青葉と片腕のない司令官さんの甘い日常です
愛する人と一緒に眠る幸せを書いた話
「電気、消すね」
そう言って司令官さんは部屋の明かりを消しました。
暗くなった部屋、同じベッドに向かい合って寝転ぶ青葉と司令官さん。
「近い……ですね」
「ごめん、一人用だからね」
司令官さんのお家のベッドはシングルサイズ。二人はいるにはいささか狭く、くっつくような近さではないと入り切りません。だけど青葉は、その方が嬉しいです。
お風呂の後で身体はポカポカ。お布団に包まれてポカポカ。でも……この熱さはそれだけが原因ではないのでしょう。
ぼんやりとした薄暗さの中、見える愛しい人の顔が心をポカポカ温めます。
「いいえ、すごく嬉しいです」
青葉は笑みをこぼします。しっとりとした肌の触れ合い。同じ石鹸の香り、そばにいる安心感がちょっとくすぐったくもあります。それがとても尊く、感情を鮮やかに色づかせました。
そっと青葉の手を握る司令官さん。温かく、ちょっと硬い男の人の手。伝わってくる安心感。
「眠るとき、一人じゃないのって幸せだね。夜を一人で過ごす不安がないのって、こんなにも落ち着く物なんだね」
ポツリと零したその言葉に、青葉は微笑みを浮かべました。あぁ、司令官さんもそんな風に感じてくれるんですね。青葉と一緒に眠ることを、そんな風に言ってもらえるなんて。ちょっぴり恥ずかしい。けどそれ以上に心に穏やかな光が灯ります。
「青葉も、同じ気持ちです。すごく安心して……幸せです」
落ち着いた気持ちが、青葉の感情を言葉にして出させます。小さく微笑みかけて、優しい気持ち一杯に。
こんなにストレートに言ったことに青葉自身ちょっぴり驚き。ですがそれ以上に驚いたのが司令官さん。そして同時に照れてしまったようで。頬を赤らめています。
いつもは司令官さんの方がストレートな言葉で青葉をドギマギさせますが、今日は反対。こんなやり取りも新鮮で、いいですね。クスりと、心の中で笑みをこぼしました。
なにより司令官さんが照れているのが本当に可愛いです。こんな表情も魅力的でまた、青葉の中の愛しさが溢れてしまいそう。
「ボクも、幸せだよ。温かく、満たされているって感じる」
照れ隠しに司令官さんは青葉の頭を撫でます。髪をすくような優しい手の動き。司令官さんの繊細さを表しているように感じます。
心地よくて、気持ちよくて。思わず表情がふやけてしまいました。
こんなにも幸福に満たされてしまったら、自然ともっと司令官さんを近くで感じたい。そんなわがままが湧いてきました。
「司令官さん、抱き着いても……いいですか?」
たまらず青葉はおねだり。だけど司令官さんは言葉を返してはきませんでした。一瞬の不安。もしかして、出過ぎたことだったのでしょうか。
恐る恐る司令官さんの顔を見上げると……
「わわっ……」
青葉を頭から抱きしめてくれました。ちょっぴり驚きに手をばたつかせてしまいますが、すぐに司令官さんを抱きしめ返します。
もう、イジワルなんですから。素直じゃない司令官さんに対して頬を膨らませますが、すぐに温かな気持ちでいっぱいに。今回は、許してあげます。
包み込まれる温かさ。……というよりはちょっと暑いですね。息苦しくもあります。
だけどもそれ以上、大好きな人の胸に顔をうずめることができる幸せ。
耳をそっと胸に当てたなら、トクン、トクンと鼓動が聞こえてきます。幸せのリズム。青葉の鼓動もきっと、こんな感じなのでしょうか。そんなことを思ったりして、クスリと笑みをこぼします。
「命の音が聞こえますね。すごく、穏やかな気持ちになります」
「青葉といるからだね。青葉といるときが、ボクは一番落ち着ける気がする」
「きょーしゅくです。だけど青葉としては、ドキドキもしてほしいと思っちゃいます。だって青葉は今、とてもドキドキしていますから。心地のいいドキドキをしちゃっています」
