創星記ー異伝ー FFXV~冒険の果てに待つものは~   作:星野啓

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首都での巨獣大戦パート2
特撮っぽい画面が表現できてたらいいな
ちょっと短め


Chapter01 夜明けへ 中編

-at first light-

 

 

 

『力が戻った様だな?しかしそれでは勝てまい』

流体金属の鎧が再起動し、鎧の形を整えていく。

のそりと瓦礫を落としながら、駆動し起き上がったかつての王の剣、タイタス・ドラットーは、その面影を捨て去り、帝国という鎧を盾に己の理想を振りかざした。

 

「ニックス!」

ニックスに向けてネヴィラムは手を突き出した。青白い仄かな光が掌に溢れ、ニックスに向けて放たれる。淡い光はニックスを包んだ途端、炎となってその身を包んだ。

一瞬で炎は消え、ニックスはドラットー(グラウカ)の剣をウォールで防ぐ。

ガラス状の魔法の壁は、グラウカの大剣を防ぎ、弾いた。

『っく!』

「うぉおら!」

双剣をかざし、グラウカの鎧の隙間目掛けてニックスが突っ込む。瞬時に体を反転させたグラウカが大剣の腹で、ニックスの胴体を薙ぎ払った。

 

「...ッグ!っくそ、かってぇな!」

後方までとんぼ返りしたニックスに、魔力を補填しながらプロテガをかけると、ネヴィラムも自分の剣(ガンブレード)を召喚する。

「ニックス、あの流体金属の鎧は衝撃を吸収する。サンダー系で削って叩け」

小声の作戦会議に、ニヤッと不適に笑ったニックスは

「リョーカイです、王子」

と軽く立ち上がる。そんなニックスに、「ネヴィンでいいって」と肩を叩く。

 

 

 

 

『もう手遅れだと言うのに、お前たちはまだ争うのか?素直に指輪を渡して仕舞えば、この蹂躙も止められるかもしれん』

片手を前に出し、ニックスを説得しようとするグラウカに、ニックスは踏み込みながら

「本当にそうか?勝手なこと言うなって!」

とサンダガを打つ。着弾と同時に周囲の地面が明るく光り、鎧の動きが一時的に鈍くなる。

すかさずグラウカ目掛けてネヴィラムがシフトで押し込む。

「指輪だけじゃ帝国は満足しないさ。そんなに甘い国じゃ無い。お前は12年前のテネブラエで、何を見てきた、愚か者が!」

シフトの勢いでよろけたグラウカに、再度攻撃を畳み掛ける。

「レギスは、息子可愛さに全てを切り捨てた!私は故郷を守るために戦った!愚かと言われようが、卑怯者と罵られようが、私の正義を貫く!それしか最早、散っていった仲間たちに報いることなどできんのだ!」

ブラスターから魔導エネルギーを放出させながら、体制を立て直し、グラウカが吼える。

 

ダイアウェポンの放つ光弾が、その場に居た者たちの足場を吹き飛ばす。ネヴィラムとニックスは、己が武器を大上段に構えて向かい側へと力一杯振り投げる。

「何故裏切った!帝国のどこに夢がある?!あんたも故郷に対して帝国がしてきたことを忘れたわけじゃねぇだろ!」

着地してきたところを打ち据えにきたグラウカの剣を防ぎながら、追いやられたニックスがグラウカに憤る。

 

『帝国か、ルシスか、そんな事は既に問題では無い!ニックス!我々の守りたいものはなんだ?お前の答えも同じはずだ!』

 

次々と炎を上げて崩れ落ちていくビルの中、ニックスが腕を掲げる。

「勘違いしないでくれ、“今を守っても”故郷は救えない。俺はそう思っただけだ」

 

ニックスの掌に光が宿り、眩く輝く。

それは指輪の叡智の力。

 

光に呼応し、石像となっていた歴代王達が目を覚ます。

インソムニアの最後の砦たる第一魔法障壁が起動する。

 

ダイアウェポンに向かって、巨大な槍状の剣を構え、王の姿が消えた。

 

凄まじい破壊音と、苦しげな化け物のつんざく声でネヴィラムは何が起こったかをようやく理解することができた。

 

「自分の国の首都で、壊す事を厭わないってか」

思わず自分の気持ちを吐露してしまう。

今までの王たちが魔法障壁を築き、身を削ってまで大切してきた王都が、王によって壊されることがあろうとは。

 

期せずして撤退中の戦艦の中で同じことをアーデンが呟いているとは露知らぬまま、ネヴィラムはグラウカを追いかける。

 

 

