最強の傭兵、紛争の代行者、企業から独立して存在できる唯一の存在。
レイヴン。
レイヴンになるために必要な条件はそれほど多くは無い。
身長・体重・その他身体的特徴・年齢に至るまで一切の制限は無い。
レイヴン選定試験に参加するための、その資格はただ一つ。
その試験に必要な一切合切の費用を支払うことだけ。しかし、その額は実に莫大である。
それにも関わらず、試験希望者は後を絶たないという。
レイヴンとはそれほどまでに魅力的な存在なのである。
だが、その選定試験に合格するものは当然ながらごく僅かだ。
とにかく、この試験を突破するのは非常に困難を極めた。
実際のところ、選定試験の内容は実に単純ではある。
指定された一定エリアの中、一定の数の敵と戦い、一定の時間内まで生存し続けること。
たったの、これだけである。
単純ゆえに困難。
単純ゆえに、恐ろしい。
受験者にはまず一機のACが与えられる。
だが、ACの操作方法などのレクチャーなど無い。全て受験者任せ。これが第一関門。
操作はMTに準ずるとはいえ、性能も使用目的もまったく違う代物である。ほとんどぶっつけ本番だ。
やがて現れるのは二体のシュトルヒ。
無論、実弾武装である。
そして始まる試験は、紛う事の無い殺し合いだ。
当然のことながら、下手をすれば死ぬ。
だが、実はこの時点で不合格=死ぬ受験者はほとんど居なかったりする。
合格条件は生きてさえいれば良いのだ。
たとえどんなにズタボロになろうとも、シュトルヒが倒せなくとも、不合格ではない。
まして試験用とはいえ、ACの装甲は二体のシュトルヒ程度に撃ち破られるほど脆くは無い。
受験者の大半は、シュトルヒを破壊することに成功する。
だが、これで終わりではない。
当然すぐに下されるはずの、試験終了の合図は無い。
受験者は訝しく思う。
条件は満たしたはずなのに、何故だ。
指定された一定エリアの中、一定の数の敵と戦い、一定の時間内まで生存し続けたのに何故だ。
勘の良いものはやがて気付く。
そして同時に身震いする。
確かにここは指定された一定エリアの中だ。
しかし、“一定の数”の敵とは、どれだけの数なんだ?
“一定の時間”内まで生存し続けることとは、何時間先のことなのだ?
やがて再び目の前にシュトルヒが現れる。
幾つも、幾つも。
いつまでも、いつまでも。
ACが破壊され、命からがら機体から脱出しても、まだ続く。
シュトルヒたちは執念深く、受験者たちを狩り立てていく。
受験者たちは、まるで肉食獣に怯える小動物のように、必死に逃げ回る。
果てしなく長い、その一定時間の間を、ひたすら逃げ回る。
生き延びて、レイヴンとなった者たちは皆、口々に言う。
あれこそ、地獄。