創星記ー異伝ー FFXV~冒険の果てに待つものは~   作:星野啓

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王子、出発。
物語が始まります(やっと)


Chapter00-2 嵐がおきて

これは“真の王”が星を救い、神々から決別する物語

 

 

 

 

 

 

ー旅立ちー

 

 

 

「ノクティス王子の出発を認める」

 

「ありがとうございます、陛下」

 

「旅の無事を祈る、下がって良い」

 

はい、とやや小さな声でおざなりな礼をして勢いよく部屋を出ていく息子に、身を乗り出しながら、止められないレギスを端から見ていたクライレスは、「行ってこい」とだけレギスに声をかけた。背を押された形の王は第一の臣下に礼を言い、席を立った。

 

 

 

 

 

エントランスまで出たところで

 

「今から出立か?ノクティス王子!」

 

頭上の声にノクティスが振り向くと、遥か上の小窓から自分の兄が顔を出しているのを見つける。

 

「兄貴!見送りにきてくれてたのか!?」

 

大声で呼びかけると、「ちょっと待て、今そっちいくから!」と声をかけられ、どうやって来るのかと待っているとそのまま身を乗り出して来る。

 

「え、ちょっ!あれまずいんじゃないの?」

 

プロンプトが後ろで騒ぎ始める。兄の所業や性格を多少知っているほか3人は「あぁ〜またかぁ」と言った顔で成り行きを見守る。

 

 

 

ヒュン、とシフトの音がして兄が目の前に現れる。

 

「兄貴ィ、無駄にシフト使うなよな?まさか寝起きってことはねぇだろ?」

 

「うん?寝起きだけど。ほらこことか寝癖で...」

 

つまり、とノクティスは呆れた。

 

「兄貴寝起きでそのまま部屋から出てきたのかよ、みっともねー」

 

「つか、さすがネヴィラム様だな。寝起きであんだけ動けんのか」

 

ノクティスのツッコミと、グラディオラスの斜め上の賛辞が贈られる中、まあまあ、と手をひらひらさせたネヴィラムは、ノクティスにホイっと何物かを手渡す。

 

 

 

「あ!あん時のボトル!...ってなんか入ってんの?」

 

シャンパンのボトルを受け取ったノクティスは、中にある物を繁々と眺める。慌ててネヴィラムがボトルをかっさらう。

 

「ダメだぜノクト。これは魔法のボトルだ。困った時に開けるんだぜ☆」

 

ウィンクを一つして持たせてやると、「分かったよ...」としぶしぶイグニスに預けた。

 

「後これ、小遣な。王都での金は外と違うからな。ちょっとしか無いから、大事に使うんだぞ」

 

とノクティスにギルを握らせる。

 

「行っておいで、ノクティス」

 

「ん、あんがと」

 

わしわしと頭を撫ぜてやっていると、後方から声をかけられる。

 

 

 

「ノクティス王子!」

 

ドラットーの声に振り向くと父王が、ゆっくりとした足取りで、こちらへ降りてきているのが見えた。ネヴィラムが踏み出すよりも先に、ノクティスが駆け寄る。

 

「色々と言い忘れてな。ノクト、大事な友人たちに迷惑をかけないようにな」

 

口酸っぱく言われていることなのか、ノクティスはむすっとした顔付きで「そんなこと、わざわざ言わなくていいって」と口を尖らせている。

 

「知っての通り頼りない息子だが、どうかよろしく頼む」仲間に向けて言葉をかける父親に、恥ずかしさが勝ったのか、ろくに仲間の返事を待たないまま

 

「行くぞ、コルが車で待ってんだろ?」

 

と声をかける。

 

「くれぐれも、未来の奥方に失礼のないようにな」

 

そう言われたノクティスは、大仰に礼をしながら

 

「そちらもニフルハイム帝国サマに失礼のないようにな」

 

と言い返す。

 

「心配などいる物か、ネヴィンもいてくれる」

 

「そりゃそうか。でもお互い様!」

 

「いいかノクト。途中で投げ出すことは許されない。すぐに帰れないことは、覚悟しておきなさい」

 

