創星記ー異伝ー FFXV~冒険の果てに待つものは~ 作:星野啓
短めです。
ガーディナのうさんくさいおっさんの話。
追記しました。2020/10/1
時間は、
「こいつはすぐにゃできねぇぞ。中に運んだら適当に遊んでな」
レガリアの修理のため、父親から言われていた『ハンマーヘッド』に到着したノクティスだったが、シドから突き放した物言いをされ、少し気圧されたノクティスだった。
「親父の旧友っつてたけど」
「なんか、すっごい怖い感じだったよね」
プロンプトの意見には全面的に同意するノクティスだった。王都とは全く違う世界が広がるハンマーヘッド周辺は原野が広がり、ここまで歩いてきたノクティスたちは長い溜息をつく。そんな一行に、シドの孫である、シドニーが気を利かせて地図を差し出す。
「ノクティス王子のほうは、このあたり初めてだよね?地図あげるから、いろいろ見ておいで」
「ん。ありがと」
もらった地図をその場で見始めるノクティスの隣で、のぞき込みながらプロンプトがおずおずと尋ねる。
「あ、あの、王子のほうってどういう...」
あぁ、そのこと、とこともなげにシドニーが説明する。
「ノクティス王子のお兄さんいるでしょ?ネヴィン。私、ネヴィンと同い年でさ。たまによってくれた時にノクティス王子の話聞いてたんだ」
「兄貴が?」
地図に目を落としていたノクティスが顔をあげる。
「そうだよ。ネヴィン、あぁ見えてノクティス王子のこと好きなんだと思うよ”いいお兄ちゃん”って感じでね」
「そ、そうなんだ」
シドニーに微笑まれ、急に気恥ずかしくなったのかノクティスが話を切り上げて自販機へ向かう。プロンプトが名残惜しそうにシドニーを見ながらノクティスを追うと
「ホントに”ギル”って書いてある」
とネヴィラムにもらったコインを使ってコーラを買っていた。プロンプトが追い付いて肩を組むと、「なんだよ」といいながらノクティスからも手を組まれる。
「やっぱさ、ネヴィン言ってったみたいにお金違うんだね」
「みてーだな」
「俺らみんな揃って”お上りさん”だな」
プロンプトのしみじみとした言葉に、ノクティスは手のひらのコインを見つめた。ずっと王都で過ごしていた自分(ノクティス)と違い、兄(ネヴィラム)は外で生きていたのだと、こういうところで思い知らされる。兄とのどうしようもない差に、悔しい思いで、下を向いたノクティスの頭の上に刺青のある腕がドンと置かれる。見上げれば、グラディオラスが歯を見せて笑っていた。
グラディオラスにつられて笑う年少二人に、ガシガシと頭をなで、それはプロンプトが文句を言うまで続いた。
「グラディオ」
「なんだ?」
「...あんがと」
ふふんと笑いながら最強の盾であるグラディオラスは
「なんのことだか分んねぇな」
とニヤリとノクティスを小突いてから、シドニーと話しているイグニスの元に歩いて行った。
「...グラディオって“ああいうところ”がカッコイイんだよねぇ」
「お前がなんでわかった風なんだよ」
「っへへへ、うれしいくせにぃ~」
イグニスが呼ぶ方へ歩いていきながら、揶揄うプロンプトの脇腹に鉄拳制裁を加え、「行くぞ」と声をかけて走り寄る。
(“俺らみんなお上り”か、俺だけじゃねぇんだった)
同じ立場が誰かひとりでもいてくれるということに、確かな安心を覚えながら口の端を緩めていると、イグニスが声をかけてくる。
「ノクト、ちょっといいか?実は、整備費用の支払いで王都から持ってきた金が底をつきた。シドニーに相談してみようと思うんだが」
「マジか」
どうやら外の厳しさは、ノクティスが思っていたものよりも厳しい物のようだった。金銭感覚はあまり狂っていないと思っていたが、実は狂っていたらしい。ノクティスは少々ショックを受けながら仲間たちの言葉をぼんやり聞いていた。
「まさかの一文無しかぁ」
「そうなるな」
うなずく二人に、冷静なグラディオラスが突っ込む。
「でもよ、それにしたって整備代にしちゃ高すぎねぇか?」
グラディオラスの言を受け、ノクティスは自分のショックを引き起こした元凶が誰であるか感ずいた。
