時間も経っていないにも関わらず、いつもの倍以上の討伐数を叩き出していた。

理由は主に3つ。

一つ目はステータス。何故だか知らないが、目を見張る程の急成長を遂げているベルのステータスは、既にレベル1の中でも中堅クラスの実力を発揮していた。

二つ目は武器。主神であるヘスティアより賜った漆黒のナイフ“ヘスティア・ナイフ”はその性能を遺憾無く発揮して、モンスターを切り裂き続けている。

そして三つ目ーー。

 

「ほいっ」

 

メキィ!と拳がゴブリンの顔面に突き刺さり、物凄い勢いで壁に吹き飛び呻き声をあげる。

 

 

ーーそう、新たな仲間の存在だ。

人数が増える事による利点は言うに及ばずだろう。それに加えて、この3階層のモンスター相手にも全く遅れを取らない戦闘力。

 

 

何度目かの戦闘を終え、魔石の回収作業を開始する。

 

「………ふぅ」

 

ベルの仲間に加わったサクヤは息を吐き出す。

その手には、一体どれだけのモンスターをその手で捻り潰したのか、血が滴り落ちる程付着していた。

 

「ほ、ホントにすごいね……」

 

そんなに血を付けても平気なんて……とは、言わなかった。

 

「ん?そう?」

 

シュッシュッと拳を素振りして見せるサクヤ。

 

拳を振るう度に血が飛び散るが、それを全く気にした様子は無い。

 

「ま、(素手での戦闘には)慣れてるからね」

 

「へ、へぇ〜……そうなん……ですか……」

 

(女の子として、血を全く気にしないっていうのはどうなんだろう……)

 

思わず敬語が出てしまうベルであった。

 

 

 

「今日は何階層まで行くつもりなんだい?」

 

あれからいくつかの戦闘を終えて歩きながら、サクヤは問い掛けた。

 

「うーん……サクヤはどこまで行った事があるんだっけ?」

 

「俺ーーじゃなかった、私は6階層だな。余裕だったからもう少し下まで行けるとは思うが……」

 

(念のために一人称は気をつけておかないとな。どこからバレるか分かったものではないし)

 

生ける嘘発見器がいるこの世界では、些細な事でも疑いの対象になれば致命的だ。なるだけ疑問に思われる事は少ない方が良い。

 

「僕はまだ5階層までしか行ったこと無いんだけど……どうしよっか?」

 

「ふむ………」

 

どうするか……。

ベルの動きを見たところ、俺が以前潜った時とステータスはそれほど大きな差はない。恐らく6階層でも十分に通用するだろう。

とは言えまともに連携が取れそうも無い二人が、初日から新たな階層にチャレンジするというのは些か危険が過ぎる。

ベルが慢心してあっさり死んでしまった……なんて報告をするのは御免被りたい。

 

「一先ず、今日は5階層を入念に攻略することにするのはどうだろう?」

 

「うん。良いんじゃないかな?」

 

「よし……と、来たか」

 

『ガルルル……』

唸り声を上げながら接近して来たのはコボルト。数は4。

 

「……どっちの二体が良い?」

 

「それじゃ僕は右の二体」

 

「了解」

 

もっと数が多ければ突っ込まずにお互いの動きをカバーしながら戦えるようにするんだが、これぐらいの数ならどちらとも一人で処理出来るだろう。

 

先程分担したように、向こうも二体ずつで分かれてくれた。

 

 

ベルがコボルトに切り掛かったのと同時に、二体の内の一体がサクヤに向かって突っ込んで来る。

 

左肩が前に出る形のファイティングポーズを取っていたサクヤは、コボルトの爪を使った引っ掻きを余裕を持って躱す。そしてすれ違いざま、体を低く落としてコボルトにローキックをかまして転けさせる。

 

もしもう一体が来なければこのまま止めを指すつもりだったのだが、もう一体が突っ込んで来たために失敗に終わる。

そのもう一体は涎を垂らしながら歯を剥き出し大きく口を開けて突進してくる。

通常、攻撃する為に力を入れるのであれば口を閉じ、歯を食いしばる。だがあそこまで歯を剥き出し大きく口を開けているということは、牙を使った噛み付きだと瞬時に読み取る。

 