ダイアウェポンの巨体を頭から殴りつけた槍使いの王は、重心を下に下げて、ダイアウェポンを背負い投げる。

大きな音と共にダイアウェポンが浮き上がり、帝国機動戦艦を何機か巻き込みながら、インソムニアへ沈み込む。

化け物の上空にシフトした夜叉王が、その剣と拳を以って、ダイアウェポンのコアを破壊する。

断末魔の叫びを聴きながら、ネヴィラムが夜叉王の巨大な鎧の飾り部分にシフトする。

後方に戦艦によって運ばれるダイアウェポンが見えたからだ。

 

初代王(夜叉王)!聞こえているかどうか分からないがが、第2空挺団が2体目のダイアウェポンを連れてくる!迎撃をお願いしたい!」

《了とした。道を示せ》

 

ネヴィラムが剣を突き立て、意思を伝える。

王と共にシフトで移動する時、力を渡された時の様なフラッシュバックが起こる。

 

***

 

祭壇がある。まるで王都城の王座の様な祭壇。

覚束ない足取りで、白い衣装の男が何かを抱えて祭壇へと歩いていく。一歩踏み出すたびに、男の足元にはどす黒い跡が残る。酷い怪我を負っているのだと思った瞬間、手元の剣が目に入る。それは深い青色の剣だった。以前アーデンが手慰みに出した剣とよく似た、美しい剣。今は剣先が濡れ、滴が垂れていた。

 

(俺が、傷つけたのか?)

気がついた途端、哀しみが雪崩れ込んできた。

自分では無い。この記憶の主人の哀しみが。

 

「あぁ、どうして...」

いつの間にかこぼれていたネヴィラムの声に合わせる様に聞こえもしない声が響く。

《....兄上....私は...どうすることも出来ぬのだ...私は、世界を救わねばならない...兄上とは異なる道で...使命を....》

 

胸の内に去来する若い男の声は、初代王、夜叉と言われた若き王の苦悩だろうか。兄と呼ばれたその人が、恩讐を糧に生き延びている事をこの王は、なんと思っているのだろうか。

 

***

 

熱い炎の風と共に戦場の景色が戻ってくる。

どうやらフラッシュバックが終わったらしい。頬に伝う涙を飛ばしながら、ダイアウェポンを運んでいる戦艦にシフトする。火花が視線を覆う中、敵の咆哮が聞こえる。

 

《此奴を落とす。船を砕くぞ、後は好きにせよ》

「....分かった」

フラッシュバックしたあの光景を、聞けるものなら聞きたかった。養い親(アーデン)に良く似たあの男が、あの後どうなってしまったのか。王は何故、苦悩しているのか。

 

しかし戦場にそんな悠長はない。

眼前に迫るダイアウェポンの上で戦うニックスに合流する。

 

 

 

だんだんと白んでいく空と共に、ニックスの体は疲弊していった。ネヴィラムから絶え間なく送られ続ける魔力に体が耐えきれず、悲鳴を上げ始めていた。

心臓を握られている様な息苦しさに、太陽で焼かれる様な皮膚の痛み。グラウカの剣を受け止めるたびに、骨に直に響く様な痺れを感じる。

 

《さっきの威勢はどうした。どうやら身に余るものを背負わされているな?》

かつての上官は、ニックスの疲弊に敏感に感づいた。

あまり力の入らない左手を狙って剣を振り下ろしてくる。

《お前に教えたはずだぞ、ニックス。気持ちだけじゃ、戦いには勝てないと!》

打ち込んでくる一撃をなんとか逸らし、サンダガを打ち込む。グラウカの顔を覆う鎧が部分的に吹き飛び、顔が露出する。かつて共に戦場を飛び回った男の顔は、黒く煤で汚れ、少なからずダメージを負っている事が見て取れた。

 

「あんたはどうなんだ?帝国に鎧借りて、故郷の誇りを守るのか?アンタ1人で、戦ってるみたいに見えるぜ?将軍。それこそ、王子のこと言えねぇじゃねぇか!」

 

飛び掛かったニックスが、グラウカの体を押し、ダイアウェポンの上から叩き落とす。ガクンと足元が揺れ、ダイアウェポンが崩れていく。どうやら運んでいた戦艦が、王によって砕かれたらしい。

重力に従って落ちていく体が地面につく寸前で停止する。

 

「ニックス!無事か?!」

炎を纏いながら着地したネヴィラムがこちらに向けて手を出している。大方物体の勢いを緩める魔法でもかけてくれたのだろうと予測して、ニックスはネヴィラムに向けて親指を立てて見せる。

「大丈夫だ!助かったぜ、ネヴィン!」

「っ..急に呼ぶなコンニャロー!力抜ける!」

「なぁに恥ずかしがってんだか!自分で呼べっつったんでしょうに!」

 

崖の下と上で2人、束の間の小噺に笑いを挟む。

それも長くは続かない。

 




次回首都攻防戦完結です。
中途半端ですがここできります。
アンチ・ヘイトタグの追加は、ここのドラットーに対する流れもあり、つけています。

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