そういう父王の顔は、いつも通りの心配そうな父の顔だった。ネヴィラムはズキリと胸が痛んだ気がした。

 

ノクティスは、そのことを知ってか知らずか、

 

「そんな簡単に帰らないし、投ださねぇよ。ご安心を?」

 

と胸を張りクルリと踵を返す。

 

これだけは、とレギスが一歩、歩を進める。

 

「気をつけていくんだぞ」

 

そう言われたノクティスはレギスを振り返る。その肩にレギスが手を置く。昨日の夜、ネヴィラムにそうしたように。

 

「ルシス王家の人間として、このレギスの息子として“常に、胸を張れ”」

 

びくりとした顔のノクティスは、ぎゅっと口をつぐみ、しばらくして「はい」と返事をしてから、今度こそコルが待つ車へ向かっていった。

 

 

 

「行ったな」

 

ポツリとレギスがこぼす。

 

「はい、行きました」

 

万感の思いが込められているであろう言葉に返事をしながらネヴィラムも王に振り向く。

 

「私も王の剣を国境まで護衛してまいります」

 

その言葉に驚いたのは、王の背後に控えていたドラットーだった。

 

「王子御自ら王の剣の護衛ですと?」

 

「お前には言ってあったはずだ。“護衛をつける”と」

 

「ですが、王子御自ら護衛など...」

 

「なに、国境までニフルハイム帝国への連絡を届けなきゃならないから、ついでだ」

 

「ですが、」と食い下がるドラットーを遮るように、レギスが「頼む」とネヴィラムに言い渡したおかげで、その場を逃れることができた。事前にクライレスに言っておいてよかった。

 

「では、父上。行ってまいります」

 

「頼んだぞ」

 

「はい」

 

 

 

レギスに背を向け、一歩踏み出す。武器召喚と同じ原理で服を身につけ、一瞬にして警護隊の真っ黒な衣装に変わる。数人の王の剣が背後に続く。

 

 

 

ゲートまで車で乗り付けると、商業用のトラックと思しきトラックが一台止まっている。

 

「あれか?」

 

そばの王の剣に尋ねると肯きのみで返される。先程から恐ろしいほど物静かなこの男に、ネヴィラムは密かに怪しんでいた。一旦車を降り、コンと一つトラックの荷台を叩く。すると内側から開かれ、1人女性が顔を出す。

 

「貴方が、クロウ?」

 

「ネヴィラム王子?!」

 

急な王子の登場に驚いたらしいクロウを奥へ押しやり扉を閉める。

 

「クロウ、単刀直入に言うが、貴方は狙われている。おっと、どうしてかは聞くな、貴方の荷物が無事届け先へ届くとまずいと思っている奴がいるのさ」

 

クロウの言葉を遮りながら、一気に事情を話す。走る車がアスファルトを走っていく音がする。早く仕込みを済ませてしまわないと王都の外に完全に出てしまう。

 

「何も言わないで言うことを聞いてくれ、いいか?必ず助ける」

 

コクコクと頷くクロウに簡単な目眩しの術式をかける。

 

「いいか?貴方が一度でも大きなダメージを食らったら、幻の死体が現れるよう仕込んである。シガイ程度なら出し抜ける。幻が出現している時間は30分。その隙に貴方はその場から離れるんだ。ガラードへ逃げればあとはなんとかなる」

 

「どういうことですか?王都へ知らせねば...」

 

ネヴィラムに食ってかかるクロウに、良いから、と話す。「王都は別働隊が動く。貴方は壁外にいて欲しい。後でニックスやリベルトを送る。それまでガラードを守ってくれ。頼む。後で必ず理由がわかるようにするから」

 

ネヴィラムの必死さが伝わったのか、気圧されたのか定かでは無いがクロウは黙ってうなずいた。

 

「よし、じゃあこの先予定通り作戦を遂行してくれ。国境までで、予定通り護衛は外れる」

 

「わ、わかりました。王子...。あ、あの!」

 

「どうした?」

 

