独りで生きる少女(完結)   作:紀野感無

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オリジナルキャラ紹介

凪沙(ナギサ) 本人は漢字を知らない
10歳
蒼い短髪の子。

名前の由来は母親の好きな風景が凪沙で、そこから名付けたため。本人はその意味を知らない。

主に雑草など、野生のものを食べてる(金がないため)
盗むこともしばしば。

モデル・キャットであり、その性質が身体能力の面で色濃く出てるため素で身体能力が高い。
しかしその代わり赤目になっても爆発的に身体能力が上がるわけではなく、ほとんど大差がない。

侵食率 ??%
(侵食率50%を超えると死)

良くも悪くも、独りで生きていたので他人を信用しないことの方が多い。

元の性格は、明るい方、だった。

【キャラのモデル】

渚さん
Twitter:@Aoneko_nagisa
本人からの承諾も得ています
元々お話ししてて「闇落ちさせてえ」と呟いたら「ぜひ書いてみてくれ」と言われたのでブラブレを主軸に挑戦しました。


独りで生きる少女

「はっはっはっ……」

 

この世はもう絶望だと、希望などないと誰か大人が言ったらしい。

ボクはそんなもの、()()()()()()()()()()()()()

 

この世が絶望でなかったらなんだと言うのか。

 

ガストレアという化け物がこの街から一歩外に出ただけで闊歩している。

食べ物もお金もボクのような子供がまともに貰えるわけもない。

 

この世が絶望じゃないというのなら、ボクは盗む(こんな)ことなんてしない。

 

この世を神様が守ってくれているというのなら、お母さんが死んでいるわけもない。

お母さんのお姉さんもボクを庇って死んでいるわけがない。

 

この世が平和だというのなら、ボクのような()()が生まれてくるわけもない。

 

 

 

 

「捕まえたぞガキ!」

 

「……」

 

男に怒鳴られる。

いつもならどうにかなるのに今日は失敗した。

 

「人様のもん盗んどいてなんだその態度」

 

男に蹴られる。

踏みつけられ、更には髪を引っ張られる。

 

いつもならこんなの直ぐに振り払えるのに、今日は無理だった。

 

お腹が空き過ぎて抵抗する気力も逃げようという考えすらも出てこなかった。

 

何かをずっと怒鳴られ続けるが、もう何を言っているのかすら判断できない。

途中、何か強い衝撃が腕やら足やらを貫いたから、多分警察(クソやろう)も持っている拳銃、とかいうやつで撃ち抜かれたんだと思う。

 

 

(嗚呼、ここで死ぬんだ。思ったより、呆気ないな)

 

 

この世は、ボクのような『化け物』には容赦がない。

ガストレアがやったことを思えば、そいつらの力を持っているボクたちを忌み嫌うのも理解はできる。

 

 

が、受け入れたくはない。

 

 

それに、ボクの行動を誰かに咎めて欲しくもない。咎められる道理なんてない。

 

 

ボクはただ必死に、死に物狂いで生きようとしているだけなんだから。

 

外周区にいるボクの同類も、きっと同じだろう。

 

 

でも今日、ボクはそれに失敗して死ぬ。

不思議と、後悔も何も感じない。

寧ろ、お母さんのもとへ行けるのだと思うと嬉しいとさえ思う。

 

 

「おい!お前ら!何やってんだ!」

 

 

霞んでいく目で、最後に見えたのは、私を殴る蹴るしていた男に何故か立ち向かっているもう一人の男。何か言い争っているが、ボクにはもう、何もできなかった。

 

そのまま意識はゆっくりと、無くなっていった。

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「よう、おはよう」

 

目を覚ますと、そこは見知らぬ場所。見知らぬ人が二人。

 

()()()()が暮らしている場所の、よく見る古い建物なのだということはすぐに分かった。

 

けどいくら考えてもボクがここにいる理由がわからない。

 

「ほら、蓮太郎の事を不審に思っておるぞ」

「いや、延珠だろ。そんな意気揚々とおもちゃを持って笑顔で近づこうとしてるんだから」

「む、いくら蓮太郎とは言え『天誅ガールズ』を馬鹿にするのは許さぬぞ!」

「いででで!待った待った!お前の蹴りは洒落にぃ!?」

 

ボクに何かをしようと考えているのかとか、ボクを殺してお金にするつもりなのかとか考えていると目の前にいた男とボクと同じくらいの少女が喧嘩を始めた。

 

そして男の方が勢いよく蹴り飛ばされていた。

 

「もう怪我は大丈夫なのか?」

「……大丈夫みたい」

「それはよかったのだ!」

 

目の前の少女はさっきのも含めて、明らかにボクと同じ『化け物』だった。

それなのにボクとはあらゆる事がまるで正反対。

 

