東春秋に、なれなかった男   作:女王の橋

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000 プロローグ

東春秋。

ボーダー最初のスナイパーにして、かつてA級1位部隊を率いた男。

 

この物語は彼が主役ではない。

「東春秋」という天才に憧れた凡人がみっともなく足掻く、シンデレラストーリーとはかけ離れた泥臭い物語。

 

ーーーーーーーーーー

 

ボーダー専用の地下道路をアメリカンバイクが走る。

シャドウの400cc。

チョッパーハンドルと黒のボディが印象的だ。

 

彼はボーダーへの通勤は必ずバイクと決めている。

基地まで数kmはあるが、この何もない一本道が好きなのだ。

 

思えば数少ない没頭できる時間の一つかもしれない。

メットはブラックのジェット型、グローブは茶色のレザーと決めている。

 

ふとサイドミラーを見ると、後方に見覚えのある車が現れた。

営業部長を務める、食えない元上司のものだ。

 

付かず離れずの距離を保っていることに対し、彼はため息をつきながらバイクを走らせた。

 

 

「戦闘員復帰、おめでとう。心境はどうかな?」

「至って普通の気分です。唐沢さんこそ…ぴったりケツに張り付いてなに考えてるんすか?」

「いや相変わらず綺麗な車体だと思ってね。惚れ惚れするよ」

 

バイクを所定の位置に駐車すると、待ち構えていたように唐沢が現れた。

 

彼は元々唐沢の部署にボーダーの営業職員として所属していのだ。

上司と部下の関係は終わったとはいえ、軽口を叩き合えるのは彼がボーダー古参の人間だからだろう。

 

「ちょっとした復帰祝いに。気に入らなかったら破棄して貰って構わない」

「頂きます。…唐沢部長、今までお世話になりました!」

 

礼に対してはわずかに口角を上げ、USBを手渡した後唐沢は足早にエレベーターに向かった。

 

ーーーーーーーーーー

 

横山一馬。年は25歳。

東春秋と同期入隊であり、現在はB級フリーの隊員である。

 

まず一言で彼を表すのであれば「厳つい」

控えめに言って「ワイルド」である。

 

サイドをツーブロックに刈り上げ、左側に流した前髪

身につけているJORDANのシューズや、パイソン柄のジャッケットから見える彼の印象はとてもではないが近寄りがたいオーラがある。

 

諏訪や弓場と3人揃えば本職も道をあけるであろう厳つさである。

 

 

「あ、一馬さん?」

「米屋か。久しぶりじゃねぇか」

 

自販機コーナーで休憩をしていた米屋に出会した。

 

「今日、なんだかイカツイっすね。いつもスーツだから一瞬わかんなかったっす」

「そこはワイルドと言えよ」

「今暇っすか?良かったら模擬戦でもどうっすか?」

 

本部に来た目的としてはフリー隊員の本登録のためだ。

内勤から戦闘員への移行のため、面倒な事務手続きは免れない。

 

「悪りぃな。用事があんだわ」

「え〜いいじゃないっすか。ね、5本だけ!」

「しつけぇぞ、A級様」

 

一馬としては軽くあしらったつもりだが、あくまで米屋は引き下がらない。

 

「もしかしてヒヨってるんすか?そりゃあ、しばらくリーマンやってた人には荷が重いかな?」

「…あ?」

「恥かくなら早い方が良いと思って。今の一馬さんじゃカゲさんやイコさんには敵わないっしょ?」

 

明らかに挑発である。

いくら米屋が軽いとはいえ、無礼ではない。

だが目の前の男を激昂させるには十分であった。

 

「ブースに入れ。後悔させてやんよ」

 

その言葉にA級アタッカーは静かに笑った。

 




ずっと考えていた話でした。
まだまだ拙い文章ですが、よろしくお願いします。
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