せっかちに説明を終えた王子に、これだけは聞いておかなければと、クロウが口を開く。

 

「どうして、私なんかを。私は移民です」

 

それを聞いた第1王子は、全てを覆い隠してしまうような笑みを浮かべ、少し沈黙した後に

 

「.....ありがとう、クロウ・アルティウス。この任務だけじゃ無い。この国に、王を支えてくれたこと、感謝する」

 

と言った。

 

 

 

「はい」

 

ガタンと揺れる車の中、反射的に敬礼を返したクロウだが、狙われている自分の状況や、高貴な身分の人間から頭を下げられている状況もどれも一行に現実味が湧かなかった。

 

 

 

この国が、戦場になるということも。

 

 

 

確かにこの前まで自分たち王の剣は帝国相手に戦闘をしていた。仲間も大勢犠牲になった。その犠牲の上でようやく和平交渉が行われるというときに、この王子が戦乱を運んできた。平和のために婚約する弟とは真逆のように映る。自分たちの故郷を犠牲にした平和は、嘘っぱちだったのだろうか?先ほどから車に酔ったのか顔色を悪くしている王子は一体何を見ているというのだろうか。

 

『ガラードを守ってくれ』『この国を支えてくれたこと、感謝する』

 

移民である自分を守ろうとする不思議な王子。平民と同じ目線に立つ弟君も、気さくである意味で変わっているが、この王子も変わっている。そんな王族たちに、クロウは忠誠を誓ったのだ。

 

 

 

クラクラする頭を押さえ、ネヴィラムは車が止まるのを待った。大掛かりな幻術を組み込んだせいで、継続的に魔力が減り続けている。発動する時、一気に消費される分を考えれば、あまり無理はできそうにない。いつのまにかアスファルトの感触から、舗装されていない道の感触に変わっていた。捲し立てたからなのか、事態の深刻さが伝わってしまったか、その両方か、クロウは黙り込んでしまっている。頭の片隅で申し訳ないと思いつつも、今のネヴィラムにはこれで精一杯だ。

 

やがてガタンと車が止まり、外から扉が開く。国境についたようだった。

 

 

 

「俺はここまでだ。どうか、無事で」

 

「...お、王子!」

 

車を降りていくネヴィラムを、クロウは咄嗟に呼び止めた。

 

「なに?」

 

振り返った王子の顔は幼く、修練場にちょくちょく顔を出すノクティスに似ていた。キョトンとした第1王子に対して、クロウはありったけの感謝を告げる。

 

「ありがとう、見捨てないでくれて。王都の人間じゃない私を、守ろうとしてくれて、ありがとう」

 

咄嗟のことで敬語が吹っ飛んだ気がするが、今はそんなこと、クロウはどうでもよかった。“見捨てられてなかった”それが一番嬉しかったのだと、伝えたかったのだ。

 

その言葉に、初めて気恥ずかしそうな顔をしたネヴィラムは

 

「上手くいくよう、祈ってる」

 

と早口に言って今度こそ車を降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【Sideーノクティス】

 

 

 

 

 

「シャキッとしてよ、王子ぃ」

 

「わぁってるって」

 

イラついた様子で返答するノクティスに対して、からかうことをやめないのはプロンプトだ。後部座席に座っているノクティスに、ハンドルを握りながら、ちょっかいをかけている。嬉しくて仕方ないと言うようなプロンプトの様子に、年上2人は見守る姿勢を貫いていた。

 

(助手席に座るイグニスは前をみろ、と度々注意していた)

 

からかわれているノクティスはたまった物では無い。気恥ずかしさからか、プロンプトに対しそっけない態度で返事していた。

 

「そういえば、結婚もびっくりしたけど、お兄さんの登場もびっくりしたー!全然会ったことなかったし!たまーにテレビとかで名前とかは聞いたことあったけどさ。なんかすっごく優しくしてもらっちゃった!」

 

ハンドルの上で手をパタパタさせながら、プロンプトがノクティスに話を振る。

 

「まぁ、兄貴滅多に帰ってこないし。紹介つっても居なかったからな」

 