幸せそうに過ごしている。

 

性格も天真爛漫。

 

食べるものにも困っていない。

 

すぐ身近にいる人間の顔色を伺うこともしなくていい。

 

頼れる人がいる。

 

その辺の小動物とか安全そうな虫を食べる必要もない。

 

食べるものがなさすぎて盗むなんてことをしなくてもいい。

 

そもそも盗むなんて事を考えなくてもいい。

 

 

なんて

 

 

 

なんて憎たらしい生活をしているのか。

 

 

 

 

「それで、何のためにボクをここに連れ込んだんですか」

 

「あん?」

 

「ボクを助けたということは、ボクを殺しかけていた男から、ボクが何をしたのか聞いてるでしょ」

 

「……」

 

男の方は、ボクの言葉に途端に顔を険しくした。

それもそうだ。

 

ボクを殺そうとした男からボクは、物を盗んだのだから。

その上、たまたま近くにいたあの男の相方にぶつかって怪我をさせている。

 

「お兄さんがボクを助けたのは正義感からかもしれませんが、私は殺されかけても文句が言えないことをしたんです。なので……」

 

「それでも、俺はお前を助けるべきだと判断したから助けた。それだけだ」

「そうだぞ!蓮太郎は正義の味方だからな!」

 

驚いたことに、この人は私が何をしたか分かった上で助けたらしい。

 

……

 

「もう大丈夫そうなら家まで送ってやるよ。どこだ?」

 

「……家があるように見えますか?」

 

そう言うと予想通りだったのか頭を掻き毟っていた。

 

「外周区の子か」

「はい」

 

外周区とは、その名前の通り。

今ボクがいる街の外周。

全くと言っていいほど手入れなんてされていない。

住んでいるのは主にボクと同じ化け物。

それとお金のない普通の人間。

 

そしてごくわずかな物好きな人間。

 

「じゃあ妾達と住めばいいのだ!そうだろう蓮太郎?」

「いやいや、待て延珠。2人でもギリギリなのに3人となると話は変わってくる」

「ならば妾の給料からだせばいいのだ!」

 

給料?この子は働いてると言うのだろうか。

 

「ん?どうしたのだ?』

 

「いえ……あの、貴女……えーと」

 

「藍原延珠だ!」

 

「延珠さんは……働いてるんですか?ボクと年齢もさほど変わってなくて……」

 

化け物なのに、と言おうとしたがなんとか踏みとどまる。

わざわざ争いの火種を作る必要もないし。

 

「そうだぞ!妾は蓮太郎のいにしえーたーだからな!」

 

「イニシエーター?」

 

「民間警備会社って言ってな。簡単に言えば……」

 

「警察、ですか?」

 

自分で言った、警察、と言う単語が嫌と言うほど耳の中に響く。

 

「ああ、そうだ。ただ人を相手にする警察じゃなくガストレアを相手にする警察みたいなもんだ」

 

「あ……」

 

「?」

 

ボクの中でグルグルと黒い感情が渦巻く。

呼吸がままならない。

 

 

「お前も、ボクのお母さんを殺した、警察達の、仲間……」

 

 

まともに考えることができず、思わず力を、化物の力を使ってしまう。

 

脚に力を入れ、爪が伸ばし、目の前の男に飛びかかる。

喉を、斬り裂かんと、動く。

 

「そこまでだ」

 

けど、少女に()()止められる。

 

「いくらお主と言えど妾の蓮太郎に手を出すのは許さん」

 

「ヒュー、ヒュー」

 

「おそらくお主も酷い目にあったのだろう。妾も……そんな仲間を沢山見てきたからな。だが、蓮太郎は其奴らとは違う。ヒーローだからな。でなければ、お主を助けたりはしないだろう」

 

「お母さんも……そう、言ってた。警察は、みんなを、助けるヒーローだって。でも……警察は、ボクのお母さんを、殺した」

 

 

 

 

 

(確かに俺らは市民を守る。が、お前みたいな化物とその化物を助けようとするやつを守る必要なんてねえのさ!それに……お前らには何をしてもいいからなぁ!)