「あの爺さん...」
ノクティスは踵を返してガレージの外で待機しているシドニーのほうへズンズン進んでいく。乾いた風と青い空に、目が覚めるような黄色の服のシドニーは、オイル汚れのついたその顔に、怪訝な表情を浮かべた後、納得したように腕を組んだ。そして訳を話して聞かせた。
「じぃじがね、さっき「外の厳しさを教える」って言っててさ。君たちに野獣退治で稼がせろって、さっき依頼をとってきたの。じゃあバイト代出すから頑張ってみる?場所はこの辺りだからレガリアいらないと思うし」
「なるほど。世界の広さを知れ、ということか。どうする?ノクト」
イグニスが感じ入ったような口調でノクティスを促すのを、グラディオラスが「ポジティブ...」と若干引き気味に眺める中
「じゃあ、やるか」
とノクティスが決断する。その答えにシドニーが指を立てて、注意事項を言って聞かせた。
「いい?王子。王都じゃそんなことなかったと思うけど、ここら辺は夜、『シガイ』っていう化け物が出るからね。夜は必ずモービルキャビンか、ここに戻ってくること」
そういって姉のように注意してくれるシドニーにくすぐったさを覚えながら、ノクティスが「わかった」と返事すると
「これ、前金ね。じぃじには内緒。それだけあれば泊まれるでしょ?」
とウィンクしてノクティスの手に封筒を手渡す。秘密だよ、と注意のために立ていた人差し指を口元に持っていき、<シィ―>といたずらっぽそうに笑う。その笑みにノクティスの後ろではプロンプトがノックアウト、イグニスがせき払い、グラディオラスが口笛を吹くという三者三様の表情を見せていた。いずれもノクティスの後ろで繰り広げられ、残念ながらノクティスには見えていなかった。
モブハントをこなし、ついでに人助けもして、大物を倒した後のイグニスの料理は格別だった。標でキャンプを行い、翌日早朝からグラディオラスに付き合って、最年少二人がハンマーヘッドまで走り込みを行ったせいで、車を受け取る頃にはバテバテになったが、それはまた別の話だ。
「王子!一日外で過ごしてみて、どうだった?」
シドニーが大きく手を振って出迎える。どうやらシドは久々のレガリアで徹夜に近い時間で整備を楽しんだらしく、まだ寝ているとシドニーが笑いながら説明する。
「そうなのか」
「ホント、車好きな人なんだねぇ」
プロンプトがガレージの写真を撮りながら感想を漏らす。昨日と同じく、朝から気持ちい風の吹く、所謂絶好のドライブ日和だった。
「じぃじは機械いじり全般が好きだと思うよ、武器とかも改造したことあるって言ってた」
レガリアの元に一行を案内しながら、シドニーが誇らしげに解説する。
「待たせたね、ほら、キレイになったでしょ?」
「おぉ、こりゃあもう汚せねえな」
グラディオラスがボディにそっと手を滑らせる。ノクティスも運転席側に回り込み、レガリアの正面、側面と順にじっくりと見ていく。そんなノクティスにプロンプトが明るく声をかける。
「よーしっ!じゃあ、レガリアと写真とろ!」
「私撮ったげるよ」
そう申し出たシドニーに、プロンプトがドギマギしながらシャッターボタンを教えるのを、ほか三人はニヤニヤしながら見守った。
「撮るよー」
撮れた写真を確認しひとしきり騒いでから(主にイグニスとグラディオラスのポーズに年少組から突っ込みが入った)シドニーに見送られ、ガーディナに向けて出発したのだった。
ヴェナの標の脇を過ぎ、岩場が一気に開けると、目の前いっぱいに海が広がる。潮の香りが強くなり、風が一気に強くなる。
「海!海見えた!」
「おお!マジだ!」
身を乗り出して興奮する年少組に、いつもセーブを掛けるはずのイグニスとグラディオラスも今回ばかりは声が大きくなる。
「ガーディナ渡船場だな」
「泳ぎたくなるなぁ!」
「グラディオ子どもなの?リゾート地だよ?柔らか~いベッドとマッサージ!」
プロンプトとグラディオラスが年齢の逆転を見せる中、車は順調にガーディナに向けて進む。
大はしゃぎの車内の空気そのままにガーディナに到着した一行は、一旦周辺の情報を集めようと、渡船場へ向かった。