『ガガッ…!??』

 

顔を前面に押し出し、噛み付かんとするコボルトの口に、間合いに入った瞬間手を突き刺す。予想していなかったのか驚いたような声を上げるコボルト。

 

「ほら、美味いか?私の手は?」

 

口の奥深く、喉のそのまた奥まで突っ込んだ手は食道を掴む。

そして、その手を力の限り全力で引き抜く。

 

すると、 ブチブチと音を立てながら内臓が剥がれて行き、完全に引き抜くと血を吹きながらコボルトは倒れる。

 

ドチャリと引き摺り出した臓物を地面に捨て置くと、起き上がったらしいコボルトが恐れを成したかのように二歩後ずさる。

だが、同族がやられた恨みか、モンスターとしての本能か。

コボルトは後ずさるのをやめ、サクヤに向けて牙を剥く。

 

対するサクヤはファイティングポーズを取っていた……と思った瞬間。

 

「シュッ!」

 

最速の攻撃手段であるジャブ、それがコボルトの鼻に突き刺さる。

 

『グガァッ…!』

 

威力よりも速度を重視したジャブだが、弱点である鼻に当たったコボルトは悶絶する。

当然、その隙をサクヤが見逃す筈も無い。

全力で振り抜いた右手はコボルトの胸の真ん中を正確に貫く。

そして、確かな硬い感触を手の中に感じると腕を引き抜いた。

抜かれたのは魔石。モンスターの核とも言えるその魔石を失うと、モンスターは灰になって消える。

コボルトも例外では無く、瞬く間にその体は灰へと変わる。

 

僅か20秒にも満たない戦闘を終えたサクヤは、噴出した血を浴びたせいで全身に血が飛び散っており、赤い斑点を作り出している。

頬から垂れる血をペロリと舐めて、顔を顰める。

 

「……不味っ」

 

 

 

見れば、ベルもちょうどコボルトの喉を掻っ切ったところだった。

 

「サクヤ、こっちは終わったよ……って、どうしたの!?」

 

今度は手だけではなく、全身に血を浴びているのを見て彼女自身が怪我をして出血しているのかもしれないと、ベルは考えたのだ。

 

そして後ろに見える引き摺り出された臓物を見て、思わず吐き気を催す。

 

「いやね、口の中から魔石を掴みだせないかと思ったが、少々無理があったようだ」

 

(や、やっぱりおかしいよこの人ー!!!)

 

 

 

5階層になれば、それまでとはモンスターの出現頻度が明確に高くなる。加えて、この階層からは新たなモンスター、“ウォーシャドウ”が出現する。

鎧を引き裂く鋭い爪とこれまでとは一味違う戦闘力を持ったそのモンスターは新米殺しと呼ばれており、数多の駆け出し冒険者を引き裂いて来た。

 

 

「ふっ」

 

「ほぅら!」

 

また1匹、また1匹とウォーシャドウは数を減らして行く。

 

ここにいる二人の冒険者も、まだ冒険者になって一ヶ月も経たない紛うこと無き新米、駆け出し冒険者だ。

 

だがこの二人は一味違った。

片や、(ベル自身は知る由もないが)早熟を促すレアスキルを持ち、稲妻の如き速度で壁を駆け上る。

片や、人間を遥かに凌駕する身体能力を持ち、戦闘経験も豊富な喰種。

どちらも優に新米の域を超えており、中堅と呼んで差し支えないレベルに達していた。

 

「!ベル、しゃがめ!」

 

サクヤの声に応えてしゃがむと、その体が元あった位置に爪が振り下ろされる。

 

最初9体ものウォーシャドウに囲まれていた二人であったが、連携が少しずつ板に付いてきたこともあり、5体にまで数を減らしていた。

 

「ありがとう!助かったよ!」

 

礼を言いながら、ベルは体勢を立て直す。

 

「キツそうだが……大丈夫か?ベル」

 

「……うん。まだ大丈夫。っていうか、なんでサクヤはそんなに余裕そうなんだ……」

 

「軽口を叩けるなら本当にまだ大丈夫そうだな……っと」

 

爪を躱し、カウンターを顎に叩き込む。モンスターに脳があるのか不明だが、カウンターで顎を狙ってしまう癖は健在であった。

続く回し蹴りでウォーシャドウは吹き飛び、ピクリとも動かなくなった。

 