「へぇーお城の中に居ないんだ....あ!ノクトもか」

 

1人で納得しているプロンプトに、イグニスが補足を入れる。

 

「ネヴィラム様に場合は国内にいらっしゃること自体が少ない。優秀な外交官として働いておられるからな」

 

イグニスが端末に入っている外交レポートのファイルを眺めながら、一般人にはあまり知られて居ない第1王子を紹介する。それに合わせるように

 

「この第2王子サマとは6歳も離れてらっしゃるからな、俺が城に上がった時にゃもう、1人でバリバリやってらしたな。それもあって、俺らもあんまりネヴィラム様には会ったことねぇんだ」

 

とグラディオラスも言添えるが、2人ともどこか空を掴むような説明でプロンプトは、「ほえー」とぽかんと口を開けて返事をする。

 

「イグニスの叔父さんとか、グラディオの妹のイリスとかは、結構喋ってたな。帰ってきたら必ず時間とってくれるし....鍛練頼んだらボッコボコにされるけど...」

 

「へぇ、なんか優しそうなお兄さんじゃん」

 

ポリポリ頭をかきながらそう言うノクティスに、プロンプトは明るく声をかける。

 

「俺さ、出発前にお会いしてさ!ネヴィンって呼んでって言われたんだけど、なんか恐れおおいんだけど、マジで!」

 

「兄貴が自分で言ったんならいいんじゃね?呼べば?」

 

「俺一般人なんだって!もう、忘れてない?」

 

「いいんだよ、そう言うの、俺も、兄貴も多分好きじゃねぇから」

 

そう言われたプロンプトは、「えぇー」と言いながら嬉しそうに片手で顎あたりをかいていた。

 

 

 

「まぁ、これから結婚するわけだしな。しっかりしないとまずいぞノクト。ネヴィラム様にも言われただろう」

 

「わかってるって!うっせーな人ごとだと思いやがって」

 

照れ隠しで、口がついつい悪くなるノクティスだが、そのことを知っている旧知の仲間たちは、「かわいいなぁ」と心の中でこっそり呟く。

 

「あ、今なんか変なこと考えただろ」

 

ノクティスの鋭いツッコミもなんのその。

 

「いやぁ、いいじゃねぇか、結婚」

 

「ルナフレーナ様にお会いするのは久しぶりだな、ノクト」

 

同じく後部座席で、ノクティスの隣に座るグラディオラスが、顔をノクティスの方に突き出しながら、結婚の部分を強調する。その鼻先を手で押しやりながら、ノクティスがイグニスの質問に答える。

 

「うーん、12年ぶりくら...い?」

 

はっきりとは思い出せないが、帝国がテネブラエを襲撃したあの日以来会えていないのは確かだ。あれからルナフレーナがどうしているのか、時々報道される神凪の活動を通して知る以外、細々としたやりとりがあるだけで、ほとんどわからなかった。ノクティスは不安と期待がないまぜになった、複雑な気持ちを整理できずにいたのだ。

 

「ノクトがえーっと、8歳?だいぶ前だね!」

 

「前を見て運転してくれプロンプト!」

 

はーい、と生返事を返しプロンプトが前を向く。

 

「結婚式するんだよねぇ、すごいなぁ」

 

「へへっ、お前はまず恋人からだな」

 

しみじみと言った様子でプロンプトが呟くと、すかさずグラディオラスがツッコミを入れる。車の中に笑いの渦が巻き起こる。

 

 

 

「俺、これでも結構頑張ってんのにぃ、グラディオはさ!....」

 

ガタン!

 

パンパン....プスプス...