「残念なお知らせです」
「はぁ?」
華やかなリゾート地にそぐわない黒を基調とした衣装で、赤銅色の癖の強い髪を風になびかせて、大柄の男がテラスの入り口の階段を下りてくるのが見えた。男の後ろには影のように寄り添う青年が一人。同じ髪色、同じ瞳の色で、どこかしら似た面差しの青年だった。
「船、乗りに来たんでしょ?」
無精ひげをなでながら、大男の方が尋ねてくる。その気配に気圧されたか、プロンプトが慌てた声を出す。
「え、うん」
「うん、出てないってさぁ」
うさん臭さがぬぐえない男に対してグラディオラスが一歩前に出る。
「なんだ?あんた」
「待つの嫌なんだよねぇ、帰ろうかって思ってさ。停戦の影響かなぁ」
グラディオラスの問いには答えることなく、癖のある髪を書きながら、一行の中央を堂々と抜けると、不意に振り向きノクティスに向けてピン、と親指でコインを弾いた。
反応できずにいるノクティスの顔に、コインが届く寸前に横から延ばされた手がコインをつかむ。先ほどまでうさん臭い大男の傍に立っていた青年だった。青年は無表情にとったコインを、ノクティスの傍で手を伸ばそうとしてたグラディオラスに手渡し、黙礼をして大男のに続いて桟橋へ向かっていく。手のひらに乗せられたコインをノクティスに見せながら、グラディオラスは鎌をかけた。
「停戦記念にコインでも出たのかよ」
戸惑うプロンプトと、憤るノクティスをしり目にうさん臭い大男は「それ、お小遣い」といってピエロのように手を広げて見せる。
「あんた、なんなんだ?」
苛立ったようなグラディオラスの声と、警戒を強めるイグニスの鋭い目線が差し向けられたが、大男はこともなげに答える。
「見ての通りの、一般人」
首を少しかしげながらありえないことを言いながら大男は去っていく。その後ろを背筋をただした赤毛の青年が付いていく。
「ねーわ」
こればかりは全員ノクティスに同意である。
「あのひょろっこい奴、俺の間合いに気配もなく入ってきやがった」
「コインとってくれた人?」
警戒を強めるグラディオラスの言葉に、何度もコテンパンにされているプロンプトは驚きの表情を見せる。
「あいつの気配、俺もわからなかった」
ノクティスもグラディオラスに合わせる。警戒するに越したことは無いだろうと、イグニスがその場を収め、一行はようやく、ガーディナ渡船場周辺の情報をダイナーで聞くことができた。
「あ、ホントに船無いよ。どうしよう」
困惑するプロンプトを他所にノクティスは釣り場を探し、年長組は先ほどの男たちの話をしていた。
波音に消されるぐらい静かな声で、グラディオラスが軍師としてのイグニスに尋ねる。
「帝国人、の可能性はないか?破壊工作の一貫とかよ」
顎に手を当ててグラディオラスの話を聞いていたイグニスは、そこでゆっくり首を横に振った。
「いや、和平を申し込んできたのは帝国側だ。今更ここで破壊工作をするメリットはない。もしここで王子一行を潰したかったら、よっぽど大きな作戦を展開させなければ。ルシス領内でそこまで大きな動きをすれば、戦争に突入するだろう。焦土となった領土を欲しがりはしないと思う」
イグニスの答えに1つうなづきながらグラディオラスは
「顔つきも帝国人っぽくないしなぁ」
と出入り口を眺める。
『イグニスー、グラディオ!あっちに釣り出来るとこあるって!』
桟橋の上からプロンプトが呼びにくる。その横にはそわそわと落ち着かない様子のノクティス。
「わぁったよ、釣りになると元気になるな、こいつは」
「まったくだ」
やれやれと目を細め、「この話はまた後で」と言ってイグニスはグラディオラスを促してノクティスたちと合流した。
プ「ねぇねぇ、ノクトこの荷物何?」
ノ「ん?これシドニーに預けられた。道すがらのモーテルに届けろって」
プ「シドニーからお願い事されたの?!いつ?!」
グ「すごい食いつきだな」
イ「シドニーが好きなのか」
プ「そういうわけじゃないって!って笑わないでよノクト!」
イグニス、お母さんだから見守るポジであんましゃべらない。
影薄い??