創星記ー異伝ー FFXV~冒険の果てに待つものは~   作:星野啓

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お久しぶりです。

今回ちょっと短め。
王子の旅が始まる。


Chapter02
Chapter02 夜明け 前編


「もしもし、コルか?」

「無事で、いる様だな」

どこか安心したような、それでいて重々しいを言葉が続く。

ゆっくりとしたコルの口調に、ノクティスは苛立ちを募らせた。

「どうなってんだ!」

怒りをぶつけるかのように電話口で叫ぶが、普段とは違う、どこかぼんやりとした男の声は、ノクティスの所在をただただ聞くばかりだった。

「外だよ、そっちに戻れない!なんなんだよこれ?どうなってんだよ!親父は!ルーナは?王子が死んだってどういうことだ?!説明しろ!」

畳みかけるようにまくしたて、その答えをノクティスは待った。眼前に広がる故郷が、黒煙を上げている理由を、ただ知りたかった。今、質問に答えられるのは、電話越しのこの男だけ。

しかし、頼れるはずの将軍は

「俺は、ここを出てハンマーヘッドに向かう」

とだけ告げた。

そして、次の言葉を聞いた瞬間、煩わしいほど鳴っていた帝国機動戦艦の駆動音も、周囲の雨音すら、聞こえなくなった。

 

 

「陛下は、亡くなられた」

 

 

二の句を告げないでいるノクティスに、将軍は淡々と指示を伝える。

「何が起きたかは必ず教える。まずそこを動け」

そう告げる将軍の言葉に、ノクティスはため息の様な返事をして、端末を持った手をだらりと下した。

「将軍か?なんと」

ノクティスの様子に、何かを感じ取ったのか、イグニスがそっと質問してくる。

「ッ...ハンマーヘッドに行くって」

「そうか...」

ただそれだけ答えたノクティスに、イグニスもそれ以上質問しようとしなかった。

雨が降ってくる足元だけが、視界に広がる。

数日前まで、笑っていた父親の顔が、美しい街が、友たちが、(いえ)が。

浮かんでは消えていく。

 

「陛下は?」

グラディオラスの声が、ノクティスを現実に引き戻す。

けれど、ノクティスには事実を口にできるほどの余裕はなかった。数日前、自分を笑って送り出してくれた最愛の父が、あの強く優しい親父が、もうこの世にいないことなど、何があっても言いたくはなかった。

 

沈黙のままのノクティスに、最悪な結果を予期したグラディオラスは、冷静な、感情を押し殺した声で

「ひとまずこの場を離れるぞ」

と声をかけた。冷たく聞こえるその声に、プロンプトが少し、怯えた表情をするのを、イグニスが促しながら、一行は丘を後にした。

どうしようもない不安と悲しみを、胸に秘めて。

 

 

ー強さを求めてー

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

落ち込んでいるノクティス一行から、時間を少しさかのぼる。

 

「さぁて、ここからどうしますかね。妙案はおありですか、敏腕外交官?」

朗らかに笑うニックスの表情は、戦う前と同じく明るかったが、ボロボロの服に、微かなやけどの跡。すすで汚れた王の剣の仮面が、背中から外れかかっていた。

「ニックス、知ってるか?“外交”ってのは、熱戦が始まる前にやるもんなんだよ。こうなっちまったらお役御免だ」

座り込んだ瓦礫の上で、やれやれといった風で両手を軽く掲げて見せると、ニックスは座りなおしてネヴィラムを正面から指さす。

「だから、アンタの出番じゃないか。王子は、あー、ノクティス王子な。まだ、壁のこっちがこんなことになってるって、知らねぇんじゃねぇか?まんまと帝国につかまっちまうことがあったら、それこそまずいんじゃないか?」

もはや王都インソムニアは過去の栄華を一切感じさせない瓦礫の山だった。

人の気配はなく、シガイが黒色粒子をまき散らせながら上り始めた朝日に消え始め、魔導兵の残骸が、家屋の残骸と共に転がっていた。その様子を見るともなく見つめた後、ネヴィラムは一つ息を吐く。

「...、リベルトがうまくフルーレ嬢を連れ出してくれていれば、塀の外まで出れただろう。ちょっと休ませてもらってから、俺たちも出よう。ここに至って“今の俺”じゃ、何もできないから」

そういって地面に横になる。魔力を消費しすぎたせいで、先ほどから視界が狭くなりつつあった。

(指輪、外したから反動が...)

吐き気をこらえつつ息を整えるために空を見上げると、ノクティスの瞳の色の様な深い色の空が、ちょうど夜から取って代わろうとしていた。所々煙に汚された、傷だらけの空。

そう、ぼんやりしていると、顔の横に傷だらけのブーツが、土を踏む。

「ん?」

視界に、真剣な顔をしたニックスの顔が映り込む。そのまま黙ってみていると、ニックスは膝をついてネヴィラムの頭を地面から浮かせ、自身の膝へ導く。

「...これって、『硬い』とか文句言うシチュエーションなのかな?」

そう務めて茶化すような口調で言うと、ニックスは固く結んでいた口を緩め、口を開く。

「...俺、アンタの見方になりますよ」

唐突でいて、怒鳴られた続きだと感じさせる、誠実なニックスの声。

声に、顔に、空気に、飲まるような気がして、ネヴィラムは黙って続きを促した。

「アンタは、“死神サマ”に好かれてる。そうだろ?だから、城の連中は、アンタを煙たがってた。不気味だってな?けどアンタは何を言われようと、命を救おうとした。それは、王子だからか?」

