__しばらくしてやってきた時ノ鐘通りは、予想以上に賑わっていた。遠くに通りの名前の由来となった大きな時計台が見える。時計の下に掛かっている鐘は、1時間経つごとにひとりでに鳴る。1時なら1回、4時なら4回鳴るように魔法がかけられている。そろそろ1時なので鐘の音を聞くことができるだろう。通りには、和葉より小さい子も、軽く100歳は超えていそうな老人もいた。昔連れて行ってもらった、竹下通りと同じくらいだ__和葉はそう思いながら周りを見渡す。特に多いのが、和葉と同い年くらいの人だ。みんな大荷物を抱えている。きっとマホウトコロに入学する準備をしているのだ。
「さあ、忙しくなるよ。まずは教科書を買わないとね。あそこが
亜樹は赤い屋根のお店を指差した。
少々離れているのであまりよく見えないが、そのお店の周りは特別人が多かった。
「はぐれないように気をつけて」
そう言って亜樹は歩き出した。2人も慌てて後を追った。
「ねぇ、あれは何?」
色とりどりの実や、昆虫などが瓶詰めにされている。
「魔法薬に使う材料。あとで寄るから、その時にゆっくりと見ればいいわ」
トカゲやカエルが干されているのを見て、和葉は顔をしかめた。__が、その隣の箒店やペットショップを見るうちに、すっかり忘れてしまった。箒店では愛読書に書かれていた箒はなかったものの、最新型の箒がショーケースに飾られていて、子どもから大人まで、たくさんの人が額をくっつけて眺めていた。ペットショップには見たこともない動物がたくさんいた。中でも一際輝いて見えたのは、目の覚めるような青色の羽を持つ小さな鳥だった。まつ毛と目尻の毛は金色で、どこか神秘的だ。しかし早足の亜樹を追いかけるうちに見失ってしまった。
__そして気がつくともう赤い屋根の店の前だ。
「着いたわよ。さて、新入生用の教科書セットは……」
ドアを開けると、チリンチリンとベルが鳴った。亜樹は人混みをかき分け、目当ての品を探す。2人は亜樹を見失わないようにすることで精一杯だった。
「あったあった。2人ともー、こっちこっちー!」
店の隅で亜樹が手を振っている。2人は急いで亜樹の元へ向かう。__亜樹の側には、7冊の本がひとまとめにされて置いてある。厚さはさまざまだが、絵本のように特別薄いものはない。
「全部揃ってるね。和葉ちゃんお金は持ってきてるよね?」
レジに向かう途中、亜樹は芽留と光にそれぞれ1セットづつ渡しながら言った。
「うん!」
和葉はリュックにつまったガリオン金貨を思い出した。拡大呪文をかけた財布には、170ガリオンが入っている。誠はそれを聞いたとき失神しそうになっていた。魔法学校に通うには、それなりのお金が必要なのだ。
「すみません。1年生用の教科書セット2つなんですけど……」
亜樹が黒縁眼鏡の店員に言いながら、2人にセットを渡すように手を動かした。
「1年生用ね。2つで26ガリオン」
店員は高齢で、ゆっくりゆっくり話した。和葉は財布から、ガリオン金貨を13枚取り出した。
「1、2、3、4……はい。ちょうどですね。またのお越しを……」
和葉たちは、その店員が決まり文句を言い終える前に店を出た。
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その後も次々と買い物を終わらせ、財布の中がだいぶ少なくなった頃。
「次は……そうだそうだ、ペットを買わないと」
その言葉に和葉は目を輝かせた。
「ペット⁉︎」
「買わなくてもいいんだけど、変身術のときに借りる学校所有の動物は気性が荒いんだよね」
亜樹は眉を顰めた。何か苦い思い出があるようだ。
「俺、フクロウかヤモリがいい!」
光が珍しく食い気味に言う。
「はいはい」
亜樹はまた歩き出した。
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__“ムジルリツグミ”先程の青い鳥の鳥籠の前にある説明書きに種類が書いてある。和葉はそっと鳥籠を持った。黒いビーズのような瞳を見つめていると、さまざまな動物の鳴き声で騒がしかった周囲の音が遠くなった気がした。
「亜樹叔母さん、私、この子にする。」
フクロウコーナーで光に付き添っている亜樹に鳥を見せる。
「いいんじゃない?こっちはもう少しかかりそうだから、先に買ってきてくれるかな?終わったら、隣の杖店で杖を選んでもらったらいいと思うんだけど……」
亜樹は申し訳なさそうに言った。
「わかった!じゃああとでね!」
和葉は頷いた。
「ごめんね。光ー早くしなさい!」
光はまだ悩んでいる。
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「__10ガリオンになります。」
やる気のなさそうな若い店員が言った。金貨を10枚渡し、和葉は籠を受け取って店を出た。
ムジルリツグミという鳥は実際にいる鳥です。
よかったら調べてみてください。
お金の単位がイギリスと同じなのは、魔法界は狭い世界で国同士の対立などがないことと、両替の手間を省くためです。
最後までご覧いただきありがとうございました。