ケツの叩き甲斐のある男の1人だと思っている。
東と一馬をつなぐキーパーソンで、結構重要な役どころ。
「この3ヵ月でかなりの入隊がありました。まだ存在が知れてないあなたがあのような目立つマネをしでかしたら、場が混乱する事くらいわかりませんか?」
「さーせん。」
「お前は何度同じ事を繰り返す気だ。あと不用意に個人戦の様子をモニタリングするんじゃない。」
「さーせん。」
個人戦に割って入った三輪は2人の首根っこを掴み、休憩場のソファーに正座させていた。
「陽介、先に行っている。今回は月見さんに取り成しておくが、これっきりだと思うように。」
米屋をすぐ連れていかない限り、彼なりの配慮だろう。
何より一馬を知る1人のボーダー隊員として、あのようなモノを見せられて全く心動かされない訳ではなかった。
「秀次は、相変わらず恐いな。」
「うっす。」
「そして蓮のやつも、怒らせたくねぇな。」
「うっす。」
米屋にとって一馬は不思議な人間だった。
眉間にシワを寄せて近寄りがたい顔をしているのはデフォルトで、基本的にユーモアのある面白い人間なのだ。それが時にセンチメタルになる時もあれば、急に口数が減る時もある。
「一馬さん。」
「ん?」
「俺、やっぱり一馬さんは前線にいてナンボの人だと思います。正隊員になるためのノルマはとっくにこなしたのに、また唐沢さんのとこに戻っていくの、正直気に食わなかったっす。」
「お、おう。」
「でも根本が変わってないようで安心したわ。最後のあの瞬間、ゾクゾクしましたもん。」
サブトリガーを一切使わず、孤月一本で挑んできた事に屈辱すら覚えた。
自分はその価値に値しないのかと。
しかし、刀を交えていくうちに思い出した。
横山一馬という人間が、必要以上に義理堅い男だという事を。
「あー、なんていうかな。俺が正隊員に戻れたのには実際には色々な人達の口添えがあったんだ。それに対してしっかりと筋を通したかったんだ。」
「あとはわざわざ柄でもない挑発をしてまで個人戦に誘ってくれたお前に対して、きちんと拘った形で臨みたかった。」
「まぁ…あからさまな台詞でしたからね…」
「覚えてねぇか?初めてお前と個人戦した時の事。」
ーおい、そこのカチューシャ。暇なら一戦やらね?ー
ー俺は孤月しか使わん。10戦やって一回でも引き分けたら300ptやるよー
正隊員まであと少し。その少しが遠かった。
トリオンが少なかった米屋は努力で地道に上がっていくしかなかったのだ。
それを知ってか知らずか声をかけてくれた。
煽りに煽られ、なんとか最後に引き分けた米屋はそのポイント見事にB級に昇格したのだった。
「…覚えてますよ。だから今度は俺の番だって思ったんですよ。」
「しかし、漫画のような煽り方だったな。」
「一馬さんよりマシですね!タ○ついてんのか?とか、一生地面にキスしてろとか、弓場さんでもんな台詞使わねー!!」
「そうか?まぁともかくありがとう。」
「次はフル装備の状態で勝ち越しますから。」
「言ってろ。」
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「遅れてすみませーん。」
「米屋先輩、また遅刻ですよ。何やってたんですか?」
「一馬さんとバトっててよ、つい熱くなっちまった。」
「横山さんの事ですか?」
ボーダーに入隊してまだ間もない古寺は彼の事をよく知らない。
「それで、戦績はどうだったの?」
「月見さん!お、遅くなってすみません!」
「どうだったの?」
「アッ、ハイ。30戦やって16勝1分けでした。」
「彼、どうせまた変に拘った戦い方でもしたんでしょ。」
「孤月一本。」
月見はそれを聞いて深く溜息をついた。
「噂には聞いてましたが…バトルジャンキーですね。」
「違うわね章平君。彼はただの変態よ。」
「へ、変態…」
「ちげーねー。」
一馬の事をこき下ろす様子は、どこか彼女の幼馴染みをなじる様子に似ていた。
「彼はトリガーセットに旋空を入れていない。言葉の通り孤月一本ね。」
「ちなみに、俺は旋空も幻踊も使ったぜ。」
「えぇ…それ、ただ自らを不利に追い込んでますよね?」
「ドMというより、ただのムッツリなのよ。」
「陽介くん。ちなみに、仮にフル装備で戦ったとして勝算は?」
「30本やって、10本取れればマシな方すかね。」
米屋は意地の悪い笑顔でそう言い切った。