東春秋に、なれなかった男   作:女王の橋

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沢村響子
数少ない同期。初代東隊ではチームメイトだった。
コンビで連携をしていたため、考えている事をよく見透かされる。
なので極力会いたくない。




第一章 再起 003 沢村響子①

横山一馬には会いたくないボーダー関係者が2人ほどいる。

尤もこれから行く先ではその1人との接触は免れないのだが。

 

B級隊員としての登録手続きのため、人事局で書類記入を済ませると

本部長室に向かっていた。

何やら忍田本部長直々に話があるらしい。

 

(忍田さんだけならまだいいんだよな。バイクといいライダースジャケットといい、あの人とは何かと話が合う。けど…)

 

 

「何突っ立ってるの?早く入れば」

 

背後からの予期せぬ声に思わず背筋が伸びる。

 

「…出た。出たやがった」

「人を幽霊みたく言うな!」

「あぁ…!!」

 

お決まりのローキックが脛を捉え何とも情けない声が出る。

 

「随分元気そうじゃない」

「そっちこそな。忍田さんに迷惑かけてないだろうな?」

 

皮肉に対しもう一発蹴りを入れようかという沢村を見て即座に後ずさる。

 

「相変わらずの減らず口ね。でも安心した。いつもの横山君だ」

「久しぶり、沢村」

 

数年前は嫌というほど顔を合わせていたのに、この顔が懐かしく見える日が来るとは思わなかった。

 

「もしかしてお前も呼ばれてんの?」

「お生憎様。私は関係ないわ。けど、後で何があったか教えてね?」

「アレ、本気だったのか?また酔い潰れないでくれよな」

 

数日前、一馬の復帰を知ってか沢村から飲みの誘いが入っていた。

冗談半分に受け止めていたものの、この同期はどうやら真剣らしい。

 

「どうせまた残業だろ?」

「今日は事前に定時退社の申請済みです。忍田本部長にも承認済みよ」

「そいですか」

「じゃあ18時にお店でね」

「横山、了解」

 

「横山君」

「あ?」

「漆間君、メテオラのポイントが8500超えたわよ」

「マジか。あいつ、まだごっつあん爆撃続けてたのか…」

 

してやったりの顔で舌を出した沢村の顔に腹が立ち、そそくさと本部長に入室した。

 

漆間洹。

ボーダーのぼっちスネイクと自称する異質な隊員だ。

彼も一馬と大きく関わっている人間だが絡んでくるのはまだ先の話。

 

 

「失礼いたします」

「横山、久しぶりだな。ひとまずかけてくれ」

 

忍田との接点は実はあまり多くない。

とはいえ昔孤月の扱いによび悩んでいた時にとあるヒントをもらったことがある。

それで背伸びする事により、トップアタッカー達に辛うじて追いすがることができた。

 

「シャドウの調子はどうだい?」

「絶好調です。忍田さんは最近乗られてますか?」

「それが全くでね…このままだとバッテリーが上がってしまうかな」

 

忍田がこういった世間話から入る時は、何かしら重要な話題がある時だ。

 

「最近、迅とは会ったか?」

「いえ。数ヶ月以上久しく顔を見ていないです」

 

個人的な繋がりを除いて玉狛とはあまり縁がない。

迅とも在籍年数的にも古参になるという理由で、会えば世間話を交わすくらいの間柄だ。

 

「そうか…実はその迅から君に言伝があってね」

「あいつから?」

「単刀直入に言う。三雲修という新人がいてね。もし見かけることがあったら気にかけてやってほしい」

「それとこの数ヶ月で正隊員の顔ぶれも大きく変わった。出来る限り彼らとコミュニケーションを取ること」

 

「最後に、迅悠一との接触は一切断つように」

 

ーーーーーーーーーー

 

正直まだ混乱している。

なぜ迅が直接伝えてこないのか。

三雲修とは何者か。

 

そして、迅との接触禁止。

 

彼のSE的に無理矢理納得せざるを得なかったが、大して親しくない者から復帰早々謎のオーダーが下されて頭が回る訳ない。

 

ひとまずバイクを自宅に置くと沢村との約束のため店に向かう。

 

 

東三門付近にある老舗のバー。

実はボーダーの上層部などもお忍びで訪れている。

特に店名はないがマスターの姓から「剱持」、「剱持さん」と呼ばれていた。

 

実は一馬とは師弟関係にあるのだがそれはまた別の話。

 

「こんばんは」

「いらっしゃい。今日はどうする?」

「ブラックレインを」

 

1人かい?仕事帰りかい?と余計な詮索をしてこない辺り、2人の付き合いの深さが窺える。

 

「ブラックレインでございます」

 

ブラックサンブーカの淡い黒がシャンパンの泡で浮き上がる。

松田優作最後の出演作のタイトルをよく名付けたものだ。

 

カランカラン

 

入り口のベルが鳴る。

沢村が来たと思い目を向けると、

 

180cmを超える長身、ロン毛。

 

「「げっ」」

「アンタ達、息合いすぎ」

 

会いたくないボーダー隊員その2がそこにはいた。

 

 

 

 

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