自分の胸に手を当てて、脈打つ鼓動を感じて微笑みます。司令官さんのより少し早い、青葉の心臓。それがたまらなく心を満たしてると実感します。
「そんなドキドキを、司令官さんも感じてくれたら青葉は……幸せです」
あ、少し鼓動が早くなったような……。見上げてみて、司令官さんはいつもと変わらない優しい微笑み。だけどその内心はすっごくドキドキしているはず。青葉にはバレているんですから。
それなのに司令官さんは澄ました態度をとったまま。そんな素直じゃない態度がすごく愛おしい。
「ねえ青葉。明日はどんなことをしようか?」
青葉がクスクス笑みを浮かべていると、穏やかな表情でそれでも平静を保とうとする司令官さん。
あ、誤魔化すために話題を変えてきましたね。だけどその相談事に青葉は賛成です。
司令官さんと色々なことをして、いろいろの感情を咲かせられたら……きっとステキですから。
「そうですね……起きたら朝ご飯を一緒に食べて、お洗濯をして、それからえっと……」
想像するだけで気持ちがワクワクしてきちゃいます。興奮して声も大きく。だけど対照的に、司令官さんはとても静か。目もトロンとまどろんでいます。
「それは……ステキだね」
言いながら、司令官さんがあくび。大きくお口を開けて。お仕事でお疲れなのでしょう。今週も頑張っていましたから。
それなのに青葉と一緒にいてくれて、たくさんの心が温かくなるステキをくれて。
青葉は手を伸ばして司令官さんの頭を撫でます。お疲れ様の想いを込めて。
ちょっとチクチクする髪の毛。だけどそれが心地いい。大好きは人の感触
「司令官さん、お疲れ様です。今週もいっぱい、お仕事頑張りましたね」
ちょっと子供っぽい扱いだったかなと思いながら、それでも表したい、愛しい人に向けた感謝。あなたのおかげで、青葉の世界はキラキラ輝いています。
「ありがとう、青葉もお疲れ様。青葉がいて、ボクは幸せ者だよ」
優しい表情。青葉の好きな、柔らかな微笑み。青葉の心に幸せを咲かします。
青葉もです。そんな想いを込めて微笑み返しました。
司令官さんは唇を動かします。囁くような小さな声で、だけどハッキリ青葉の耳に届いてきました。
「大好きだよ」
そんなまっすぐな言葉に、青葉の気持ちが温かく、頬は熱くなってしまいます。
それから司令官さんは目をつむって、すぐにスヤスヤと寝息が聞こえてきました。まるで電池が切れてしまったかのように、本当にあっというま。
「寝ちゃいましたか……?」
小さな声をかけてみて、反応は返ってきません。ぐっすりと寝てしまったみたいです。
司令官さんの穏やかな寝顔。可愛くて、見ているだけで顔がにやけてしまいます。。
「ふふ、司令官さん……。大好きです」
いつも恥ずかしくてちゃんと言えない言葉。こんな形でしか素直に言えなくてごめんなさい。ズルい自分自身を笑ってしまいます。
でも、この気持ちは本当です。何度言っても言い足りない。だから……
「おやすみなさい。また明日です」
こっそり、司令官さんのほっぺに唇を当てます。しっとりと柔らかい感触。
ずっとこうしていたかったですけど、それだと司令官さんのほっぺがふやけちゃいますから。ゆっくりと、名残惜しそうに唇を離しました。
イタズラが成功した子供のように小さく笑います。このことを知ったら、司令官さんはどんな表情をするでしょうか。だけど秘密です。だって青葉も恥ずかしいですから。
もう一度胸に手を当て、心臓がドキドキしているのを感じます。心地いいドキドキ。優しい火が灯ったような温かさが宿ります。
そんな温もりを胸に抱いたまま、青葉も目をつむります。今週は青葉も頑張りました。フワフワ浮かび上がる睡魔に沈むように、ゆっくりと……。
どこまでも愛しい人のことを想いながら。安らかな気持ちで眠りました。
終