「....yesでもあり、noでもある、かな。王子だから、臣民を守らなければ、そう思ってやったところもあるから」

膝の上で、覗きこまれながら真正面からネヴィラムはニックスに向き合う。

誰にも、養父(アーデン)にすら言ったことのない、心の声。

「ニックス、お前さ、明日死ぬってわかっている人と、関係ない振りして笑顔でしゃべれるか?」

「....」

「しゃべれちゃったんだよなぁ。俺。5歳の頃だ。その死が、必要なことだと、わかったから」

その言葉に、「人が死ぬことが、必要なこと?」と今まで黙って聞いていたニックスが尋ねる。

「最悪だよなぁ。神様連中は、ヒトゴトだと思ってさ」

へへへ、と誤魔化すように笑うネヴィラムだったが、ニックスはニコリともしなかった。

「もう、聞かねぇ」

ぽつりとそうこぼしたニックスの声は恐ろしく低い声で、何かを押し殺しているような声音だった。

「ごめん、あの」

「俺も身勝手な奴、嫌いですから」

真剣な顔のまま言い切ったニックスの言葉が、ジョークだと気が付いたのは2秒ほどたってからだった。

「っふふ、身勝手ってそれ、俺のことも含むのか?」

「当たり前じゃないですか。あんなぶっ飛んだことするヒト、身勝手じゃないとしたら、なんなんすか?」

 

ひとしきり二人で揶揄ってから、ネヴィラムがゆっくり体を起こして、体についた土埃を払う。

そして改めて向かい合う。

「向こうには屈強な護衛3人もいるじゃないですか。じゃあ俺はアンタの護衛になりますよ。国なんて墓標の上に立つんだ。それくらい俺にだってわかります。でも近づいてくる闇を振り払って明日を掴まなきゃならねぇでしょ?ここで拾ってくださった命だ。どこで捨てるかは俺が決めさせてもらいますよ」

スッと差し出した手を、同じく土埃に汚れた手がつかむ。

「もう2度と立ち止まれないぞ?」

挑むような口調のネヴィラムに合わせるかのように、悪戯心を含んだ顔で

「アンタはそろそろ、仲間って単語学んだ方がいいっすよ」

とニックスがニカッと歯を見せて笑う。

ネヴィラムが虚を突かれたような顔つきで、少し言葉の意味について考えるようなしぐさをすると「何初めて聞いたみたいな顔してんですか」とニックスが馴れ馴れしく肩を組む。「痛てっ」といいながら、くすぐったい顔をしてもう一度空を見る。

「まぁ、もうすぐオニイチャンからのプレゼントにも気づく頃だし、行くか」

「お供します」

 

見上げた空は、明るさを増し、風が煙を流し去ったからか、少しずつ澄んでいった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「警護隊は、もう機能してないんだろうな」

「あぁ、将軍が外に出るというくらいだからな」

運転席のイグニスが冷静に分析する。しっかりした声も心なしか震えていた。

「中は、どうなっているんだろう...」

「そのうち報道されるだろう、それまでは」

「あぁ、まずはハンマーヘッドだ。他は後で考えようぜ」

心配げな顔で助手席から乗り出したプロンプトが食い気味に聞くが、だれもその答えを持ってはいなかった。流れを断ち切るかのようにグラディオラスが言葉を投げる。

“後で考えたい、今はそれどころではない”

言外にそう告げているかのようだった。

 

「...帰れないケド、旅はできる...」

そういわれたノクティスは、俯けていた顔を少し上げた。

痛々しい精いっぱいの笑顔のプロンプトが、そこにいた。

「...っあぁ。そう、だな。いこう」

つっかえながら、そう返事をしたノクティスに、車内の空気がやっと少し明るくなったような気がした。

 

雨音しかしない車内で、グラディオラスの端末が鳴る。

「もしもし!お兄ちゃん?!」

場にそぐわない、可憐な声が端末から車内に響く。

真横でいたノクティスが勢いよく振り向く。

「イリスか?!」

「イリス、今お前どこにいる!王都はどうなった!」

「今は、護衛の人に連れられて、レスタルムに向かってるところ。兄さん無事なの?」

普段の明るいイリスの声からは想像できないほど、掠れた声に、グラディオラスは不安をぬぐえなかった。

「とりあえずな。俺たちは将軍からハンマーヘッドに行くように言われてる。いったんそっちに行ってから合流になるぞ」

「大丈夫!...大丈夫だから。兄さんはノクトの傍にいてあげて」

『大丈夫か』と言おうとしたグラディオラスに、イリスは勢いよくそう告げた。

“ノクトの傍に”そう言うイリスの声が、あまりに切実で、未だ生存を告げていないのに生存を確信している妹に、グラディオラスは『勝てねぇな』と思うのだった。

「...おう、任せとけ。必ずレスタルムまでたどり着けよ」

端末越しの妹は、うん、と小さな声で言ってから、「兄さんも、ね?」と言ってから名残惜しそうに端末を切った。

 

「ついたぞ、いこう」

話終わるのとほぼ同時に、イグニスがハンマーヘッドに到着したことを知らせた。

先ほどより少し明るい表情なのは、イリスが無事だと、一人でも所在を知ることができたことが理由だろうか。

 




まだお兄ちゃん合流しません。
というわけで、ニックス生き残った。
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