 

 

 

続く言葉が出る前に、大きな揺れに遮られた。その後にレガリアがどんどん失速していく。

 

「え!」

 

「こりゃ」

 

「もしかしなくても、まずいな」

 

「ウッソだろ、どうすんだよ」

 

完全に止まってしまったレガリアの前に回り込み、グラディオラスが修復を試みるが、通常の車とは勝手が違い、仕組みを理解するのにも苦労しそうな様子だった。

 

「やっベーなこりゃ、イグニス!ハンマーヘッドへ連絡は着くか?」

 

「今発信している...」

 

一早いイグニスとグラディオラスに任せきりの年下2人は、おやつの袋を開け始めた。

 

「プロンプト〜調子乗りすぎたな」

 

「うっさいなぁ、ドキドキしてたのはノクトもでしょー?」

 

笑いを抑えられないノクティスにプロンプトが口を尖らせる。

 

 

 

 

 

この後なかなか連絡がつかないことに焦れて、「車、押して行こう」と言い出したことを、夕方のノクティスは後悔することになる。

 

 

 

 

 

 

 

ーUr calamityー

 

 

 

ノクティスたちがレガリアに苦労していたのと同時刻、ネヴィラムは黄色の何の変哲もないバンを護衛をつけて送り出し、“ついで”の用事をこなすために進む向きを変えたところだった。

 

(今頃ノクティス達は郊外まで出ている頃だろうか)

 

 

 

強かった日差しが傾き始めたかと言う頃。ネヴィラムは国境から10キロ南下したところまで来ていた。長く続く荒原に、舗装されていない道が通り、人気のない寂れたガソリンスタンドが傍に佇んでいる。まだ大きな魔力消費が無いところを見ると、彼女は襲撃を免れているようだった。空にはまだ戦艦の機影は無い。帝国皇帝イドラ・エルダーキャプトが、ルシス王国に入国するまでにはまだ間があるらしい。

 

 

 

ガルルルル

 

「!」

 

不意に目の前に身の丈ほどの狼が地面から湧きだした。黒色粒子をばらまきながら出現した狼は、じりじりとネヴィラムのほうへ歩いてくる。異論の余地はない。シガイの狼だ。とっさにシフトして逃げようとしたネヴィラムの先を読んだように、狼は大きく跳躍しネヴィラムの背後に回り込んだ。

 

(万事休す、か)

 

ため息をついて魔力を練り上げようとしたネヴィラムの目の前に、狼の大きな顎がガバリと開く。

 

息が止まった。

 

 

 

覚悟を決めていたネヴィラムの左ほほを、生暖かい湿ったものがべたりとあてられる。

 

「っひ!」

 

思わず顔を顔をそらすと

 

『クゥイィン』

 

獣の声と比べるとやや濁った声がする。そっと振り返ると、狼の大きな鼻が突き付けられ、もう一度ベロッと大きな舌でなめられる。よくよく狼の目を見れば、明るい金緑石の色。

 

「おまえ、もしかして、アーデン、」

 

シガイが人に懐いてくることなどあり得ない。心当たりを確かめようとするが、獣は何も話さない。鼻の頭をネヴィラムに押し付け、大きな体でぐいぐい押してくる。

 

「お、おい。なんなんだよ、お前何ものだ?」

 

依然として懐いてくる大きな狼は柔らかな毛を撫でていると首元に皮のベルトが掛かっているのを見つける。辿っていけば、丁度狼の耳の後ろあたりにケースがはまっていた。開けようと背伸びをすると狼が一気にしゃがみ込んだ。ドサリと砂埃がして咳き込むネヴィラムの様子を心配するように、狼が顔を寄せてくるのを撫でて止め、今度こそケースを開く。

 

 

 

[ そいつが導き手 背中に乗っておいで ]

 

紙の上にぼんやりと浮き上がるアーデンの字。

 

(やっぱりか)

 

ネヴィラムの魔力を感知して浮き上がるようになっていたと言うことは、間違いなく自分宛てだろう。

 

「お前が連れて行ってくれるのか?」

 

狼の耳の後ろをかいてやりながら尋ねると、物言わぬ獣はネヴィラムをその背に促した。鼻に押されるようにその背にに跨がれば、グンと目線が上がる。そのまま荒原を疾走し始めた狼の首元を掴みながら、ネヴィラムはその暖かい体を堪能するのだった。




ネヴィラムが二重スパイみたいな役回りなので、名前がやたら出てきてややこしいですね。
作者もそう思う。
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