東春秋に、なれなかった男   作:女王の橋

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諏訪洸太郎
一馬が気兼ねなく接することができる後輩筆頭格。
残念ながら麻雀とタバコはやらないので飲み要員に。
お互いキレたら怖いやつだと思っている。




第一章 再起 005 横山一馬③

「おい、まさかこれで終わりってんじゃないよな?」

「…まだまだ!」

 

圧倒的だった。

最初の2本は様子見でそれなりに長く戦っていたのだが、何を思ったのが3本目からは容赦なく倒しにかかっていた。

初動一太刀で首を刎ね、胸を一突き。

おおよそ稽古とは思えない。

 

(くそ!!とにかく横山さんより早く動き出さないと…)

 

「遅い、遅すぎる。お前は亀なんか?」

「なんでっ…!!」

 

ーーーーーーーーーーー

 

「うわっ、一馬さん相変わらず容赦ねーな...」

 

あちゃあ、と天を仰ぎながらも彼の意図をわかっているので特には止めに入らない。

 

「こんな所でタバコを吸う奴があるか」

「げっ、風間」

 

換装を解いて一服しようとタバコを取り出したが、急に横に現れた風間によりそれは阻まれた。

 

「お前さ、カメレオンで近づいてくるのでやめろよ」

「気付かない諏訪が悪い」

 

雑談をしている間にもあっという間に9戦目が終わった。

鍔迫り合いになった瞬間に組み付かれ、足を払われて倒れた笹森の頭は一瞬でカチ割られた。

 

「大外刈りかよ」

「ほぅ、久々に良いものが見れた」

「あれ一時期レイジや荒船がやってたやつだよな?」

「付け焼き刃だかな。あそこまで綺麗に決めるのはボーダーでも1人だけだろう。ただでさえ弧月は重量があるというのに、斬撃の合間に体術を組み込むのは至難の技だ」

 

「しかしあの人は変わらないな」

「あぁ。バチバチギラギラしてるわ」

「だが流石だ。もう笹森の悪い癖を見抜いている」

「太刀川はただの馬鹿だしよ、荒船の理論にはまだついていけねぇ。一馬さんなら話が早いと思ってよ」

「本来なら隊長の仕事だがな」

「…うるせー」

 

ーーーーーーーーーー

 

動きが優等生すぎる。

それが笹森に対しての率直な感想であった。

 

(性格が動きに表れてるってか。だがこいつはそんないい子ちゃんじゃねえ)

 

一本取られるたびに隠す事なく悔しさを表情に出す。

歯軋りが聞こえてきそうな勢いだ。

 

「10本目!日佐人、最後だぞ。気張れよ」

 

開始を告げるブザーが鳴り響いた。

 

「あの金髪が考えそうなことだ。わかりやすい囮がいれば諏訪隊は点数が取りやすくなるだろうさ」

「…何が言いたいんですか?」

「言わなきゃわかんねぇか?別に誰でも良かったんだよ。お前の代わりは誰でもいるのさ」

 

実にわかりやすい挑発だが目の前の青年を乱すには十分な言葉であった。

 

「このっ!」

 

予想通り笹森は突撃してきた。

ただ今までのようにそれを迎撃するのではなく受け止めた。

 

「あいつも馬鹿だよなぁ。ドカドカ散弾銃打つしか脳がねぇもんだから、いつまで経っても中位から抜け出せない」

「諏訪さんの悪口を言わないで下さいっ!!」

「だがお前みたいなお利口さんがいてラッキーだった。何でも言うこと聞くんだろ?まるで奴隷だな」

「うおおおっ!!」

 

もはや感情に任せて剣を振るう。

セオリーや型などあったものではないが、その勢いは大したものであった。

 

(想像通りだ。こいつは抱え込みすぎなタイプだな)

 

「という訳で、お前みたいな量産型モブに構ってる暇はないんだわ」

「うわっ!?」

 

受け止めた弧月を回すようにしていなすと左斜め下から斬撃を走らせた。

 

(受け止めるか!?いや、それじゃ間に合わない。なら…!!)

 

「おっ?」

 

笹森は身を低くすると左足を軸にして左側に回転することで致命傷をギリギリ逃れた。

 

(今だ!!ここしかない!)

 

右上に伸びきった一馬の腹部を目掛けて突きを走らせる。

 

「よっしゃあ!!こりゃあ決まるんじゃねぇか!?」

 

諏訪の目から見ても勝利を確信した綺麗な形であった。

が、

 

 

「残念無念」

「えっ!?」

 

笹森の渾身の一撃は急に勢いが止まり彼の首が飛んだ。

 

「10本終了。勝者、横山」

 

無機質なアナウンスだけが響いた。

 

ーーーーーーーーーー

 

「おい、何が起こった!?」

「角度が悪くてわからんな。諏訪、別のカメラのリプレイを出せ」

 

一撃の刹那がスローモーションで巻き戻る。

笹森が一撃を放つ瞬間一馬は自ら前に出る形で突きの勢いを殺し、右上に伸びた両腕を引き戻し肘で受け止めた。

右腕の肘から下は飛んだが完全に勢いを殺された突きはそこで止まり、あとは結果の通りとなった。

 

「かぁ〜あんなのアリかよ…」

「捨て身狙いのカウンターといったところか」

「あれ、運次第では日佐人が勝ってたんじゃねぇか?」

「いや違うな、あの人は防げる確信があって行動した。笹森との力量、シチュエーション、過程、結果…全て計算の上だろう」

「なんつーか、執念がすげえよな」

「ああ。あそこまでいくと最早変態だな」

 

 

 

「よう、最後のは惜しかったな」

「…」

 

笹森は唇を噛み締めていた。

自分だけではなく隊長を馬鹿にされた上一本も取れずにこのザマである。

 

「ま、お前の腕じゃこんなもんだろ。次、来週の月曜14時からな」

「え?」

「予定調整しとくように諏訪に言っといてくれ」

 

 

 

後に笹森は語る。

一馬のファーストインプレッションは「最低最悪」であったと。

 

 




週一の更新目指してます。
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