別に競っているわけではないが、最初に倒した4体の内の3体はサクヤが倒したものだ。

それまでの階層では一方的な“蹂躙”だったが、今は紛れもない“戦闘”。明らかな戦闘経験の差がその対応に如実に現れていた。一対一を効率良く済ませる技術。己の五体をフルに活用した攻撃。我流で荒削りはベルとはそのスムーズさに大きな差があった。

 

 

「ふっ!」

 

負けじと、ベルはナイフを振るいウォーシャドウを切り裂く。

 

負けたくないというプライドと、仲間がいるという信頼感はベルの行動の一つ一つを生き生きとさせてゆく。

 

ナイフでもってウォーシャドウを絶命させると、残り三体に動揺が走る。サクヤに比べて隙が多く、倒し易いと考えていただけに目に見えて動きが変わった事についていけないのだ。

 

続けて瞬く間に1体、2体と倒せば、最後の1体も動揺が消え失せたのか突貫して来る。

少し距離があった為に周りを見渡してみたが敵影は無し。サクヤの方をチラリと見てみるが、残り最後の1体はベルに譲るようで、魔石の回収作業に入ろうとしていた。

完全な一対一。

 

多対一なら兎も角、一対一では既にベルにとって余裕の相手だ。単身楽な装備も持たず5階層に突っ込んで痛い目を見たあの日からは大きく成長しているのだから。

 

僅か数秒後、ベルのナイフは最後のウォーシャドウをその命ごと切り裂いた。

 

 

 

 

 

「ふぃー……さっぱりした!」

 

バベルに備え付けられたシャワールームで血や汚れを洗い落としたサクヤは、バベル内で換金を済ませてベルと合流する。

 

「いやー、それにしても今日は大漁だったねぇ」

 

額にして前回3人組と潜った時とほぼ同じ。3人チームでそこそこベテランだったと思われる彼らと同じ額……それも一つ下の階層までで稼げるというのは、中々に凄いことでは無いだろうか。

 

「こんなに稼げたの初めてだよ!」

 

「へぇ……」

 

確かに言われて見れば一人で稼げる額なんてたかが知れてるし、あの本拠を見た限りではそれほど稼げているようにも見えない。

ベルのほくほく顔を見るに、本当にベルにとっては高額なのだろう。

 

 

「一先ず、連携は問題無さそうだな」

 

「うん」

 

段々動きも噛み合って来ていたし、コンビとして特に致命的な欠陥も無かった。

 

 

「それにしても、サクヤの戦い方ってホントに凄いね。どこで習ったの?」

 

「うーん………地下?」

 

「?ダンジョンってこと?」

 

「いいや、ただの喫茶店の地下室だよ」

 

ふと、あのコーヒーの香りが思い出される。

と、同時にあの人のスパルタ素手喧嘩塾を思い出しげんなりしてしまう。

 

(なーんで良い思い出だけ思い出してくれないかな……。折角いい気分だったのに……いや、あのスパルタですらも良い思い出だったのか……?)

 

「サクヤ?」

 

呼ばれて、現実に意識が引き戻される。

 

「どうしたの?」

 

「……いや、感傷に浸っていただけだよ」

 

「?」

 

訝しげな顔をしていたベルだが、詮索はしなかった。

 

 

しばらく歩いていると、ベルは何かを思い出したように「あ!」声を上げた。

 

「そうそう!神様と、お祝いをしないかって話をしてたんだった!」

 

「お祝い?何の?」

 

「仲間が増えたお祝いだってさ!」

 

「ふーん?」

 

(お祝いする程のことだろうか……)

 

何かにつけて集まりたがるやつもいたりするが、今回はきっとヘスティア様が気を回してくれたのではないだろうか。まだ二日しか会ってないし、交流深めるというのが目的だろう。

 

「で、どこでやるんだ?」

 

僕のオススメの店なんだけどね、と前置きしてから、その店の名を告げた。

 

「“豊穣の女主人”!」




今までの作品でもあんまり書いてこなかった戦闘シーンをちょっと頑張ってみたんですけどどうでしょう?

付けといた方がいいタグとかあったら教えてくれると助かるマン。
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