 

 

 

 

 

「延珠、いいから」

「だが……」

「大丈夫だ」

「むぅ……」

 

実際のところ、お腹もすき過ぎて何もできない。収まっていたのは喉の渇きだけ。

 

「一つだけ勘違いしてるぞ。俺はな、助けるべきだと思ったから助けた。そこに民警だからとかそんな肩書きは一切関係がない。全て俺の意思、俺の選択だ。俺は前に一度、自分たちに危険が降りかかるかもと見捨てた事を今でも後悔してんだ。だからもう後悔はしたくねえ」

 

そんなこと、誰が……。

 

「……お前がどんなことをされていたのかは何となくわかる。けど……今はとりあえず飯だ飯。腹が減ってはなんとやら、だ」

「とかいいつつ今日もまたモヤシのフルコースだろう?」

「ぐっ……いいじゃねえか安いんだから!」

「妾は別に嫌ではないぞ?蓮太郎のモヤシ料理は美味いからな!」

 

……もう、この人たちのことがつくづく分からない。

 

化物(ボクたち)は、みんなから迫害されるのは当たり前なのに、この人たちはその当たり前をしようとしない。

 

ボクの中での当たり前が、この人達といるだけで尽く壊れていった。

 

「……っ」

「お!もう出来るのか!流石は蓮太郎だ!」

「ほら、とっとと片付けろ」

「了解したのだ!」

 

匂いしか嗅いだことがないけどわかる。醤油とか、いろいろな調味料とか、香ばしい匂い。

 

 

グウゥゥゥゥゥ。

 

 

「ほら、お前……いつまでもお前じゃ呼びづらいな。名前は?」

 

かなり大きく、盛大にお腹が鳴って恥ずかし過ぎて顔が熱くなる。

お兄さんは軽く笑って私の名前を聞いてきた。

 

……。

 

「ナギサ」

 

「そうか、改めて名乗る。おれは里見蓮太郎。民警のプロモーターだ。でこっちがイニシエーターの」

「藍原延珠だ!よろしくなナギサ!」

「ついでと言っちゃなんだが」

 

「?」

 

お兄さんが大きなお皿に大量のモヤシを使った料理を運びながら、ボクにちっちゃい機械を見せてきた。

そこにはちっちゃく文字が映っていた。

 

けど。なんて書いてあるのか読めない。

 

漢字が多い。

 

「まあ簡単にいうとおれの社長から『しばらく住まわせてやれ』って命令されたんだよ。だからこれからもここにいろ、ナギサ。ずっととは言わねえが、お前が少しでもちゃんと生きれるようには俺たちが頑張ってやる。だからお前も頑張れ。無責任だとは思うが、これが俺にできる最善だ」

 

お兄さんはそう言って、次々にもやしを使った料理を運んでくる。

それを見てさらにお腹が減って鳴る。

けど恥ずかしいとかそういう前に、目の前のいい匂いがするものにボクは釘付けだった。

 

「それじゃ」

「いただきますなのだ!」

「……」

 

お兄さんと延珠さんが手を合わせてお辞儀?をするのを見て慌てて真似をする。

その後ハシというものの使い方を教えてもらいながらモヤシ料理を食べた。

 

柄にもなく、美味し過ぎてがっついてしまった。

 

 

 

ポタ……ポタ……

 

 

 

 

「……」

 

「ど、どうしたナギサ。美味しくなかったのか?」

 

「いえ、違うんです。あれ、なんで……」

 

目から溢れる水をどうしても止められない。

何度目をこすってもこすっても出てくる。

 

嗚咽が止まらない。

なんで。

 

 

ナギサはその後も、しばらく泣き止むことはなかった。

 

 

 

「そんじゃ、二人で好きなだけ食べてくれ。……延珠、ナギサを頼む」

「うむ、任せろ!天誅ガールズにどっぷりと引き込んでやるのだ!」

「それはやめてやれ」

 

そのまま家の外に出る。

 

万が一にも聞かれないように。

 

(ただ人を相手にする警察じゃなくガストレアを相手にする警察みたいなもんだ)

(助けるべきだと思ったから助けた。そこに民警だからとかそんな肩書きは一切関係がない。全て俺の意思、俺の選択だ)

 

よくもまぁ、あんな事を言ったものだ。確かにナギサを見たときに真っ先に助けるべきだと動いたのは確かだ。

 

でも俺が家まで連れ帰ったのは、ある意味()()()()()だ。

 

「……先生。先生の考えを教えてくれ。もし俺の考えが間違っているなら……」

 

電話で、とある人に聞く。

 

携帯から聞こえてくる声を聞き逃さないよう、聞き間違えないよう、意識を集中させる。

 

間違っているという事を、微かな望みを信じて、一番ガストレア因子に詳しい人からの言葉を、待つ。

 

『蓮太郎君。残念だが君の考えは間違っていない。彼女は、恐らくだがーーーー』

 

 

 

 

 

 

「そう、ですか」

 

『だがあくまでも憶測に過ぎない。蓮太郎君。明日の朝すぐに私のラボへ来るんだ。詳しい検査等してやる。それと延珠ちゃん用の抑制剤も彼女に投与してやれ。数日なら延ばせるかもしれない』

 

「……はい」

 

『いいか?これで結果が変わらなかったとしても君がケリをつけるべき事案だ。私は、手を貸すだけだよ?』

 

「わかって……います」

 

 




三話前後で完結予定
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