創星記ー異伝ー FFXV~冒険の果てに待つものは~   作:星野啓

15 / 15
やっとノクトは出発しました。
そして長らくおまたせしました。ちょっとづつ、再開です。


Chapter02 夜明け

 

 

 

ーホテルシーサイド・クレイドルー

 

久々にありつけた寝床で、気が緩んだのかもしれない。

気づいたときには、ネヴィラムは夢のただ中にいた。煙をくゆらす街。その町影には見覚えがあった。

商業都市アコルドを擁する、水都オルティシエ。水神リヴァイアサンが眠っていると言われる街だ。

その町が、煙を吐いて崩れている。

(リヴァイアサンの目覚め...)

 

「聖石に選ばれし王は、星の闇を払う!それはお前も承知であろう!」

気高い声が、海面の急上昇した沈みゆく街に響き渡る。その声をネヴィラムは茫々とした思いで聞いていた。

弟の婚約者、神凪の、ルナフレーナの透き通るような声は、確かに水神に届いているようだった。

何物にも屈せず、神に挑んで見せる様は勇敢であり、蛮行だった。

(夢に視る…ってことはフルーレ嬢は…もう死の女神にみいられてるのか?なぜ?)

鎌首をもたげているリヴァイアサンは水の都を壊さんとする勢いで、その瞳は怒りに染まっていた。夢の中での水神の言葉を聞き取ることはできなかったが、水神を崇めている民が住まうはずの街に向けて、尾を振り下ろすのだ。

(この戦い、何かがおかしい。神凪を進んで屠ろうとする神はいない。水都の街オルティシエも、アメリアだって街に危険が及ぶようなことはしたくないはず。なんで、こんなことに)

 

 

 

「なんで…」

静かな朝日に沈む部屋の中で、ネヴィラムの声だけが響く。

謎が解き明かされないまま目が覚めたわけはすぐに分かった。

チリリと小さな痛みが手から伝わる。アーデン指輪だ。どうやら魔力を抑制されたせいで一時的に魔力が不足し、夢から覚めたらしい。

「....確かに魔力大量消費するのはいただけなかったが...釈然としねぇな....」

 

とはいえ脱力感にも似たあの強烈な辛い感覚がないのは、単独行動中のネヴィラムにとっては救いだった。

「フルーレ嬢は...命に変えても守るって約束、だったな...」

弟との約束だ。

守ってやらねば、兄が廃る。

真の王として全ての神に認められるためにも神凪であるルナフレーナは大切な存在。護られるべき大切な命だ。

 

 

(つっても、命に優劣つけられるほど...お前は偉いのかよ)

そう胸の内の誰かが皮肉を言うのを聞きながら、しかし既に命の剪定に手を貸してしまったネヴィラムは、部屋のドアを静かに閉めた。

 

「こうなれば、まず先にフルーレ嬢にあって確かめる必要がある....か」

 

――――――――――――――

[side ノクティス]

 

「タッカが昼飯持たせてくれてよかったよなぁ」

 

しみじみと手の中にあるサンドイッチを頬張りながら、グラディオラスが満足げに言う。

 

「ほ~んとほんと!トマト届けた甲斐あったよねぇ」

「そのせいで、サンドイッチに野菜入ってんだけど・・・」

「王子の野菜嫌いは、まだ当分続きそうだな」

「子どもっぽいよ、ノクト~」

「うっせ」

 

運転を任されているイグニスは無言で、助手席のノクティスが差し出したサンドイッチを、一口かじってまた前を向く。後部座席でノクティスの野菜嫌いをいじるグラディオラスも、プロンプトも、手には大振りのサンドイッチを持っている。

ノクティスはこのサンドイッチをくれた男のことを少し思い出し、笑ってしまう。

 

 

 

「待てよ」

 

日に焼けて、ガタイがいい体格は、ともするとハンターのように見えるが、

小さく背中を丸める姿には妙に愛嬌があった。

この、タッカという親切な男は、その昔シドに救われたことがあるらしかった。

言葉少なげに、ノクティスたちを心配する目に、ノクティスは少し肩の力を抜くことができた。

 

「なに?・・ん?あんたって、」

「タッカだ。お前たち、車で行くのか?」

「うん」

「じゃあ、ついででいいんだが、食材の買い足しを頼みたい」

「へ?なんで俺が?」

 

不満2割、不思議さ8割の顔をしているノクティスに、後ろからイグニスが「言葉遣い」と小突く。

そんな二人をよそに、タッカはもじもじと続けた。

 

「いや、食材は無くても困りはしないんだが・・・その、シドさんが」

「シド?」

 

意外な名前が出てきたことに、今度はイグニスが反応する。

 

「お前たち、あんな状況じゃ、しばらく帰れないだろ?」

「・・・まぁ、な」

 

掛けられた言葉に、咄嗟につっかえたノクティスに、タッカは少し寂し気でやさしさに満ちた目を投げかけた。

 

「俺も、すぐ家に帰れなくなったことがあって、少しだけだが、お前たちの苦労が分かる」

「・・・」

「シドさんが、『外の生活に慣れさせたい』って話しててな。それで、その、俺が「頼み事をしてみたら張り合いがあるんじゃないか」って、その、話をしてな」

「そうだったのですか」

「シド・・・」

 

それでな、とメモをぺらりと渡してくる。タッカは、これを渡すまでに考えに考えたらしい。少しよれてしまって、書き直した跡がいくつもあるメモを、イグニスが目を通す。

 

「そこに乗ってる食材は、すぐそこでとれるもんばっかだが、ちょっと、量がいる。たのまれてくれるか?」

「分かった、そいうことなら引き受ける」

 

と即答したのノクティスが、挨拶もそこそこに出発し、一行はルシストマトをはじめとした『サンドイッチに使う食材』を知らず知らずのうちに集め、タッカに渡しに行ったというわけだった。

そして、報酬として、決して少なくない旅金とこのサンドイッチを受け取ったノクティスたちは、改めて王の墓所へと車を走らせている。

 

 

 

 

「ほれ、ノクト。これお前のだよ」

 

グラディオラスがクーラーボックスから取り出したのは、どうやらサンドイッチのようだった。

包み紙が一つだけ2重になっている。

 

「ん」

 

素直に受け取ってみて、まずノクティスは先ほどイグニスの口元に運んだものとは匂いが違うことに気が付いた。なんだか少し、香ばしい匂いがするのだ。

 

「お!ガルラのカツだ!」

「え、いいなぁ!」

「肉ぅ??」

「タッカの気遣いか」

 

ガルラの肉を、確かにノクティスたちはタッカに届けていた。

そんなに多い量ではなかったが、質の良いところをイグニスとグラディオラスが切り分けていた。

その時の肉を、タッカは野菜が嫌いなノクティスのために、カツサンドにしてくれたらしかった。

 

「えぇ、これ、やっば!うまい!」

「ノクト、これ系の味濃いめのカツ好きだもんねー」

「おぅ!」

 

がっつりと衝撃的でジューシーな味が口の中にあふれ、肉汁がさっぱりとしたレタスに挟まれてパンに吸い込まれている。クレイン小麦で作られた香り高いパンは、パン耳が付いたままだったが、サクリとした感触で歯切れがよかった。カツには塩コショウが振られていて味にはキレがあり、ソースが付けられたあげ衣は、時間がたっているにもかかわらず、ざくざくとした食感を残していた。

 

「・・・タッカ、いい奴だよな」

 

ノクティスがぽつりとつぶやく。

 

「そうだな、タッカはシドへの恩があるんだろうが、それ以上の気遣いを感じると思う」

「タッカみたいに、外で暮らしている人たちって、これからも安全に生きていけるのかな・・・」

「プロンプト?」

 

怪訝そうなグラディオラスの声に、「え、あ・・・」と少し戸惑ったような声を出したプロンプトに

 

「環境は、変化せざるをえないと思う」

 

と端的にイグニスが説明した。

 

「おそらく、今後はこの周辺に帝国軍が配備されることになるかもしれない。そうなると、俺たちを探すための検問が設けられることもあるだろう」

「ここに長くとどまるのも、危険、か」

 

グラディオラスが懸念を口にする。

 

「っくそ・・・」

 

ノクティスが、言い切れない言葉を言い換えるように、小さく舌打ちする。

 

「でもでもさ!帝国も無理なことって市民にはしないとかない?「助ける」とか言ってるからさ、無理なことしたらバレるじゃん」

 

プロンプトの発言に、ノクティスがハッと顔をあげる。

 

「プロンプト・・・お前」

「へ?」

「なんか偶に、鋭いよな」

「え?今さ、俺ばかにされなかった?」

「っふ、へへ、してないしてない」

「ちょっと~、もう、笑ってるじゃん!」

 

車は、前に前に走っていく。まだこの周辺には帝国軍が到達していないのが不幸中の幸いだと言える。

車内は深刻な内容を伝えるラジオの代わりに、のんびりとしたカントリーミュージックが流れ、

食べ終わったサンドイッチの紙屑がひとところにまとめられてゴミになっていて。

頭上には、どこまでも澄んだ青い、美しい空が広がっている。

薄っすらと雲が風に流されて、崖がごつごつと張り出した石山の向こうに消えていく。

 

「もうすぐで、とりあえず指定された途中の集落につくぞ」

「りょーかい、・・・」

 

助手席のノクティスが両手を前に出して、ぐっと突っ張り、深呼吸をした。

 

「・・・おれは・・・一人じゃない」

 

その言葉を聞いた車内は、誰からともなく、っふと詰めていた息を吐いた。

その場の空気が、人知れず張りつめていたものが、ノクティスの言葉で和らいだ気がした。

 

「うっし!行くか!」

 

 

 

 

「そういえばさ...」

 

プロンプトの不安げな声が助手席のノクティスに届く。

 

「クリスタル、ないんだよね...」

 

いつも明るいプロンプトも、ルシスの市民として漠然とした不安を抱えているのだろう。

後部座席のプロンプトの顔は伺えないが、オープンカーの風に誤魔化されず、ありありと感情が伝わってくる。

 

「盗られたっつうことだな。あれじゃ魔法障壁がつくれねぇ」

「返させるし」

 

グラディオラスが客観的な事実を、押し殺した声で話す。

ノクティスは、まだごちゃごちゃとしている胸の内を悟らせぬように、噛み付くように言い返した。

 

「あぁ、必ずな」

 

ノクティスが何を言わんとしたのか、イグニスはわかっている。しばらく車内は無言の時間が流れた。

風が砂っぽくなり、街の影はかなり後ろに遠かった。

地図上にはこの先、ハンターたちが寝床に使っていると言う廃集落があるばかりだ。

 




タッカさんに初めて会った時、「なんて優しいヒトなんだろ」って思った気持ちをそのままに書きました。
あと、このゲーム、なんといっても飯テロの多さですよ。
再現できていれば幸いです。
2024/05/17 加筆しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。